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煌めきステイブル

今日はクリスマスだが、女性に飼われている君にはもちろん関係ない。
一応、姿形は人間だが、扱いは家畜に等しい君に、昨夜、サンタクロースが訪れることもなかった。
そもそも、もうプレゼントをもらって喜ぶ子供の年齢ではないし、キリスト教徒でもないし、クリスマス・イヴだろうが、クリスマス当日だろうが、君にとっては単なる冬の一日に過ぎない。

君は、厩舎の自分の房の隅で膝を抱えて座りながら、雨が降り続いている窓を見ている。
そして、考える。
マゾはなぜ、犬や豚呼ばわりされるのか、と。
ペットや家畜なら猫や牛でもよさそうなものなのに、まるでそういう決まり事があるかのように、変態マゾ奴隷を動物として捉える場合は、犬か豚だ。
勿論、マゾ自身に、犬や豚として扱われることに歓びを覚える者が多いのは事実だろう。
猫や牛として扱われたい、と願う者は、あまりいないかもしれない。
そういえば「馬」はある。
SM的に、ポニープレイは、トラディショナルな行為だ。
しかしその場合の「馬」は、犬や豚のように「貶め」る存在というより、道具に近い感覚のようだ。
馬にも調教は施されるが、犬や豚に対するそれとは趣がずいぶん違う。
馬に使う鞭と豚に使う鞭では、その用途が違う。
馬に対しては、あまり罰を与えるという感覚はない。
たとえば競馬の騎手だって、鞭は振るうが、躾や罰として痛めつけることが目的ではなく、それはより早く走らせるためだ。
しかし豚や奴隷に対しての鞭は、明らかに躾と罰のためのものだろう。
馬に装着するハミやハーネスと、犬につける首輪も、意味合いが少々違う。
むろん、馬も家畜の一種であることに違いはないが、なんとなく牛や豚とは扱いが違う。
また、馬をペットのように飼う者もいるだろうが、犬や猫とはやはり違う。

君は、馬ではない。
馬のように四つん這いになり、飼い主の女性を背中に乗せて歩くスタイルの調教もたまには行われるが、君のベースは「豚」だ。
犬のように扱われることは、確かにある。
全裸で首輪が君のベーシックなスタイルだし、リードを接続され、飼い主の女性に引かれて四つん這いで歩くその姿は、まさに犬だ。
しかし君は愛玩動物、つまりペットとはいえない。
所詮、君は家畜だ。
そして醜いから、やはり豚なのだ。
ペットなら、名前を付けて可愛がる。
家畜なら、名前なんか付けないし、可愛がりもしない。
そう考えるとわかりやすい。
君は紛れもなく家畜、豚だ。

君はいつも怯えたような眼をしている。
伏せがちのその眼から、いかにも卑屈な変態マゾらしい、弱々しい視線を投げる。
そんな極度におどおどしているような態度は、飼い主の女性を無性に苛立たせるらしい。
おまえを見ていると、殴りたくなる。
おまえを見ていると、蹴りたくなる。
おまえを見ていると、張り飛ばしたくなる。
飼い主の女性は、君によくそう言う。
ただし、憎しみ故ではない。
嫌いだからでもない。
単に殴りたくなる、単に蹴りたくなる、単に張り飛ばしたくなる、それだけのことらしい。
要するに君はマゾとして、女性のS性をごく自然に引き出せる存在ということだ。

もうすぐ正午だが、雨のせいか、房内は薄暗い。
天井に蛍光灯があるが、まだ点灯はしていない。
雨音だけが聞こえている。
それほど激しく降っている様子はない。
静かに一定の勢いで、しっとりと世界を濡らしている、そんな感じだった。
君は房の隅で、小さな窓を見上げている。
ガラスに降り掛かった雨が、下へと流れている。
平凡な日だ。
空調が効いているため何も身につけていない君でも、快適に過ごせる気温だ。
雨のせいで若干、湿度が高いが、汗ばむほどではない。
豚の厩舎としては、決して悪くはない環境だ。

厩舎の鉄製の扉が開く音がして、君は俄に緊張した。
窓辺を離れて廊下の前で正座をする。
靴音が響いてくる。
しかしその音は、ひとつではない。
何人か連れ立って歩いているようだ。
厩舎の廊下はセメント張りで、誰もが踵の固い靴を履いているのか、やけに大きく音が響いている。
声は聞こえないが、だんだん靴音が近づいてきて、君は正座をしたまま背筋をピンと伸ばした。

