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黄昏の翼

2012/05/03

君は変態だ。
そしてマゾヒストだ。
その自覚はある。
しかし、一応は真っ当な社会生活を送る者として、その本性は隠して生きている。
君が常に被っている仮面は、分厚い。
しかもその仮面は、強力で特殊な接着剤によって常に顔面にぴったりと貼り付いており、簡単には外れない。
とはいえ自分でなら、好きな時に外すことができる。
しかし他人によって剥ぎ取られることはない。
つまり自分を偽る仮面は、自分でしか着脱不可能なのだ。
もっともその構造は、仮面を接着剤で貼り付けているというより、貞操帯のように鍵でロックしている感覚のほうが近いかもしれない。
要するに、一度がっちりと嵌めたら、あとは鍵を持っている者しか、それを付けたり外したりはできないというわけで、そしてその鍵は君自身だけが持っている、そんな感じだ。

ふと気がつけば、すっかり桜も舞い散って、ずいぶん日が長くなった。
六時を過ぎてもまだ明るい夕暮れの舗道には、多くの人たちが行き交っている。
君もその群集に紛れ込んで、駅へと歩いていく。
人々の服装は、もうすっかり初夏の雰囲気だ。
地味なサラリーマンも上着を脱いで手に持って歩いていたりするし、女性たちのファッションも冬場とは違い、明るく華やかで軽やかだ。
生足を惜しげもなく晒しながら、素足にシンプルなサンダルや派手なミュールを履いている女性も多い。
秋から冬にかけて街に溢れるストッキングの脚やロングブーツも良いものだが、生足や、爪先のペディキュアの色までちらりと覗けるサンダル類の足許は、変態の君にとってかなり魅力的だ。
だから短いスカートを穿き生足を誇示して歩いているような綺麗な女性がいれば、君はつい眼を向けてしまう。
ただし、本当はじっと注視したいのだが、さりげなく視線を走らせる程度で我慢している。
街の中で見ず知らずの女性の生足を食い入るように見ていたら、変質者と思われてしまう。
勿論、変態マゾの君としては、女性から変質者扱いを受け、侮蔑の視線を浴びて罵られながら唾棄されれば、正直なところ嬉しいのだが、日常生活の中での君は分厚い仮面をつけているから、そんな状況は絶対に回避しなければならない。
変態と変質者は似て非なる存在だし、君は紛れもなく変態だが変質者ではないと自負している。
女性から変質者扱いされるのは構わないというか、むしろ興奮してしまうのだが、そういう状況以外では、やはり変質者ではあり得ない。
一般の人からすれば、変態も変質者も同じかもしれないが、君の中では明確に違うし、救いようのない変態であることは認めるが、変質者のつもりはない。
それでも、黄昏時に広げる妄想の翼は、なかなか制御しきれない。

君は、短いスカートを穿いた美しい女性を見ると、或る状況を、つい妄想してしまう。
それは、ズボンやパンツを下ろして下半身を大胆に露出しながらその足許に跪き、白くてすべすべしている肉感的な太腿を掌で撫でながら、そのまま柔かくて豊かな臀部に抱きつき、スカートの中に顔を潜り込ませ、下着の上から股間に鼻先を埋めて深呼吸をする……というシチュエーションだ。
ただし、嫌がる相手に無理矢理そうして屈服させて蹂躙したい、と思うわけではない。
むしろ、そういう行動に出て、嫌悪され、罵倒され、憐れまれて嘲笑されたい、とマゾの君は切に思う。
基本的なスタンスとして、君は女性から侮蔑されたいのだ。
とはいえ、いくらそういうマゾ的な発想が出発点であっても、無論、実際には、絶対にそんな行為はできない。
できるはずがないし、社会的にも決して許されることではない。
綺麗な女性を見つけて、いきなり見ず知らずの相手に対してそんな行動に出れば、たちまち大声を上げられ、周りから取り押さえられ、逮捕されるに決まっている。
明らかに犯罪行為だ。
そもそも小心者の君に、そんなことをする勇気も度胸もない。
尤も勇気や度胸の問題でもないだろうが、とにかく妙に真面目で、地味で、湿り気を帯びた性的欲求を常に悶々と胸の奥に秘めている君としては、直接的な行動は論外だ。
君が己の性癖に素直に従い、その歪んだ暗い欲望を解き放つことができるのは、自慰を除けば、SMクラブや、責められる系統のプレイが可能な性風俗店に限られる。

前方から、大柄で派手な雰囲気の美人が歩いてきた。
だんだん距離が縮まり、近づいてくる。
そばに立つだけで化粧や香水の匂いで卒倒しそうになりそうな、若くて美しい女性だ。
背は君より高く、かつて水泳かバレーボールでもやっていたかのような、逞しさすら感じさせる立派な体格をしている。
白いシンプルなブラウスに短いスカートを穿いていて、すらりと伸びる生足は白く肉感的で、足許は踵の高い銀色のサンダルだ。
その女性の存在を認めた瞬間、君は即座に反応してしまう。
黄緑色の短いスカートの色が、夕暮れの風景の中で際立っている。
大きく波打つ栗色の長い髪が、歩を進める度に揺れる。
ブラウスの上からでもはっきりとその大きさがわかる、いかにも柔らかそうなバストの豊かな隆起が眼を引くが、君は下半身への執着が相当なので、たわわに実る胸も魅力的ではあったが、それよりもついつい、ボリューム感を湛える腰回りや白くてムッチリとした太腿に意識が向いてしまう。
君は、捉えようによっては卑屈に映るかもしれない弱くて遠慮がちな視線を、控えめにさっとその彼女の下半身へ送った。
そして、一気に妄想の翼を広げた。

君は、脱兎のごとく駆け出し、貧相な性器を露出して彼女の足許に跪くと、尻に抱きつき、おもむろにスカートの中へ頭を突っ込んだ。
女性のスカートの内部は仄かに甘い空気が籠っている。
どんな下着を着用しているのかはわからないが、派手な印象の女性だから、コットン素材の無難で地味なものではなく、ナイロンやシルク製のゴージャスな、ワインレッドとかパープルとかの小さな下着かもしれない。
いずれにせよ、朝からこんな夕方の時間までずっと着用していれば、芳醇な香りを放っていることだろう。
極度の匂いフェチの君はその芳香を夢想して猛々しく勃起する。
君はそのまま顔面を、下着の上から股間に押し付ける。
芳しい薫りが柔らかく温かい布地を通して伝わってきて、君は陶然となる。
もちろん、いきなりスカートの中へ顔を突っ込んできた君に対して、女性は怒り、激しく君を罵倒する。
「キモいんだよテメエ、クソ変態、死ねよ」
君の人格を全否定するように、遠慮のない強烈な言葉で君を吊るし上げていく。
しかしマゾの君にとってそんな厳しい言葉の数々すら、すべて甘美な響きとなって降り注ぐ。
更に女性は君の髪を掴み、何度も張り手を振り下ろす。
「チンポ出して必死に吸い付いてんじゃねえよ、クズ」
荒々しい言葉とともに、強烈なビンタが君の左右の頬に連続して炸裂する。
それでも君は全くめげないし、怯まない。
むしろそれはマゾの君からすれば嬉しい痛みで、罵声を浴びれば浴びるほど昂り、勃起の硬度が増していく。
だから君はまるでスッポンのように股間から離れず、ひたすら下着の感触に酔いしれる。
その魅惑の布地は、湿り気を帯びている。
おそらくクロッチには様々な体液の沁みが染み込んでいて、外側からでもその部分に鼻先を埋めれば、たちまち濃密で円やかな香気に包まれる。
君は、大胆に鼻を鳴らして吸い付いた後、それまで柔らかい尻を抱いていた手をスカートの中へ滑り込ませ、一気にその下着を下ろす。

股間の茂みが目の前に展開する。
その奥に秘密の亀裂が密かに息づいている。
それでも君はまず、膝の上辺りで止まっている、下ろした下着のクロッチの部分を凝視した。
間近で見るその布地は、この世界で最も小さな桃源郷だ。
君はその狭い布地に顔を埋め、心ゆくまで鼻と口で味わう。
匂いを嗅ぎ、滑りを舐める。
至福の時だ。
そうして布地の温もりや柔らかさ、そして何より濃厚な沁みの味を充分に堪能してから、君は下着を離れ、その上空に君臨する茂みの奥の裂け目に向かう。
顎を上げるようにして股間に顔を向け、潤んだピンク色の亀裂に唇を密着させ、激しく啜った。
舌を伸ばして粘膜の内側を擦り、何度も出し入れを繰り返す。
溢れる蜜を舌先で執拗に掬って味わう。

妄想は、甚だ自分にのみ都合の良い展開で疾走し、加速していく。
そのためいつしか女性はマゾという奇異な生物を面白がりだしていて、君の頭を両手で無造作に掴み抱え込みながら、「おら、しっかり舐めろよ、変態」と、君の顔面を自分で自分の股間に強く押し付けている。
君は「すいませんっ」と謝罪し、必死に舌を使う。
気がつけば、「股間を舐めている」が「股間を舐めさせられている」に変化している。
「そんなに蒸れて臭い股間が好きか?」
女性が君の髪を掴んだまま訊く。
君は亀裂に吸い付きつつ、「ふぁい」と答える。
君の中で、美しい女性の「臭い」はすべて「匂い」に置換される。
「じゃあ、まんこだけじゃなく、うんこの穴も舐めろよ。おまえなんかそっちの穴で充分だろ」
女性が命じ、君は「はい、失礼いたしますっ」と答えた。
そして、かなり不自然で不自由な体勢になるが、そのまま体を女性の股間の下で後方へ滑り込ませると、臀部に縋り付くように抱きついたまま首を捻って顔の向きだけを変え、亀裂の向こうにある、肉の双丘の谷間に鎮座する固い蕾に吸い付いた。
肉の谷間は汗ばみ、芳ばしい香りが籠っていて、君の理性をショートさせていく。
相当に窮屈な体勢だが、そんなことは全く気にならない。
蕾の内部の柔らかい壁はざらざらしていて、仄かな苦みが舌先を痺れさせながら伝わる。
やがてその蕾の固さがだんだん解れてきて、君の舌をやすやすと咥え込むほど弛んでいった。
「うんこの穴、美味いか?」
嘲るように笑いながら女性が言う。
君は「ふぁい、とても美味しいです」と答えながら、尖らせた舌を更に蕾の中へと捩じ込み、その舌の根元まで何度も押し込んでいく。
「まあ、おまえみたいなド変態はうんこの穴でも勿体ないくらいだよな」
女性は尻の下にいる君を覗き込みながら、君の顔面に座るように体重を掛けて言う。
「ふぁい、本当にありがたいです。ありがとうございます」
君は柔らかい臀部に縋り付いて女性の体の重みを支えながら、ひたすら蕾を吸い、礼を述べる。
女性は、おらおら、と笑いながら尻をバウンドさせて遊ぶ。
その度に君の顔面は無様に圧せられる。

