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春の雪はまだ止まない

季節外れの大寒波が襲来し、三月の日本列島は震え上がった。
もうそろそろ冬物の衣服はしまおうかと考えてしまうくらい温い日々が続いていたのに、一気に真冬に引き戻されてしまった。
その寒さのぶり返しは、なまじか小春日和を経験してしまっていたので、余計に厳しく感じられる。
しかも、昼を過ぎると、雪まで降り始めた。
その雪は「舞う」というより「降る」という量で、街は瞬く間にうっすらと白く染まった。
ただし、軽い雪ではあったので、何センチも積もることはなく、公共交通機関網の混乱にまでは至らなかった。

君はそんな日だったが、終業後、交通事故で入院している同性の友人の見舞いのため、国立の大きな病院へ向かった。
定時で職場を辞すと、地下鉄を乗り継ぎ、駅からは傘を差して十分近く歩き、病院に着いた。
その徒歩の間に、体はすっかり冷え切ってしまい、病院に着くと、君は病室へ向かう前に自販機で熱いコーヒーを買って、ひとまずロビーでそれを飲んだ。
外来の診察の時間が終わっている大病院のロビーは、照明が若干落とされ、閑散としていて、あまり居心地の良い感じではなかった。
尤も健康な人間にとって病院なんて、もともとそんなに印象は良くなくて、できれば近づきたくない場所ではある。
時々、看護師や医師がロビーを行き交い、見舞い客が出入りする様子を眺めながら、君はコーヒーを飲んだ。
そして紙コップが空になるとそれをゴミ箱に捨て、友人の病室へ向かうためにエレベーターまで歩いた。
時間帯的なものか、エレベーターは六基のうち四基が止まっていて、二基だけが動いていた。
ボタンを押すと、すぐに箱が来て、ドアが開いた。
君は乗り込むと、七階のボタンを押した。
エレベーターの中は君だけだった。
壁にレストランや喫茶室の案内が掲げられていたが、腕時計を見ると六時半で、営業はもう終わりのようだった。
七階について箱から出ると、病棟は少しだけざわついていた。
夕食の時間がそろそろ終わりなのか、廊下に配膳のための大きなワゴンが出ていて、介護士の人たちが忙しげに動き回っている。
君は館内案内で病室の位置を確認すると、目的の部屋へ向かった。
途中にナースステーションがあり、多くの看護師の姿があった。

見舞いを終えた君は、病院の建物を出ると、粉雪が降りしきる寒い雪の中、駅へ向かって傘を差して歩き出した。
念のためなのか、チェーンを装着したタクシーがジャリジャリと音を立てながら、ゆっくりと道路を走っていく。
こんな天候だからか、交通量は少ない。
バイクの自損事故で大腿骨など複数の箇所を複雑骨折して入院していた友人は絶対安静の割に元気そうだった。
薬のせいか痛みもあまりないらしく、個室ということもあって、他人に気兼ねすることなく小一時間、君は友人と話をして過ごした。
お菓子を差し入れ、見舞いの品としてクロスワードパズルの本を渡した。
君は人気のない街路を歩きながら、この後、どこかで簡単に夕食をとったら、風俗へ行こう、と思った。
君は筋金入りの変態M男だが、しかし今夜はSMクラブという気分ではなく、M寄りだが、女の子のコスチュームを選んでプレイできるイメクラへ行きたいと考えていた。
コスチュームは白衣を選びプレイをするつもりだ。
病院にいる間に、病棟で立ち働き、ナースステーション等に集っている看護婦さんたちを見ていたら、不謹慎にもそんな気分になってしまったのだ。
むっちりとしたお尻を包み込む窮屈そうな白いズボンの下にうっすらとパンティラインが透けて浮かんでいたり、こてんぱんに穿きこまれたソックスの爪先がサンダルの先からチラリと覗いていたり、そんな看護婦さんたちを見ていたら、たまらなくなってしまったのだ。
もちろん、だからと言って本職の看護婦さんたちとどうこうなんてできるわけがない。
だから疑似体験できるイメクラで、女体に溺れたくなったのだ。
それでも、君のベースはMだから、責めることは難しく、責められたい気持ちが強い。
だからソフトMコースのあるイメクラが、今夜の君にとっては、本格的なSMクラブより「気分」なのだった。
とはいえ正直、これだけ寒いと流石の君でも、やはり今夜はこのまま家に帰ろうか、という気持ちにもなった。
しかし、逆に言うと、こんな日だからこそ店は空いていて、可愛い子とプレイできるのではないか、という期待も持てた。
それに、どうせ店のある繁華街は、帰り道の地下鉄沿線途中にあり、駅から徒歩五分ほどだ。
だから、やはり行くことに決めた。
君は駅まで戻ると、蕎麦屋でたぬきそばといなり寿司のセットを食べてから、地下鉄に乗って繁華街へ向かった。

