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黄昏の翼

君は変態だ。
そしてマゾヒストだ。
その自覚はある。
しかし、一応は真っ当な社会生活を送る者として、その本性は隠して生きている。
君が常に被っている仮面は、分厚い。
しかもその仮面は、強力で特殊な接着剤によって常に顔面にぴったりと貼り付いており、簡単には外れない。
とはいえ自分でなら、好きな時に外すことができる。
しかし他人によって剥ぎ取られることはない。
つまり自分を偽る仮面は、自分でしか着脱不可能なのだ。
もっともその構造は、仮面を接着剤で貼り付けているというより、貞操帯のように鍵でロックしている感覚のほうが近いかもしれない。
要するに、一度がっちりと嵌めたら、あとは鍵を持っている者しか、それを付けたり外したりはできないというわけで、そしてその鍵は君自身だけが持っている、そんな感じだ。

ふと気がつけば、すっかり桜も舞い散って、ずいぶん日が長くなった。
六時を過ぎてもまだ明るい夕暮れの舗道には、多くの人たちが行き交っている。
君もその群集に紛れ込んで、駅へと歩いていく。
人々の服装は、もうすっかり初夏の雰囲気だ。
地味なサラリーマンも上着を脱いで手に持って歩いていたりするし、女性たちのファッションも冬場とは違い、明るく華やかで軽やかだ。
生足を惜しげもなく晒しながら、素足にシンプルなサンダルや派手なミュールを履いている女性も多い。
秋から冬にかけて街に溢れるストッキングの脚やロングブーツも良いものだが、生足や、爪先のペディキュアの色までちらりと覗けるサンダル類の足許は、変態の君にとってかなり魅力的だ。
だから短いスカートを穿き生足を誇示して歩いているような綺麗な女性がいれば、君はつい眼を向けてしまう。
ただし、本当はじっと注視したいのだが、さりげなく視線を走らせる程度で我慢している。
街の中で見ず知らずの女性の生足を食い入るように見ていたら、変質者と思われてしまう。
勿論、変態マゾの君としては、女性から変質者扱いを受け、侮蔑の視線を浴びて罵られながら唾棄されれば、正直なところ嬉しいのだが、日常生活の中での君は分厚い仮面をつけているから、そんな状況は絶対に回避しなければならない。
変態と変質者は似て非なる存在だし、君は紛れもなく変態だが変質者ではないと自負している。
女性から変質者扱いされるのは構わないというか、むしろ興奮してしまうのだが、そういう状況以外では、やはり変質者ではあり得ない。
一般の人からすれば、変態も変質者も同じかもしれないが、君の中では明確に違うし、救いようのない変態であることは認めるが、変質者のつもりはない。
それでも、黄昏時に広げる妄想の翼は、なかなか制御しきれない。

君は、短いスカートを穿いた美しい女性を見ると、或る状況を、つい妄想してしまう。
それは、ズボンやパンツを下ろして下半身を大胆に露出しながらその足許に跪き、白くてすべすべしている肉感的な太腿を掌で撫でながら、そのまま柔かくて豊かな臀部に抱きつき、スカートの中に顔を潜り込ませ、下着の上から股間に鼻先を埋めて深呼吸をする……というシチュエーションだ。
ただし、嫌がる相手に無理矢理そうして屈服させて蹂躙したい、と思うわけではない。
むしろ、そういう行動に出て、嫌悪され、罵倒され、憐れまれて嘲笑されたい、とマゾの君は切に思う。
基本的なスタンスとして、君は女性から侮蔑されたいのだ。
とはいえ、いくらそういうマゾ的な発想が出発点であっても、無論、実際には、絶対にそんな行為はできない。
できるはずがないし、社会的にも決して許されることではない。
綺麗な女性を見つけて、いきなり見ず知らずの相手に対してそんな行動に出れば、たちまち大声を上げられ、周りから取り押さえられ、逮捕されるに決まっている。
明らかに犯罪行為だ。
そもそも小心者の君に、そんなことをする勇気も度胸もない。
尤も勇気や度胸の問題でもないだろうが、とにかく妙に真面目で、地味で、湿り気を帯びた性的欲求を常に悶々と胸の奥に秘めている君としては、直接的な行動は論外だ。
君が己の性癖に素直に従い、その歪んだ暗い欲望を解き放つことができるのは、自慰を除けば、SMクラブや、責められる系統のプレイが可能な性風俗店に限られる。

