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桜流しの雨

寒い、曇天の深夜、今にも雨が降り出しそうな気配だが、かろうじてまだ持ち堪えている。
満開の時期を少しだけ過ぎた桜の巨木の下に、君は全裸で立った。
着ていたものや所持品はまとめて近くの地面に置いてある。
雨の予感を孕んだ、冷たく湿った風が吹く度に、はらはらと花びらが舞い散って、君は震えた。

「お許しください」

奥歯がガチガチと鳴るのを抑えながら、君は懇願した。
寒さと惨めさと恥ずかしさのため、ペニスは完全に縮みあがりながら、陰毛の茂みに中に半ば埋もれている。
せめて股間くらいは手で隠したいが、両手は体の横にピタリとつけて立っているように厳命されているため、それは叶わない。

「許すわけないだろ、どアホ」

ピンクのウルトラダウンのジャケットにダメージデニムのホットパンツを履いた女の子が、腰に巻いていた革のベルトを引き抜くと、それを鞭にして、まるで君に見せつけるように、勢いよく虚空で振ってみせた。
ひゅん、と空気を切り裂き、怯える君を見て彼女は笑う。

「お仕置きが必要でしょ」

女の子はそう言うと、君に近づき、いきなりベルトを叩きつけた。
鞭に見立てられたそのベルトは夜の中でしなり、まるで漆黒の蛇のように獰猛に君に襲いかかる。
パシッ、という乾いた音が響いて、君の体にヒットする。
たちまち赤い跡が刻まれる。

「うぎゃー」

君は絶叫した。
冷え切った体に打ち据えられた革のベルトの痛みは、尋常ではなかった。
しかし君の絶叫など意にも介さず、女の子は続けて何度も自由に君を打つ。
その度に君は体を左右に捩り、地面の上で跳躍する。

「申し訳ございません、どうかお許しください」

君は鞭の乱打に耐え切れず、目に涙を浮かべながらその場で土下座をすると、額を土の地面に擦り付けた。
微細な小石が額の肌に食い込んで痛かったが、そんなことに構ってはいられなかった。
普段から奴隷を調教していて様々なテクニックを習得しているS女性や、鞭を振るうことを生業とするクラブの女王様ではない、若い女の子が遊びの延長で打つ鞭は容赦ないだけでなく、危険と背中合わせだった。
君は何度も目や耳に当たりそうになるのを避け続けたが、もう限界だった。
身体中ににミミズ腫れのように跡が刻まれていて、痺れるように痛かった。
もちろん変態M男である君にとって鞭は、日常的なツールだ。
躾の一環として、そして時には罰として、君はしばしば鞭に打たれる。
SMクラブへは、金を払ってわざわざ自分から鞭に打たれに行く。
そんなことは、とうてい常人には理解できない感覚だろう。
普通の人は、お金を出していじめられになんか行かないし、鞭打ちとは無縁だ。
一般的な社会生活を送っていて鞭に打たれる機会なんて、まずない。

しかしそこそこキャリアのあるM男としてそれなりに鞭は経験していても、革のベルトの衝撃は想像以上だった。
気づくと君は本気で泣いていた。
それを見て女の子はせせら笑った。
「お前、いい歳ぶっこいてマッパで泣いてんのかよ」
そう言って、地面で体を丸めながら跪いている君の背中に、ひときわ強烈な勢いでベルトを振り下ろした。
「うぎゃーーーー」
たまらず君は転がった。
股間を丸出しにして七転八倒している君を見下ろして、女の子は爆笑した。
「超おもしれえ」
君は息を切らしながらどうにか再びひれ伏すと、改めて哀願した。
「どうか、どうかお許しください」
すると女の子はようやくベルトを下ろし、髪をかきあげた。
「まだ許さんけど、とりあえず疲れたからやめてやるわ」
「ありがとうございます」
君は地面に額をつけたまま、安堵して礼を述べた──。

