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Archive for the ‘金の鎖、銀の鞭’ Category

春の雪はまだ止まない

季節外れの大寒波が襲来し、三月の日本列島は震え上がった。
もうそろそろ冬物の衣服はしまおうかと考えてしまうくらい温い日々が続いていたのに、一気に真冬に引き戻されてしまった。
その寒さのぶり返しは、なまじか小春日和を経験してしまっていたので、余計に厳しく感じられる。
しかも、昼を過ぎると、雪まで降り始めた。
その雪は「舞う」というより「降る」という量で、街は瞬く間にうっすらと白く染まった。
ただし、軽い雪ではあったので、何センチも積もることはなく、公共交通機関網の混乱にまでは至らなかった。

君はそんな日だったが、終業後、交通事故で入院している同性の友人の見舞いのため、国立の大きな病院へ向かった。
定時で職場を辞すと、地下鉄を乗り継ぎ、駅からは傘を差して十分近く歩き、病院に着いた。
その徒歩の間に、体はすっかり冷え切ってしまい、病院に着くと、君は病室へ向かう前に自販機で熱いコーヒーを買って、ひとまずロビーでそれを飲んだ。
外来の診察の時間が終わっている大病院のロビーは、照明が若干落とされ、閑散としていて、あまり居心地の良い感じではなかった。
尤も健康な人間にとって病院なんて、もともとそんなに印象は良くなくて、できれば近づきたくない場所ではある。
時々、看護師や医師がロビーを行き交い、見舞い客が出入りする様子を眺めながら、君はコーヒーを飲んだ。
そして紙コップが空になるとそれをゴミ箱に捨て、友人の病室へ向かうためにエレベーターまで歩いた。
時間帯的なものか、エレベーターは六基のうち四基が止まっていて、二基だけが動いていた。
ボタンを押すと、すぐに箱が来て、ドアが開いた。
君は乗り込むと、七階のボタンを押した。
エレベーターの中は君だけだった。
壁にレストランや喫茶室の案内が掲げられていたが、腕時計を見ると六時半で、営業はもう終わりのようだった。
七階について箱から出ると、病棟は少しだけざわついていた。
夕食の時間がそろそろ終わりなのか、廊下に配膳のための大きなワゴンが出ていて、介護士の人たちが忙しげに動き回っている。
君は館内案内で病室の位置を確認すると、目的の部屋へ向かった。
途中にナースステーションがあり、多くの看護師の姿があった。

見舞いを終えた君は、病院の建物を出ると、粉雪が降りしきる寒い雪の中、駅へ向かって傘を差して歩き出した。
念のためなのか、チェーンを装着したタクシーがジャリジャリと音を立てながら、ゆっくりと道路を走っていく。
こんな天候だからか、交通量は少ない。
バイクの自損事故で大腿骨など複数の箇所を複雑骨折して入院していた友人は絶対安静の割に元気そうだった。
薬のせいか痛みもあまりないらしく、個室ということもあって、他人に気兼ねすることなく小一時間、君は友人と話をして過ごした。
お菓子を差し入れ、見舞いの品としてクロスワードパズルの本を渡した。
君は人気のない街路を歩きながら、この後、どこかで簡単に夕食をとったら、風俗へ行こう、と思った。
君は筋金入りの変態M男だが、しかし今夜はSMクラブという気分ではなく、M寄りだが、女の子のコスチュームを選んでプレイできるイメクラへ行きたいと考えていた。
コスチュームは白衣を選びプレイをするつもりだ。
病院にいる間に、病棟で立ち働き、ナースステーション等に集っている看護婦さんたちを見ていたら、不謹慎にもそんな気分になってしまったのだ。
むっちりとしたお尻を包み込む窮屈そうな白いズボンの下にうっすらとパンティラインが透けて浮かんでいたり、こてんぱんに穿きこまれたソックスの爪先がサンダルの先からチラリと覗いていたり、そんな看護婦さんたちを見ていたら、たまらなくなってしまったのだ。
もちろん、だからと言って本職の看護婦さんたちとどうこうなんてできるわけがない。
だから疑似体験できるイメクラで、女体に溺れたくなったのだ。
それでも、君のベースはMだから、責めることは難しく、責められたい気持ちが強い。
だからソフトMコースのあるイメクラが、今夜の君にとっては、本格的なSMクラブより「気分」なのだった。
とはいえ正直、これだけ寒いと流石の君でも、やはり今夜はこのまま家に帰ろうか、という気持ちにもなった。
しかし、逆に言うと、こんな日だからこそ店は空いていて、可愛い子とプレイできるのではないか、という期待も持てた。
それに、どうせ店のある繁華街は、帰り道の地下鉄沿線途中にあり、駅から徒歩五分ほどだ。
だから、やはり行くことに決めた。
君は駅まで戻ると、蕎麦屋でたぬきそばといなり寿司のセットを食べてから、地下鉄に乗って繁華街へ向かった。

