浅き春

暦の上や世間のムードはもう春だが、まだまだ寒い日が続いている。
いったん初夏並みに温かくなったが、また寒さが戻った。
それでも確かに真冬の頃よりはいつのまにか日没の時間が遅くなり、ちょっと前までは五時には暗かったのに、今はもう六時でも空には光りが残っている。
それでも、日が傾きだすと、日中の温かさが恰も気のせいだったかと思えるくらい、気温は下がる。

君はビルから夕暮れの舗道に出てくると、コートの襟を立て、風の冷たさに肩を竦ませてから、地下鉄の駅へと歩きだした。
これから君は地下鉄と私鉄を乗り継いで、約一時間かけて自宅へと帰る。
延々と繰り返される、平凡な日常だ。

混み合う地下鉄の車内。
車両の中程まで押し込まれた君は偶然、派手な女子高生の背後に立った。
体格の良い子で、君と殆ど背丈は変わらなかった。
列車が揺れると、車内の群集が蠢き、君もよろける。
その際、前に立つ女子高生の長い茶色の髪が顔に触れた。
その髪の匂いに、君は勃起してしまった。
君はどさくさに紛れて項辺りの匂いをそっと嗅いだ。
そして満員のため、押し合いへし合いしているうちに、勃起を女子高生の尻に押し付けてしまった。
豊満な尻の量感、夢のように柔らかいその感触に、君の勃起は更に硬度を増した。
たまらず君はコートの中に手を入れると、ズボンの中からペニスを引っ張りだした。
もちろん露出は無理だが、コート一枚の下で勃起を晒したいと思ってしまったのだ。
そして実際にそうすると、昏い快感が君の全身を貫いた。
君はそのまま何気なく立ち続け、ペニスを女子高生の尻に押し付けた。
腰を押し出し、大胆に勃起を柔らかい肉の谷間に押し込む。
コートの裏側の布が敏感な亀頭を擦り、君は先ほどまでよりいっそう昂った。
この車内の誰が、コートの下でペニスを出している男がいると想像しているだろう。
みんな感情を押し殺した表情で苦痛の時間をやり過ごすために耐えている。
君もそういう雰囲気を装いつつ、尻の感触に酔いしれている。
夢のように柔らかい肉の感触に埋めた勃起を、列車の揺れ乗じて微妙に動かし、更なる快感を君は貪る。
今や君の全神経はペニスに集中している。
しかし女子高生からは何のアクションもない。
非難めいた視線を向けてくるわけでも、体をずらして逃れようとするわけでもない。
べつに痴漢をしているつもりはなかったが、結果として痴漢といわれても言い訳はできない状況が続いた。
ほんとうはそのまま腰を動かせてペニスを激しく擦り付けたかったが、それをすると完全に痴漢になってしまうので、微かに残されている理性の欠片を駆使して制御した。
胸を背後から鷲掴みにして揉んだり、掌を尻や太腿に這わせれば間違いなく痴漢だが、今のこの状況は自分の意思とは関係なくぎゅうぎゅう詰めの満員電車の中でたまたま勃起してしまったペニスが前に立っている人のお尻に当たっているだけだから不可抗力であり、よって痴漢でも何でもない、と君は心の中で自分に言い訳をしていた。

やがて君が降りるべき駅に列車は到着した。
人の群れが動いて、君は押され、女子高生の背後から引き離された。
君はかなり名残惜しかったが、仕方ないし、深追いすればどうなるかしれたものではないので、潔く彼女の尻の感触を諦め、ドアへと向かう人の流れに巻き込まれた。
押されるように、引かれるように、君はドアまで来ると、そのままホームに吐き出された。

(それにしても、いい時間だったな)
君は地獄の満員電車の中で過ごした天国のようだった今の時間を思いながら、ホームを歩きだした。
そして私鉄へ乗り換えるためにエスカレーターで上へ上がり、いったん地下鉄の改札を抜け、コンコースを歩いていると、突然、隣に並び立って同じ速度で進んでいた人影に、言われた。
「ちょっと、このままついてきて」
それは女性の声で、驚いて横を見ると、そこには先ほどの女子高生がいて、君と並んで歩いていた。
ブルーのナイロンの鞄を肩に掛けながら、ふつうに歩いている。
どういうことなのか、と君は激しく混乱した。
「逃げたら大声出すぞ」
女の子は前を向いたまま静かに小声で言った。
その声には妙に迫力があり、元来小心者の君はおとなしく従うことにした。
というより、そうするしかなかった。
女の子の手がそっと伸びて、君のコートの端を掴んだ。

女の子は君のコートの端を掴んだままコンコースを抜けて、そのまま駅を出た。
外はもう完全に日は暮れていて、暗い。
君は、どこへ向かっているのだろう、と不安になったが、どうしようもなかった。
逃げようにもコートの端を掴まれているし、少しでも逆らうような行動に出たら、おそらくこの女の子は本当に大声出すだろう、と思ったら、何もできなかったし、言えなかった。
女の子の横顔を覗き見たが、完全に無表情だった。

進んでいくうちに、周囲に人が疎らになってきた。
ビル風が強く、寒い。
やがて路地のような、狭い道に入った。
周囲は雑居ビルが多いが、人気は全くない。
女の子はコートの端を離さず、一言も口をきくことなく、黙々と歩いていて、逆にその静けさが君は不気味だった。