前方から、大柄で派手な雰囲気の美人が歩いてきた。
だんだん距離が縮まり、近づいてくる。
そばに立つだけで化粧や香水の匂いで卒倒しそうになりそうな、若くて美しい女性だ。
背は君より高く、かつて水泳かバレーボールでもやっていたかのような、逞しさすら感じさせる立派な体格をしている。
白いシンプルなブラウスに短いスカートを穿いていて、すらりと伸びる生足は白く肉感的で、足許は踵の高い銀色のサンダルだ。
その女性の存在を認めた瞬間、君は即座に反応してしまう。
黄緑色の短いスカートの色が、夕暮れの風景の中で際立っている。
大きく波打つ栗色の長い髪が、歩を進める度に揺れる。
ブラウスの上からでもはっきりとその大きさがわかる、いかにも柔らかそうなバストの豊かな隆起が眼を引くが、君は下半身への執着が相当なので、たわわに実る胸も魅力的ではあったが、それよりもついつい、ボリューム感を湛える腰回りや白くてムッチリとした太腿に意識が向いてしまう。
君は、捉えようによっては卑屈に映るかもしれない弱くて遠慮がちな視線を、控えめにさっとその彼女の下半身へ送った。
そして、一気に妄想の翼を広げた。

君は、脱兎のごとく駆け出し、貧相な性器を露出して彼女の足許に跪くと、尻に抱きつき、おもむろにスカートの中へ頭を突っ込んだ。
女性のスカートの内部は仄かに甘い空気が籠っている。
どんな下着を着用しているのかはわからないが、派手な印象の女性だから、コットン素材の無難で地味なものではなく、ナイロンやシルク製のゴージャスな、ワインレッドとかパープルとかの小さな下着かもしれない。
いずれにせよ、朝からこんな夕方の時間までずっと着用していれば、芳醇な香りを放っていることだろう。
極度の匂いフェチの君はその芳香を夢想して猛々しく勃起する。
君はそのまま顔面を、下着の上から股間に押し付ける。
芳しい薫りが柔らかく温かい布地を通して伝わってきて、君は陶然となる。
もちろん、いきなりスカートの中へ顔を突っ込んできた君に対して、女性は怒り、激しく君を罵倒する。
「キモいんだよテメエ、クソ変態、死ねよ」
君の人格を全否定するように、遠慮のない強烈な言葉で君を吊るし上げていく。
しかしマゾの君にとってそんな厳しい言葉の数々すら、すべて甘美な響きとなって降り注ぐ。
更に女性は君の髪を掴み、何度も張り手を振り下ろす。
「チンポ出して必死に吸い付いてんじゃねえよ、クズ」
荒々しい言葉とともに、強烈なビンタが君の左右の頬に連続して炸裂する。
それでも君は全くめげないし、怯まない。
むしろそれはマゾの君からすれば嬉しい痛みで、罵声を浴びれば浴びるほど昂り、勃起の硬度が増していく。
だから君はまるでスッポンのように股間から離れず、ひたすら下着の感触に酔いしれる。
その魅惑の布地は、湿り気を帯びている。
おそらくクロッチには様々な体液の沁みが染み込んでいて、外側からでもその部分に鼻先を埋めれば、たちまち濃密で円やかな香気に包まれる。
君は、大胆に鼻を鳴らして吸い付いた後、それまで柔らかい尻を抱いていた手をスカートの中へ滑り込ませ、一気にその下着を下ろす。

股間の茂みが目の前に展開する。
その奥に秘密の亀裂が密かに息づいている。
それでも君はまず、膝の上辺りで止まっている、下ろした下着のクロッチの部分を凝視した。
間近で見るその布地は、この世界で最も小さな桃源郷だ。
君はその狭い布地に顔を埋め、心ゆくまで鼻と口で味わう。
匂いを嗅ぎ、滑りを舐める。
至福の時だ。
そうして布地の温もりや柔らかさ、そして何より濃厚な沁みの味を充分に堪能してから、君は下着を離れ、その上空に君臨する茂みの奥の裂け目に向かう。
顎を上げるようにして股間に顔を向け、潤んだピンク色の亀裂に唇を密着させ、激しく啜った。
舌を伸ばして粘膜の内側を擦り、何度も出し入れを繰り返す。
溢れる蜜を舌先で執拗に掬って味わう。