雪が舞う極寒の繁華街は、人通りが少なかった。
酔客の姿も疎らで、君は慣れた足取りで、裏通りにあるイメクラへ向かった。
通りに入ると、前方に店の派手な電飾看板が見えた。
店は地下にあり、君は狭くて急な階段を下りていく。
初めての客を安心させるように、各種コースの料金が階段の壁にも掲示されている。
君はいつも60分のソフトMイメージコースだ。
お金のないときは、イメージではなくヘルスコースを選ぶ。
そちらだとコスチュームや「ごっこ」的なサービスがないので、若干安い。
しかし今夜の気分は、必ずしも財布の中身に余裕があるわけではなかったが、イメージのソフトMコースだった。
コース名に「ソフト」と付いているが、「ハード」のコースが設定されているわけではない。
どのみち「ソフト」しか存在しない。
ちなみにイメージコースにはSコースもあるが、もちろん君は一度も経験がない。
尤もSコースはMコースより更に料金が少し高く設定されているので、君にとってはありがたいことではあった。

女の子はマジックミラー越しに選ぶシステムだ。
コースやコスチュームを選び、料金を支払ってしばらく待合室で待っていると、お待たせしました、とボーイに呼ばれ、別室へ向かう。
するとそこには大きなマジックミラーがあって、君が着席すると、室内の照明が落とされ、賑やかな音楽が大音量で流れ出して、ガラスの向こうに女の子たちの姿が浮かび上がる。
この瞬間が、君は大好きだった。
一気に気分が上がる。
女の子は七人いて、みんな同じOL風の極端にスカートが短い制服を着て、二列で椅子に座っている。
列には段差があるので、後ろの列でもちゃんと見える。
君は女の子たちを見ていった。
胸につけた名札に、源氏名が手書きされている。
「如何ですか?」
隣で傅いているボーイが訊いた。
君は、前の列の右端の大柄な女の子を選んだ。
「じゃあ、向かって右の端の人で」
源氏名で「〇〇ちゃん」と呼ぶのが恥ずかしかったので、君はそういう言い方をした。
「かしこまりました」
ボーイは恭しく頭を下げて、照明や音楽をコントロールしている人に合図を送った。
すると天井の照明が戻ってガラスの向こうが見えなくなり、音楽が止んだ。

──それから一時間後、君は満たされた気持ちでプレイルームを出た。
待合室の手前まで女の子に送られ、そこで接客はボーイに受け継がれ、君は「ありがとうございました」と頭を下げた彼に「どうも」とこたえて店を出た。
狭い階段が地上へとまっすぐ伸びている。
出口の四角く小さく切り取られた空は暗く、白い雪片が風に巻き上げられるように吹っ飛んでいた。
「寒っ」
君は思わず呟き、コートの襟を立てた。
プレイは濃厚だった。
君はエッチな看護婦さんに散々責められ、いろいろな部分を触り、いろいろな部分を舐めた。
大柄な女の子の体は柔らかく、その肉感に君は耽溺した。
そして互いに性器を貪る69の態勢で、君は呆気なく撃沈した。
女の子が君の顔を跨ぎ、君は下から、大きくて柔らかく豊かな尻を抱きながら股間に顔を埋めて性器を舐め尽くしながら、ペニスをしゃぶられ、しごかれ、イッた。
濡れやすい女の子で、果てた時、君の口の周りはベトベトだった。
君はプレイ内容を思い出すとニヤけてしまいそうだったので、思考を中断し、強烈な寒さの中、一段飛ばしで階段を早足で駆け上がった。
実際、寒くてたまらず、さっきまで熱り勃っていたペニスも、射精を果たしたせいもあるが、すっかり縮み上がってしまっている。

