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避暑地にて

標高千二百メートルの高原に広がる白樺や赤松の林の中に、その洋館はある。
大正期に外国人の貿易商が避暑のために建てた二階建てのその家は、さほど大きく豪奢なわけではないが、自然にしっくりと溶け込んでいて、落ち着いた佇まいを見せている。
現在、この建物を所有しているのは、君の飼い主の女性だ。
彼女は数年前にこの家を別荘として手に入れた。
そして外装はほぼそのままに、内部を大胆にリフォームした。
ただ単に新しくするだけでなく、調教のための部屋や、君の居住スペースとして座敷牢のようなものも造った。

家の周囲は深い林で、別荘地として造成された地区ではないため、あたりに人家はない。
観光地ではないし、家は県道から分岐した私道の突き当たりにあるため、外部から誰かが迷い込むようなこともない。
私道の途中には、門もある。
だから気兼ねなく調教のための施設として利用できるのだった。

八月のある日の午後。
君は飼い主の女性と、その友人二人とともに、別荘を訪れた。
友人は二人とも女性で、飼い主同様、美しい。
君はミニバンを建物の傍に止めると、ドアを開け、三人を降ろした。
高速道路を運転している時までは服を着ていたが、高原の県道に入ると、君は全裸になるように命じられた。
だから別荘に到着した君は既にいつも同様に裸だった。
別荘に来ても、基本的に君の日常はとくに変わらない。
衣服を身につけることはないし、仕事は飼い主の女性の世話だ。
もちろん炊事、洗濯、掃除も、君の仕事だ。
今回の場合は、友人が二人同行しているため、そちらの身の回りの世話もしなければならない。
要は、M奴隷としての調教を除けば、主婦みたいなものだ。
ただし、ふつうの主婦なら旦那や子供を会社や学校に送り出して家事を済ませば、昼食後にソファに寝そべって煎餅やポテトチップスを齧って尻でも掻きながらテレビのワイドショーを見る程度の余裕があるだろうが、君にそういう自由はない。
君の毎日は、ある意味、緊張している。
いつ、どこで、何を命じられても、即座に対応しなければならないからだ。
気を抜く暇はない。
それは別荘でも同様だ。

別荘に着いて最初に、君は三人の女性たちにコーヒーを作って出し、それから夕食の支度に取り掛かった。
食材は、途中のスーパーマーケットで仕入れてきていた。
今夜のメニューは、庭でバーベキューだ。
君はコンロを用意し、キッチンで野菜を切ったり、ご飯を炊いたり、材料の下準備に取り掛かった。
そうしていると、飼い主の女性の友人のひとりがキッチンに入ってきて、君を呼んだ。
「ちょっと」
「はい?」
君は包丁を置いて振り返った。
すると女性は手に長い鞭を持っていて、言った。
「少し手を休めて、外へいらっしゃい」
「はい」
何だろう? と思いながら、君はその命令に従った。
君の飼い主の女性の友人の命令なら、それは飼い主の命令と同等だからだ。
決して逆らったり疑問を抱いたりすることは許されない。

先に女性が出て行き、君は手を洗うとすぐに庭へ向かった。
そして出て行くと、そこには飼い主の女性も含めて三人がいた。
飼い主の女性の手には束ねられた長いロープがあり、友人二人は鞭を持っていた。
君は芝生の上で膝をつき、「お待たせいたしました」とひれ伏す。
そんな君を見下ろしながら、飼い主の女性が言う。
「なんか、おまえの体が綺麗すぎて奴隷らしくないってみんな言うの、だから、これから軽くおまえを木に吊るして鞭を打って模様をつけてあげるわ」
君は顔を上げ、そして再び頭を下げた。
「ありがとうございます」
「だから、ちょっとそこの木まで行って」
飼い主の女性は庭の隅に立っている桜の木を示した。
時期ではないので、とうぜん花は咲いていない。
正確な樹齢はわからないが、立派な巨木だ。
しかも、人を吊るすには丁度良い高さに、太い枝が横へと伸びている。
飼い主の女性は慣れた手つきでロープをその枝にかけて括り付けると、そのまま君の体を縛った。
そして君を引っ張り上げた。
とはいえ、体が浮き上がるところまではいかない。
君は万歳をしながら、爪先立ちになり、不安定なまま静止した。
そして、二人の女性が近くに来て、いきなり鞭を振った。
長い鞭が夕暮れの空気をひゅんひゅんと切り裂いて、君の体に炸裂した。
たちまち皮膚に赤い痕が刻まれていく。
君は容赦ない鞭の痛みにたまらず叫び声をあげ、右へ左へと体を捩った。
その度に手首や足首に巻かれたロープが擦れて、鞭とは別の種類の痛みに襲われた。
瞬く間に君の体は傷だらけになっていく。
鞭は顔面以外のほとんど部分に打ち据えられた。
長い鞭の先が君の体に巻きつくように何度も何度も振り下ろされた。
君は吊るされながら、泣いた。
じきに女性たちは鞭を打ち終えると、満身創痍でぐったりとしている君を囲むように立ち、けらけらと笑いながら顔や体に大量の唾を吐きかけた──。