君は、彼女とは今夜が初対面だった。
しかもまだ出会ってから、小一時間しか経っていない。
尤も、この邂逅のきっかけが、果たして「出会い」と呼んでいいものか、かなり怪しかった。
というのも、最初に彼女を見かけたのは、帰りの電車の中だった。
君は車内に乗り込んだ瞬間、すでにドアの近くに立っていた彼女を見て、一目で、素敵だ、と思った。
美人で、派手で、背が高く、太ってはいないが痩せてもおらず、ダウンジャケットを着ていても隆起が目を引くくらい胸が大きくて、君は自分の分を弁えながら、絶対に一生自分には縁のない別世界の住人だと自覚しながら、それでも見惚れてしまった。
だから、常に視界に彼女が入る位置で吊革に掴まり、チラチラと観察した。
大きな胸は、揉むと柔らかそうだった。
顔を埋めて溺れたら天にも昇る心地だろうな、と君は思った。
短いホットパンツから伸びる脚のラインが肉感的で素晴らしかった。
足元のごついブーツも、君の妄想をかき立てた。
今、あのブーツを脱げば、きっと素敵な芳香が匂い立つはずだ。
そう思うと、何もかもを投げ捨てて足元に跪き、調教を請いたくなった。
しかし、そんなこと、できるはずもなかった。
君は、あまり直接じろじろと見ていたら不審がられ気づかれるかもしれないと思い、時々視線を外し、暗いガラスの映る彼女の姿を、反射越しに眺めた。
あんな女の子にセックスを教えてもらえたら最高だろうな、と君は夢想した。
君はM男であると同時に、セックスに関しては何年も前に一度だけソープで一回経験したことがあるだけの素人童貞でもあるので、素敵な女性を見ると、セックスを「教えてもらいたい」という気持ちになりやすいのだった。
間違っても「やりてえ」みたいには思わない。
というか、「やりてえ」と思っても経験のほとんどない君には、そもそもやり方がわからない。
尤も、経験豊富な女の子を相手に、もぞもぞしながらどうしたらいいかわからず何もできないままにオドオドし続け、その様子をあからさまに嘲られ小馬鹿にされるという構図は、M男としては充分に魅力的だ。
しかし残念ながら君は基本的に気弱で、大前提として素人の女の子に声をかけたりすることができないので、そういう状況まで辿り着けない。
プロの女性なら、お金さえ払えば君でもいろいろできるかもしれないが、商売で君を相手にする女性たちにとって君はあくまでも「お客さん」だから、基本的にみな優しく、君が期待するような本気で屈辱的な行為は望めない。
厳しく責めてくれるのはSMクラブの女王様くらいだが、女王様は君に体を許すことがない。
つまり、君は四面楚歌なのだ。

やがて車内にアナウンスが流れ、列車が減速して、「普通」しか止まらない小さな駅に到着した。
その駅で、彼女は下車した。
君は、もっと長く見ていたかったのに、と後ろ髪を引かれる思いで、ドアから出て行く彼女の背中を見送った。
揺れる栗色の髪がホームの明かりを受けて煌めき、その瞬間、特に何も考えず本能的に君もドアに向かっていた。
君が降りるいつもの駅はまだ先だったが、衝動的に君は彼女を追ってしまっていた。
もちろん、だからと言って彼女に声をかけようとか、そんなことは微塵も考えてはいなかった。
だいたいそんなことできるはずがない、と自分でもわかっていた。
では、なぜ一緒に降りてしまったのか、その理由は簡単だった。
何をするというわけでもなかったが、もう少し彼女の姿を目に焼き付けたかったのだ。
プラットホームで距離をとって後ろについて歩いて行くと、ホットパンツに包まれた窮屈そうな尻のボリュームが圧巻だった。
歩くたびに躍動し、君を挑発した。
彼女の数メートル後方の空気の中には、彼女の香水の残り香が漂っていて、君は密かにそれを吸引した。
女の子はICカードで改札を抜けた。
君は定期で外に出た。
周囲に下車客は少なかったが、彼女はまったく君の存在に気づいていないようだった。
女の子は駅前広場を横切るように歩きながらバッグから電話を取り出して、画面を弄り、すぐにまたしまった。
君は冷たい外気に包まれてコートの襟を立てた。
その時ようやく、自分は何をやっているのだろう、と冷静な気持ちを取り戻した。
駅の時計を見ればもう午後十一時に近く、まだ週の半ばで明日は休みというわけではなく、しかももう少ししたら雨が降り出しそうだというのに、全然知らない駅で途中下車をして、絶対に触れ合うことなど叶わない別世界の住人である美人を、目的もなく尾行している。
その「尾行」という言葉がごく自然に脳裏に浮かんだ瞬間、君は自分が怖くなった。
これではまるで変質者ではないか、と思った。
君には、自分は紛れもなく変態のM男だが決して変質者ではない、という自負があった。
しかし見ず知らずの女性を「尾行」している自分は、「変態」のボーダーラインを軽々と超越し、「変質者」の領域に足を踏み入れているのではないか、と思った。
君は人気もなく、明かりも乏しい街路を歩きながら、気づかれる前にもうやめよう、と思った。
それでも、数メートル先で揺れる尻を眺め、香水の残り香に包まれていると、なかなか踏ん切りがつかなかった。