君は一気に階段を上りきると、そのまま路上へ飛び出した。
飛び出したといっても、歩道があることはわかっていたので、車に撥ねられる心配はなかった。
しかし君は、車ではなかったが、歩行者とぶつかってしまった。
「すいません」
君はすぐに謝った。
そこにいたのはこんな時間のこんな場所には不似合いな制服姿の女の子の二人組で、そのうちの一人と君はぶつかってしまい、女の子が「痛っ」と言いながら尻餅をついていた。
地面は雪のせいで濡れていて、女の子は手をつきながら「冷たっ」と言った。
「すいません、大丈夫ですか?」
君はもう一度謝って訊いた。
もちろんワザとではなかったし、不可抗力な出来事だったが、いきなり飛び出した君の不注意であることだけは確かだったので、君は、相手は自分より明らかに年下の女の子だったが、丁寧に対処した。
とはいえ、この寒さの中、女の子たちのスカートの裾はふたりとも極端に短く、そのためむっちりとした太腿が剥き出しになっていて、君はつい視線を向けてしまった。
尻餅をついている女の子なんて、立ち上がろうとするために無防備に膝を立てたから、スカートの奥に水色のパンティまで見えてしまった。
君は、慌てて、女の子たちから目を逸らした。
本心としては見ていたかったが、この状況でそんなことは許されなかった。
女の子が立ち上がり、「べちょべちょじゃん」とスカートの尻を気にした後、その場に立ち尽くしている君に向かって、歩み寄った。
「てめえ、ナメてんのかよ?」
そう言い、睨んだ。
連れの女の子も、君を取り囲むようにして立ちながら、一歩進みでる。
「ふざけんなよ、おい」
君は想定外の彼女たちの怒りに、戸惑いながら、更に謝罪の言葉を述べた。
「本当にすいません」
深く頭をさげる。
完全に君の不注意でぶつかって彼女は転んだのだから、謝る以外ない。
しかし、こんな風に恫喝されるみたいに怒りを露わにされると、恐怖を覚えた。
もちろん怒りはもっともだったが、君はまるで因縁をつけられカツアゲに遭っているような気持ちになった。
君は自分よりはるかに年下の女の子たちに怯えながら、しかし謝罪すること以外何をどうしたらいいかもうわからず、立ち尽くす。
幸か不幸か、誰も通り掛からない。
君はふたりの女の子たちに取り囲まれながら、上目遣いで恐る恐る彼女たちを見て、また「すいません」と言った。
女の子たちは腕組みをして、君を見つめている。
その視線のプレッシャーに耐えられなくて、君は地面に目を落とす。
女の子のひとりが、そんな君に言った。
「ていうか、この階段から飛び出してきたってことは、カネ払って抜いてきたところかよ」
小馬鹿にしたような響きを含ませて、女の子はせせら笑った。
君に突き飛ばされた方の女の子が、すかさず店の看板のキャッチコピーを読み上げる。
「エッチなお姉さんがイジメてあげる、だって」
手を叩いて笑い、君に訊いた。
「エッチなお姉さんにイジメられてきたのかよ、おい」
「は、はい……すいません」
「こいつ、Mかよ」
「M男? きめえ」
女子たちは口々に罵った。
君はただ好きなように言われ続けた。
いくら突き飛ばした負い目があるとはいえ、イメクラの利用を揶揄される謂れはなかったし、あまりに屈辱的な状況だったが、マゾとしては悪くないと感じるもうひとりの自分もいて、結局君は再び頭を下げた。
「すいません、申し訳ございません」
しかし、いくら君がM男でも、これ以上ここに留まることは耐えられなかったし、尻餅をついた女の子も特に怪我もなくもう大丈夫そうだったので、君は最後にもう一度だけ「すいませんでした、失礼します」と頭を下げて、この場から足早に立ち去ろうとした。
すると、ぶつかってはいない方の女の子がすかさず君の上着の裾を後ろから掴んで引き留めた。
「ちょっと待てって」
君は引っ張られて足を止めざるを得ず、離脱を諦めると、恐る恐る振り向いた。
依然として通りは無人だった。
凍えるような寒さの中、雪だけが舞い落ちている。
君が突き飛ばした女の子が、君の上着の袖を掴み、顎をしゃくった。
「ちょっと、来い」

