天狗

その天狗の面は眼の部分が黒いテープで塞がれている。
だから、顔につけると、視界は閉ざされ、何も見えない。
完全な闇ではないが、ひどく不安定な気持になる。
明るい部屋の中であれば、面の輪郭や細く開いた口の部分から若干の光が洩れ入るが、しかし周囲の状況を把握することは不可能だから、やはり視界はきかないといっていいだろう。
普段当たり前のように眼が見えている人間が不意に視覚を奪われると、言葉では言い表すことが難しいくらい強烈な不安感を覚える。

全裸の君は今、その天狗の面を着けて床に正座している。
背筋をピンと伸ばし、微動だにしない。
ペニスは完全にそそり立っている。
首に首輪が巻かれていて、細い鎖のリードが繋がっている。
そのリードの持ち手は、ベッドに浅く座った女性の手の中にある。

女性は下着姿だった。
黒いレースのブラジャーと小さなパンティがセットになっている。
女性はするりとパンティを脱いだ。
そして腰を突き出すようにして足を開くと、リードを引いて君をその股間の許へと寄せた。

陰毛に被われた女性の性器は既に充分に潤んでいる。
君は真っ暗な視界のまま、すりすりと膝で前へ進んだ。
やがて面の隙間から、女性の股間に籠る生々しい香りが侵入してきた。
その香気に君のペニスは限界まで反り返った。
もう面など外してその股間に突進して顔を埋め性器に吸い付き、舐め、しゃぶり尽くしたいと思ったが、そんなことが許されるはずはないから、君は衝動をぐっと堪えた。
女性はリードを左の手首に巻き付けて短くすると、君の頭を両手で抱えた。
そして自らの股間へと導き、ブラジャーも外した。
しかし当然のことながら君には何も見えない。

「付けなさい」
女性の声がして、君の手にコンドームが渡された。
「はい」
君はそれを天狗の鼻に装着する。

香気が強まり、不意に君の顔の両側を柔らかい感触が挟み込んだ。
女性が太腿で君の顔を挟んだのだ。
そのむっちりとした感触に君はうっとりとなる。
しかしすぐに足は離れ、君はゆっくりと前方へと引き込まれた。
天狗の鼻が、女性の濡れた膣に沈められていく。
とはいえむろん、君には何もわからない。
君は床に手をついて、ただ顔を前へと突き出した。
面の鼻は完全に女性の膣の中に埋まったが、君には何の感触もない。

「ゆっくり動きなさい」
女性の命令が聞こえた。
「はい」
君は答え、まるでキツツキのように首を前後に動かした。
それから、首だけではなく、肩を支点にするようにして、上半身を前後に大きく動かした。
その頭は、女性の両手ががっちりと掴んでいて、挿入角度を微妙に調節している。
君の動きは、女性の意志でコントロールされている。

視界のない君の耳には、女性の体とシーツが擦れる音が、微かに聞こえている。
その音の中には、女性の控えめな吐息と、天狗の鼻が濡れた膣の壁を擦るくちゅくちゅという淫らな音が交じっている。
股間から漂い出る香気も、心なしか強まってきたようだった。
その音と香りに、君は気が狂いそうになってきた。
いっそ床ではなく、せめて女性の尻を抱き抱えて動きたいと思ったが、許可もなくそんなことが出来るはずもないから、悶々としながらただ顔を前後に動かし続けた。
君が女性に触れることは、絶対に出来ないのだ。
君はそういう立場にない。

不自由な体勢で不自然な動きを繰り返しているため、君はだんだん体が痛くなってきた。
力を込めて体を支えている二の腕や、前後に動かし続けている首や背中の筋が張ってきた。
それでも止めるわけにはいかない。

やがて女性の体が少し後退した。
浅く座っていた尻をちゃんとベッドに上げ、横に開いていた足を、上に向けて大きく開いた。
リードを引っ張られた君も前進し、ベッドの端に両手をついて体を支えながら、引き続き首を前後に動かした。
女性の膣に埋め込まれた天狗の鼻が、上下に抜き差しされる。
女性は更に後ずさるようにしてベッドに完全に上がると、腰の下に枕を差し込み、更に大胆に足を開いた。
その移動に合わせて君も進み、今度は天狗の鼻を上から女性の膣に突き立てるように、まるで腕立て伏せでもしているかのような動きで、首を大きく振った。
「ああん」
君の頭を両手で掴んだまま、女性はくぐもった喘ぎを洩らした。
もちろん、べつに君を想って悶えているのではない。
単に天狗の鼻の感触に酔いしれているだけだ。
女性はしどけなく足を広げながら腰を動かし、自ら胸を揉みしだき、快感を貪っている。
その姿に恥じらいは微塵も感じられない。
君の存在など全く意識していないから、それは当然だった。
天狗の鼻は間違いなく女性の膣の中で躍動しているが、ベッドの端に手をついて首を動かしているだけの君には、何も伝わらない。

天狗の面の中で汗が激しく噴き出してきた。
流れ落ちる汗が眼に入った。
しかし拭いたくても拭えず、君は眼を血走らせながら、そそり立つペニスを虚しく空間に突き立てつつ、股間から立ち昇る獣じみた卑猥な匂いを狂おしく嗅ぎながら、黙々と首を動かし続ける。

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カテゴリー:金の鎖、銀の鞭
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