と、その時、女の子が歩調を緩め、バッグの中を弄って携帯電話を取り出した。
その際、電話と一緒にハンカチのような小さな布がバッグから出て、はらはらと地面に落下した。
しかし女の子はそのことに気づかず、電話を耳に当て、通話しながら歩いていく。
話の内容は聞こえてこないが、何やら楽しそうな様子は雰囲気から伝わってきた。
君は、彼女のバッグから落下した物体のところまで辿り着いた。
それは案の定、ハンカチだった。
一瞬、使用済みのパンティかパンストだったら良かったのに、と君は残念に思ったが、そんなものが無造作にバッグの中に入っているはずがなかった。
君は足を止め、地面のハンカチを見つめながら、思案した。
道路の先を見ると、女の子は通話を終えて、再び電話をバッグに入れながら遠ざかっていく。
もしかしたらこのハンカチはあの女の子の汗を吸っていて、匂いを嗅ぐと幸せになれるかもしれない、と君は考えた。
どう見ても彼女が気づいている様子はないから、このままポケットに入れて失敬してもわからないだろう、と思った。
しかし、それをすると厳密には「犯罪」になってしまうのではないか、とも思った。
それに、もしかしたらこのハンカチは彼女にとって何か思い出があるとか特別なものかもしれない。
であるならば、拾って、彼女に声をかけて、「落ちましたよ」と手渡した方がいいかもしれない。
いくら異性とは緊張してまともに話せない気弱な君でも、落し物を拾って渡すことくらいはできそうな気がした。
ひとまず君は屈んでハンカチを拾い上げた。
そして匂いを嗅ぎたいという衝動をぐっと我慢しながら、立ち上がり、前方へ目を遣った。
どんどん女の子の背中が遠くなっていっていた。
君は匂いを嗅ぐ代わりに、コートの中に手を入れてズボンのジッパーを下ろした。
続いてコートの中で半ば勃起し始めていたペニスを引っ張り出すと、改めてハンカチを入れて、ペニスをそのハンカチで包んだ。
そのままゆっくりとシコる。
たちまち完全に勃起し、たまらなく快感だったが、いつまでもやっていられることではなかった。
君は名残惜しかったが、ペニスはコートの下で出したまま、ハンカチだけを取り出した。
ハンカチには、ペニスの先端から滲み出た透明な汁が付着していた。
君は想定外の事態に焦り、急いでハンカチを擦り合わせてそれを誤魔化した。

そうしている間に、気づくと前方から女の子の姿が消えていた。
君は慌てて適当にハンカチを持つと、急ぎ足で先へ進んだ。
小さな交差点が連続していて、その度に足を止めては、左右に視線を走らせた。
しかしなかなか彼女の姿は見えなかった。
どうしよう、と困り果て、探すことを諦めようとした時、緩いカーブの先に横たわる川の土手の上に彼女の姿が見えた。
土手の上に道があるのか、桜並木が見えた。
ほぼ満開の桜たちが、夜の中で仄白く咲き誇っている。
その圧倒的な無言の美しさに、彼女の姿はまったく負けていなかった。
君はふと足を止めて、まるで夢のような光景だ、としばし見惚れた。
とはいえ、いつまでもそうしているわけにもいかず、君は急ぎ足になると、土手へ向かった。
そして、どこかに階段があるかもしれなかったが、わからなかったので、君は草が生える土手を強引に駆け上がった。

土手の上は、歩行者と自転車のための遊歩道になっていた。
その道に沿って桜の木が植えられていて、先に広がる河川敷の公園までそれは続いていた。
遊歩道も公園も、ひっそりと静まり返っている。
公園は芝生が敷き詰められた広場で、野球場やゲートボール場やテニスコート等が併設されていたが、照明は落とされ、どこも無人だった。
君は、こんなところで背後から突然声をかけたら思いっきり警戒されるのではないか、と心配になった。
不埒な気持ちは一ミクロンもなかったから、不審がられたら心外だった。
しかし、ハンカチが落ちてからもう随分経っているし、遅くなればなるほどなんだか怪しくなりそうな気がして、君は勇気を振り絞ると、少し歩速を速めて彼女の背後へ距離を詰めた。
そして、街灯の光のエリアから外れた場所で、一度ゴクリと唾を飲み込んでから、君は声をかけた。

