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アット・ザ・パーク

そろそろ夜の十一時が近いDVDのレンタル店の中は、それほど混んでおらず、冷房が良く効いていて涼しい。
しかもいま君がいるのはアダルトのコーナーだから、一般の作品が置かれたエリアとは隔離されており、いっそう人が少ない。
ネットに無修正の動画がいくらでも溢れているこの頃だけれど、君は何故かたまにAVが見たくなる。
変態でM男の君の場合、とくにマニアックなレーベルのものはセル専用でレンタル店に回らないから、そういう作品が欲しい場合は買うが、レンタルで済ませられるものはレンタルで済ます。
というのも、AVは、滅多に何度も繰り返して見ることがないからだ。
たいていは一回見たら、それで終わりだ。
だから、買うのは勿体ない。
もっとも、これはAVだけに限らない。
一般的な映画やドラマなども、君はほとんど見返さないから、ダウンロードも含め、まず買わない。
DVD等ディスクだと、パッケージの保管が面倒くさいという問題もある。
そんな性質だから、ネットで拾う動画も、一応は保存するものの、定期的にごっそりと消去してしまう。
要するに、飽きっぽいのだろう。

君はパッケージが並ぶ棚の間をゆっくりと移動していく。
当たり前だが、ごくふつうのAVには全く食指が動かない。
君が借りるのは、フェチとか女王様物とか、やはりその系統になる。
あとは、冴えない男が年下の女の子に童貞を奪われるとか、逆レイプとか、エロでも女性上位的なものに限られる。
ただ、たとえば自分とは全く縁のないギャルに憧れる気持は強いのだが、跪いたりコケにされたりいたぶられたいという願望と同時に、その体にむしゃぶりつきたいという欲求もそうとうある。
その場合は、逆レイプ等でもいいのだが、どちらかというと、少々M男らしさからは乖離するが、ねちねちと粘着質に責めるというパターンにもそそられる。
尤も、責めるといっても女性経験など無に等しい君のことだから、たいしたことができるわけではない。
せいぜい体中を舐めまくるとか、その程度だ。
腋や足や、尻の穴を含む股間等をひたすら舐める、そういうフェチ的な行為に、君は強く惹かれる。

君はまずフェチの作品が並ぶ棚の前でパッケージを吟味し、やがて足の臭いフェチのDVDを抜き取った。
次に痴女系の棚へ移動し、キモオタ男が経験豊富なギャルに筆下ろしされる作品を選んだ。
そして最後に女子トイレの盗撮物を持った。
ついでなので普通の洋画も借りていこうと思い、君はアダルトのエリアの出口へ向かった。
通路は狭く、周囲の棚は高く、右を向いても左を向いても女、女、女、女、女……なんだか眩暈がしてきそうだった。
君は角を曲がった。
その時、出会い頭の事故のように人とぶつかり、手に持っていたパッケージが床に落ちた。
相手が恐縮した感じで「すみません」と言い、君も床を見つめながら「いえ、すみません」とこたえつつ(ん?)と思った。
声が、女性だったのだ。
つと顔を上げて相手を見ると、派手な印象の若い女の子の二人組だった。
ひとりはピンクの地にグレーのラインが入ったニット素材のショートパンツに、体にぴったりと貼りつくような、市街地戦用の戦闘服をモチーフにした白系のカモフラージュ柄のTシャツを着ている。
もうひとりは、ダメージ加工されたデニムのミニスカートに花柄のヘソ出しタンクトップ姿で、どちらの女の子もボトムスの丈は極端に短く、肉感的な太腿を惜しげもなく露にしている。
足許は、前者がニューバランスの白いスニーカー、後者は豹柄のファーで甲の部分を被う踵の高いサンダルだった。
ふとりとも金色に近い茶色に髪を染めていて、ショートパンツの女の子はその長い髪を無造作に後ろで束ねている。
強い香水の匂いがした。
髪を束ねている女の子はアディダスの白いビニール製のスポーツバッグを肩にかけている。
もうひとりは持ち手の部分が金の鎖状になっている白いトートバッグだが、本物のレザーなのか合皮なのかはわからない。