雪が舞う極寒の繁華街は、人通りが少なかった。
酔客の姿も疎らで、君は慣れた足取りで、裏通りにあるイメクラへ向かった。
通りに入ると、前方に店の派手な電飾看板が見えた。
店は地下にあり、君は狭くて急な階段を下りていく。
初めての客を安心させるように、各種コースの料金が階段の壁にも掲示されている。
君はいつも60分のソフトMイメージコースだ。
お金のないときは、イメージではなくヘルスコースを選ぶ。
そちらだとコスチュームや「ごっこ」的なサービスがないので、若干安い。
しかし今夜の気分は、必ずしも財布の中身に余裕があるわけではなかったが、イメージのソフトMコースだった。
コース名に「ソフト」と付いているが、「ハード」のコースが設定されているわけではない。
どのみち「ソフト」しか存在しない。
ちなみにイメージコースにはSコースもあるが、もちろん君は一度も経験がない。
尤もSコースはMコースより更に料金が少し高く設定されているので、君にとってはありがたいことではあった。

女の子はマジックミラー越しに選ぶシステムだ。
コースやコスチュームを選び、料金を支払ってしばらく待合室で待っていると、お待たせしました、とボーイに呼ばれ、別室へ向かう。
するとそこには大きなマジックミラーがあって、君が着席すると、室内の照明が落とされ、賑やかな音楽が大音量で流れ出して、ガラスの向こうに女の子たちの姿が浮かび上がる。
この瞬間が、君は大好きだった。
一気に気分が上がる。
女の子は七人いて、みんな同じOL風の極端にスカートが短い制服を着て、二列で椅子に座っている。
列には段差があるので、後ろの列でもちゃんと見える。
君は女の子たちを見ていった。
胸につけた名札に、源氏名が手書きされている。
「如何ですか?」
隣で傅いているボーイが訊いた。
君は、前の列の右端の大柄な女の子を選んだ。
「じゃあ、向かって右の端の人で」
源氏名で「〇〇ちゃん」と呼ぶのが恥ずかしかったので、君はそういう言い方をした。
「かしこまりました」
ボーイは恭しく頭を下げて、照明や音楽をコントロールしている人に合図を送った。
すると天井の照明が戻ってガラスの向こうが見えなくなり、音楽が止んだ。

──それから一時間後、君は満たされた気持ちでプレイルームを出た。
待合室の手前まで女の子に送られ、そこで接客はボーイに受け継がれ、君は「ありがとうございました」と頭を下げた彼に「どうも」とこたえて店を出た。
狭い階段が地上へとまっすぐ伸びている。
出口の四角く小さく切り取られた空は暗く、白い雪片が風に巻き上げられるように吹っ飛んでいた。
「寒っ」
君は思わず呟き、コートの襟を立てた。
プレイは濃厚だった。
君はエッチな看護婦さんに散々責められ、いろいろな部分を触り、いろいろな部分を舐めた。
大柄な女の子の体は柔らかく、その肉感に君は耽溺した。
そして互いに性器を貪る69の態勢で、君は呆気なく撃沈した。
女の子が君の顔を跨ぎ、君は下から、大きくて柔らかく豊かな尻を抱きながら股間に顔を埋めて性器を舐め尽くしながら、ペニスをしゃぶられ、しごかれ、イッた。
濡れやすい女の子で、果てた時、君の口の周りはベトベトだった。
君はプレイ内容を思い出すとニヤけてしまいそうだったので、思考を中断し、強烈な寒さの中、一段飛ばしで階段を早足で駆け上がった。
実際、寒くてたまらず、さっきまで熱り勃っていたペニスも、射精を果たしたせいもあるが、すっかり縮み上がってしまっている。