「すいません」

その声は若干上擦り、緊張のせいで自分でも少し震えているように思ったが、なんとか君は言った。
すると、女の子は足を止め、怪訝そうな顔で振り向いた。
無言のまま、君を値踏みするように見る。
君は「何か?」とか「はい?」とか、何かしら言葉の反応があるものだと勝手に想定していたので、無言で見つめ返されて緊張の針が一気にレッドゾーンまで振れてしまった。
それでも、声をかけて呼び止めた君がいつまでも黙っていることは不自然だったので、女の子の視線に怯えつつも、小声で「あのう」と言った。
そして反応を伺うような視線を彼女に向けつつ、ハンカチを差し出した。
「こ、これ、落ちましたよ」
ついに吃ってしまい、君はそれを誤魔化すように急いで付け加えた。
「あなたの、ですよね?」
女の子は君を見つめたまま、手を伸ばしてそれを受け取った。
「そうね」
彼女は言うと、君に訊いた。
「あたし、これ、どこで落とした?」
君は、とりあえず「ありがとう」くらいは言って貰えるとばかり思い込んでいたので、不意にそんなことを訊かれて混乱した。
どこで? と問われても、落ちたのはもうかなり前だし、場所なんて正確にはわからなかった。
だから、君はしどろもどろになりつつ、こたえた。
「どこかとかはちょっとわからないですが、バッグから落ちたのを見たもので……」
「電話に出たときかな?」
女の子は独り言のように言って小首を傾げた。
「ですね、たぶん」
君が同意すると、女の子は急に訝しげな顔をした。
「でも、電話がかかってきたのってもう五分以上前だし、もしかしてずっとつけてきたの?」
そう言われて君のパニックは頂点を迎えた。
最も恐れていた点を指摘されてしまった。
君はもうまともにこたえることかできず、渇ききってしまっていた唇を忙しなく舐めながら地面に視線を落とした。
「えっと、そのお、別につけてきたとか、そういうことじゃないんですけど……」
完全に挙動不審に陥りながら、君は必死に言葉を並べた。
内心ではこの状況が恐ろしくてたまらなかったが、M男としてはどうしようもなく昂ぶってしまい、あろうことかコートの下でペニスがムクムクと勃起を始めた。
女の子はそんな君を冷静に見下ろしながら、何気なくハンカチを広げた。
すると、先ほど君が付着させてしまった透明な汁の滲みが布地を透かしていて、女の子は怪訝そうな顔でその染みと君の顔を交互に見た。
君は裁判官が下す判決を待つ罪人のような心持ちで女の子の一挙手一投足に意識を向けていた。
女の子は、ハンカチを自分の鼻先に近づけ、その染みの部分の匂いを軽く嗅いだ。
そして次の瞬間、明らかに眉間に皺を寄せて唇の片方の端を苛立たしげに持ち上げながら君を睨み、鋭い口調で詰問した。
「お前、拾ったはともかく、そのあと、何した?」
女の子の迫力に君は完全に気圧され、体を硬直させた。
同時に、勃起も限界を迎えた。
「こんな汚いもん、もう要らんわ」
女の子は穢らわしそうに口元を歪めながらハンカチ無造作に丸めて桜の木の根元に放り捨て、それでもそのまま君が何もこたえられないでいると、君に歩み寄り、コートの胸元を掴んで捻り上げた。
「何したか正直に言わないと、警察に突き出すぞ、あ?」
君は射るような強い目で睨まれ、「警察」という単語にすっかり怯えながら、しかしコートの下ではペニスをそそり勃たせつつ、体を震わせた。
「おら、何とか言えよ」
女の子がコートの胸元を掴んだまま君を前後に揺すった。
体格通り、凄まじい力だった。
非力な君は、いいように揺さぶられながら、ただ恐怖を感じていた。
何度目か揺すられた時、コートのボタンが弾け飛んだ。
すると、コートの前がはだけて、ズボンから露出したままのペニスが彼女の視界に入った。
それを見て、女の子は激昂した。
「てめえ、変態かよ」
そう言って勢いよく君を突き飛ばした。
君は呆気なく地面に転がり、そのまま土下座をして許しを請うた。
「すみません」
もうとにかくひたすら謝って許して貰うしかなかった。
こんなところで性器を露出させてしまった以上、どんな言い訳ももう通用しない。
どこからどう見ても単なる変質者だ。
しかも女の子はおそらくハンカチに付着している染みが何であるかわかっていそうだった。
ということは、落としたハンカチを拾って親切に届けたといえば聞こえがいいが、実際には、延々と列車から尾行していて、たまたま落ちたそのハンカチを拾い、それでペニスを包んでオナニーをしてシミを付着させ、しばらくさらに尾行した末に手渡しながら卑猥な性器を堂々と開陳した、ということになり、事情を何も知らない他人が判断すれば、どう考えても変質者以外の何者でもない感じだった。
加えて、タイミングが悪いことに、露出したペニスは完全に勃起していた。