君は裏通りから更に雑居ビルの間の狭い路地へと連行された。
「すいません、許してください」
君はふたりのどちらにということもなく、言った。
強引に振り払って逃げようと思えば逃げられそうな気はしたが、穏便に対処しないともっと酷いことになるかもしれなかったから、君は抵抗を断念した。
どうしても、突き飛ばして彼女たちの怒りの原因を作ったのはあくまでも自分、という負い目が拭いきれないため、強気の行動には出られないのだった。
だから君は必死に詫びた。
「本当にすいません、どうかお許しください」
しかし二人とも完全に無視して、聞く耳を持たなかった。
「ぶつかって突き飛ばしておいて何だよ、黙ってついて来い、M男」

君は薄暗い路地の突き当たりまで連行され、ドン、と背中を押されると、そのまま足元を蹴りで掬われて、尻から落ちた。
地面は濡れていて、たちまちパンツまで冷たさが染みた。
「ナメやがってよ」
女の子たちは、揃ってローファーの底で君の肩辺りを蹴って踏んだ。
君は恥も外聞もなく土下座すると、深々と頭をさげた。
「申し訳ございませんでした」
精一杯の誠意を示すつもりで、君は荒れたアスファルト舗装の地面に額をつけた。
そんな君の前に、君が突き飛ばした女の子がしゃがみ、髪を掴んで引っ張り上げた。
視線が上がると、君の目に、たまたまM字開脚になっている女の子の股間に覗く水色のパンティが飛び込んできて、咄嗟に視線を外した。
この状況でそんな部分を凝視してしまったら、火に油を注ぐことになりかねない。
「ていうか、イメクラってJKコスか?」
わざと脚を大きく開いて君を弄ぶように女の子が訊いた。
「い、いいえ」
君は小さく首を横に振った。
「看護婦さんです」
君はアホみたいに正直に否定した。
「どっちにしろ、きめえし」
女の子は吐き捨て、君の顔を至近距離から見つめると、唇を不快そうに歪めた。
君はその視線に怯え、一瞬だけ見つめ返した後、すぐに地面に目を落とした。
正直なところ、M男としての君はこの状況に昂ぶっていた。
通常なら、完全に勃起しているところだ。
しかしあまりに寒いし、先ほど抜いたばかりなので、流石の君でもペニスは漲ってこない。
それでも、気分としてはM男モードのスイッチが入ってしまっていた。
君は地面に両手をついて土下座したまま女の子を見上げ、訊いた。
「あのう、どうしたら許していただけますでしょうか……」
すると、腕組みして見下ろしていたもうひとりが言った。
「あのなあ、そんなもん、ちょっと考えりゃわかるだろ、誠意を示すんだよ、せ・い・い」
そう言って、君の肩を蹴る。
君はすぐにその「誠意」が「カネ」を意味していると悟り、こたえた。
「わかりました、お待ちください」
君は上着の内ポケットから財布を取り出し、中を見た。
しかし、財布の中身は寂しいものだった。
給料日前だし、イメクラの支払いの後だし、中にはもう二千円しか残っていなかった。
しかし、無いものは無いので仕方なく、君はそのなけなしの千円札二枚を抜き出すと、目の前の女の子に差し出した。
「すいません、これだけしか無いのですが……」