既に君の顔面は女性が分泌する生々しい様々な体液に塗れてべとべとになっている。
それには自分の唾液も混じっているはずだが、君は陶然となりながら、尚も股間に執着し続ける。
唇と舌が痺れてきたが、君は止まらない。
女性の股間は溶け出している。
君は当初の前方から吸い付く体勢に戻り、がっちりと尻の柔らかい肉を両手で抱え込みながら、ふんがふんがと息を荒げて股間に夢中になっている。
もう他のことは何も考えられない。
君の脳裡は女性の股間だけに占有されている。
君は前方の亀裂と後方の蕾を交互に狂ったようにしゃぶり尽くしていく。
意識は先鋭化しつつ完全に狭窄している。

やがて君は夢見心地のままペニスを握り、扱き始める。
左手で女性の尻にしがみつき、右手で勃起したペニスを激しく擦り、唇と舌で女性の亀裂に吸い付き続ける。
そして、呆気なく、君は勢いよく射精する。
虚しく放たれた精液は、空中を飛び、地面に落下するーー。

女性とすれ違う。
香水と化粧の香りが君の鼻孔を擽った。
君は音を立てずに彼女の周辺の空気をそっと吸い込んだ。
もちろん、その女性は、君が抱いた破廉恥な妄想など知る由もない。
しかし、微妙なオーラでも漂わせてしまっていたのか、すれ違った一瞬、その女性は自分より背の低い君を、まるでゴキブリでも見るような強気な眼で、見下ろした。
それは、本当にほんの一瞬、一秒にも満たない短い時間の視線だったが、君を萎縮させるには充分だった。
君は内心、その恐ろしいほど無慈悲な雰囲気の冷たい視線に、マゾとしての歓喜に打ち震えながら、咄嗟に地面へと視線をそらし、身を固くした。

宴の後で

2012/04/05

山間の小さな町の外れにある、その公園は桜の名所で、開花の時期にはたくさんの花見客が訪れる。
昼間はもちろんのこと、夜間も賑わう。
満開の桜の木の下にはたくさんのシートが敷かれ、誰もが楽しげに時間を過ごす。
いろいろなグループがいる。
ほとんどが地元の人間だが、勤め先や学校の仲間、友達同士、家族連れ、カップル……様々な人たちがいる。
年齢層も若者から老人まで幅広い。
写真を撮るためにひとりで散策するカメラが趣味らしい人もいる。

しかしそんな喧噪も、園内の照明が午後十時で消されると、終わりだ。
まるで潮が引くように、やがて公園内は無人となり、ひっそりと静まり返る。
何せ、照明が消えると辺りは完全な暗がりになってしまうし、桜の季節の深夜はまだ寒いから、春というより冬に逆戻りしてしまい、昼間は生温い風が吹いて暖かさを感じても、日が落ちると途端に風は冷たくなるし、そんな寒さに耐えながら夜中に滞在しても仕方ない。
綺麗な夜景が見られるわけでもないし、園内にはトイレも自販機もなく、それらは駐車場まで戻らないとない。
とにかく暗く、寒すぎて、いつまでもいられる場所ではないのだ。
いくら桜が綺麗に咲いていても、照明を消されたら何も見えやしない。
しかも、駐車場も真っ暗だし、そこから公園の入り口までの道にも明かりはなく、結局、滅多に人はやってこない。
ただし、駐車場まではカップルなどが車でやってきたりするから、車はたまに疎らに止まっている。
何のためにやってくるかは、言わなくても想像がつくだろう。
他の車と適当に間隔を置いて停車し、ヘッドライトが消されれば、そのうちに車体が揺れ始めるーー。

十一時を過ぎて、公園内から完全に人の気配が消えた。
照明が消されてからも持参したランタンの灯りで最後まで粘って宴会を続けていたグループも、ついに散会して帰っていった。
そのグループが去ると、園内は完全な静寂に包まれた。
真っ暗で、静まり返り、たまに冷たい風が吹くと、地面の草や樹々の梢が揺れて微かな葉擦れの音が聞こえるだけとなった。
そして、花は微妙に盛りを越えているのか、少々強い風が吹くと、花びらがはらはらと舞った。

「もう誰もいないわ」
桜の巨木の下の闇の中で、長いコートに身を包んでいる女性が言った。
彼女は君の飼い主だ。
君はすべてを彼女に支配されている。
「はい」
君はそうこたえると、女性は命じた。
「早く、全部脱いで裸になりなさい」
「はい、失礼いたします」
君はその場でいそいそと服を脱ぎ始めた。
女性はトートバッグから乾電池式のランタンを取り出してスイッチを入れ、桜の木の根元に置いた。
「早くして」
急かされ、「すみません」と君はいそいそと服を脱いでいく。
ランタンの明かりによって生まれた影は大きく増幅されて伸びる。

照明が消されるまで、君と飼い主の女性も花見をし、お酒を飲んでいた。
といっても正確には、君は下戸なのでウーロン茶を飲んでいて、彼女だけがビールを飲んでいた。
そして、周囲の花見客が帰り始めると、君たちも片付けをし、帰る代わりに、闇に隠れたのだった。

「早く、早く」
「はい」
君は急いでコートを脱ぎ、上着を脱ぎ、スラックスを脱ぎ、タイを取ってシャツを脱ぎ、地面にそれらを置いていく。
いちいち丁寧に畳みはしないが、一応はひとまとめにした。
流石に寒い。
しかし君はすべての衣服を脱がなければならないから、いくら寒くても選択肢は「脱ぐ」しかなかった。
ただし、裸足では足の裏が痛いので、靴だけは履いていてもよい、と言われていた。
とはいえ全裸なのに靴だけを履いているというスタイルはひどく滑稽だった。
しかもその靴はごく普通の、ビジネス用の革靴だし、靴は履いていても良かったが靴下は脱がなければならず、素足に革靴だから、余計にみっともなかった。
裸足に革靴でもカジュアルなローファーやモカシンならまだ格好良いが、安物の革靴では単にみすぼらしいだけだ。
もっとも、どのみち君の存在自体がみっともないから、靴なんてとくに問題はなかった。
変態マゾの君は、股間の毛を剃っているし、ペニスは包茎で、しかもこの寒さで小学生のそれ並に縮み上がっているし、胸から腹にかけて油性のマジックで大きく「変態マゾ奴隷」とか「便器人間」とか落書きされていて、ペニスの部分に矢印を書かれ「ホーケイ(笑)」とその部分だけ赤のマジックで強調されていた。
更に、背中には「うんこ食います」「おしっこ飲みます」「人間として終わっています」と縦に三行、大きく書かれていて、そんな人間が今更、全裸で革靴だけ履いていたところで、何の問題もなかった。
もちろん、体に書かれている文字はすべて君の飼い主である女性によるものだった。
油性のマジックだから洗っても簡単には消えないし、よって、女性と会っていない時でもそのままだから、温泉やプールに行ったりはできない。
刺青ではないだけマシかもしれないが、君は人前で裸になれる体ではないのだ。
まともな人間が君を見れば、正視に耐えないから目を背けるか、いっそ侮蔑の視線を遠慮なく注ぐだろうが、その前の段階として、君は飼い主である女性以外にこの体を晒す勇気も自信もない。

裸になったら、寒さのあまり、体が震えた。
ガチガチと歯が鳴って、君は二の腕辺りを自分でしきりにさすった。
女性は寒がっている君の反応など無視して、命じる。
「お座り」
「はい」
君は桜の木の根元で正座をした。
小石混じりの土の地面は冷たく、痛かった。
「もう漏れそう」
女性はそう言うと、スカートをたくし上げ、下着を下ろして右足だけ引き抜いて、その足を君の肩に載せた。
そして、その体勢のまま、勢いよく放尿を始めた。
凄まじい勢いで股間の亀裂が迸り出た尿は、君の頭のてっぺんから激しく降り注いだ。
その尿は冷えきった体に暖かかく、白く湯気が立った。
降り注ぐ暖かい尿は、寒さに震えている君にとって、まさに天が与える慈悲の恵みのように感じられた。
君は尿を浴び続ける。
更に、顔面を伝うように流れ落ちてくる尿を、飲む。
女性は、やっと放尿できた安堵からか、排出を続けながら、ふうと大きく息を吐いている。
尿は、口に入れると、ビールのせいか、咽せてしまうくらい濃厚で酷く苦かった。

たちまち君の体はずぶ濡れになってしまった。
暖かい尿によって、全身から白い湯気が上がる。
君の視界は睫毛に付着した尿の雫のせいでキラキラと光っている。
君は凍えるような空気の中で、その尿の暖かさをありがたく感じた。
ストロングなアンモニア臭に包まれながら君は幸福だった。
しかし、その至福の時間もそう長くは続かなかった。
すぐに尿は冷えていき、君は前よりもいっそうガタガタと震えだした。
なまじか体が濡れてしまったせいで、全身が凍りついたように冷たく感じた。
君の体の下には尿の溜まりができていて、それも急速に温もりを失っていき、氷のような冷たさが背筋へと這い上がってきた。
君は拳を強く握って膝に置き、全身に力を漲らせて寒さを堪えた。

