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黎明の豚

「寝てんじゃねえよ」

痺れるように寒い二月の夜明け前。
全裸のまま固いフローリングの床で体を丸めて眠っていた君は、いきなり背中を蹴られて眼を覚ました。
「も、申し訳ございません!」
何が起きたのか訳が分からず朦朧としながらも、しかし条件反射的に跳ね起きた君は、即座に正座し、背中を蹴った人に向かって額を床につけた。
君を蹴ったのは、君の飼い主、支配者だった。
寝るつもりはなかったのだが、つい眠ってしまったようだった。
失態だった。
不覚だった。
しかしもう遅い。
どんな言い訳も通用しない。
ただ謝罪するしかなかった。
君の飼い主は、派手で大柄な、美しい女性だ。
アルコールの匂いが、強い香水と混じって君の鼻腔をくすぐった。
ずいぶん酔っているようだった。
女性はノースリーブのシャツにミニスカートという露出度の高い、挑発的な服装で、君は眼の遣り場に困りながら床に視線を落としていた。
それでも、肉感的な脚が目の前に聳えているし、ちらりと仰ぎ見れば、大きく開いた胸の谷間が悩ましく、ついついチラリと覗き見てしまう。
そしてもちろん、何も身につけていないために剥き出しの性器は、むくむくと勃起を始める。
豊かなボリュームを誇示する女性の素晴らしい体は、手を伸ばせば簡単に届く位置に存在するが、君にとっては世界の果てや銀河の彼方よりも遠く、決して触れることはできない。
彼女は永遠よりも遠い位置にいて、たとえば君がどれだけ女性のたわわに実るバストに触れたいと願っても、その思いが叶うことは絶対に有り得ない。
そんなことが許されるはずがない。
更に、乳首を吸うとか、そんなことは夢見ることすらおこがましい。

「水!」

女性に命じられ、君は「はい!」とこたえると、急いで台所へと向かった。
そして冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを出して大きなグラスに注ぎ、すぐに急いで彼女の許に戻った。
女性はソファに身を沈め、長い脚を組んでいた。
「どうぞ」
君は女性の足許に跪いてグラスを差し出した。
女性は何も言わずそれを受け取り、「ったく愚図で遅い、イライラする」と君を蹴った。
「申し訳ございません」
君は土下座をして額を床に擦りつけた。
なぜかわからないが、今夜の飼い主はひどく機嫌が悪そうだった。
こういうときは、ただ嵐が去るのをじっと待つように、何をされても、何を言われても、いつも以上にひたすら静かに耐え忍ぶしかなかった。
女性の怒りの火に油を注ぐような真似だけは、絶対に避けなければならない。
そもそも女性の帰宅前だというのに先に勝手に寝ていたのは完全な失態で、過ちだった。
だから、どんな罰を受けることになっても、それは仕方のないことだった。
君はそう思いながら床に額をつけていた。
やがて女性は水を飲み干し、グラスをテーブルに置くと、そんな君の髪を女性は無造作に掴み、上方へと引っ張り上げた。
君はそのまま顔を上げ、腰を浮かした。
そして女性は、君のいつのまにか萎えていたペニスを見て、ビンタを張った。
「なんでチンポ、萎えてんだよ」
「すいません」
俯く君に、再度のビンタが飛ぶ。
「顔上げろ、失礼だろ」
「はい……申し訳ございません」
恐怖が瞳に滲む君のオドオドした眼を射るように女性は冷ややかな表情で見つめ、またビンタを張った。
強烈なビンタで、パシンっという乾いた音が響き渡った。
「ただでさえショボいチンポなんだから、せめてちゃんと勃たせとけよ」
「はい、すいません、失礼致します」
君はそう言うと、膝で立ったまま右手で萎えたペニスを握り、しごいた。
しかし無理矢理勃起させようとしても、このような状況では流石の君でもなかなか屹立しない。
君は焦りながらしごき続ける。
緊張と焦燥感と恐怖で、顳顬に汗が滲んできた。
それでもピストンを続けていると、やがてどうにかペニスが固くなってきた。
そんな必死にペニスをしごいている君を見て、女性はその姿をあからさまに嘲笑いながら「ちょっとここで待ってろ」と言い残して、君の前から去った。

どうやらトイレへ行ったようだった。
君は少しだけ緊張を弛めながら頭を上げ、しかし命じられた通り、そのまま待機していた。
すると数分後、水が流される音がして、不意に大声で呼ばれた。

「ちょっと、来い」
「はい!」

君は立ち上がり、走って廊下の先にあるトイレへと向かった。
そろそろ夜明けが近いのか、廊下の窓を見ると、外は青みがかっていた。
「どうされました?」
トイレの前に着き、跪いてから、君はそこに立っていた女性を見上げて尋ねた。
すると女性は、開いたままのドアを顎でしゃくり、「入れ」と君に命じた。
「失礼します」
君は膝ですりすりと進んでトイレの中に入った。
狭い内部には、強い芳香が充満していた。
君が便器の前から少し離れて膝立ちしていると、背中を蹴られて前へとつんのめり、肩を上から抑えられた。
「座れ」
「はい」
君は尻を落として正座した。

すぐ目の前の洋式トイレは、蓋も便座も上がっていて、中を覗くと、内側には黄金の残滓がべっとりと付着していた。
その白い曲面にこびりついたままの塊を、女性は君の肩越しに背後から指で示し、言った。
「流れきれなくて残っちゃったんだけど、どうしたらいいと思う?」
そんなことを訊かれても、君には、どうこたえることが正解なのかわからなかった。
水だけで流れないのなら、トイレットペーパーか何かで擦り取って流すしかないではないか、と思った。
なので君は素直に、「すぐにお拭きします」と言って、壁に取り付けられているトイレットペーパーのロールに手を伸ばしかけた。
すると、頭を思いっきり後方から叩かれた。
「アホか、おまえ。何を生意気に紙なんか使おうとしてんだよ」
女性はそう言うと、君の髪を掴んで頭を便器の中へと抑え込み、命じた。
「舐めて綺麗にするんだよ、常識だろ」
そう言うと、女性は君の返事を待たずに髪から手を離し、後頭部をスリッパの足の裏で踏んだ。
「さっさとしろ、豚!」
君は便器の縁を両手で掴んで体勢を保ちながらこたえた。
「はい!」
「おまえにとってはごちそうだろ?」
「はい!」
「嬉しいよな?」
「もちろんです」
「そういえば時期的にそろそろバレンタインだし、わたしからのチョコだと思って遠慮せずに食べな」
「はい、いただきます!」

君は便器を抱え込むように両手でその縁を掴んだまま、内部に突っ伏した。
間近に黄金の欠片が煌めきを放ちながら迫り、君は息を止めて眼を閉じた。
そして意を決すると、その茶色く柔らかい物質に舌を伸ばした。

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カテゴリー:金の鎖、銀の鞭
  1. リンチマニア
    2016/03/12 17:12

    今月も最高に興奮いたしました。女性と男性の立場の違い、性癖を見透かされている描写。gmailのほうにも感想などメール致しました。おヒマがございましたらご一読下さいませ。

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