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白昼の暗渠

「おまえ、滑稽というより、なんか憐れよね。うん、情けなくて、すっごく憐れ」

ボンデージに身を包んだ美しい女性が、ベッドの端に浅く腰掛けて脚を組み、そのハイヒールの爪先をぶらぶらさせながら、冷徹な視線を君に注いで言う。
体の傍らについた手、その指先には細長い煙草が挟まれている。
その足元で、全裸で四つん這いになりながら女性を見上げている君は、女性の冷たい眼と「憐れ」というその侮蔑の言葉の響きに、俯くしかない。

君の股間にぶらさがる貧相な包茎はしなびている。
包皮は亀頭を完全に包み込んで尚余っていて、しおれた朝顔の花のようだ。
長年にわたってひたすらしごき続けているせいか、皮がすっかり伸びきってしまっている。
更に滑稽なことに、その余り気味の包皮は周囲の陰毛の先端を巻き込んで亀頭を包んでいる。
そんな君のペニスを女性は爪先で軽く蹴って「何これ」と笑い、「チンポが毛をムシャムシャと食べてるわよ」と手を叩いて爆笑した。
君は顔を真っ赤にして俯きながら小声で「すみません」と謝罪し、さりげなくペニスを右手で包むように持つと、皮を根元まで引き下ろした。
「しらっと剥いてんじゃないわよ」
女性は笑ったが、しかし、そのように手で剥けばなんとか亀頭は露出するものの、もともと包皮が余りまくっているため、手を離すとすぐに元に戻ってしまい、その様子を見て一層女性は高らかに嘲笑を振りまいた。
「超笑えるわ、おまえ」
女性はひとしきり笑った後、「もうチンコはいいから、お尻をこっちに向けなさい」と命じた。

「失礼致します」
君は体を反転させて女性に尻を向け、ぐいっと掲げた。
「自分で広げて!」
女性が、君の尻を平手でぴしゃりと叩いて命じる。
君は「はい」とこたえると、右の頬を床につけて体のバランスを保ちつつ、両手を尻に回して醜く弛んだ肉を掴んで広げた。
女性はそんな君の尻をマジマジと観察して「汚いケツ」と吐き捨てた後、君のアヌス周辺にたっぷりとローションを垂らし、きつく閉じている蕾をこじ開けるようにして電動バイブを君の尻の穴に挿入した。
そしてスイッチが入る。
モーター音が室内に微かに響き、君はその震動がもたらす快感をぐっと堪えるように、両手で尻を広げつつ額を床に押し付けて、体に力を込める。
それでも腰が自然と蠢いてしまい、むくむくとペニスが勃起を始める。
とはいえ、ゆっくりと皮は剥けていったが、包茎の君だから、完全に亀頭が露出することはない。
完全に勃起しても、亀頭は三分の一ほどしか露出しない。
君は再び体の向きを変えると、女性の前で尻は上げたまま手だけを離して四つん這いの姿勢になる。
女性は煙草を口許へ運ぶと、咥え、吸った。
そして、ふう、と長く煙を君に向けて吐きだした。
君は顔面でその煙を受け止めた。

平日の午後二時三十分。
ラブホテルの一室。
今日は、天気は晴れで、空には燦々と太陽が輝き、涼しい初夏の風が吹いている気持ちのよい日だが、窓が塞がれているラブホテルの室内は暗く、人工的な明かりに満ちていて、外界から完全に遮断されている。

普段なら仕事をしている時間帯だが、君は時々平日に休みを取り、わざわざ昼間の時間にSMプレイをする。
人々が働いている時間に、こうして自ら率先して人間以下の存在に自分を落とし、美しい女性に踏みにじられたり罵倒されたり侮蔑の対象となって陵辱されることで、君は精神的な安らぎを得て心のバランスを取るのだった。
この感覚を他人に説明することは難しい。
マゾでもなんでもない人間からしたら「君は真っ昼間から何をしているのだ?」と呆れられるだけだろうが、この歓びを他人に説明することに意味はないし、どのみち理解されることはなく、そもそも君にとってSMプレイは日常の自分からは切り離された非日常の出来事であり空間だから、愚かしさと背中合わせであることは重々承知のうえだし、他人に説明する必要などない。
勿論、深夜の調教も良いが、昼間の調教は普段以上にどうしようもなく惨めな気持になり、その感覚が君にはたまらないのだ。
それは、理屈ではない。
べつに平日ではなく土日でもいいのだが、まだ陽の高いうちからマゾに堕ちる時、その惨めさにマゾの炎が一層燃え上がってしまう。
平日なら「多くの人が仕事をしている時間なのに」、休日なら「多くの人が遊びにいったりしている時間なのに」、とそう考えると、その瞬間、自分と世間の落差が増幅されて、君のマゾ性は際立ち、覚醒する。
その白昼の暗渠のような時間は、どろどろとしている。
真っ昼間から、自分より遥かに若く美しい女性の前で自慰を晒して射精する時、君は畜生道に堕ちた自分を歓びとともに強く実感する。