妄想は、甚だ自分にのみ都合の良い展開で疾走し、加速していく。
そのためいつしか女性はマゾという奇異な生物を面白がりだしていて、君の頭を両手で無造作に掴み抱え込みながら、「おら、しっかり舐めろよ、変態」と、君の顔面を自分で自分の股間に強く押し付けている。
君は「すいませんっ」と謝罪し、必死に舌を使う。
気がつけば、「股間を舐めている」が「股間を舐めさせられている」に変化している。
「そんなに蒸れて臭い股間が好きか?」
女性が君の髪を掴んだまま訊く。
君は亀裂に吸い付きつつ、「ふぁい」と答える。
君の中で、美しい女性の「臭い」はすべて「匂い」に置換される。
「じゃあ、まんこだけじゃなく、うんこの穴も舐めろよ。おまえなんかそっちの穴で充分だろ」
女性が命じ、君は「はい、失礼いたしますっ」と答えた。
そして、かなり不自然で不自由な体勢になるが、そのまま体を女性の股間の下で後方へ滑り込ませると、臀部に縋り付くように抱きついたまま首を捻って顔の向きだけを変え、亀裂の向こうにある、肉の双丘の谷間に鎮座する固い蕾に吸い付いた。
肉の谷間は汗ばみ、芳ばしい香りが籠っていて、君の理性をショートさせていく。
相当に窮屈な体勢だが、そんなことは全く気にならない。
蕾の内部の柔らかい壁はざらざらしていて、仄かな苦みが舌先を痺れさせながら伝わる。
やがてその蕾の固さがだんだん解れてきて、君の舌をやすやすと咥え込むほど弛んでいった。
「うんこの穴、美味いか?」
嘲るように笑いながら女性が言う。
君は「ふぁい、とても美味しいです」と答えながら、尖らせた舌を更に蕾の中へと捩じ込み、その舌の根元まで何度も押し込んでいく。
「まあ、おまえみたいなド変態はうんこの穴でも勿体ないくらいだよな」
女性は尻の下にいる君を覗き込みながら、君の顔面に座るように体重を掛けて言う。
「ふぁい、本当にありがたいです。ありがとうございます」
君は柔らかい臀部に縋り付いて女性の体の重みを支えながら、ひたすら蕾を吸い、礼を述べる。
女性は、おらおら、と笑いながら尻をバウンドさせて遊ぶ。
その度に君の顔面は無様に圧せられる。

既に君の顔面は女性が分泌する生々しい様々な体液に塗れてべとべとになっている。
それには自分の唾液も混じっているはずだが、君は陶然となりながら、尚も股間に執着し続ける。
唇と舌が痺れてきたが、君は止まらない。
女性の股間は溶け出している。
君は当初の前方から吸い付く体勢に戻り、がっちりと尻の柔らかい肉を両手で抱え込みながら、ふんがふんがと息を荒げて股間に夢中になっている。
もう他のことは何も考えられない。
君の脳裡は女性の股間だけに占有されている。
君は前方の亀裂と後方の蕾を交互に狂ったようにしゃぶり尽くしていく。
意識は先鋭化しつつ完全に狭窄している。

やがて君は夢見心地のままペニスを握り、扱き始める。
左手で女性の尻にしがみつき、右手で勃起したペニスを激しく擦り、唇と舌で女性の亀裂に吸い付き続ける。
そして、呆気なく、君は勢いよく射精する。
虚しく放たれた精液は、空中を飛び、地面に落下するーー。

女性とすれ違う。
香水と化粧の香りが君の鼻孔を擽った。
君は音を立てずに彼女の周辺の空気をそっと吸い込んだ。
もちろん、その女性は、君が抱いた破廉恥な妄想など知る由もない。
しかし、微妙なオーラでも漂わせてしまっていたのか、すれ違った一瞬、その女性は自分より背の低い君を、まるでゴキブリでも見るような強気な眼で、見下ろした。
それは、本当にほんの一瞬、一秒にも満たない短い時間の視線だったが、君を萎縮させるには充分だった。
君は内心、その恐ろしいほど無慈悲な雰囲気の冷たい視線に、マゾとしての歓喜に打ち震えながら、咄嗟に地面へと視線をそらし、身を固くした。

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