君はアダルトのコーナーでこんな派手な女子とぶつかってしまったことに戸惑いながら、慌てて落ちたパッケージを拾おうとした。
このエリアに女の子がいることは想定外だった。
君は床にしゃがんだ。
すると、目敏くパッケージを見た女の子たちは、がらりと態度を変えると、笑いだした。
「うわっ、すげーマニアックだわ」
「足の臭いだの筆下ろしだの女子トイレだの、何だこれ」
「真面目そうな顔して変態過ぎだろ」
口々に好き勝手なことを言いながらげらげらと笑う。
周囲の人の視線が集まるのを感じながら、君は恥ずかしさで顔が真っ赤になるのを自覚した。
それでも、いつまでもこのままでいるわけにはいかないので、そそくさとパッケージを拾い上げると、それを手近な棚に適当にまとめて置き、そのまま俯いて出口へと向かった。
もうカウンターへ持っていって借りていく気分ではなくなった。
恥ずかしくてたまらず、一刻も早くこの場所から逃げ出したい一心だった。
出口へ向かう君の背後から、女の子たちの声が聞こえた。
「楽しそうなビデオ、借りないの~?」
そして響く笑い声。
君はその笑い声を背中で振り切り、結局何も借りないまま店を出ると、早足でその場から遠ざかった。

根が小心者だから、君は激しく混乱してしまっていた。
M男的には、ギャルに小馬鹿にされるという状況は常々夢想するくらい憧れの展開だったが、実際に衆人環視の許でやられると、想像していた以上に精神的にキツかった。
べつに「男として」とか「大人として」とかそういう大層な気持はなかったが、単純に、妄想していたときのような楽しい気分にはなれず、はっきりいえば惨めすぎて泣けてきそうになった。

ビデオ店がある商店街の明かりから逃れ、周囲に人通りが少なくなってくると、ちょっと落ち着こうと思い、君は自販機でグレープソーダを買い、植込みの縁石に腰を下ろし、それを飲んだ。
八月の夜の熱気のせいで、全身から汗が噴き出している。
君はソーダのボトルを傍らに置き、ハンカチで額や首筋を拭った。

冷たいソーダでだんだん落ち着いてくるにつれて、君は無性にイライラ、そしてムラムラしてきた。
夏の夜の女たちは、短いスカートやホットパンツを穿いて太腿を誇示しながら艶かしい脚のラインを見せつけている。
サンダルの爪先では、綺麗な色のペディキュアを塗った、まるで上質なキャンディのような素足をチラチラ覗かせている。
どうしてどいつもこいつも挑発的なのだ! と君は思う。
地べたに這いつくばって跪き、肉付きの良い脚に抱きつきたくなるではないか!
そしてサンダルの爪先に突っ伏して足の指に吸いつき、むしゃぶりつきたくなるではないか!
もしかして、女たちはそうされることを望んでいるのか?
もしかして、変態M男をそんなムラムラした気分にさせておちょくっているのか?
女に縁のない男を悶々とさせて、そんなに楽しいか?
何もかもが理不尽だ!
街には露出度の高い服に身を包む女の子たちが溢れているのに、君は決して触れられない。
手を伸ばすことはおろか、話すことさえできない。
近くて遠い夏の女たちは、ただ通り過ぎていく。
君との接点は、絶対にない。

そんなことを考えながらグレープソーダを飲んでいると、道路を隔てた反対側の舗道を、ひとりの女の子が歩いているのが眼に入った。
見るともなく見ると、どうやら先ほどビデオ店で遭遇した二人組のうちのひとりのようだった。
少々遠いので確信は持てなかったが、デニムのミニスカートと花柄のタンクトップが同じだった。
白いトートも同じもののようだ。
もうひとりとはあの後どこかで別れたのか、電話の画面を見つめながら、女の子はひとりで歩いている。
たぶんさっきの女の子だろう、そう思った瞬間、君は立ち上がっていた。
とくに何をしようという計画はなかったが、なんとなくふと尾行してみたくなったのだ。
女の子は君の存在など気づくこともなく、電話をバッグにしまい、ぶらぶらと歩いていく。
君は道路を隔てて歩く。
ソーダのボトルを置いてきてしまった事に途中で気づいたが、取りに戻ることはしなかった。
君は適当なところで車が来ないことを確認して道路を渡り、彼女の後方、三十メートルほどの距離を置いて、つけていく。

やがて女の子は公園に入った。
遊歩道が整備された広い公園だ。
街灯も不足なく設置されているので、園内は遊歩道を進む限り、暗くない。
しかし人気はない。
というより、誰もいない。
それでも街灯が適度に立っている砂利敷きの遊歩道は明るく、危険な雰囲気はない。
但し明かりが届いていない周囲の雑木林は暗い。