廊下に、飼い主の女性が現れた。
その手には、君の餌が入った鍋を持っている。
一緒に、ふたりの女性がいた。
ふたりとも飼い主の女性と変わらないくらい美しく、すらりと背が高い。
そんな女性三人が、厩舎内で正座をしている君を見下ろす。
「おはようございます」
君はひれ伏し、床に額を付けた。
もう朝とはいえないが、飼い主の女性が今日ここを訪れるのは初めてだったので、君はそう述べた。
しかし返事はない。
その代わり、飼い主の女性が連れてきたふたりのうちのひとりが言った。
「ほんとにキモい生き物ね」
君は頭を下げたまま、謝罪する。
「申し訳ございません」
「顔見せろ」
その女性にそう命じられ、君は怖ず怖ずと頭を上げた。
いうまでもなくその眼は泳いでいる。
そんな君の顔に、女性はいきなり唾を吐き捨てた。
生暖かい感触が君の顔全体に降り掛かった。
「ありがとうございます」
膝に軽く握った手を置き、君は言った。
「唾吐かれてお礼言ってるよ、こいつ、しかもチンコ勃ってるし」
もうひとりの女性が鼻で嗤いながら言った。
見ると、その手にはビデオカメラがあって、君を映している。
小さな赤いランプが点灯しているので、作動中だとわかる。

「とりあえず、餌ね」
飼い主の女性が、君の飼い葉桶の中に、手に持っていた鍋の中身を捨てた。
「ありがとうございます」
アルミ製の桶の中に、昨日の食事の残飯が放り込まれた。
味噌汁をベースにごはんや煮物などが雑多に放り込まれているから、昨日の残飯でも夕食ではなく昼食だろう。
やはりクリスマスなんて関係なかった。
その桶の中に、三人の女性は次々に唾を吐いた。
「こんなもの食べるなんて、ほんとに豚だわ」
ひとりが言い、飼い主の女性が肯定する。
「だって正真正銘の豚よ、こいつは」
そう言いながら、廊下と房を仕切る木製のバーを上げ、中に入ってきた。
他の二人も彼女の後に続いた。
狭い房内に三人もの女性が入ってくると、噎せ返るような甘い匂いが充満して、君の理性が大きく揺らいだ。
君は自らの暴走を抑えるためにも三人に見下ろされながら視線を床に落とし、生唾をごくりと飲み込んだ。

「立って」
飼い主の女性が命じ、君は「はい」とこたえて立ち上がった。
三人の女性たちは並んで立っていて、その真ん中に飼い主の女性がいた。
君は自分より背が高く美しい三人の女性と間近で対峙しながら、緊張で心臓がひっくり返るような感覚に陥っていた。
それでもマゾの性か、ペニスは猛々しく熱り立っている。
そのペニスを、飼い主の女性が無造作に握った。
そして、命じる。

「このまま自分で腰を振って、みんなの前で出しなさい」
「はい!」

君は両手を体の横に垂らしたまま、激しく腰を振った。
飼い主の女性の手の中で、ペニスが擦れる。
その途轍もなく情けない姿に、ふたりの女性が爆笑する。
ひとりはもちろんそんな君の姿を撮影している。
「これは笑える、うちのクラブのサイトに載せよう」
どうやらその女性はSMクラブの女王様のようだった。
君はだらしなく口を開きながら、鼻息荒く、腰を前後に必死に揺する。

「しかし壮絶にキモいわ」
腕組みをして君を鑑賞していた女性が唇の端を歪めて言う。
「すみません」
「豚なら豚らしくブヒブヒ言ったら?」
「あ、すいません……」
君は腰をヘコヘコ動かしながら言う。
「ブヒブヒブヒブヒ」
「マジ哀れで無様、かなり笑える」
ビデオカメラを構えている女性が爆笑する。
君は、飼い主の女性の柔らかくて温かい手の夢のような感触に酔いしれながら、黙々と腰を振り続けて謝る。
「ブヒブヒ申し訳ございませんブヒブヒ」
飼い主の女性は呆れ返った眼で君を見据え、そのペニスを軽く握っている。

じきに射精の衝動が君の中でせり上がってきた。
「あ、あ、すいません……もう出そうです」
ペニスがひくひくと脈打った。
「豚がなんで一丁前に人間の言葉を喋ってんの?」
女性のひとりが言い、君はすぐに言い直す。
「ブヒブヒブヒブヒ」
「何言ってるか、わかんないわよ」
女性たちがけらけらと笑う。
君はいっそう激しく腰を振る。
飼い主の女性は、君のペニスを握ったまま、体だけを横へ避けた。
君は絶叫する。
「ああああ、出ます、出ます、ああああ、すいません、ブヒブヒ」
女性がペニスから手を離した。
次の瞬間、ペニスの先端から白濁した液がどくどくと噴射された。
その煌めきは、放物線を描いて宙を飛び、セメントの床に落下した。
射精の快感に、君は膝が抜けそうになったが、なんとか持ちこたえる。

「うわあ、汚い」
「豚の射精だ」

女性たちが口々に罵る。
君は精液に塗れた貧相なペニスを股間にぶら下げたまま、荒い息を整えつつ、項垂れている。

飼い主の女性は、感情のない眼で君を見下ろしている。

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