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Sunday afternoon

その調教のための部屋には窓がない。
だから意識していないと昼なのか夜なのか時間帯がわからないし、晴れているのか曇っているのか雨が降っているのか、天候もわからない。
更に部屋には窓だけはなく、時計もない。
窓がなく、時計もないと、たちまち時間の感覚がおかしくなる。

或る日曜日の午後。
外は穏やかな春の日で、天気が良く、気温も高めだが、プレイルームは世界から隔絶された暗い空間だ。
季節も天候も気温も関係ない。
時刻も関係ない。
ただしプレイルームには、時計はないが、タイマーがある。
お金を支払うことで手に入れた、切り売りされた時間が終了に近づけば、そのアラームが夢の時間の終わりを告げる。

まともな、というよりふつうの大人の男であれば、こんな陽気の良い日曜の午後に、こんな部屋には来ない。
しかしマゾ豚の君は、暗い欲望を抑えきれず、性懲りもなくSMクラブのドアを開けた。
君の場合、むしろ日曜の午後という時間帯に、なんともいえない背徳感を憶え、それによって余計にM心を煽られるのだった。
プレイへと君を突き動かすのは、歪んでいて、醜い性的な欲望だ。
SMクラブでの君はもはや人であることを捨てていて、その存在のレベルは畜生にまで落ちている。
だが、それがいい。
ギャップが大きければ大きいほど興奮の度合いも高まる。

救いようがない。
いや、君は別に救われたいとも思わない。
どうせ救われない。

シャワーを終えた君は全裸のまま女王様の前へ怖ず怖ずと進み出て、跪き、ひれ伏して調教の挨拶を述べる。
女王様がヒールの底を、床に額をつける君の後頭部に置く。
服従を全身で示してマゾ豚であることを表明する瞬間だ。
君はその瞬間、ヒトであることを放棄する。

「立ちなさい」
命じられ、君は女王様と向かい合って立つ。
ふたりの間の距離は五十センチほどで、女王様は君より頭ひとつ分ほど背が高い。
そのため、君は完全に見下ろされて、激しく緊張する。
口の中がからからに渇くが、既に性器は勃起している。
その様子を見て女王様はせせら笑い、その侮蔑の微笑によって君は更に昂ってしまう。
女王様が笑みをさっと消し、冷徹な眼で君を見下ろしながら、そそり立つ陰茎を左手でいきなり握った。
そしてぐいっと引っ張り上げながら、君が爪先立ちになると、そのまま右手で君の髪を無造作に掴んだ。

女王様は至近距離から君の瞳を覗き込むように睨む。
その視線によって君の中でマゾ性が爆発する。
女王様の手の中で勃起が限界まで固くなる。
君のオドオドとした怯える眼は、まさにマゾの眼だ。
蛇に睨まれた蛙、雨の中に捨てられている子犬、それらより哀れで情けない。
女王様が君の髪を手放し、間髪置かずにビンタを張った。
立て続けに往復ビンタが繰り出される。
その間、女王様は君を冷めきった眼で見据えたままだ。
君はペニスを握られたまま、ビンタを浴び続ける。
むろん勃起は全く萎えない。
壁一面が鏡になっているため、そんな自分の姿は嫌でも君の視界に入ってきてしまう。
しかし変態の君は、勃起したペニスを掴まれたままビンタを浴び続けているその自分自身の惨めすぎる姿に、一層興奮を憶えてしまう。
そして女王様は、怯えきった小動物のような眼をした君の顔面に、何度も執拗に唾を吐き捨てる。

やがて君の体には赤いロープが巻かれた。
女王様は瞬く間に君を縛り上げていく。
君は後ろ手に拘束され、左足だけを宙に浮かせるようにして縛られると、そのまま、後ろで縛られた手首や左足の膝の辺りのロープが、天井から吊り下がる鎖の先端のフックに結わえられた。
女王様はジャラジャラと派手な音を響かせてその鎖を手繰った。
すると上空で滑車が回り、君の体が徐々に上方へと持ち上がった。
強烈な不安定感が君を包む。
君の体は半ば前のめりになりながら、右足の爪先だけをかろうじて床につけた状態で、吊り上げられた。
僅かに床に触れているだけの爪先で体を支えることは不可能で、実質的に君は浮遊状態に近かった。
自分の意思では、体をどうすることもできない。
無理に捩ったりしたって、重心の定まらない肉塊が頼りなく揺れるだけだ。