すると、女の子は二枚の千円札を奪い取るように手にした後、君の髪を掴んだまま、その頭を何度も揺さぶった。
「シケてんなー、マジで。つか、こんだけじゃ誠意なんて微塵も感じられんわ」
そう言うと、いきなりビンタを張った。
続けざまに何発か往復ビンタを連発し、黙って頬を打たれている君に訊く。
「お前、Mだからビンタされて嬉しいんだろ?」
女の子は更にビンタを張り、ぺっと君の顔に唾を吐いた。
君は、背筋をピンと伸ばしながら、反射的に肯定してしまった。
「はい!」
それは、日常を偽る仮面が剥がれ落ち、まるで蛹から蝶が飛翔するようにマゾの本性が出現した瞬間だった。
代金を支払うことで提供される「プレイ」ではないリアルなM的状況に、君は昏い興奮を覚えていた。
「ありがとうございます!」
君はビンタの礼を述べた。
「マジでキメえ、こいつ」
腕組みして立っている女の子が顔を顰めて言い、君を蹴り飛ばした。
君は為す術もなく後方へと転がった。
しかしすぐに体勢を立て直して正座をする。
「もしかして、おめえ、この状況で勃ってんのか?」
「い、いいえ」
君は頭を振った。
普通なら当然勃起しているが、寒すぎて勃っていない。
というか、正確には、勃たない。
「見せてみろ」
君を蹴り飛ばした女の子が命じた。
「えっ?」
「いいから、立って、下を全部脱げよ」
「ここで脱ぐのですか?」
「はあ? ここ以外、どこがあんだよ? あ? お前アホか?」
「すいません……」
「すいません、じゃなくて、さっさと脱いで起立しろ」
君は観念して頷いた。
「はい、失礼します」
君は立ち上がると、ズボンのベルトを外し、パンツと一緒に引き下ろした。
そして手を体の横にピタリとつけて起立した。
しかし案の定、ペニスは萎えたままだった。
しかも仮性包茎なので、いつもより寒さでいっそう縮こまっているペニスは、包皮が完全に亀頭を包み込んでいる上に、周囲の陰毛を咥え込んでいる。
それを見て二人は爆笑した。
「おい、お前のチンコ、毛を食ってるぞ」
バンバンと両手を大きく叩いて女の子たちは笑った。
「つうかさ、お前、失礼じゃね? 女の子の前で出してるのに萎えたままなんて?」
「は、はい……」
しかしそうは言っても、鋭い刃物のような寒風が雪とともに吹きつけていて、いくら君でもどうにもならなかった。
「とりあえず、ここで跪いて、シコれ」
君が突き飛ばした女の子が命じた。
「はい」
君は地面に膝をつくと、完全に萎んでいるペニスを右手で持ち、ひとまず皮を剥いた。
しかしすぐに元に戻ってしまう。
君は何度も皮を剥き、扱いた。
それでも、一向に勃起する気配がない。
君は焦り始めた。
痺れるように寒いのに体に汗が噴き出てきた。
君は必死に扱く。
なかなか勃起させられない焦燥感が、女の子たちに対する恐怖と緊張感によって更に増幅されて、君はパニックに陥る。
情けない目で女の子たちを見上げながら、謝罪する。
「す、すみません……勃たないです……」

女の子たちは並んで立ち、君を冷徹な目で見下ろしながら、腕組みしている。
君は縋るような憐れな目を女の子たちに向けた。
大人の男のプライドなんて最早微塵もない。
しかし女の子たちは慈悲の欠片も君には与えない。