君は一気に階段を上りきると、そのまま路上へ飛び出した。
飛び出したといっても、歩道があることはわかっていたので、車に撥ねられる心配はなかった。
しかし君は、車ではなかったが、歩行者とぶつかってしまった。
「すいません」
君はすぐに謝った。
そこにいたのはこんな時間のこんな場所には不似合いな制服姿の女の子の二人組で、そのうちの一人と君はぶつかってしまい、女の子が「痛っ」と言いながら尻餅をついていた。
地面は雪のせいで濡れていて、女の子は手をつきながら「冷たっ」と言った。
「すいません、大丈夫ですか?」
君はもう一度謝って訊いた。
もちろんワザとではなかったし、不可抗力な出来事だったが、いきなり飛び出した君の不注意であることだけは確かだったので、君は、相手は自分より明らかに年下の女の子だったが、丁寧に対処した。
とはいえ、この寒さの中、女の子たちのスカートの裾はふたりとも極端に短く、そのためむっちりとした太腿が剥き出しになっていて、君はつい視線を向けてしまった。
尻餅をついている女の子なんて、立ち上がろうとするために無防備に膝を立てたから、スカートの奥に水色のパンティまで見えてしまった。
君は、慌てて、女の子たちから目を逸らした。
本心としては見ていたかったが、この状況でそんなことは許されなかった。
女の子が立ち上がり、「べちょべちょじゃん」とスカートの尻を気にした後、その場に立ち尽くしている君に向かって、歩み寄った。
「てめえ、ナメてんのかよ?」
そう言い、睨んだ。
連れの女の子も、君を取り囲むようにして立ちながら、一歩進みでる。
「ふざけんなよ、おい」
君は想定外の彼女たちの怒りに、戸惑いながら、更に謝罪の言葉を述べた。
「本当にすいません」
深く頭をさげる。
完全に君の不注意でぶつかって彼女は転んだのだから、謝る以外ない。
しかし、こんな風に恫喝されるみたいに怒りを露わにされると、恐怖を覚えた。
もちろん怒りはもっともだったが、君はまるで因縁をつけられカツアゲに遭っているような気持ちになった。
君は自分よりはるかに年下の女の子たちに怯えながら、しかし謝罪すること以外何をどうしたらいいかもうわからず、立ち尽くす。
幸か不幸か、誰も通り掛からない。
君はふたりの女の子たちに取り囲まれながら、上目遣いで恐る恐る彼女たちを見て、また「すいません」と言った。
女の子たちは腕組みをして、君を見つめている。
その視線のプレッシャーに耐えられなくて、君は地面に目を落とす。
女の子のひとりが、そんな君に言った。
「ていうか、この階段から飛び出してきたってことは、カネ払って抜いてきたところかよ」
小馬鹿にしたような響きを含ませて、女の子はせせら笑った。
君に突き飛ばされた方の女の子が、すかさず店の看板のキャッチコピーを読み上げる。
「エッチなお姉さんがイジメてあげる、だって」
手を叩いて笑い、君に訊いた。
「エッチなお姉さんにイジメられてきたのかよ、おい」
「は、はい……すいません」
「こいつ、Mかよ」
「M男? きめえ」
女子たちは口々に罵った。
君はただ好きなように言われ続けた。
いくら突き飛ばした負い目があるとはいえ、イメクラの利用を揶揄される謂れはなかったし、あまりに屈辱的な状況だったが、マゾとしては悪くないと感じるもうひとりの自分もいて、結局君は再び頭を下げた。
「すいません、申し訳ございません」
しかし、いくら君がM男でも、これ以上ここに留まることは耐えられなかったし、尻餅をついた女の子も特に怪我もなくもう大丈夫そうだったので、君は最後にもう一度だけ「すいませんでした、失礼します」と頭を下げて、この場から足早に立ち去ろうとした。
すると、ぶつかってはいない方の女の子がすかさず君の上着の裾を後ろから掴んで引き留めた。
「ちょっと待てって」
君は引っ張られて足を止めざるを得ず、離脱を諦めると、恐る恐る振り向いた。
依然として通りは無人だった。
凍えるような寒さの中、雪だけが舞い落ちている。
君が突き飛ばした女の子が、君の上着の袖を掴み、顎をしゃくった。
「ちょっと、来い」