じきに、ようやく尿の放出が止まった。
女性はまだ依然として君の肩に足を載せたまま、大きく息を吐いた。
君は小刻みに体を震わせながらも「失礼します」と言うと、女性の股間に下から口をつけ、濡れた亀裂やその周囲の陰毛を入念に舐めた。
性器を丁寧に舐め、雫が付着している陰毛は口に含んでその水分を唇で拭き取った。

女性がようやく君の肩から足を下ろし、少し離れて、パンティを穿き、スカートの裾を直した。
その時、一陣の強い風が吹き渡り、一斉に桜の花びらが舞った。
淡いピンクのその散乱をランタンの明かりが照らす。
夜の中に、花びらが華やかに舞い散る。
そしてその無数の花びらは、尿で全身を濡らしたままの君の体に降りかかり、びっしりと貼り付いた。

Sunday afternoon

2012/03/13

その調教のための部屋には窓がない。
だから意識していないと昼なのか夜なのか時間帯がわからないし、晴れているのか曇っているのか雨が降っているのか、天候もわからない。
更に部屋には窓だけはなく、時計もない。
窓がなく、時計もないと、たちまち時間の感覚がおかしくなる。

或る日曜日の午後。
外は穏やかな春の日で、天気が良く、気温も高めだが、プレイルームは世界から隔絶された暗い空間だ。
季節も天候も気温も関係ない。
時刻も関係ない。
ただしプレイルームには、時計はないが、タイマーがある。
お金を支払うことで手に入れた、切り売りされた時間が終了に近づけば、そのアラームが夢の時間の終わりを告げる。

まともな、というよりふつうの大人の男であれば、こんな陽気の良い日曜の午後に、こんな部屋には来ない。
しかしマゾ豚の君は、暗い欲望を抑えきれず、性懲りもなくSMクラブのドアを開けた。
君の場合、むしろ日曜の午後という時間帯に、なんともいえない背徳感を憶え、それによって余計にM心を煽られるのだった。
プレイへと君を突き動かすのは、歪んでいて、醜い性的な欲望だ。
SMクラブでの君はもはや人であることを捨てていて、その存在のレベルは畜生にまで落ちている。
だが、それがいい。
ギャップが大きければ大きいほど興奮の度合いも高まる。

救いようがない。
いや、君は別に救われたいとも思わない。
どうせ救われない。

シャワーを終えた君は全裸のまま女王様の前へ怖ず怖ずと進み出て、跪き、ひれ伏して調教の挨拶を述べる。
女王様がヒールの底を、床に額をつける君の後頭部に置く。
服従を全身で示してマゾ豚であることを表明する瞬間だ。
君はその瞬間、ヒトであることを放棄する。

「立ちなさい」
命じられ、君は女王様と向かい合って立つ。
ふたりの間の距離は五十センチほどで、女王様は君より頭ひとつ分ほど背が高い。
そのため、君は完全に見下ろされて、激しく緊張する。
口の中がからからに渇くが、既に性器は勃起している。
その様子を見て女王様はせせら笑い、その侮蔑の微笑によって君は更に昂ってしまう。
女王様が笑みをさっと消し、冷徹な眼で君を見下ろしながら、そそり立つ陰茎を左手でいきなり握った。
そしてぐいっと引っ張り上げながら、君が爪先立ちになると、そのまま右手で君の髪を無造作に掴んだ。

女王様は至近距離から君の瞳を覗き込むように睨む。
その視線によって君の中でマゾ性が爆発する。
女王様の手の中で勃起が限界まで固くなる。
君のオドオドとした怯える眼は、まさにマゾの眼だ。
蛇に睨まれた蛙、雨の中に捨てられている子犬、それらより哀れで情けない。
女王様が君の髪を手放し、間髪置かずにビンタを張った。
立て続けに往復ビンタが繰り出される。
その間、女王様は君を冷めきった眼で見据えたままだ。
君はペニスを握られたまま、ビンタを浴び続ける。
むろん勃起は全く萎えない。
壁一面が鏡になっているため、そんな自分の姿は嫌でも君の視界に入ってきてしまう。
しかし変態の君は、勃起したペニスを掴まれたままビンタを浴び続けているその自分自身の惨めすぎる姿に、一層興奮を憶えてしまう。
そして女王様は、怯えきった小動物のような眼をした君の顔面に、何度も執拗に唾を吐き捨てる。

やがて君の体には赤いロープが巻かれた。
女王様は瞬く間に君を縛り上げていく。
君は後ろ手に拘束され、左足だけを宙に浮かせるようにして縛られると、そのまま、後ろで縛られた手首や左足の膝の辺りのロープが、天井から吊り下がる鎖の先端のフックに結わえられた。
女王様はジャラジャラと派手な音を響かせてその鎖を手繰った。
すると上空で滑車が回り、君の体が徐々に上方へと持ち上がった。
強烈な不安定感が君を包む。
君の体は半ば前のめりになりながら、右足の爪先だけをかろうじて床につけた状態で、吊り上げられた。
僅かに床に触れているだけの爪先で体を支えることは不可能で、実質的に君は浮遊状態に近かった。
自分の意思では、体をどうすることもできない。
無理に捩ったりしたって、重心の定まらない肉塊が頼りなく揺れるだけだ。

そんな状態でも、君のペニスは勃起していて、女王様はそれをヒールの爪先でいったん軽く蹴り、続いて、勢いよく足を振り抜くようにして、今度は固い甲の部分で下から抉り蹴飛ばした。
バスっという重い音が響いて、たまらず君は「うぎゃあ」と叫んだ。
キックの衝撃で体が回転するように揺れたが、君にはどうすることもできない。
女王様は更に、長い鞭を持つと、君との距離を少し置き、その鞭をしなやかにふるった。
鋭い鞭の先が、君の体に次々にヒットする。
「動いたら顔に当たるわよ」
女王様はそう言いながら、的確に君の体を鞭で打ち据えていく。
赤い跡が、君の体に刻まれていく。
既に君の息は上がっている。
鞭の痕跡は、腹や背中や足などに、確実に増えていく。
長い鞭が君の体に巻き付くようにヒットすると、君の体は左右に大きく揺れた。
しかし、君は踏ん張りながら体を支えることができないため、まるで冷凍倉庫の中に吊るされた肉塊のようにぶらぶらと揺れるだけだった。
あまりの痛みに、涙が眼に滲んだ。
大の男が、日曜の真っ昼間から鞭で打たれて泣いている。
それはまさにマゾ豚にふさわしい姿だった。

鞭の雨が去ると、続けざまに女王様はペニスバンドを装着して、吊るしたままの君の尻の穴にたっぷりとローションを垂らすと、そのまま後ろから犯した。
君はアヌスに深く疑似ペニスを咥え込んだまま、まるで女のようにアンアンと喘ぎを洩らして自ら腰を振った。
横の大きな鏡に映るその自分の姿をちらりと見て、君は一層燃え上がった。
女王様は君の尻を両手で支えて激しくピストンを続ける。
君は不安定な体勢のまま、突き上げてくる快感に身悶えた。
汗と涙が顔を流れ、はあはあと激しく息を吐く。
いったん疑似ペニスが引き抜かれた。
カチっと小さな音がして、煙草の匂いが流れてきた。
ふと鏡を見ると、女王様は咥え煙草で君の背後に戻ってきて、改めて疑似ペニスを深々と挿入すると、激しく腰を使った。
ついでに君の背中にのしかかるような体勢になり、右手でペニスを握って擦った。
そうしながら、時折気まぐれに親指の腹で君の亀頭を刺激する。
ペニスとアヌスから伝わる歪んだ快感に、再び君は涎を垂らしながら喘ぐ。
到底他人様には見せられない醜い姿だ。
ペニスの先端から透明の液が床へと糸を引いて垂れている。

じきに、漸く君は拘束から解放された。
疑似ペニスが抜かれた後、体が床に下ろされ、ロープを解かれた。
その瞬間、君は脱力して床にしゃがみ込んでしまった。
肩で大きく息をし、床に両手をつく。
そんな君を、女王様は蹴り飛ばした。

「誰が休んでいいって言った? このクズ」
「申し訳ございません!」
君は反射的に正座し、額を床につけてひれ伏した。
そんな君の肩口を女王様は爪先で蹴って命じた。
「仰向けに寝ろ」
「はいっ」
君はその場で体を横たえ、天井を見た。
この部屋は天井にまで鏡が張られているので、君は自分自身を見上げ、対峙する格好になった。
その視界に、見下ろす女王様の姿が入ってきた。
女王様は冷徹な眼で君を見下ろしながら、その体を跨いだ。
「口、開けろ。人間便器」
「はいっ」
君は口を開いた。
女王様はショーツを脱ぎ捨てると、君の顔の上で中腰になった。
股間を彩る陰毛の茂みと、その奥に秘密の亀裂が見え、次の瞬間、その開いた裂け目から一気に聖水が迸り出た。
勢いよく噴き出した聖水を、君は必死に飲んだ。
しかしその勢いに嚥下が追いつかず、まるで配管が詰まったようにごぼごぼと溢れさせてしまった。
その様子を見下ろしていた女王様が、放尿を続けたまま、ちっと舌打ちした。
「おまえは便器としても使えないのか。もうなんだ、おまえの場合は人間便器ですらなくて、便器人間だな。人間便器以下の便器人間だ」
「もうひわへござひまふぇん」
君は、申し訳ございません、と言ったつもりだったが、口の中に注ぎ込まれ続け、溢れ続ける大量の聖水のせいで、まともに喋ることができなかった。
そんな君に女王様は唾を吐き、いったん尿を止めて腰を上げると、君を跨いだまま仁王立ちになり、改めて放尿を再開した。
そして何度も前後に腰を振った。
聖水の放物線が自由奔放に暴れ回り、君の全身はたちまちぐしょ濡れになった。
情け容赦なく顔面にもぶちまけられたので、君は強く眼を瞑った。
髪まで濡れて、床で横たわる君の体の周囲に聖水の溜まりができていった。
強いアンモニア臭が立ちこめる。