君は女の子との距離を詰めた。
暑い熱気の中に女の子の香水の匂いが漂ってくる。
君は、今こそチャンスだ、と思った。
先ほどは突然のことで戸惑い逃げ出してしまったが、今ここでなら主導権を握って反撃可能だろう。
後ろから抱きついて暗がりに引き摺り込み、先ほど恥をかかされた仕返しをする。
あんなに恥ずかしい目にあったのだから、暗がりで体を弄るくらいしても罰はあたらないだろう。
生意気な小娘には社会の厳しさを体で教えてやらなくてはならない。
君はそんなM男らしくもないことを思いながら、彼女が街灯の光が届くエリアから外れるタイミングを待った。
真夏の夜の熱気はいともたやすく人のマトモな思考回路を狂わす。
そして、まるでエアポケットのように明かりが数メートルだけ途絶えた地点で、君は小走りになって女の子に追いつき、背後からそっと接近して、そのまま抱きついた。
「大人の男を人前でバカにするんじゃない」
咄嗟に君を振り解こうともがく女の子をがっちりと抱きすくめながら耳許で言い、遊歩道から外れた場所へと連れ込む。
女の子の肩からバックが落ちる。
密着する女の子の髪の匂いや香水の香り、そして汗の匂いが君の理性をちりちりと焼いた。
ズボンの下で、当然の如くむくむくと性器が勃起する。
その勃起を女の子の柔らかい尻に押し付け、君はタンクトップの下から手を差し入れて背後から体を弄りながら囁く。
「スケベな服だよね、このタンクトップ、こんな蒸し暑い夜だから、きっとパンティもムレムレでアソコは湿ってイヤらしい匂いをプンプンさせているんでしょ? いいよいいよ、その汚いパンティは後で貰ってあげる、臭いマンコも綺麗に舐めてあげるよ、そうだ、お尻の穴も入念に舐めてあげる、しかしほんとうに柔らかくて大きいおっぱいだなあ、髪もいい匂いがする、それにしてもさすが若い女の子だ、ムチムチして本当にいい体をしているね、汗ばんだ肌も最高だよ、いったい何人の男がこのお乳を吸ったのかな?」
君は女の子の胸を両手で大胆に揉みしだきながら髪に顔を埋める。
勃起した性器を尻に押し付けたままスカートを捲ってパンティの上から柔らかい尻を執拗になで回し、その肉をむんずと鷲掴みした。
そしてそのまま手を前へと回し、パンティの中へ横から指を差し入れる。
パンティは汗ばんで湿っている。
指先に、陰毛の感触が伝わる。
そしてその茂みの奥にぬるりとした裂け目があって、熱を感じた。
「ああ素晴らしいよ、はあはあ」
君は女の子の体の感触に溺れながら、陶然となって息を荒げた。
中指を割れ目の中に押し込むと、この世のものとは思えない夢のような感触が指に絡みついて締め上げた。

と、その時。

女の子の肘がいきなり君の鳩尾にめり込んだ。
「うぐっ」
君は呻き、女の子の体から手を離すと、たまらずそのまま上体を折った。
そうして一瞬君が怯んだ隙に、たちまち形勢は逆転した。
女の子は素早く振り向き、勢いをつけて君の股間を力いっぱい蹴り上げた。
「うげぇ」
君は悶絶し、蹲った。
「キメえんだよ、てめえ」
女の子は立て続けに、蹲っている君を情け容赦なく全力で蹴り飛ばした。
更に、体を丸めて防御の姿勢になっている君の髪を掴んで前を向かせると、固く握った拳で君の頬を殴りつけた。
「すいませんすいません」
君は殴られ続けながら謝罪の言葉を述べた。
先ほどまでの威勢の良さはもう完全に消滅していた。
君は本来のM男っぷりを全開にして女の子に謝る。
しかもさすがは筋金入りのマゾらしく、拳骨で殴られつつも、先ほどまでよりもいっそう固く性器は勃起していた。
限界まで聳り立っている。
「申し訳ございません、お許し下さい」
君は顔を腫らし、恥も外聞もなく泣きながら謝り続けたが、女の子は聞く耳を持たず往復ビンタを連発させ、君の顔に唾を吐き、その顔面を正面から蹴った。
君は仰向けに転がった。
すかさず女の子は君の性器を上からガンガンと踏みつけ、その後、体の上に跨がり、馬乗りになってドスンドスンと腹の上でバウンドした。
君は尻が腹の上に落ちる度に息が詰まり、吐きそうになる。

君の全身から力が抜けていく。
もう反撃に出る気概もなければ、そのつもりもない。
女の子の力を完全に見くびっていた。
いくら強気な態度を見せていても所詮は女の子だから男のこっちが本気になれば簡単に手篭めにできると思っていたが、それは甘かった。
君は自身の無力さを感じながら、ただされるがままだった。
女の子は馬乗りのまま君の頬にビンタをし続け、やがて近くに落ちていたバッグを引き寄せると、中から電話を取り出した。
そして君の腹や胸の上で跳ね、自由気ままに尻を落とし続けながら、どこかに電話をかけた。
すぐに相手が出たらしく、言う。
「あ、もしもし、あたし……うん……あのさ、キモい変態を一匹捕まえたから、来て」
そう言い、公園の名前を告げた後、笑いながら付け加える。
「ちなみに捕まえた変態って、さっきのビデオ屋の奴だから」

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