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宴の後で

山間の小さな町の外れにある、その公園は桜の名所で、開花の時期にはたくさんの花見客が訪れる。
昼間はもちろんのこと、夜間も賑わう。
満開の桜の木の下にはたくさんのシートが敷かれ、誰もが楽しげに時間を過ごす。
いろいろなグループがいる。
ほとんどが地元の人間だが、勤め先や学校の仲間、友達同士、家族連れ、カップル……様々な人たちがいる。
年齢層も若者から老人まで幅広い。
写真を撮るためにひとりで散策するカメラが趣味らしい人もいる。

しかしそんな喧噪も、園内の照明が午後十時で消されると、終わりだ。
まるで潮が引くように、やがて公園内は無人となり、ひっそりと静まり返る。
何せ、照明が消えると辺りは完全な暗がりになってしまうし、桜の季節の深夜はまだ寒いから、春というより冬に逆戻りしてしまい、昼間は生温い風が吹いて暖かさを感じても、日が落ちると途端に風は冷たくなるし、そんな寒さに耐えながら夜中に滞在しても仕方ない。
綺麗な夜景が見られるわけでもないし、園内にはトイレも自販機もなく、それらは駐車場まで戻らないとない。
とにかく暗く、寒すぎて、いつまでもいられる場所ではないのだ。
いくら桜が綺麗に咲いていても、照明を消されたら何も見えやしない。
しかも、駐車場も真っ暗だし、そこから公園の入り口までの道にも明かりはなく、結局、滅多に人はやってこない。
ただし、駐車場まではカップルなどが車でやってきたりするから、車はたまに疎らに止まっている。
何のためにやってくるかは、言わなくても想像がつくだろう。
他の車と適当に間隔を置いて停車し、ヘッドライトが消されれば、そのうちに車体が揺れ始めるーー。

十一時を過ぎて、公園内から完全に人の気配が消えた。
照明が消されてからも持参したランタンの灯りで最後まで粘って宴会を続けていたグループも、ついに散会して帰っていった。
そのグループが去ると、園内は完全な静寂に包まれた。
真っ暗で、静まり返り、たまに冷たい風が吹くと、地面の草や樹々の梢が揺れて微かな葉擦れの音が聞こえるだけとなった。
そして、花は微妙に盛りを越えているのか、少々強い風が吹くと、花びらがはらはらと舞った。

「もう誰もいないわ」
桜の巨木の下の闇の中で、長いコートに身を包んでいる女性が言った。
彼女は君の飼い主だ。
君はすべてを彼女に支配されている。
「はい」
君はそうこたえると、女性は命じた。
「早く、全部脱いで裸になりなさい」
「はい、失礼いたします」
君はその場でいそいそと服を脱ぎ始めた。
女性はトートバッグから乾電池式のランタンを取り出してスイッチを入れ、桜の木の根元に置いた。
「早くして」
急かされ、「すみません」と君はいそいそと服を脱いでいく。
ランタンの明かりによって生まれた影は大きく増幅されて伸びる。

照明が消されるまで、君と飼い主の女性も花見をし、お酒を飲んでいた。
といっても正確には、君は下戸なのでウーロン茶を飲んでいて、彼女だけがビールを飲んでいた。
そして、周囲の花見客が帰り始めると、君たちも片付けをし、帰る代わりに、闇に隠れたのだった。