次第に聖水の勢いが弱まり、止まった。
しかし君は一息吐く暇もなく女王様から髪を掴まれ、引き起こされた。
そして四つん這いにさせられ、そのままぐっと顔を床に押し込まれた。
君は不格好に、頬から聖水の溜まりの中に突っ伏した。
女王様が君の頭を押さえつけたまま命じる。
「犬みたいに床に溢れた小便を舌で掬って飲め」
「はいっ!」
君は両手を床につき、フローリングの床に溜まった聖水を舌で舐めて飲んだ。
床の聖水はまだ暖かかった。
しかし、這いつくばり、髪を掴まれて抑え込まれながら、犬のように舌を出して必死に舐めて啜っているうちに、たちまち冷えていった。
ありえないくらい破廉恥で惨めな姿を晒しているというのに、君のペニスは激しく勃起している。
君は聖水を舐め続けながら女王様を見上げ、哀願した。

「お願いいたします、このままオナニーをさせてください! どうか、どうかお願いいたします!」

女王様はそんな必死な君の懇願を嘲笑い、あからさまに呆れながら言う。
「こんな格好でシコシコしたいのか?」
「はい……申し訳ございません……どうか、どうかご許可を……」
「救いようのない変態だな……じゃあ、やれ」
軽蔑の苦笑を洩らしながら、女王様が許可を出した。
「ありがとうございます!」
君は左手を床について体を支え、右手でペニスを握ると、床の聖水を啜りながら、その不自由な体勢のままシコり始めた。
そんな君の後頭部を女王様はヒールの底で踏んだ。
既に髪までぐしょ濡れの君は、顔面を聖水の溜まりに押し付けられている。
女王様の嘲笑が降り注ぐ。
それでも自慰は止まらない。
必死に床の聖水を啜り続けているうちに、後頭部に置かれた女王様のヒールの底は君の頬へと移動した。
君は拉げた蛙のような格好で頬を踏まれたまま、陰茎をしごいた。
やがて射精の衝動がせり上がってきて、君は華々しく精液を迸らせた。
射精を果たした瞬間、君は完全に脱力し、冷え始めている聖水の中に突っ伏した。
しかし、すぐに女王様に横腹を蹴られた。
君は半ば呆然となりながらゆっくりと頭をもたげ、床に両手をついて顔を上げた。
女王様が腕組みをして仁王立ちしたまま、鋭い視線を君に注ぎ、冷めきった口調で訊く。
「ご挨拶は?」
「あ、申し訳ございません」
君は慌てて跳ね起き、陰茎を精液で汚したまま、徐々に冷たくなりつつある聖水の溜まりの中で正座をした。
そして、体を小さく丸めて両手をハの字にして床に置き、額を濡れた床につけた。
「ご調教、ありがとうございました」

ーープレイルームを後にして、外の通り出ると、日差しが眩しかった。
その明るさに一瞬、君は眩暈を憶えた。
体中に刻まれた鞭やロープによる拘束の跡が痛かった。
抉られ続けたアヌスにも違和感がある。
そして口の中には、まだそこはかとく聖水の苦みが残っている。
君はそんなマゾとしての余韻に浸りながら、日曜日の午後の柔らかい日差しの中、ゆっくりと歩き出した。

透明な朝、静寂の庭

2012/02/18

目覚ましが鳴り出す前に、君は自然に覚醒した。
室内の空気は冷えきっていて寒く、雨戸が閉まっているため暗い。

畳敷きの八畳間の真ん中に敷かれた布団の枕元に行灯型のライトがあり、君は布団の中で体を反転させてうつ伏せになると、腕だけを出してそれを灯した。
目覚まし時計を見ると午前五時五十五分で、アラームが鳴り出すまでにまだ五分あった。
君はアラームが鳴らないようにスイッチを押してから、仰向けの体勢に戻り、天井を見つめる。
小さなライトしか灯っていない部屋は薄暗い。
もっとも雨戸が閉まっていないとしても、冬のこの季節、まだ六時前では夜が明けていない。

部屋に暖房器具の類いは一切ない。
だから冬は寒い。
しかし考えればすぐにわかることだが、人間以下の存在として飼われている君には、こうして雨風が凌げる部屋を与えられていること自体、とてもありがたいことなのだった。
この部屋は、母屋から独立して建てられている小さな離れなので、それほどたいそうな建物ではないが、八畳間に簡単な流しとトイレがあって、風呂はないが最低限の生活はできる。

君は布団をめくり、痺れるような底冷えの寒さの中、立ち上がった。
本来、飼われている身の君としては、衣服の着用など贅沢の極みなのだが、さすがにこの季節だけは就寝時に限ってスウェットの上下を支給されている。
ただ、それでも寒い。
しかし、物が何であれ着られるだけでもありがたい話なので、君に不満や不平はない。
そもそも君の意思など、どうでもよいのだ。
生かすも殺すも飼い主である女性の気持ちひとつなのだから、生きていられるだけで君は幸福を感じなければならないし、実際に感じている。

君は布団を畳んで押し入れにしまうと、着ていたスウェットを脱いで全裸になった。
起床後は就寝まで、全裸が基本だから、スウェットは脱がなければならない。
裸になると、冷気に歯がガチガチとなり、君は寒さを紛らわせるために体操をした。
そして少しだけ体が温まると、雨戸を開ける。

夜が明け始めている。
朝もやが音もなく冬枯れの庭を流れていく。
完璧な静寂の中、君は硝子戸を開けた。
その瞬間、凍てつく空気が流れ込んで肌を刺し、君は身震いした。
吐く息が白い。

押し入れの中の引き出しからバスタオルを一枚取り出し、君は縁側で下駄を履き、庭へ出た。
庭は、油土塀で囲まれた石庭で、箒でラインが描かれた白砂の海の中にごつごつとした無骨で大きな石が適度な間隔で配置されていて、朝もやが流れているその様は、まさに海のように見えた。
白砂に箒の線を描くのは、もちろん君の仕事だ。
しかし朝の君には、それより先に、まずやらなければならないことがある。

君はバスタオルを持ったまま庭を回り、建物の裏手にある井戸へ向かった。
そして水を汲むと、下駄を脱いで裸足になり、息を止めて一気に水を頭から被って身を清めた。
君は何度も激しく水をかぶる。
その度に全身の毛を剃り上げている君の体から盛大に湯気が立ち昇る。
仄かに白い湯気が、山の端から不意に差した一筋の金色の朝日に輝く。
やがて君は水浴びを終了し、一息ついた。
息があがってしまっていて、君は腰を折って膝に手を置き、呼吸を整える。
頭髪も陰毛も、すべての体毛を剃っているので、肌はつるりとしていて、水滴が流れていく。
ペニスは完全に縮み上がっていて、引っ込んだ亀頭を余った皮が包み込んでいる。
やがて君は手早く体を拭き、使ったバスタオルは、井戸の脇の小屋の中にある棒に掛けた。
その小屋には様々な道具類があって、君は箒を持つと、庭へ戻った。

朝の庭は、靄が消えかけていて、差し込む朝日で煌めいていた。
君は丁寧に箒で白砂にラインを描いていく。
そうして黙々と庭を手入れしているうちに、夜が完全に明け、陽光が温かく君の肌を照らしていった。
温かいといっても、ふつうの感覚であればコートを羽織りたいくらい寒い。
しかし今の君には、微弱な太陽の熱さえも、とてもありがたかった。

じきに君は庭の手入れを終えて縁側に戻った。
すると、母屋から続いている小径に人影が現れた。
それは君の飼育者である美しい女性だった。
ダウンのロングコートに身を包み、手にはロープと鞭を持っている。
君は女性の足許へ駆け寄って土下座し、額を地面につける。
「おはようございます!」

君はこの女性に対して、百パーセント従順だ。
しかし、この「従順」という言葉にはネガティブな響きがあるが、「言いなりになる」とか「奴隷になる」とか、そういう意味合いではない。
もちろん、君は飼い主である女性の「言いなり」だし、「奴隷」でもあるが、それだけではないのだ。
どこかでドッグトレーナーのような人が言っていたことだが、従順とは緊張を解いて寛ぎながら心を開いている状態であり、それはまさしく君のこの暮らしそのものなのだった。
厳しい生活だが、君の中には安らかさと豊かさが充ちている。

女性は無言のまま君の後頭部を一度踏んでから、「立ちなさい」と言った。
「はい」
女性の足が頭から下ろされると、君は立ち上がり、膝の土を払った。
「いらっしゃい」
女性は庭の中へ進み、大きな石の前まで来ると、君に命じた。
「そこに立って後ろ手で石を抱きなさい」
「はい」
君は大きな石を背にして立った。
背中に石のゴツゴツとした冷たい感触が伝わって、痛みを感じたが、むろんそのことを口には出さず両手を後ろへ回して逆向きに石を抱くような姿勢をとった。
女性が、君をその体勢のままロープで石と一緒に縛った。
君は若干のけぞるような体勢で動きを封じられ、背中や腕や太腿の裏などに石の突起が突き刺さった。
ロープをぐっと引っ張られるように縛られると、その瞬間体のいろいろな部位の皮膚が石に擦れて鋭い痛みが伝わった。
寒いせいで、痛みは全てふだんの数倍に増幅される。
君は歯を食いしばってその痛みを堪える。
この程度で声を出すことは許されない。

やがて女性は君を縛り終えると、後方へ下がり、巻いて持っていた長い鞭をひゅんと振って伸ばした。
鞭の先端が生き物のようにしなる。
「よろしくお願いいたします!」
君は縛られた状態のまま言った。
こういう状況の場合、通常の君なら既に間違いなく勃起しているものだが、さすがの君もこの寒さの中ではペニスを萎えさせたままだ。
女性はこたえず、無言のまま容赦なく鞭を振った。
張りつめた朝の冷たい空気を切り裂いて鞭が走り、君の体を打つ。
君は眼を瞑り奥歯をぎゅっと噛み締めてその痛みに耐えた。
胸のあたりに赤い痕がくっきりと浮かんだが、一発目は、なんとか声を上げずに堪えることができた。
しかし、更に強く鋭く打ち込まれた二発目は、もう駄目だった。