「は? いいから勃つまで必死に扱け、全力で」
君が突き飛ばした女の子が冷淡に命じる。
そして、もうひとりが、言う。
「で、絶対に出せ、出すまで、帰さんから」

「は、はい……」

君は、無明の淵の底に突き落とされながら、たとえようのない惨めさに打ちひしがれつつ、みすぼらしいペニスを扱き続ける。

「しかし虚しくねえのかな、こいつ」
「それも含めて嬉しいんじゃね?」
無残で無様な自慰を眺めて笑いあう女の子たちの侮蔑の言葉が煌めきながら君を翻弄する。

鋭い風が孤独な路地を吹き抜けていく。
雪片が踊るように舞う。

「それにしても情けない姿だな」
「人間じゃねえよ、マジで」
女の子たちの嘲る声が君に降り注ぐ。

春の雪はまだ止まない。
一向に止む気配がない。

君は依然として縮こまったままのペニスを侘しく一心不乱に扱く。

カテゴリー:金の鎖、銀の鞭

たった一葉

仕事を定時で終えた君は、帰り支度を始めた。
周りの同僚たちも残業はしないようで、「お疲れ様でした、失礼します」と言って、次々に席を離れていく。
君は私物をブリーフケースにしまい、椅子の背に掛けていたジャケットを着ると、電話をその内ポケットにしまった。
そしてコートを取りに行こうとロッカーへ向かいかけた時、別の部署の女子社員から声をかけられた。

「ちょっと、時間ありませんか?」

彼女は、君とは所属する課が違うので、あくまでも年下の同僚というか、後輩というか、何れにしても部下ではなくて、そもそもそんなに親しくもない。
無論、顔は知っているし、会話を交わしたことはあるが、終業後にこんな風に話しかけられるなんて、君にとっては意外なことだった。
しかし若くて美人だし、もともと水泳をずっとやっていたとかで体躯が逞ましく、変態M男の君としては、密かに憧れる対象ではあった。
彼女はすでに私服に着替えを済ませていて、葡萄色のコートを着込んでいた。

「あるけど、どうした?」

君は足を止めると、年上の先輩の余裕みたいなものを言葉に滲ませながら訊いた。
そもそも、時間なんてものは、あるもないも、あるに決まっている。
君に退勤後の個人的な予定なんて滅多にない。
嫁も恋人もいないし、たまの飲食以外では、ひとりでこっそりと風俗へ行くくらいのものだ。
ただ、それにしても、たいして親しくもない彼女が自分に何の用事があるのだろう、とは思った。

「よければ、上の空いている小会議室で、お話ししたいんですけど。ここではちょっと」
彼女は心なしか声を潜めて言い、君の返事を待った。
「なんか意味深だなあ」
君はイマイチ彼女の意図がわからないまま曖昧にこたえた。
「わたしと二人きりは拙いですか? というか迷惑です?」
「いや、別に拙くはないし、全然迷惑なんかじゃないよ、同僚だし」
君は苦笑して首を横に振った。
実際、拙くなんかないし、迷惑なわけがなかった。
それどころか、どんな用事なのかは知らないが、彼女に誘われてそれほど広くない部屋で二人きりで同じ空気を吸えるなんて、君にとっては天にも上るくらい嬉しいことだった。
「あれだったら、職場の外でもいいけど?」
君が言うと、彼女はバツが悪そうに肩を竦めた。
「お茶を飲みながらとか食事をしながらとかでもいいんですけど、お店だと周りに人がいるじゃないですか? だから誰もいない会議室の方がいいんですけど……ダメです?」
「いいや、僕はどっちでもいいよ」
「よかった」
彼女はパッと顔を明るくして微笑むと、言った。
「じゃあ、わたし、先に行って待ってますから」
「わかった、コートを持ったら、すぐ行くよ」
部屋から出て行く彼女の後ろ姿を見送りながら、君は心を躍らせている自分を自覚した。
誰もいないところで話がしたいなんて、いったい何なのだろう。
もしかしたら告白とかされちゃうのだろうか、と考えて、そんなわけないよな、とすぐに却下した。
変態とかM男ということはもちろん職場では隠しているが、それを除外しても、男としての魅力なんて何もない君が彼女のような素敵な女性から好意を寄せられることは万にひとつもあるわけがない。
君はそう自分の立場を弁えて、身の程を知れ、と自らを戒めた。
それでも、彼女とふたりの時間を過ごせるという事実は、どうしても君を浮き足立たせてしまった。

