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星降る夜に

鬱蒼と生い茂る白樺の森の中に、こじんまりとしたコテージが建っている。
周囲に他の家はなく、辺りは闇に包まれている。
コテージの窓から漏れる明かりだけが仄かに柔らかい。

森の夜は痺れるような寒さだ。
気温は零度を下回っていて、あらゆるものが凍りついている。
しかし、だからこそ、星空が美しい。
高原の冷たい空気は澄み渡り、空にはぎっしりと星が瞬いている。

君は今、リビングルームの前に作られた広いウッドデッキにひとりでいる。
全裸で犬の「お座り」の姿勢を保ちながら首輪を装着し、鎖がテラスの欄干のひとつに繋げられている。
その鎖の長さは二メートルほどで、テラスの大部分を自由に行き来できるが、君は寒くて動けない。
綺麗に陰毛を剃ってある股間にぶらさがる性器は、完全に縮み上がっていて、それは亀頭まで包皮にすっぽりと包まれている。

君はガチガチと歯を鳴らしながら、美しい夜空を見上げた。
吐く息が白い。
ぎっしりと星が瞬く高原の空は冴え渡っていて、周囲の森の暗さと静けさが、その星空の美しさを際立たせている。

すうっと星が流れた。
君は(あ、流れ星だ)と思う。
と、幾筋もの星が連続して流れ落ちた。
流星雨は音も無く高原の空を彩る。
その冷たく白い光の軌跡が、一瞬だけ君の心の奥の深い暗闇を仄かに照らした。

リビングの大きな硝子戸にはカーテンが弾かれていて、窓明かりが淡く洩れている。
その黄ばんだ明かりはとても暖かそうで、凍えきっている君はついつい物欲しげな目で見てしまうが、その中へ入ることはできない。
だからその明かりを見ていると、温もりに対する憧れと同時に、まさに犬と変わらない立場に置かれている自分の存在の位置づけを嫌でも痛感させられ、絶望的な気持にもなる。
窓明かりは、手を伸ばせば届きそうな位置にありながら、おそろしく遠い。
屋外で飼われている犬と同じ立場である君にとって、暖かい室内は地球上のどの場所よりも遠く、手を伸ばしても届かない。
室内には飼い主である女性がひとりでいるが、何をしているのかは不明だ。
カーテンに人影は映っていないし、物音は何も聞こえない。
君は(ほんとうに夜通しこの場所に捨て置かれ続けるのだろうか)と不安になっているが、君がその解答に辿り着けることは無い。
君の運命は、君の意思とは全く関係ないところで決定され、動いていく。

と、その時、不意にリビングの窓のカーテンが揺れ、大きな硝子戸が開いた。
コートを羽織った背の高い美しい女性が、スリッパをつっかけて、ウッドデッキに出てきた。
君はお座りの体勢のまま女性を仰ぎ見る。
女性の手には長い鞭が握られている。
だんだん女性が近づいてきて、唐突にその鞭を振り上げると、いきなり君の背中を打った。
ぴしりと乾いた音が響いて、君はたまらず「うぎゃあ」と叫び声を上げてしまった。
凍えきって冷えた体に打ち据えられた鞭の一閃は熾烈だった。
背中に赤い筋がくっきりと刻まれた。
君は体を丸めて歯を食いしばりながらその痛みに耐えた。
どうして突然何の理由もなく鞭を打たれるのか、君にはその意味が全くわからなかったが、意味も理由も君には必要ないから、何の問題もなかったし、そもそも君に不平不満や疑問を述べる権利などないから、鞭を打たれるのであればそれを黙って受け入れるしか道はないのだった。
選択の余地はない。

女性が君のそばまで来て、俯いて身悶えている君の髪を左手で無造作に掴むと、そのままぐいっと前を向かせた。
君はおどおどした目で女性を見上げた。
すると女性は無表情のまま君の頬を強くビンタし、それから髪を手離すと、唐突にコートの前をはだけた。
コートの中は全裸で、正座している君のちょうど目の前に股間の茂みが出現した。
君はしばし鞭の痛みや肌を刺す寒さを忘れて、息を飲みながらその美しく密生する茂みを見つめた。

やがて女性はスリッパを履いたままの右足を上げ、君の肩に載せた。
そして君を見下ろし、言う。

「暖かい飲み物をあげるわ」

そう言うと、女性は君の返事を待たず、放尿した。
金色の暖かい聖水が茂みの奥の亀裂から溢れ出し、君に降り注ぐ。
君は慌てて大きく口を一杯に開け、それを飲んだ。

暖かかった。
苦みを伴う温もりが君の口の中を浸し広がった。

聖水は湯気を立ち昇らせながら迸り出て、君の口の中へ注ぎ込まれていく。
君はそれを必死に飲む。
口から溢れた液体が、君の体を流れて床を濡らし、たちまち冷えていく。
しかし君のペニスはまるで生き返ったかのように、凍える寒さの中でも怯まずに勃起し、そそり立っていく。
君は左手を女性の脚に添えてその体のパランスを支えながら、右手でペニスを握り、しごいた。

じきに放尿の勢いが弱まり、止まった。
それと同時に君は射精した。
寒さのせいか精液は勢い良く噴出せず、どくどくと溢れて君の掌とペニスを汚した。
女性は君の肩から右足を下ろし、コートの前を閉じると、射精した君を侮蔑の目で見下ろし、何も言わず、くるりと踵を返した。
そして室内に入り、硝子戸は閉じられ、カーテンが弾かれる。
テラスがふっと暗くなり、君の周囲にできている聖水の溜まりが黒く闇と同化する。
先ほどまで暖くて湯気を立ち昇らせていた聖水はもはや完全に温もりを失い、君の体や床を濡らす聖水の残滓は氷水のように冷たくなっている。
精液に塗れているペニスや掌も冷たい。

君は精液に塗れた掌を自分の太腿に擦り付けて拭うと、濡れた体のまま聖水の溜まりの中で寒さに震えながら、もう一度空を眺めた。
急速に勃起が萎えていく。

そして君は流星を待った。
また星が流れれば何かいいことが起きるかもしれない。
そんな希望に似た気持が、君の心の中に儚く宿っていた。

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