「うぎゃああああああ」

透明な朝の静寂の庭に、君の絶叫が響き渡った。

ミッドナイト・デザート

2012/01/28

深夜。
辺りは静まり返っていて、何の物音もしない。

君は白い陶器の皿を床に置き、その前で正座している。
もちろん全裸だ。
陶器の皿の傍らには、大きなクリスタルのグラスがある。
グラスの中は、空だ。

壁も床もコンクリートで固められた部屋は殺風景だ。
窓すらなく、時計もないので、正確な時間はわからないが、夜の餌の時刻からかなり時間は経過しているから、おそらくもう深夜で、そろそろ日付が変わるか、既に変わったか、そんな時間だろうと君は想像していた。
夜の餌の時、今夜はデザートをあげるからグラスと皿を用意して待ってなさい、という命令を君は受けていたから、もう何時間も皿とグラスを用意して待機していた。

やがてノックもなくいきなりドアが開いた。
正座の君は条件反射のように背筋をぴんと伸ばした。
綺麗な女性が入ってくる。
背が高く、肉感的で官能的なボディの女性だ。
彼女は君の飼い主だが、バストやヒップのボリューム感が素晴らしい。
女性はそんな自分の魅力を充分に認識しているのか、体にぴたりと張りつくようなラインの服に身を包んでいる。
上はタイトなオレンジ色のニット、下は白いデニムのミニスカートだ。
ニットはハイネックのノースリーブで、ミニスカートもそうだが、とても冬場のファッションとは思えない。
しかし、この部屋は寒いが、彼女の居住区は完璧な空調で常に快適な温度に保たれているから、全く問題はないのだった。

女性は、サンダルの尖った踵でコンクリートの床を踏みながら君に近づいてくると、空の皿とグラスを一瞥した。
その手には、ヨーグルトのパックとスプーン、そしてジンジャーエールのペットボトルを持っている。
君は期待を込めた目で無言のまま女性を見上げる。

「何?」
女性が皿とグラスから視線を外して君を見下ろし、訊く。
「い、いいえ……」
君は首を横に小さく振り、俯く。
飼われている君が自分の希望や主張を率先して口にすることは許されない。

「約束のデザートをあげるわね」
女性はそう言うと、溜め息をひとつ吐いてから、床にヨーグルトのパックやペットボトルを置き、腰を屈めて手をスカートの中に入れると、するりと下着を脱いだ。
それはワインレッドの高級そうなショーツだったが、君に与えられることはなく、すぐにスカートのポケットに押し込まれた。
女性はそのままグラスを拾い上げると、自らの股間の下へそれを差し入れ、何の躊躇もなく放尿した。
スカートの奥から金色の液体が迸り出て、湯気を立てながらグラスに注ぎ込まれていく。
強いアンモニア臭が漂い、尿は泡立ちながらグラスに溜まっていった。
そして並々と注がれると、その時点で女性はいったん放尿を止めてグラスを置き、床に直接残りの尿を排出した。
細かな飛沫が撥ね、コンクリートの床に黒い染みが広がっていく。

続いて、女性はスカートを大胆にたくし上げると、君に豊満な白い尻を見せつけるようにしながら床の皿をまたぎ、腰を落とした。
君はその夢のような形状に息を飲む。
女性の尻には神が宿っている、そう思った。
陰毛の茂みが、今の放尿のせいでまだ濡れている。
女性は、何の恥じらいを見せることもなく、そのまま脱糞した。
尻の穴の蕾が大きく膨らみ、プスッとガスが抜けた後、まるでソフトクリームの製造機のように黄金が捻り出されていく。
壮絶な香気が湯気とともに立ち上り、室内に充満する。
大量の排泄物が、圧倒的なボリュームで皿の上に盛られた。
充分に柔らかそうだが形状は崩れておらず、生のチョコレートの塊のように見える。
それはまるでカラメルでコーティングされたように表面が艶やかに光っている。
ヨーグルトとジンジャーエールが与えられるとばかり思っていた君にとって、この展開は完全に予想外だった。

女性はスカートのポケットからティッシュを取り出して尻を拭き、そのティッシュを排泄物の脇、皿の縁に添えると、下着を穿いた。
そしてグラスの小水と皿の便の上にペッペッと大量に唾を吐き、グラスの中の小水を三分の一ほど皿の便の上に零した。
それから女性はようやくヨーグルトのパックを開けてスプーンで掬い、口に入れると、咀嚼だけして排泄物の上にどぼどぼと吐き出した。
そのようにしてヨーグルトのパックを空にした後、ジンジャーエールのペットボトルのキャップを開け、飲み始めた。
しかしヨーグルトと同じように口には含んだが飲み込みはせず、くちゅくちゅと濯ぐと、ぐちゃぐちゃなヨーグルトの上にどばっと吐いた。

白と茶のコントラストが際立つ凄まじいデザートが君の前に出現した。
なんとか固形らしさを残す物体は金色の液体の中に沈んでいて、ジンジャーエールの炭酸が小さく弾けている。
結局ジンジャーエールは半分ほど残したが、女性はその足許の皿を顎でしゃくると、君に冷ややかな声で言った。

「おしっこは後で飲めばいいから、とりあえず早く食べなさい」
「あ、ありがとうございます……」
さすがの君もこの物体を口にすることには躊躇してしまい、動きが止まる。
「なに? なんか不満なの?」
女性が君を見下ろす。
「いいえ滅相もございません」
君は激しく首を横に振る。
そして心の中で強く自分にマインド・コントロールでもかけるかのように(これは決して汚物ではない高貴なデザートなのだ、これは決して汚物ではない高貴なデザートなのだ、これは決して汚物ではない高貴なデザートなのだ)と何度も言い聞かせ、言う。
「とてもありがたいです。嬉しいです。ありがとうございます! いただきます!」

君は四つん這いになって床に両手をつき、皿に顔を接近させた。
甘く壮絶な臭気が鼻腔を突き抜け、普通の生活の中ではまず間近で見ることはない物質が目の前に迫る。
君はごくりと唾を飲み込み、僅か十センチほどの距離で物質と対峙する。
その瞬間、君はいきなり女性に後頭部を踏まれた。
顔面からその柔らかくて暖かい物質に突っ伏す。

「さっさと食べなさい」

女性は君の後頭部を踏んでぐいぐいと排泄物に顔を埋めさせた。
君はひしゃげたカエルのような不自由な体勢のまま思いきって口を開き、ヨーグルトとジンジャーエールのソースで彩られた女性の排泄物を口一杯に頬張った。

夜半の雪が淋しく降る理由

2011/12/21

シャワーを終えて体を拭き、君がバスルームから出てくると、女王様は既にボンデージに着替えてゆったりと脚を組みながら椅子に座っている。
君は使ったバスタオルをベッドに置き、もう既に勃起している股間を手で隠しながら女王様の前へ進む。

「手をどけなさい」

女王様が命じ、君が「はい、すみません」とこたえて手をどける。
出現した勃起に、女王様はあからさまな侮蔑の笑みを浮かべた。
君は女王様の足許に到達し、跪くと、体を小さくしてひれ伏し、調教のご挨拶を述べる。

「女王様、ご調教をよろしくお願いいたします」

女王様は君の調教のご挨拶に対する返事として、無言のまま、額を床のカーペットにつけている君の後頭部をピンヒールの底で踏んだ。
君はその重みを受け止めながら、マゾに落ちた自分の立場を確認する。
クリスマス・イブの夜、午後十一時過ぎ。
超高層ホテルの高層階にある広いツインルームは静まり返っていて、君はこのご挨拶の瞬間、自ら望んで一匹のマゾ豚へ堕ちた。

調教が開始され、君は侮蔑の言葉や視線やビンタによって、瞬く間に変態マゾとして覚醒していった。
それは日常から非日常の世界へと滑り落ちていくような感覚で、君はなす術もなく、というより、その移行に抗う気持ちすらなく、屈辱的に扱われれば扱われるほど、恥辱に塗れたマゾとしての歓びに満たされていく。
マゾというのは単なる性癖ではない。
もはやそういう生き物といっても言い過ぎではない。
「男」とか「女」とか、そういう「性別」に近いものがあり、もしかしたら「ゲイ」と同列で語られるべきなのかもしれない。

足フェチの君に、女王様はヒールを脱いだ。
そして椅子に座ったまま足を投げ出し、床に跪いている君に爪先を与えた。
「お舐め」
「ありがとうございます!」
私服としてブーツを履いていたからか、女王様のおみ足は甘く饐えた香りを放っていて、君は膝立ちになると、与えられた足の踵を両手で大事そうに持ち、夢中でしゃぶった。
尋常ではないレベルでペニスが限界までそそり立ち、先端から透明な液が滴る。
「クリスマス・イブに女王様の臭い足を舐めて喜んでる変態。しかも何、このはしたないチンポ、涎まで垂らしちゃって」
女王様が空いている方の足で君の性器を弄り、鼻で笑う。
「申し訳ございません」
君は一心不乱に黙々と足の指をしゃぶり続けながらこたえる。
「ふつうのマトモな男なら今夜はセックスしてるだろうに、おまえはド変態だからわざわざお金を払って女王様に苛められてる……人として最低レベルというか終わってるわよね」
「は、はい……申し訳ございません……」
君はそれでも執拗に足の指を舐め続けながら小声でこたえる。

やがて女王様は、すっと足を引くと、君の額を爪先で軽く蹴って後ろへ下がらせ、立ち上がった。
そしてベッドに並べてあった道具の中からペニスバンドを取って装着すると、ローションのボトルを持ち、正座している君の髪を掴んで立たせた。
「ちょっと、いらっしゃい」
「はい」
君は勃起したペニスを股間でぶらぶらさせたまま、女王様に引きずられるようにしてカーペットの上を歩いて窓際へ進む。

窓際まで君を引っ張ってくると、女王様は窓に弾かれていたレースのカーテンを勢い良く開いた。
すると、床から天井までほぼ一面を占める巨大なガラスの向こうに、光り輝く都会の夜景が広がった。
激しく雪が吹雪いている。
数時間前に君がこのホテルへチェックインしたときは、かなり寒く、空は曇っていたが、まだ雪は降っていなかった。
立ち並ぶ高層ビルにはまだ多くの明かりが灯っていて、明滅する赤いライトが、今にも消えそうな街の心音を示すように、曇る夜空の中に滲んでいる。
他の高層ホテルにも明かりが鏤められている。