「ムカつくわ、マジで」

女の子は吐き捨てると、胸倉を掴んだまま君を土手の上の遊歩道から引き摺り下ろし、野球場のベンチの裏へ連れ込み、一本だけ立っている桜の巨木の根元で君を突き飛ばした。
その場所はどこからも死角になっていて、仮にジョギングや犬の散歩をしている人が遊歩道を通りかかっても見えないし、たとえ大きな声を出しても距離があるから届きそうになかった。

「全部脱げ、変態!」
女の子は凄まじい剣幕で君を蹴りつけながら命じた。
「はい!」
君はこれ以上女の子を怒らせないことだけを考えながら、彼女の命令に従い、急いで服を脱ぎ始めた。
恐怖心と寒さで、ペニスは一気に勢いを失って項垂れた──。

「お前なあ、いい加減、ハンカチに何つけか正直に言えよ」
ベルトを腰に戻し、ひれ伏している君の髪を掴んで引き起こすと、女の子は問うた。
満身創痍で泣いている君は、しゃくりあげながら、こたえた。
「すいません、チンポを包んでシコって我慢汁をつけてしまいました……本当に申し訳ございません、でも……」
「でも?」
女の子が、髪を掴んだまま君の前で股を広げながらしゃがんで、間近から君を冷たい目で見つめた。
「い、いえ、あの、決してわざとじゃなかったんです……我慢汁をつけて汚すつもりはなかったんです……」
必死に君は言ったが、女の子は君の言葉を全否定した。
「つもり、とかどうでもいいんだよ、やったこと自体キモいし、そもそも言い訳すんじゃねえよ、ド変態の糞マゾが」
そう言ってビンタを張った。
「申し訳ございません……」
君は項垂れた。
その視界に、足を広げてしゃがむ女の子の太腿の内側が飛び込んできた。
更に、その太腿と、裾とは呼べないほど極度に短いデニムのホットパンツの裾の僅かな隙間に、ワイン色のレースのパンティがちらりと覗いて、君は思わず生唾を飲み込んで凝視してしまった。

「何、見てんだよ、豚!」
女の子は立ち上がると、すかさず右足を上げて後方へ引き、勢いをつけて君の股間を下から抉るように蹴った。
ブーツの硬い甲が君の陰嚢を直撃し、君はたまらず飛び跳ねて絶叫した。

「うぎゃーー」

翻筋斗打って倒れこむ。

「おもしれえ」

女の子は爆笑すると、蹲っている君を無理やり引っ張りあげ、命じる。
「足広げて、膝で立て」
「はい……」
君は恐る恐る言われた通りの姿勢をとった。
すると女の子は再び君の股間を蹴り上げた。
脳裏に白い光がスパークする。

「アゥッーーーー」

君は呻いて華やかに跳躍した。
そして股間を手で押さえながら前へとつんのめり、そのまま倒れて体を丸めた。

その時、唐突に雨が降り出し、いきなり凄まじい豪雨になった。
強い風が吹き、桜の花びらが一斉に舞い散って、夜を白く染めた。

「うわっ、すごい雨」

女の子がベンチの屋根の下へ駆け込んだ。
しかし君は動けなかった。
股間の痛みに耐える君の裸の体を、冷たい雨が激しく容赦なく叩いた。
風と雨によって枝から強引に引き千切られた大量の花びらが、濡れた君の体に降りかかって貼りついた。

君は動けないまま、桜流しの雨に打たれ続ける。
そして傾いた視界の中、ベンチの軒下で雨宿りをしている美しい女の子を見る。
白い雨の幕の向こうに霞む、濡れた髪や肩を手で払っている女の子は、幻のように素敵だった。
君は体を丸めながら、すっかり萎えてしまっているペニスをそっと握り、思う。

いつになるかしれないが、もしもこの後、無事に解放されたら、先ほど女の子が捨てたハンカチを拾って帰ろう……。

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