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静かな、ただの、一日

年が明け、正月が穏やかに過ぎていった。
君は飼い主の女性の家でこれまで通り、いつもと何も変わらない新年だった。
正月だからといって特別なことは何もない。
調教は、行われることもあれば、行われないこともあり、今年は大晦日の昼間を最後に、年が明けても本格的な調教はなかった。
人間であることを半ば捨てながらペットの犬のように飼われて暮らす君は、たとえば正月だからといってお節料理を食べることもない。
年越し蕎麦も雑煮も無縁だ。
食事は、常に女性の残飯だ。
それは「ご飯」というより「餌」だ。
だから、ちなみに元日の君の夕食は女性が食べたお節料理の残りだったが、君にとってそれは単なる「餌」でしかなかった。
そもそもそのお節料理の残骸は、君専用の餌皿であるステンレス製のボウルの中で女性の尿に浸されていた。

三が日が終わり、世間が通常通りに動き出す前日である五日、飼い主の女性の彼氏が家に来ることになった。
ただし君の存在は秘密なので、普段彼氏が来るときは、君はあらかじめ前もって地下室に監禁される。
厳重に施錠もされて、絶対にその部屋から出ることはできなくなる。
尤も部屋は監獄の独房と同じような作りなので、空調は完備され、トイレや洗面台もあるから、閉じ込められてもとくに問題はない。
彼氏が二、三日滞在していく場合は、そのぶんの水や食料が用意されるから、君はその部屋で静かに過ごす。
大きな物音を立てても上には聞こえやしないが、なんとなくひっそりと時間が過ぎるのを待つことが習慣のようになっている。

しかし今回は少しいつもとは違った。
彼氏は昼過ぎに来て夕食前に帰っていくということで、通常ならそういう短時間でも地下室に入ることが常なのだが、特別に今回は監禁を免除された。
その代わり、君にとってはもっと辛い状況が設定された。
彼女の寝室のウォークインクローゼットに入り、特別に設えた覗き穴から男女の営みをしかと鑑賞するように命じられたのだ。
むろんクローゼットには鍵がかけられて、いったん中に入れば外から開けられることはないし、彼氏もそのことを知らないのだが、地下室と違って完全な防音処置が施されているわけではないので、かなり緊張の時間を強いられる。
咳払いなどでも不審に思われる可能性があるから、一切物音を立てずに数時間を過ごさなければなさそうだった。
もちろん常に君の上位に君臨する飼い主の女性の性の営みを見ることが、何より君にとっては苦行となる。
そんな経験は初めてだが、かなり複雑な気持ちになることは容易に想像がついた。
しかし、女性の命令は絶対だから、拒否はできない。
しかも女性はただ覗き見するだけでなく、更なる命令を加えた。

もうすぐ彼氏が着くという時間になって、君はクローゼットに入った。
その際、飼い主の女性は履いていた下着を脱ぐと、まだ温もりを残すそれを君に手渡し、命令を追加した。
「わたしが彼氏とやっているところを覗きながら、このパンツの匂いを嗅いでシコシコしなさい」
「はい」
君は受諾したが、すぐに不安になって、尋ねた。
「でも扉一枚で隔てられているだけの近くでそんなことをしていたら、バレてしまうかもしれませんが……」
「そこはバレないようにやるだけでしょう? 何言ってるの?」
「は、はい……」
君は温かいパンティを握りしめて頷いた。
「じゃあ、入って。帰ったら出してあげるからね」
女性はそう言うと、君をクローゼットの中へ追い立てた。
君が中に入ると、扉が閉められ、鍵がかけられた。
クローゼット内は三畳程の広さがあり、窮屈ではないのだが、明かりをつけることができないために真っ暗だった。
ただ一箇所、扉に開けられた小さな穴から細く光が漏れて差し込んでいた。
試しに君は扉に寄って、その穴から外を見てみた。
すると大きなベッドの全景が視界に入った。
女性はもう寝室から出ていってしまったようだった。