「犯してやるから、窓に手をついて、尻をこっちに向けて突き出しなさい」
女王様が君の髪を無造作に掴んでその体ごと窓へ押し付け、君は頬をガラスに押し付けられた無様な格好のまま「はい」とこたえた。
女王様が君の髪から手を離した。
君はいったん窓辺から距離を置き、少ししゃがんでから両手を伸ばすと、掌を窓につき、肘をピンと伸ばして、背中をほぼ水平にしながら、尻を後方へ突き出す。

窓の外には光り輝く都会の無音の夜景が広がっている。
雪が舞う、クリスマスイブの夜景は、まるで未来映画のワンシーンのように美しかった。
白い雪片が風に煽られるように激しく吹雪いていて、散らばる無数の光の粒を霞ませ、滲ませている。

君はそんな夜景を眺めながら、壮絶な寂寥感に突き上げられた。
一年のうちでもっとも多くの人がセックスをしているといわれるイブの夜の午後十一時半。
この景色の中の無数の窓明かりの場所でも、今まさに多くの人が裸で抱き合い、愛を囁き合いながら、互いの体を貪っていることだろう。
そもそもこの巨大なホテル内でも、この瞬間、相当数のベッドがギシギシと軋んでいるはずだ。
なのに君は、歪んだ性癖ゆえに、この聖なる夜に代金を支払って本名すら知らない女王様からSMの調教を受けていて、しかも尻の穴を犯されようとしている。
もちろんそれは紛れもなく君自身が望んだことで誰からも強制されたわけではないし、そうされることが嬉しいのだし、変態の自分を否定するつもりはさらさらない。
むしろ変態の自分の聖夜の過ごし方としては、確信には少し足りないが、限りなく正解に近いだろうという予感はある。
それでも、虚しさと物悲しさが、冷たく巨大な繭のような淋しさを形成して君を包み込むのだった。
それは決して理屈では説明ができない感情だった。
自分が救いようのない変態のドマゾだとはわかっている。
イブの夜にわざわざ自分から望んで、世間バレすれば眉を顰められ嘲笑されても仕方ないMプレイに興じていることもわかっている。
しかしそれでも一抹の淋しさを感じてしまい、その淋しさが、いま窓の外で降り続く雪のように、心の深層に音もなく積もっていくのだった。

夜景を透かすようにして、ガラスには室内の様子が白く映っている。
女王様が、君の背後に立ち、丸見えになっている尻の穴にたっぷりとローションを垂らす。
そのひんやりとした感触に、君は体をびくんと撥ねさせ、尻の穴をきゅっと締めた。
女王様はゴム手袋をはめた右手の指で穴の周辺をなぞり、少しずつ挿入して強張りを解しながら、左手を伸ばして君の髪を後ろから掴んで引っ張る。
君は体をのけぞらせ、女王様は指を穴から引き抜くと、君の尻を両手で持って固定した。
緊張感が一気に高まり、君は息を止めて体を強張らせる。
「口を開けて息をしてなさい」
女王様が言い、君が命じられた通りに口を開けて息を吸った瞬間、剥き出しのアナルにペニバンが深々と沈められた。

「あぅ」

君は背中をのけぞらせる。
女王様は君の尻を抱えたまま腰を突き立ててディルドを挿入し、最初はゆっくりと、次第に、だんだん激しく腰を振る。
疑似ペニスが君の卑猥で節操のない尻の穴を抉り続ける。
女王様が挿入を続けたまま背中から覆い被さり、両手の爪で君の乳首を摘むと、きゅっと抓った。
君はその刺激にたまらず「あん」と声を漏らす。
女王様が腰を叩き付けるようにディルドをピストンする。
君は更なるアナルの快感を貪るように、窓ガラスに両手をついたまま、女王様の腰の律動に合わせて自分も淫らに腰を振った。

「あんあん」

君は女のように喘ぎ続ける。
そうしながら、美しい都会の夜景と、ガラスに反射している女王様の侮蔑の冷笑から逃れるように俯き、視線をカーペットの床に落とす。
快感に貫かれながら、歯を食いしばり、ぎゅっと目を瞑る。
女王様が、左手で君の乳首を摘みながら、右手を股間に手を差し入れ、完全にいきり立っているペニスを握り、親指の腹で亀頭をひとしきり擦ってから、茎をしごく。
そうしながら耳たぶを噛み、「いやらしい変態マゾ豚」と囁く。
君の顔に女王様の長い髪が触れて、漂う甘い香りに、君の理性は呆気なく崩壊する。

「あああああ」

君は快感のあまり膝を震わせ、ついに立っていられなくなって腰が砕け、がくっとくずおれてしまった。
そんな体勢になっても、女王様はバックから犯し続ける。
君は突っ伏しながらもディルドで繋がったままの尻だけは高く掲げている。
女王様はもう乳首やペニスは弄らず、君の尻を両手で抱えて盛んに腰を叩きつけていく。

「あんあんあんあん」
君は喘ぎ続ける。
窓の外では、世界で最も淋しい夜半の雪が、音もなく寡黙に降り続けている。

可憐な蕾

2011/11/28

部屋には奇妙で濡れた真綿のように重い沈黙が落ちていて、君は大きなダブルベッドの隅の方で身を固くしながら正座し、ぎゅっと唇を噛んで視線を落としている。
君は既に全裸で、ペニスは勃起していてまだ萎える気配はないが、室内に漂う微妙な空気感に、何もできない。

「ったく、ふざけてんじゃねぇぞ」

ヘッドボードに枕を立てかけ、そこに背中を預けながら、裸の女の子が体を投げ出している。
女の子は足を開いてその膝を立てているので、股間の茂みやその奥の亀裂が丸見えになっていて、むろん君はその部分を見つめたかったが、刺のある口調と機嫌の悪さのため、君は顔を上げて見つめることができない。

「おめえなあ、童貞のくせにセックスしたいなんて生意気だろ、セックスどころかおまえみたいなカスがマンコ舐めるとかだけでもありえねえし。だいたい童貞なら童貞って最初に言えよ、こっちは童貞の相手をしている暇なんかねえんだよ、あん?」

女の子が脚を伸ばし、君の体を蹴った。
君は体をよろけさせたが、すぐに立て直し、俯いたまま「すみません……」と小声で言って唇を噛む。

つい数分前まで、彼女の機嫌は悪くなかった。
しかし君が彼女の体にぎごちなく抱きつき、耳元で「ぼ、ぼく童貞なんです……しかも変態のマゾなんですが、どうか筆下しをお願いします、何でもしますからご命令ください、どうかどうかセックスの仕方を教えてください」と言った途端、彼女の態度が豹変した。
告白の直後、彼女はそれまでの愛想の良さをさっと消し、覆い被さっている君の体を押し上げるようにしてどかし、そのまま蹴っ飛ばした。
元々ぞんざいでガサツな態度が彼女の本性なのだろう。
しかしそのキツい性格自体は、マゾの君にとって嫌ではなく寧ろ好みといえたし、こういう年下だが経験豊富で態度の悪い女の子に筆下しをしてもらうことは君にとって夢で、その夢の中の相手はいつも、君がそういう告白をすると都合良くけらけらと笑いながら「しょうがねえなあ、じゃあとりあえずマンコ舐めろよ」などとリードし始めてくれるのだが、現実は身勝手な夢想と違って厳しかった。
蹴られた君は後方へ転がり、何をどうしたらいいのかわからず激しく混乱し、とりあえずベッドの端で正座した。
そしてフリーズしたのだった。

「童貞の変態マゾの筆下ろしなんてキモいし、そもそもそんなヤツがセックスしようなんて、そう望むこと自体、生意気だろ、変態マゾの童貞なら変態マゾの童貞らしくひとりで自分の部屋でひたすらシコシコしてろよ、どうせ毎日毎日飽きもせずにそのショボいチンポをシコってんだろ」

女の子は煙草に火を点け、煙をわざと君に向けて勢い良く吐き出して言った。
君はその煙を浴びながら「すみません……」と体を強張らせた。

「あのなあ」
女の子が勢いをつけて脚を伸ばし、また君の胸元を蹴った。
「毎日シコってんだろ? と訊いてるのにその答えが『すいません』って、おまえアホか、会話になってねえだろ」
「あ、すいません」
君は土下座の姿勢に戻ってから慌てて言い、こたえた。
「はい、毎日シコってます」

女の子の浅黒い肌は充分に張りがあって美しい。
バストも巨大というほどではないが適度なボリュームがあり、体全体の肉付きもよく、先ほどほんの数秒だけ抱きついたときの肉感は夢のようだった。
柔らかくて暖かくて、甘い香水の匂いがした。
今も、しどけなく投げ出されている脚の量感が素晴らしかった。
細くもなく太くもなく、とはいえ、どちらかというと太めだが、その肉感的なラインをちらりと見ると、掌を這わせ頬をすりすりと寄せたくなってくる。
しかしもちろんそんなことは許されないし、じっと凝視などしたらまた叱責を受けるに決まっているから、君は悶々としながらも両手を太腿の上に置いて背筋を伸ばしながら、視線をベッドの上のシーツに意味もなく落としていた。