君は裏通りから更に雑居ビルの間の狭い路地へと連行された。
「すいません、許してください」
君はふたりのどちらにということもなく、言った。
強引に振り払って逃げようと思えば逃げられそうな気はしたが、穏便に対処しないともっと酷いことになるかもしれなかったから、君は抵抗を断念した。
どうしても、突き飛ばして彼女たちの怒りの原因を作ったのはあくまでも自分、という負い目が拭いきれないため、強気の行動には出られないのだった。
だから君は必死に詫びた。
「本当にすいません、どうかお許しください」
しかし二人とも完全に無視して、聞く耳を持たなかった。
「ぶつかって突き飛ばしておいて何だよ、黙ってついて来い、M男」

君は薄暗い路地の突き当たりまで連行され、ドン、と背中を押されると、そのまま足元を蹴りで掬われて、尻から落ちた。
地面は濡れていて、たちまちパンツまで冷たさが染みた。
「ナメやがってよ」
女の子たちは、揃ってローファーの底で君の肩辺りを蹴って踏んだ。
君は恥も外聞もなく土下座すると、深々と頭をさげた。
「申し訳ございませんでした」
精一杯の誠意を示すつもりで、君は荒れたアスファルト舗装の地面に額をつけた。
そんな君の前に、君が突き飛ばした女の子がしゃがみ、髪を掴んで引っ張り上げた。
視線が上がると、君の目に、たまたまM字開脚になっている女の子の股間に覗く水色のパンティが飛び込んできて、咄嗟に視線を外した。
この状況でそんな部分を凝視してしまったら、火に油を注ぐことになりかねない。
「ていうか、イメクラってJKコスか?」
わざと脚を大きく開いて君を弄ぶように女の子が訊いた。
「い、いいえ」
君は小さく首を横に振った。
「看護婦さんです」
君はアホみたいに正直に否定した。
「どっちにしろ、きめえし」
女の子は吐き捨て、君の顔を至近距離から見つめると、唇を不快そうに歪めた。
君はその視線に怯え、一瞬だけ見つめ返した後、すぐに地面に目を落とした。
正直なところ、M男としての君はこの状況に昂ぶっていた。
通常なら、完全に勃起しているところだ。
しかしあまりに寒いし、先ほど抜いたばかりなので、流石の君でもペニスは漲ってこない。
それでも、気分としてはM男モードのスイッチが入ってしまっていた。
君は地面に両手をついて土下座したまま女の子を見上げ、訊いた。
「あのう、どうしたら許していただけますでしょうか……」
すると、腕組みして見下ろしていたもうひとりが言った。
「あのなあ、そんなもん、ちょっと考えりゃわかるだろ、誠意を示すんだよ、せ・い・い」
そう言って、君の肩を蹴る。
君はすぐにその「誠意」が「カネ」を意味していると悟り、こたえた。
「わかりました、お待ちください」
君は上着の内ポケットから財布を取り出し、中を見た。
しかし、財布の中身は寂しいものだった。
給料日前だし、イメクラの支払いの後だし、中にはもう二千円しか残っていなかった。
しかし、無いものは無いので仕方なく、君はそのなけなしの千円札二枚を抜き出すと、目の前の女の子に差し出した。
「すいません、これだけしか無いのですが……」
すると、女の子は二枚の千円札を奪い取るように手にした後、君の髪を掴んだまま、その頭を何度も揺さぶった。
「シケてんなー、マジで。つか、こんだけじゃ誠意なんて微塵も感じられんわ」
そう言うと、いきなりビンタを張った。
続けざまに何発か往復ビンタを連発し、黙って頬を打たれている君に訊く。
「お前、Mだからビンタされて嬉しいんだろ?」
女の子は更にビンタを張り、ぺっと君の顔に唾を吐いた。
君は、背筋をピンと伸ばしながら、反射的に肯定してしまった。
「はい!」