そのまま沈黙の時間が過ぎ、時計がないのでどれくらいの時間が経過したのかは不明だったが、いきなり寝室のドアが開き、飼い主の女性が彼氏と一緒に入ってきた。
ふたりとも既に一糸纏わぬ全裸で、ベッドまで来ると、そのまま絡み合うように体をその上に投げ出し、いきなり交わり始めた。
長いキスの後、男が女性の全身を愛撫し、舌を滑らせていく。
早くも女性は官能の吐息と喘ぎを漏らしながら背中を仰け反らせている。
それは君が見たことのない女性の姿態だった。
オナニーをしているところなら見せつけられたことがあったが、性交を目撃したのは初めだった。
ふたりは獣と化して本能をむき出しにしながら互いの体を貪っている。
飼い主の女性は紛れもなくひとりの「女」になっていた。
女性は彼氏のペニスを口いっぱいに頬張りながら、眼を蕩けさせ、執拗にしゃぶっている。
唇の端から真珠のような涎すら流している。
男はそのまま体を回転させ、シックスナインの体勢になると、女性の尻を下から抱え、若干首を持ち上げて性器を舐め始めた。
女性は時折ピクンピクンと体を跳ねさせながら、大胆にペニスを咥え、吸引し、まるでアイスキャンディでも舐めるように舌を滑らせている。
男が女性のまんこに吸い付き、丹念にしゃぶる。
ぴちゃぴちゃという卑猥な音が静かな室内に響く。
君は息を詰めてその情事を覗いていた。
最初は崇拝する女性のあられもない姿を直視したくない気持ちがあったが、いつしか惹きつけられるように目を血走らせながら必死に凝視していた。
窮屈な視界の中、ふたりはいろいろな体勢で互いの体を堪能している。
と、不意にペニスをしゃぶる女性が覗き穴を見た。
むろん向こうから君の眼を捕捉することは無理だろうが、君は彼女と眼が合ってしまった。
女性はそのまま覗き穴を挑発的な眼で見据えながら、とてもいやらしい感じでペニスに舌を這わせた。
君は悶絶した。
再び女性は覗き穴から視線を逸らし彼氏に集中する。
君はその様子を覗きながら女性のパンティを鼻に押し当てて生々しい匂いを嗅ぎ、いつのまにか猛々しく勃起していたペニスを握り、扱き始めている。
既に汗だくで、息が荒くなる。
しかし、絶対に声は出せない。
君は下唇を強く噛み締めながら自慰を続行する。

やがてふたりはバックで結合した。
男が飼い主の女性の豊満な尻を叩きながら腰を突き出している。
その律動に合わせて女性は雌の嬌声を上げ、アンアンと喘ぎながら髪をかきあげつつ、自ら腰を振っている。
男が背後から女性の唇を求める。
女性も、もどかしげに振り向いて、それに応えて舌を吸う。
男の手が女性のバストを執拗に弄っている。
よく見ると指先で乳首を挟み、摘みながら細かな律動を与えている。

いつも凛然と君に君臨する女性が今、四つん這いになってペニスをまんこに受け入れながら体を弾ませ、犬のように交尾している。
あられもない声を漏らし、喘いでいる。
君はそんな飼い主の女性の行為を覗き見しながら、呆気なく射精した。
濃厚な精液が勢い良く扉に飛んで、べっとりと付着した。
ふたりの淫乱な情交はまだ続いている。

君は覗き穴から目を離し、扉から後ずさると、クローゼットの奥でしゃがみこんだ。
汚れたパンティを握りしめながら、なんだか男としてどん底まで落ちた気分に襲われていた。
尤も「男」などという人間的な感覚はとうの昔に捨てたものだったから、今更そんなものをどうこう考えたところで仕方なかったが、君は狭い密室的な空間の中で、落ちるところまで落ちた自分を痛感した。

確かにこれは異常な状況で、マトモとはいえなかった。
しかし、どのみちは君はもう既にマトモな生活からは遠ざかって久しいのだ。
だからこの正月休み最後の日は君にとって、静かな、ただの一日に過ぎなかった。

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