まるで君を挑発するように、女の子は大きく脚を開いて膝を立てると、股間に茂る陰毛を指先で撫で、人差し指と中指で逆V字を作りながら、亀裂をそっと広げた。

「ここ、舐めたいのか?」
煙草を唇の端に咥えたまま侮蔑の嘲笑を君に注いで女の子が訊く。
君は食い入るようにその部分をじっと見つめながら何度も首を縦に振ってこたえる。
「はい、舐めさせていただきたいです」
すると女の子はフンと鼻で笑って指を亀裂から離し、開いた股間も閉じてしまった。
「馬鹿、おまえなんかが舐めれるわけねえだろ」
女の子はケラケラと軽く笑って煙草を消した。
そしておもむろに枕を抱えるようにしてうつ伏せになった。
豊かな尻の双丘がシーツの海に浮かび上がる。
君は生唾を飲み込んで尻を見つめる。
女の子が、君の方を見ようともせず、枕に頬を埋めて広い窓を眺めながら、大きな欠伸をして、言う。
「マンコは絶対無理だけどケツの穴なら舐めさせてやってもいいぞ、おまえなんかウンコの穴で充分っつうか、舐めるか?」
けだるげに君を振り返ってそう訊く彼女に、君は即答した。
「はい、舐めさせていただきたいです」
「だけど、ケツの穴以外は絶対に舐めるなよ、もしもマンコにちょっとでも舌が触れたら、おめえマジで刺すぞ」
冷徹な目で君を見据えながら女の子が釘を刺す。
「はい、絶対にお尻の穴以外は舐めません。誓います」
「脚とか尻とか体にも絶対に触るな、おまえはケツの穴を舐めるだけ、つうかおまえなんかケツの穴でも贅沢なくらいなんだから、いいな?」
「はい、ありがたいです」

君が勢い込んでそうこたえると、女の子はうつ伏せで脚を大きくV字に開いた。
茂みに隠れる秘裂がピンク色の襞を見せ、豊かな双丘の谷間に、きゅっと締まった蕾が出現した。

「失礼いたします」

君は女の子の脚の間に正座したままずりずりと進み出ると、両手をベッドにつき、顔を尻の谷間に近づけていった。
そして鼻の先で尻の肉を広げて蕾に唇をつけ、尖らせた舌先でゆっくりと丹念にその皺の一本一本まで丁寧に辿って周囲を舐めて解していく。
ほんとうなら大胆に尻の肉を両手で掴んで一杯に広げたうえで吸いたかったが、体には触るなと厳命されている以上、それはできなかった。
アヌスのすぐ近くには当然秘裂があって、その間近で見る膣は生々しくまるで牡蠣のように魅惑的で、むしゃぶりつくしたかったが、それも決して許されることではなかったから、君は尻の穴に集中した。

君は体勢の不自由さに堪えながら、固い蕾をひたすら入念に舐め続ける。
すると、だんだん尻の穴の周囲の筋が緩んできた。
頃合いを見計らって君は慎重に蕾の奥へ舌先を挿入した。
そしてゆっくりとその舌をピストンさせ、蕾全体に口を付けてちゅちゅと音を立てて吸い上げる。
僅かな苦みが君の舌先を刺激し、仄かに立ち上る微香が君の嗅覚を翻弄する。
もう君の五感はその蕾のみに向けられていて、君はその意識を先鋭化させながら、一心不乱に貪っていく。
君は舌を根元まで穴の奥深くへ差し入れ、その位置のまま激しく舌を律動させ、ゆっくりと引き抜く。
そしてまたぐいっと押し込み、ドリルのように舌を回転させながら、狭い壁を満遍なく擦る。
既に君の脳裏のスクリーンは女の子の可憐な蕾だけで占められている。
やがて女の子が、とくに何も感じていない様子で、枕を抱えたまま、平坦な口調で命じる。

「もしも出したかったら」
女の子はうつ伏せのまま新しい煙草に火を点けて面倒くさそうに言う。
「とりあえずケツの穴舐めながら、ひとりでシコって勝手に出しとけ」
「はい! ありがとうございます!」
君はいったん蕾から唇を離してそうこたえた後、左手だけで体を支えつつ右手でペニスを握り、再び顔面から突っ伏すようにして女の子のアヌスに吸い付くと、舌を差し込み、頭を振るようにして盛んにピストンしながら、その体勢のまま猛然と勃起をしごいた。

悦楽の指

2011/10/21

四つん這いになっている君は、飼い主に向けた尻を高く掲げ、頬を床につけて体を支えながら、自分の尻を両手でぐいっと広げた。
女王様から尻の穴が丸見えになる。
その無様な姿は鏡張りの壁にすべて映っていて、その破廉恥な自分の体勢を見て君は全身を真っ赤にさせた。
男としてなんとも屈辱的で、恥ずかしい格好だった。
ボンデージに身を包んだ女王様は、椅子に座って、そんな君を背後から見下ろしている。
その軽蔑の眼差しを冷ややかに注ぐ表情も、君からはよく見えて、羞恥心が爆発する。
壁は前後左右すべて鏡張りになっているので、どこへ視線を遣っても自分や女王様の姿が目に入ってしまう。
女王様が、ヒールの底で君の尻を蹴って言う。

「おまえ、そこの汚い穴に何か入れて欲しいんでしょ? だったら、ちゃんと何が欲しいか言って、態度でアピールしないと」
「はい」
君は更に高く尻を掲げ、一杯に尻の肉を広げながら、腰をくねらせてせがむように言う。
「この汚いお尻の穴を女王様のお指で犯していただきたいです!」
「はははは、なんて格好、よくやるわね。さすがは人間を捨ててるマゾ豚だわ」
女王様は軽く笑い、呆れたように訊く。
「そんなところに指を突っ込まれたいの?」
「はい、ほじくられたいです」
君はもじもじしながら頷く。
「最低だねえ、男のくせに女の指で掘られたいなんて」
「申し訳ございません」
君は顔が熱くなるのを感じながら目を閉じた。

「なんか金玉袋もカチンカチンだし、チンポもビンビン……しかも、何やだ、チンポの先から涎が垂れてるじゃない」
女王様はそう言って股の間に脚を差し入れ、ヒールの甲で下から君の玉袋とガチガチにそそり立っているペニスの裏側をパシパシと蹴った。
確かに君のペニスの先から透明の液が糸を引くように床へと垂れていた。
君は女王様の軽い蹴りに合わせて体を弾ませてしまう。
女王様は薄いゴムの手袋を両手に装着しながら、君の反応を盛大に笑う。
そして手袋をはめた手で、おもむろに君の金玉を握る。
袋ごと掌で包み込んで揉みしだき、そのまま茎をしごく。

「あぁん」

君は身悶えながら声を漏らす。
「なんて、はしたない声を出すの」
女王様は笑い、親指の腹を使って君の亀頭を擦る。
「あ、あ、じょ、女王様~」
君は腕をL字に折って肘を床につきながら体をなんとか支え、快感に堪える。

やがて股間への刺激が去り、続いて、剥き出しの尻に冷たくトロリとした感触が伝わった。
女王様がたっぷりとローションを垂らしたのだった。
君はその冷たさに思わず尻の穴を窄めた。
女王様はそのきゅっと締まったアヌスを解すように、人差し指でゆっくりとほじった。
その感覚に合わせて君の尻の穴はひくひくと収縮し、じきに女王様はぶすりと指を差し込んだ。

「あぁぁぁん」

君はアナルをきゅっと窄ませて女王様の指を咥え込んだ。
女王様はそのままゆっくりと指を出し入れし、だんだん緩め拡張していく。
そして、二本目の指、中指も挿入され、君は体を硬直させる。
二本の指のピストン運動に、ローションに塗れた穴はくちゅくちゅと卑猥な音を立てた。
指のスピードがだんだん早まり、君の呼吸も荒くなる。
快感が君を貫き、女王様が指を止めないまま命じる。

「ほらマゾ豚、気持ちいいんでしょ? このままオナりなさい」
女王様が君の尻を掌で叩く。
「はい!」

君は左手と床につけた頬で体を支えながら、右手を股間へ伸ばし、完全に勃起しているペニスをしごく。
その手の動きとアナルを犯し続けるピストン運動の律動と同調させると、君の呼吸は更に激しくなった。
凄まじい快感がアヌスとペニスからせり上がってきて、君を狂わせていく。

「あんあんあんあん」

君は悦楽の指を尻の穴で咥え込みながら体を弾ませ、淫らに喘ぐ。
不自由な体勢のまま、快感を貪り尽くすように、ひたすら激しくペニスを擦り上げる。
ふと目を開くと、横の鏡の壁に、バックで犯される女のように尻を指で掘られながら恥ずかしげもなく自慰を晒す自分がいて、羞恥心が爆発した。
ちらりと、高く掲げた自分の尻の向こうを覗くと、しゃがみながら二本の指でアナルを犯す女王様の姿があった。
女王様は、咥え煙草で紫煙を燻らし、時折その煙が目に入るのか、眉間に皺を寄せながら、君の昂りとは対照的に、冷めた表情で人差し指と中指を縦に二本揃え、きわめて事務的に君の尻の穴に淡々と出し入れしていた。

匂い立つ官能

2011/09/13

床で全裸で正座している君の目の前に、一枚の布が差し出された。
椅子に座っている女の子が、自分の足許で跪いている君に、脱いだばかりの下着を突きつけたのだ。

そのショーツはベージュ色で、レースの模様が描かれている。
君は破廉恥な勃起を隠そうともせず、僅か十五センチほどの距離の目前に浮かんでいるその下着を凝視する。
女の子がひらひらとその布を揺り動かすと、仄かな香気が漂って、君の鼻腔をくすぐる。
君はその香気を吸い込もうとして思わず無意識にクンクンと鼻を鳴らしてしまう。
本当なら、その布地に首を伸ばして顔を埋めたい。
しかし許可もなくそんなことができるはずもないから、君は悶々としながら背筋をピンと伸ばして正座を続けている。

「おい、豚」
女の子が君の鼻先数センチのところまで下着を近づけて、小刻みに揺らした。
「おまえにとってこれはどういう存在?」
君は一層鼻を鳴らし、陶然となりながらこたえる。
「とても尊くて素晴らしいものです」
すると女の子は背中をのけぞらせてケラケラと笑った。
「尊い? 素晴らしい? こんな汚れたパンツが? おまえ何言ってんの? 馬鹿じゃない?」
「申し訳ございません……」
君は俯き、小声でこたえる。
「昨日から穿きっ放しだから臭いでしょ? ほら」
女の子が君の鼻に下着を軽く押し付けた。
獣じみた牝の生々しい匂いが君の鼻腔を突き抜ける。
「いいえ、とても素敵な芳香でございます」
君は半ば目を閉じ、その香りに酔いしれながら言った。
鼻先に触れた布地の感触は柔らかく、そしてまだ温かかった。
そんな様子の君を呆れたように見下ろしながら女の子が言う。
「でも、ここ見てみ」
下着を裏返し、クロッチを君に見せつける。
「こんなに汚れてる」
その部分にはおしっこか愛液か、ぬめりのような染みがべっとりと付着していた。
しかもそれは女性器をそのまま写し込んだかのような形状の染みだった。
君はごくりと生唾を飲み込んでその染みを見つめた。