女性が、灰皿を突くようにして煙草を消し、ケインを手に取った。
そして、その先端を君の顎の下に宛てがって前を向かすと、その顔を至近距離からまじまじと見つめた。
君の全身から一気に汗が噴き出す。
若く美しい女性の顔がすぐ間近に迫り、化粧の良い匂いが漂い、まるでゴキブリでも見下ろすかのような無感情の視線に晒されて、君は極限まで緊張して体を強張らせた。
おどおどとした目で、恐る恐る探るように君は女性を見返した。
女性は、そんな弱々しい視線を踏み潰すように君を睥睨し、次の瞬間、ペッと唾を吐いた。
生暖かい感触が、君の鼻梁を伝って落ちていく。
「ありがとうごさいます」
君は小さく震えながら言った。
女性は、それに対して返事はせず、無言のままビンタを張った。
小気味の良い音が響き、君の頬が熱を持つ。
なぜ唐突に顔に唾を吐かれビンタを張られたのか、理由などない。
理不尽かもしれないが、そういうものだ。
しばしビンタの余韻に君が浸っていると、女性はケインでピシッと君の尻を横から打った。

「犬みたいに尻尾を振って全身でその気持ちを表しなさい!」
「はい!」

君はぐいっと尻をあげ、アヌスに突き立てられた電動バイブを尻尾に見立てながら、それを振るようにして掲げた尻を左右に揺り動かした。
そんな君の顔のすぐ前で、女性はハイヒールを蹴るようにして脱いだ。
白い生足が出現し、紅いペディキュアが綺麗に塗られた指先に、君は息を飲む。
革に包まれた時間の中で熟成された芳香が、俄に匂い立った。
君は空気中に漂うその香りを逃さぬよう全部吸い込む勢いで大きく鼻腔を開いた。
そんな君の必死な姿に女性は憐憫を滲ませた口調で訊いた。

「いい匂いがする? 嗅ぎたい?」

嘲笑を含んだその女性の言葉に君は「はい!」と大きな声で答え、「嗅ぎたいです!」と懇願した。
すると女性は「そう」と蔑むように呟き、おもむろに足を伸ばすと、君の鼻を踏むように爪先を突きつけた。
柔らかくて温かくて甘い足の裏の感触が君の顔面を被い、君はたまらずその足の踵を両手で掲げ持つようにして支えると、自ら強く爪先の裏の柔らかい部分に自分の鼻先を押し付け、存分に香気を吸い込んだ。
女性はその足を適当に動かし、君の唇を足の指先で捲りながら、言った。

「舐めたいんでしょ?」
「はい!」

君は目を輝かせてこたえた。
女性は唇の端を侮蔑で歪ませて訊いた。
「蒸れてるから臭いでしょ? こんな臭い足が好きなの?」
「はい、大好きです!」
「どうしようもないド変態。穢らわしい」
女性はそう吐き捨て、君の口の中に爪先を押し込んだ。

「舐めなさい」
「ありがとうございます!」

君はバイブを咥え込んだままの尻を高くあげ、改めて女性の足を両手で包むようにそっと持つと、丁寧に足の指を一本ずつ舐めた。
丹念にしゃぶり、指の側面や間に舌を伸ばし、歯を立てないように十分に注意を払いながら慎重にじっくりと舌先を這わしてゆく。

決して人には見せられない姿だ、君はそう思いながら、足の指を一心不乱にしゃぶり続ける。
君のペニスは、更にますますそそり立っていく。
まるでその部分だけ別の意思を持っているかのように、猛々しく暴力的に勃起している。
女性は新しい煙草に火をつけ、咥え煙草のまま、君が舐めていない方の足をその股間へ伸ばすと、ハイヒールを履いたままの硬い足の裏で亀頭を踏んだ。

「お願いします。このままオナニーさせてください!」

君は怯えた目で女性を見上げ、懇願した。

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