じきにビルの谷間の奥の、先で突き当たりになっている路地に入って、漸く女の子は君のコートの端を離し、いきなり、どん、と君の体を小突いた。
不意をつかれた君は、よろけ、そのままビルの壁に凭れかかった。
女の子が路地の出口を塞ぐようにして立ち、自分の鞄を地面に置くと、腕組みをして君を睨んだ。
その冷たく鋭い視線に、君は硬直した。
それでも歳上の男の威厳の欠片のようなものをかろうじて滲ませながら、虚勢を張りつつ、冷静を装った口調で、言った。
「な、何をするんですか」
自分では精一杯ふつうに喋ったつもりだったが、その声は上ずり、無意識のうちに吃ってしまった。
そんな君を、女の子は腕組みをしたまま、フン、と鼻で嗤い、つかつかと近寄ると、おもむろに君の胸倉を掴んで、捻り上げた。

「はあ? 何をするんですか? だと?」
女の子は眉間に皺を寄せ、苛つくように唇の端を歪ませて、君を睨んだ。
「何かしていたのはてめえのほうだろ? 変なもん押し付けやがって」
「え、い、いや、そ、その……」
君は胸倉を掴まれたまま、しどろもどろになりながら、女の子の非情な視線から目を逸らした。
しかしそんな彼女の強い視線に、マゾの君は激しく勃起していた。
「恍けるのか? てめえ、あ?」
女の子は右手で胸倉を掴んだまま、左手でいきなり君の頬をビンタした。
「す、す、すいません……」
君はひとまずそう謝ったが、それでもまだ往生際悪く、付け足した。
「で、でも、ぼくには何のことか……」

そう恍けたが、そんな君の態度は女の子の激高を増長させただけだった。
女の子は右手をコートの胸元から離し、代わりに、君の髪を左手で掴んだ。
そして続けざまに右手で何発も往復ビンタを浴びせた後、言った。
「これを押し付けてやがっただろうが」
女の子はそう言い終わるや否や、コートの上から勢いよく、一片の遠慮もなく、君の股間を蹴った。
避ける暇も身構える余裕もなかった。
女の子の足の甲が、無防備な君の性器を直撃した。
その瞬間、目の前で星が瞬き、君の視界は真っ白になった。
君は股間を蹴られた衝撃で悶絶し、その場で蹲った。
そんな君の肩を、女の子は突き飛ばすように更に蹴った。
君は後方へ転がった。
その拍子にコートの前がはだけて、ペニスが露出した。
まだ君はズボンの中でペニスを出したままだったのだ。
しかも完全に勃起している。

「てめえ、コートの中でそんなもん出しやがって、筋金入りの変態か」
女の子はそう言いながら、地面で体を丸めている君の脇腹の辺りを蹴った。
「しかも、どつかれてるのに勃起してやがる、マゾかよ」
更に何発も女の子は蹴りを入れた。
「すみません、すみません」
そう君が詫びていると、女の子はしゃがんで君の髪を掴み、ビンタをして言った。
「土下座しろ、土下座」
「はい……」
もうどんな言い訳もできそうになかった。
女の子が君の髪を離すと、君は観念して体を起こし、正座をして項垂れた。
無意識のうちにコートの前を合わせて股間を隠す。

「コートの前ははだけたまま、そのしょぼいチンポは出しておけよ」
「はい……」
君はコートの前を大胆に広げた。
ペニスの勃起はこれだけされても全く萎える気配がなかった。
さすがはマゾの君だ。

「しっかし、おめえ、いい歳こいて何やってんだよ、あ?」
女の子は言うと、いきなり全力で君を蹴り始めた。
壮絶な暴行だった。
君は蹴られ、殴られた。
女の子は無抵抗で地面に体を丸めている君を、情け容赦なく蹴り、髪を摑んで顔を上げさせては平手を何発も張った。
ローファーの爪先が、君の腹部や股間をも抉った。
その度に君は呻いた。
女の子の蹴りは陰嚢や茎を直撃し、君の眼からは涙が溢れだした。
「すいません、すいません、すいません……お許し下さい……」
君は泣きながら懇願した。
土下座し、恥も外聞もなく額を地面に擦り付けた。
それでも女の子は君を蹴り続け、殴り続けた。
そのうちに、君の中で何かの箍が外れた。
次の瞬間、君はボコられながら、絶叫していた。
「このままオナニーさせてください!」
君は女の子の足許に転がりながらペニスを握ると、女の子の許可も待たず、勝手に擦りだした。

「何やってんだ、てめえ、まじキメえんだよ」
そんな君を見た女の子は、君の体を上から思いっきり踏んだ。
そうされながらも君はシコることを止めず、はあはあはあはあと息を荒く吐きながら、やがてそのまま射精した。
精液が噴出する。

「汚えもん出しやがって、この屑」
女の子が、射精を果たしてぐったりとしている君の頬を上から踏んだ。
そのままグリグリと爪先の底で踏みにじる。
「死ねよ、豚!」
女の子はそう言うと、君の頬から足を下ろし、唾を吐き捨てた。
何度も君の頬や髪にぺっぺっと唾を吐いた。
君は脱力していて、されるがままだった。
手にもペニスにも精液が付着したままで、もう気力の欠片も残っていなかった。
じきに女の子は自分の鞄を拾った。
そして、君をその場に置き去りしたまま、路地から出て行った。

射精を果たしたことでさすがに萎え始めているペニスを露出したまま地面に横たわる唾塗れの君は、動けない。
路地を吹き抜けていく風は、凍るように冷たかった。

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カテゴリー:金の鎖、銀の鞭
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