別荘での君の朝は早い。
四時前に牢で目覚めると、部屋の隅に設えられた洗面台で顔を洗って歯を磨き、その脇にあるトイレで用を足し、玄関へと向かった。
まだ夜は明けておらず、家の中は静まり返っている。
君は物音をたてずに玄関を出ると、全裸のまま靴だけを履いて、裏庭の奥の雑木林へと向かった。
裏庭には物置があり、そこから君はシャベルを持ち出した。
真夏でも、高原の朝の空気は冷たい。
その冷たさは涼しいというより肌寒さを覚えるほどで、君は歩きながら無意識のうちに二の腕をさする。
少しずつ空気が青みがかってきた。
樹木の間をひんやりとした朝靄が流れている。
どこかで鳥が鳴いている。

やがて林の奥の少しだけ開けた場所に到達すると、君は地面をシャベルで掘り始めた。
黙々と地面を掘るうちに、すっかり周囲が明るくなってきた。
君は少しだけ急ぎながら、ひたすら地面を掘る。
依然として空気は冷たいが、さすがに汗が滲んできた。

じきに、君は地面を掘り終えた。
深さと幅がそれぞれ約五十センチ、そして長さが百六十センチほどの、細長く、それほど深くはない穴だ。
君はシャベルを傍に置くと、靴を脱ぎ、その穴に入った。
仰向けに寝て、体にぴたりと腕を付け、少しだけ膝を立てると、君の体はすっぽりとその穴の中に収まった。

空が青い。
視界に雲はなく、その青は抜けるように透き通っている。
高原の朝は静かで、空気は爽やかに澄んでいる。
こうして穴の中にいると、つい眠ってしまいそうだった。
昨夜はバーベーキューの後、深夜まで女性たちの世話をしていたので、睡眠時間は三時間もなかった。
バーベーキューの間、そしてその後の、リビングに場所を移して女性たちが更にお酒を飲みながら談笑している間、君は食べ物や飲み物をサーブしたり、テーブルや足置きとなって仕えた。
ちなみに夕食は、すべてが終わって牢に戻ってから、飼い主の女性によって与えられた。
牢に戻っていると、飼い主の女性がひとりで現れて、夕食を置いていった。
メニューは、バーベキューの残飯だった。
肉やら野菜やらの残骸が無造作に君専用の餌皿に放り込まれていた。
飼い主の女性はステンレス製のそのボウルを、跪いて待っていた君の前に置くと、そこでその中に聖水を注ぎ込み、君に与えた。
君が額を床に擦り付けて礼を述べると、女性は「お食べ」と一言だけ言って、去って行った。
君はがらんとした殺風景な牢の中でひとり、その餌を食べた。
スプーンや箸を使うことなど許されていないので、フレッシュな聖水によって温められた残飯を、君は黙々と犬食いした。
そして最後にはボウルを手に持ってその縁に口をつけ、聖水も飲み干し、完食した。
それから食器を洗い、漸く寝たわけだが、就寝は午前一時を過ぎていた。
それでも今、眠るわけにはいかないから、穏やかな夏の朝の静寂の中で、君は必死に目を開けていた。

しばらくして、人の気配が近づいてきた。
時計を持っていないので時刻はわからない。
君は息を止めて、フリーズした。
腐葉土の獣道を靴が踏みしめる足音がどんどん近づいてきて、君の緊張は俄かに高まった。
数秒後、人影が君の視界を覆った。
飼い主の女性だった。
「おはようございます」
君は穴の中から言った。
女性はそんな君を見下ろすように一瞥したが何も言わず、そのまま君を跨いだ。
そしてパジャマ代わりに着ていたスウェットパンツと下着を一緒に下ろすと、腰を落とした。
君の目前に飼い主の女性の聖なる亀裂が接近した。
君はごくりと唾を飲み込む。
女性は、まず排尿した。
暖かい黄金色の液体が勢い良く君の顔面に降り注いだ。
君はそれを受け、飲んだ。
続いて、女性は排便した。
ねっとりとした黄金を産み落とす。
壮絶で高貴な芳香が漂い、君の顔の上に落下する。
女性はすべてを終えると、ティッシュで股間を拭き、それを穴の中に捨てて、立ち去った。

続いて、ふたりの友人の女性もそれほど間を置かずに現れ、君の上で朝のトイレを済ませた。
君はそのひとりひとりに「おはようございます」と挨拶を述べたが、返事はなかった。
いちいちトイレに挨拶をする人なんていないから、それは当然のことだった。
女性たちは淡々と出すものを出して、去って行った。
黄金の形状は様々だった。
しかし昨夜の夕食がバーベキューということもあってか、なかなかどれもヘヴィだった。
そして朝一の聖水もストロングだった。
君はただありがたく享受し続けた。
最後の女性は、咥え煙草で用を足すと、君の胸の上に盛られた黄金の塊の中に短くなった煙草突き刺して火を消した。

三人が去ると、高原の林の中に再び静寂が降りた。
ようやく太陽が昇ったのか、樹々の間から明るい光がさっと差し込んだ。
風景が煌めく。
君は三人分の排泄物に溺れ埋まりながら、大きく深呼吸した。
少しずつ空気が熱を帯びてくる。

避暑地の、清々しい朝だ。

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