それは、日常を偽る仮面が剥がれ落ち、まるで蛹から蝶が飛翔するようにマゾの本性が出現した瞬間だった。
代金を支払うことで提供される「プレイ」ではないリアルなM的状況に、君は昏い興奮を覚えていた。
「ありがとうございます!」
君はビンタの礼を述べた。
「マジでキメえ、こいつ」
腕組みして立っている女の子が顔を顰めて言い、君を蹴り飛ばした。
君は為す術もなく後方へと転がった。
しかしすぐに体勢を立て直して正座をする。
「もしかして、おめえ、この状況で勃ってんのか?」
「い、いいえ」
君は頭を振った。
普通なら当然勃起しているが、寒すぎて勃っていない。
というか、正確には、勃たない。
「見せてみろ」
君を蹴り飛ばした女の子が命じた。
「えっ?」
「いいから、立って、下を全部脱げよ」
「ここで脱ぐのですか?」
「はあ? ここ以外、どこがあんだよ? あ? お前アホか?」
「すいません……」
「すいません、じゃなくて、さっさと脱いで起立しろ」
君は観念して頷いた。
「はい、失礼します」
君は立ち上がると、ズボンのベルトを外し、パンツと一緒に引き下ろした。
そして手を体の横にピタリとつけて起立した。
しかし案の定、ペニスは萎えたままだった。
しかも仮性包茎なので、いつもより寒さでいっそう縮こまっているペニスは、包皮が完全に亀頭を包み込んでいる上に、周囲の陰毛を咥え込んでいる。
それを見て二人は爆笑した。
「おい、お前のチンコ、毛を食ってるぞ」
バンバンと両手を大きく叩いて女の子たちは笑った。
「つうかさ、お前、失礼じゃね? 女の子の前で出してるのに萎えたままなんて?」
「は、はい……」
しかしそうは言っても、鋭い刃物のような寒風が雪とともに吹きつけていて、いくら君でもどうにもならなかった。
「とりあえず、ここで跪いて、シコれ」
君が突き飛ばした女の子が命じた。
「はい」
君は地面に膝をつくと、完全に萎んでいるペニスを右手で持ち、ひとまず皮を剥いた。
しかしすぐに元に戻ってしまう。
君は何度も皮を剥き、扱いた。
それでも、一向に勃起する気配がない。
君は焦り始めた。
痺れるように寒いのに体に汗が噴き出てきた。
君は必死に扱く。
なかなか勃起させられない焦燥感が、女の子たちに対する恐怖と緊張感によって更に増幅されて、君はパニックに陥る。
情けない目で女の子たちを見上げながら、謝罪する。
「す、すみません……勃たないです……」

女の子たちは並んで立ち、君を冷徹な目で見下ろしながら、腕組みしている。
君は縋るような憐れな目を女の子たちに向けた。
大人の男のプライドなんて最早微塵もない。
しかし女の子たちは慈悲の欠片も君には与えない。

「は? いいから勃つまで必死に扱け、全力で」
君が突き飛ばした女の子が冷淡に命じる。
そして、もうひとりが、言う。
「で、絶対に出せ、出すまで、帰さんから」

「は、はい……」

君は、無明の淵の底に突き落とされながら、たとえようのない惨めさに打ちひしがれつつ、みすぼらしいペニスを扱き続ける。

「しかし虚しくねえのかな、こいつ」
「それも含めて嬉しいんじゃね?」
無残で無様な自慰を眺めて笑いあう女の子たちの侮蔑の言葉が煌めきながら君を翻弄する。

鋭い風が孤独な路地を吹き抜けていく。
雪片が踊るように舞う。

「それにしても情けない姿だな」
「人間じゃねえよ、マジで」
女の子たちの嘲る声が君に降り注ぐ。

春の雪はまだ止まない。
一向に止む気配がない。

君は依然として縮こまったままのペニスを侘しく一心不乱に扱く。

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