「おまえはそんなに女の子の汚れた臭いパンツが好きなの?」
女の子が君の目の前から下着を引き上げ、それを持ったまま腕組みして訊いた。
「はい」
君は女の子を仰ぎ見ながら間髪入れずに即答した。
「他に好きな物はないの?」
「え、えっと……」
君はしばし思案し、続けた。
「パンティ以外ですと、女の子さまの履き古したソックスとかも好きでございます」
「靴下?」
「はい。蒸れて湿ったような香りの強いものとか……パンティと同じくらい崇拝の対象でございます」
「崇拝って」
女の子は軽蔑するように笑った。
「ほんと正真正銘の変態なんだな、おまえは」
「すみません……」
消え入るような声で君がこたえると、女の子は嘲笑いながら脚を組んだ。
「普通の男の場合、女のパンツや靴下なんて、好きとか嫌いとか以前に、さっさと脱がすだけのものなのにね、おまえの場合は崇拝の対象か」
「はい……」
「救いようがないっつうか、人として完全に終わってるっつうか……汚くて臭いものばかりが好きって、最低だな」
「あ、でも」
君は慌てて付け足す。
「綺麗な女性が着用されたもの限定でございますが……」
「うるせえよ」
女の子はそう言って君の頭を叩き、おもむろに組んだ脚を再び解くと、手に持っていた下着を君の頭に被せた。
そしてプロレスラーの覆面のように、クロッチの部分で顔を覆うように位置をずらし、腰のゴムを使って顎の下で下着を固定した。
「これでどこからどう見ても完全無欠の変態だな」
女の子は裸足の指先を君の顔面に伸ばし、足の親指と人差し指を器用に使って下着と一緒に君の鼻を摘んだ。
ぬめりの感触が君の鼻から唇にかけてのあたりに密着し、凄まじい香気が君を包み込んだ。
勃起がいっそう固くそそり立つ。
更に女の子はそうやって足の指で君の鼻を摘んだまま、足の裏全体を君の顔に押し付けるようにしてすりすりと圧しながら動かした。
下着にこもる香りに、足から漂う蒸れて温かい微香が加わって、君の理性の回路をチリチリとショートさせた。
君は悶絶しながら腰を浮かし、叫ぶように懇願する。

「お願いします、どうか、このままオナニーさせてください!」

女の子は、なお一層激しく足で君の顔を踏みながら爆笑する。
「こんな状態でオナりたいのかよ」
「はい、お願いいたします!」
君は口元を覆う下着の布越しに声を発しつつ、哀願の目を女の子に向けて必死に縋る。
そんな君を女の子は憐むように見下ろして嘲笑う。

匂い立つ官能、その狂おしい刹那、君の右手はもう今まさにペニスを握ろうとしている。

無情の夜

2011/08/05

髪を掴まれ、君は容赦なく床を引きずり回されている。
もちろん反抗することなど許されないから、君はされるがままだ。

「申し訳ございません申し訳ございません申し訳ございません」

君は全裸のまま股間を剥き出しにして引きずられながら、謝罪の言葉を続ける。
君の首には革製の首輪が巻かれ、リードが床に伸びている。
女性は、どれだけ君が謝っても、全く力を緩めることなく引っ張り回し続け、四つん這いで必死にその動きについてくる君の尻や太腿の裏側を固いブーツの甲で容赦なく蹴り飛ばす。
彼女の手にはケインが握られていて、その先端がピシッピシッと君の尻や背中に炸裂する。
君の背中や尻の皮膚は瞬く間に赤く染まり、破れ、ミミズ腫れのようになって鮮血すら滲む。
君は息も絶え絶えに床に這いつくばりながら、それでもなお「申し訳ございません、どうかお許しくださいお許しくださいお許しください」と額をコンクリートの床に擦り付ける。

君はいつしか泣いている。
涙が止まらない。
しかしマゾの君のペニスは猛々しく勃起している。
女性は君の髪から手を離すと、四つん這いになっている君の背後に回り、開き気味の足の間、その股間を勢いよく蹴り上げた。
ブーツの甲が君の玉袋と竿を的確に捉え、君は反射的に飛び跳ねる。

「うぎゃああああ」

女性は君の尻をブーツの底で蹴り飛ばした。
君は前方へつんのめるように転がる。
女性が、君の首輪に繋がるリードを拾い上げ、短く持った。
そして力任せにぐいっと君を後ろへ引っ張り、君は、今度はそのまま背中から床へ仰向けに転がる。
女性は天井を向いた君の顔をブーツの底で踏み、唾を吐き捨て、その濡れた頬を、まるで煙草を地面で踏み消すように爪先でぐりぐりと圧した。

「申ひわへござひまへん申ひわへござひまへん申ひわへござひまへん」
必死に君は言うが、口の周辺を踏みつけられているため、まともに発音できない。
しかもそんな風にひたすら謝罪の言葉を述べているものの、実際には、満身創痍の君はもう何も考えられていない。
視界は涙で霞み、全身に痛みがある。
背中や尻には蹴りやケインによる様々な種類の痛みが混合されて癒えることなく、膝や掌や肘はコンクリートの床で擦れて皮膚が破れてしまっている。

女性が君の顔から足を降ろした。
その瞬間を利用して、君はなんとか起き上がると、そのまま土下座をして背中を小さく丸め、額を床につけた。
「本当に申し訳ございません!」
君は精一杯の誠意を示すように声を張り上げて謝罪の言葉を述べた。
その後頭部を女性はリードを持ったまま踏む。
ブーツの底による圧力の痛みと、コンクリートに擦れる額の皮膚の痛みが、同時に君を貫く。
君はまるで呪文かお題目のように「申し訳ございません申し訳ございません申し訳ございませんお許しくださいお許しくださいお許しください」と震えながら言い続ける。
肘を閉じ、両手を八の字にして床に置き、その手の間に額をつけながら体全体を小さく丸めて無抵抗と恭順を態度で示すが、女性は何も言わない。
ただリードを引っ張り上げつつも君の頭をブーツで踏み、君は相反する力を同時に加えられながら、何もできない。
女性が、丸めた君の背中に何度もケインを鋭く振り下ろす。

恐怖心が君のすべてを支配している。
それでも君の勃起が萎えることはない。

「立て、ほら」
女性が君の後頭部から足を降ろし、リードを上方へ引っ張った。
「はい」
君は慌てて頭を起こし、よろよろと立ち上がった。
女性はリードを手にくるくると丸めて短く持ち、君の体ごとぐっと持ち上げた。
至近距離で向かい合って立つと、背が高く圧倒的な体格の女性の顔は、君より頭ひとつ分くらい上になり、鋭く無慈悲な視線が注がれて、君の緊張と恐怖は極限に達する。
口が渇き、君は唾を飲み込んだり唇をしきりに舐めたりする。
恐ろしくて女性の目を見ることができない。
一瞬だけちらりと見ることはできても、次の瞬間には恐怖のあまり視線を外してしまう。
女性はケインを手放すと、オドオドしている君の頬を情け容赦なくビンタした。
数発連続して張る。
すると、見る間に君の不細工な顔は、その頬が両側とも真っ赤に染まった。
君は目を閉じ、歯を食いしばってそのビンタの雨に堪える。

ビンタを終えると、女性は口の中に溜めた大量の唾を君の顔面に吐き捨て、そのままリードを引っ張って君を部屋の中央まで連行した。
そこには、天井に滑車があり、鎖が垂れ下がっている。
女性は、麻縄を使って君を縛りはじめた。
君の両手を背中に回させて固定し、その手首の拘束に鎖の先端のフックを取り付けた。
更に、君の右足だけ、膝で吊るように縄をかけ、別の鎖のフックに引っ掛けた。
そして作業を終えると、女性はガラガラと鎖を繰った。
君は後ろ手に縛られたまま上空へと引っ張り上げられ、右足だけが完全に宙に浮いた。
左足はかろうじて爪先が床に届いている。

不安定な体勢だ。
勃起したペニスが卑猥に剥き出しになっている。

女性は君から少し離れて距離を取ると、壁際の床に置いてあった長い鞭を持った。
そして自由奔放に、容赦なく君を鞭で打ちはじめた。

「うぎゃあああああ」

君は鞭で打たれる度に、反射的に体をよじった。
すると手首や膝の縄が擦れて皮膚が破れ、別の種類の痛みが君を襲う。

止むことのない鞭の雨によって、君の体にはその痕がくっきりと刻まれていく。
女性は人間以外の下等な生物を見下ろすような目で君を見つめながら、無言のまま鞭をふるう。
女性の目には、何の感情も滲んでいない。
怒りも憎しみもないが、愛情も憐憫もない。
それでもあえて無理にでも何か感情のかけらを探すなら、侮蔑が微弱な光を宿しているかもしれない。

君はもうまともに呼吸することすら難しい。
完全に息があがってしまっていて、痛みだけが全身を覆っているが、それがもう何によるどんな種類の痛みなのか、自分でもよく理解できていない。
蹴られ続けた痛みか、鞭の痛みか、縄やコンクリートの床で擦れた皮膚の痛みか、何もわからない。
しかし、それなのに君のペニスは限界まで反り返っていて、まるでその部分だけが別の意思を持つ独立した特殊な生物のようだった。

鞭が縦横無尽に空気を切り裂いて君を打ち据え続ける。
恥も外聞もなく子供のように泣きじゃくる君の絶叫が室内に響き渡る。

「もっと泣き喚け、豚!」

女性は吐き捨て、鞭を炸裂させる。
やがて猛々しくそそり立つ君のペニスが鞭の直撃を受けて、その亀頭から血が迸った。

無情の夜はまだ終わらない。


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