「早く、早く」
「はい」
君は急いでコートを脱ぎ、上着を脱ぎ、スラックスを脱ぎ、タイを取ってシャツを脱ぎ、地面にそれらを置いていく。
いちいち丁寧に畳みはしないが、一応はひとまとめにした。
流石に寒い。
しかし君はすべての衣服を脱がなければならないから、いくら寒くても選択肢は「脱ぐ」しかなかった。
ただし、裸足では足の裏が痛いので、靴だけは履いていてもよい、と言われていた。
とはいえ全裸なのに靴だけを履いているというスタイルはひどく滑稽だった。
しかもその靴はごく普通の、ビジネス用の革靴だし、靴は履いていても良かったが靴下は脱がなければならず、素足に革靴だから、余計にみっともなかった。
裸足に革靴でもカジュアルなローファーやモカシンならまだ格好良いが、安物の革靴では単にみすぼらしいだけだ。
もっとも、どのみち君の存在自体がみっともないから、靴なんてとくに問題はなかった。
変態マゾの君は、股間の毛を剃っているし、ペニスは包茎で、しかもこの寒さで小学生のそれ並に縮み上がっているし、胸から腹にかけて油性のマジックで大きく「変態マゾ奴隷」とか「便器人間」とか落書きされていて、ペニスの部分に矢印を書かれ「ホーケイ(笑)」とその部分だけ赤のマジックで強調されていた。
更に、背中には「うんこ食います」「おしっこ飲みます」「人間として終わっています」と縦に三行、大きく書かれていて、そんな人間が今更、全裸で革靴だけ履いていたところで、何の問題もなかった。
もちろん、体に書かれている文字はすべて君の飼い主である女性によるものだった。
油性のマジックだから洗っても簡単には消えないし、よって、女性と会っていない時でもそのままだから、温泉やプールに行ったりはできない。
刺青ではないだけマシかもしれないが、君は人前で裸になれる体ではないのだ。
まともな人間が君を見れば、正視に耐えないから目を背けるか、いっそ侮蔑の視線を遠慮なく注ぐだろうが、その前の段階として、君は飼い主である女性以外にこの体を晒す勇気も自信もない。

裸になったら、寒さのあまり、体が震えた。
ガチガチと歯が鳴って、君は二の腕辺りを自分でしきりにさすった。
女性は寒がっている君の反応など無視して、命じる。
「お座り」
「はい」
君は桜の木の根元で正座をした。
小石混じりの土の地面は冷たく、痛かった。
「もう漏れそう」
女性はそう言うと、スカートをたくし上げ、下着を下ろして右足だけ引き抜いて、その足を君の肩に載せた。
そして、その体勢のまま、勢いよく放尿を始めた。
凄まじい勢いで股間の亀裂が迸り出た尿は、君の頭のてっぺんから激しく降り注いだ。
その尿は冷えきった体に暖かかく、白く湯気が立った。
降り注ぐ暖かい尿は、寒さに震えている君にとって、まさに天が与える慈悲の恵みのように感じられた。
君は尿を浴び続ける。
更に、顔面を伝うように流れ落ちてくる尿を、飲む。
女性は、やっと放尿できた安堵からか、排出を続けながら、ふうと大きく息を吐いている。
尿は、口に入れると、ビールのせいか、咽せてしまうくらい濃厚で酷く苦かった。

たちまち君の体はずぶ濡れになってしまった。
暖かい尿によって、全身から白い湯気が上がる。
君の視界は睫毛に付着した尿の雫のせいでキラキラと光っている。
君は凍えるような空気の中で、その尿の暖かさをありがたく感じた。
ストロングなアンモニア臭に包まれながら君は幸福だった。
しかし、その至福の時間もそう長くは続かなかった。
すぐに尿は冷えていき、君は前よりもいっそうガタガタと震えだした。
なまじか体が濡れてしまったせいで、全身が凍りついたように冷たく感じた。
君の体の下には尿の溜まりができていて、それも急速に温もりを失っていき、氷のような冷たさが背筋へと這い上がってきた。
君は拳を強く握って膝に置き、全身に力を漲らせて寒さを堪えた。

じきに、ようやく尿の放出が止まった。
女性はまだ依然として君の肩に足を載せたまま、大きく息を吐いた。
君は小刻みに体を震わせながらも「失礼します」と言うと、女性の股間に下から口をつけ、濡れた亀裂やその周囲の陰毛を入念に舐めた。
性器を丁寧に舐め、雫が付着している陰毛は口に含んでその水分を唇で拭き取った。

女性がようやく君の肩から足を下ろし、少し離れて、パンティを穿き、スカートの裾を直した。
その時、一陣の強い風が吹き渡り、一斉に桜の花びらが舞った。
淡いピンクのその散乱をランタンの明かりが照らす。
夜の中に、花びらが華やかに舞い散る。
そしてその無数の花びらは、尿で全身を濡らしたままの君の体に降りかかり、びっしりと貼り付いた。

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