そんな状態でも、君のペニスは勃起していて、女王様はそれをヒールの爪先でいったん軽く蹴り、続いて、勢いよく足を振り抜くようにして、今度は固い甲の部分で下から抉り蹴飛ばした。
バスっという重い音が響いて、たまらず君は「うぎゃあ」と叫んだ。
キックの衝撃で体が回転するように揺れたが、君にはどうすることもできない。
女王様は更に、長い鞭を持つと、君との距離を少し置き、その鞭をしなやかにふるった。
鋭い鞭の先が、君の体に次々にヒットする。
「動いたら顔に当たるわよ」
女王様はそう言いながら、的確に君の体を鞭で打ち据えていく。
赤い跡が、君の体に刻まれていく。
既に君の息は上がっている。
鞭の痕跡は、腹や背中や足などに、確実に増えていく。
長い鞭が君の体に巻き付くようにヒットすると、君の体は左右に大きく揺れた。
しかし、君は踏ん張りながら体を支えることができないため、まるで冷凍倉庫の中に吊るされた肉塊のようにぶらぶらと揺れるだけだった。
あまりの痛みに、涙が眼に滲んだ。
大の男が、日曜の真っ昼間から鞭で打たれて泣いている。
それはまさにマゾ豚にふさわしい姿だった。

鞭の雨が去ると、続けざまに女王様はペニスバンドを装着して、吊るしたままの君の尻の穴にたっぷりとローションを垂らすと、そのまま後ろから犯した。
君はアヌスに深く疑似ペニスを咥え込んだまま、まるで女のようにアンアンと喘ぎを洩らして自ら腰を振った。
横の大きな鏡に映るその自分の姿をちらりと見て、君は一層燃え上がった。
女王様は君の尻を両手で支えて激しくピストンを続ける。
君は不安定な体勢のまま、突き上げてくる快感に身悶えた。
汗と涙が顔を流れ、はあはあと激しく息を吐く。
いったん疑似ペニスが引き抜かれた。
カチっと小さな音がして、煙草の匂いが流れてきた。
ふと鏡を見ると、女王様は咥え煙草で君の背後に戻ってきて、改めて疑似ペニスを深々と挿入すると、激しく腰を使った。
ついでに君の背中にのしかかるような体勢になり、右手でペニスを握って擦った。
そうしながら、時折気まぐれに親指の腹で君の亀頭を刺激する。
ペニスとアヌスから伝わる歪んだ快感に、再び君は涎を垂らしながら喘ぐ。
到底他人様には見せられない醜い姿だ。
ペニスの先端から透明の液が床へと糸を引いて垂れている。

じきに、漸く君は拘束から解放された。
疑似ペニスが抜かれた後、体が床に下ろされ、ロープを解かれた。
その瞬間、君は脱力して床にしゃがみ込んでしまった。
肩で大きく息をし、床に両手をつく。
そんな君を、女王様は蹴り飛ばした。

「誰が休んでいいって言った? このクズ」
「申し訳ございません!」
君は反射的に正座し、額を床につけてひれ伏した。
そんな君の肩口を女王様は爪先で蹴って命じた。
「仰向けに寝ろ」
「はいっ」
君はその場で体を横たえ、天井を見た。
この部屋は天井にまで鏡が張られているので、君は自分自身を見上げ、対峙する格好になった。
その視界に、見下ろす女王様の姿が入ってきた。
女王様は冷徹な眼で君を見下ろしながら、その体を跨いだ。
「口、開けろ。人間便器」
「はいっ」
君は口を開いた。
女王様はショーツを脱ぎ捨てると、君の顔の上で中腰になった。
股間を彩る陰毛の茂みと、その奥に秘密の亀裂が見え、次の瞬間、その開いた裂け目から一気に聖水が迸り出た。
勢いよく噴き出した聖水を、君は必死に飲んだ。
しかしその勢いに嚥下が追いつかず、まるで配管が詰まったようにごぼごぼと溢れさせてしまった。
その様子を見下ろしていた女王様が、放尿を続けたまま、ちっと舌打ちした。
「おまえは便器としても使えないのか。もうなんだ、おまえの場合は人間便器ですらなくて、便器人間だな。人間便器以下の便器人間だ」
「もうひわへござひまふぇん」
君は、申し訳ございません、と言ったつもりだったが、口の中に注ぎ込まれ続け、溢れ続ける大量の聖水のせいで、まともに喋ることができなかった。
そんな君に女王様は唾を吐き、いったん尿を止めて腰を上げると、君を跨いだまま仁王立ちになり、改めて放尿を再開した。
そして何度も前後に腰を振った。
聖水の放物線が自由奔放に暴れ回り、君の全身はたちまちぐしょ濡れになった。
情け容赦なく顔面にもぶちまけられたので、君は強く眼を瞑った。
髪まで濡れて、床で横たわる君の体の周囲に聖水の溜まりができていった。
強いアンモニア臭が立ちこめる。

次第に聖水の勢いが弱まり、止まった。
しかし君は一息吐く暇もなく女王様から髪を掴まれ、引き起こされた。
そして四つん這いにさせられ、そのままぐっと顔を床に押し込まれた。
君は不格好に、頬から聖水の溜まりの中に突っ伏した。
女王様が君の頭を押さえつけたまま命じる。
「犬みたいに床に溢れた小便を舌で掬って飲め」
「はいっ!」
君は両手を床につき、フローリングの床に溜まった聖水を舌で舐めて飲んだ。
床の聖水はまだ暖かかった。
しかし、這いつくばり、髪を掴まれて抑え込まれながら、犬のように舌を出して必死に舐めて啜っているうちに、たちまち冷えていった。
ありえないくらい破廉恥で惨めな姿を晒しているというのに、君のペニスは激しく勃起している。
君は聖水を舐め続けながら女王様を見上げ、哀願した。

「お願いいたします、このままオナニーをさせてください! どうか、どうかお願いいたします!」

女王様はそんな必死な君の懇願を嘲笑い、あからさまに呆れながら言う。
「こんな格好でシコシコしたいのか?」
「はい……申し訳ございません……どうか、どうかご許可を……」
「救いようのない変態だな……じゃあ、やれ」
軽蔑の苦笑を洩らしながら、女王様が許可を出した。
「ありがとうございます!」
君は左手を床について体を支え、右手でペニスを握ると、床の聖水を啜りながら、その不自由な体勢のままシコり始めた。
そんな君の後頭部を女王様はヒールの底で踏んだ。
既に髪までぐしょ濡れの君は、顔面を聖水の溜まりに押し付けられている。
女王様の嘲笑が降り注ぐ。
それでも自慰は止まらない。
必死に床の聖水を啜り続けているうちに、後頭部に置かれた女王様のヒールの底は君の頬へと移動した。
君は拉げた蛙のような格好で頬を踏まれたまま、陰茎をしごいた。
やがて射精の衝動がせり上がってきて、君は華々しく精液を迸らせた。
射精を果たした瞬間、君は完全に脱力し、冷え始めている聖水の中に突っ伏した。
しかし、すぐに女王様に横腹を蹴られた。
君は半ば呆然となりながらゆっくりと頭をもたげ、床に両手をついて顔を上げた。
女王様が腕組みをして仁王立ちしたまま、鋭い視線を君に注ぎ、冷めきった口調で訊く。
「ご挨拶は?」
「あ、申し訳ございません」
君は慌てて跳ね起き、陰茎を精液で汚したまま、徐々に冷たくなりつつある聖水の溜まりの中で正座をした。
そして、体を小さく丸めて両手をハの字にして床に置き、額を濡れた床につけた。
「ご調教、ありがとうございました」

ーープレイルームを後にして、外の通り出ると、日差しが眩しかった。
その明るさに一瞬、君は眩暈を憶えた。
体中に刻まれた鞭やロープによる拘束の跡が痛かった。
抉られ続けたアヌスにも違和感がある。
そして口の中には、まだそこはかとく聖水の苦みが残っている。
君はそんなマゾとしての余韻に浸りながら、日曜日の午後の柔らかい日差しの中、ゆっくりと歩き出した。

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カテゴリー:金の鎖、銀の鞭
  1. 2012/09/23 21:27

    n.k.さんいつも現実味のある描写のお話有難うございます。
    今回のストーリーも私がSMクラブへ行く時の状況にとても似ており、共感できる物でした。まるで心の内を見透かされているようです。遠い地方都市からSMクラブのある大都会への移動時間もいろいろな妄想が広がり、既にプレイは始まっています。自分の周りの人たちの誰が日曜日の昼下がりに私がこんなところに来ているなんて誰が想像できるでしょう?その背徳感、全く違う自分になっているところを心知れた女王様だけに見られる安心感と恥ずかしさが次回のプレイへと駆り立てていきます。先日、聖水バーのコメントを書いた者です。また感想書きます。

    • nk
      2012/09/25 00:43

      先日はどうも。
      このお話は、日曜日の昼下がりって最も背徳感や羞恥心やギャップのようなものが際立つ時間帯だと思ったので、書いてみました。
      平日の昼間というのも、それはそれで捨て難いですが、平日だとなんとなく意味合いが違ってしまうような気がします。
      リアリティについては、自分ではよくわからないのですが、ここは基本的に思いついたものをそのまま勝手に書いていくスタイルで、そして反応はほぼゼロなので、好意的に受け止めてもらえていることがわかると、書いた本人としては幸いに感じます。

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