君がコートを持って上の階へ移動し、誰もいない廊下を歩いて小会議室のドアを開けると、窓際の椅子に彼女が座っていた。
コートは脱いでいて、白いハイネックのセーターに短いシンプルなスカートというスタイルで、入り口に背を向けている。
「ごめん、待たせちゃって」
そう君が声をかけるより先に、彼女は椅子をくるりと回転させて降り向いた。
白いセーターの胸が大きく、その魅惑的な隆起に君は思わず注視してしまいそうになったが、なんとか理性でその衝動を抑えて、テーブルの上に適当に畳んで置かれている彼女のコートに視線を逸らした。
大きな会議用のテーブルが部屋の中央にあり、椅子は左右それぞれ三脚ずつ、合計六人まで使える部屋だ。
壁際に置かれたホワイトボードには何も書かれておらず、大きなモニターも沈黙している。
窓のカーテンは開いていて、見慣れたいつもの景色が広がっている。
静かなので、空調の微かな音が聞こえていた。
部屋は適度に暖かい。
彼女が立ち上がり、わざわざどうも、と頭を下げ、明かり点けますね、と言って壁のスイッチを操作して天井の蛍光灯を灯した。
それから、いちおう鍵をかけとこ、と悪戯っぽく笑いながらドアへ行き、ロックすると、元の椅子に戻って再び腰を下ろした。
「よかったら隣に座ってください」
そう君を促して、自分の隣の椅子を勧めた。
「まあ向かいでもいいですけど」
照れ臭そうに付け足して、彼女は笑った。
君も曖昧に笑顔で頷きながら、本当は隣に座りたかったが、がっついていると思われたくなかったから、テーブルを挟んで差し向かいに座った。
コートとブリーフケースを隣の椅子に置く。
彼女はテーブルの上にラップトップを置いていて、モニターに画面が出せるようにケーブルを繋いでいた。

「ああ、なんか疲れちゃった」

急に態度を崩して、親しげに彼女は言うと、脚を組んだ。
その際、剥き出しの太腿が君にも見えるように、わざと椅子を後ろに引いたように見え、君は慌てて目を逸らした。
もちろん本心としてはじっと凝視したかったし、できることならすぐ前まで行って跪きたくなったが、ぐっと我慢した。

「それで、僕に何の用?」
君は彼女の微妙な態度の変化に気づいたが、あまり深くは考えずに、職場の先輩風の余裕を見せながら訊いた。
「何の用?」
小首を傾げながら彼女は鸚鵡返しをして、妖艶としか形容しようのない、どこか冷めた、それでいて挑発するような、不思議な笑みを浮かべた。
そして、不意に、君の苗字を呼び捨てで呼び、君がびっくりした顔をすると、クスクスと笑った。
「どうしたんだい? 突然」
君はわけがわからなかったが、まだ何とか態勢を保ちつつ、戸惑いを隠して訊いた。
「呼び捨てもなかなか新鮮でしょ?」
脚を組み替え、さらりとそう言った彼女に、君は苦笑した。
「確かに新鮮だけどさ、でも、偉いとは言わないが、いちおうこっちはかなり年上で仕事では先輩だし、びっくりするよ」
「まあ、それはそうだろうけど」
彼女は同意しながらも、すぐに肩を竦めて見せて、ラップトップの蓋を開いた。
コンピュータがスリープから復帰すると、壁の大きなモニターも明るくなり、ラップトップのディスプレイが映し出された。
「でもさあ、こんなの見ちゃったから、もう無理じゃね?」
完全に君を年上とも職場の先輩とも思っていない口調で彼女は言うと、ラップトップのトラックパッドに指先を滑らせてブラウザを起動すると、予めブックマークしてあったウェブページを開いた。
「これ、超笑えるんだけど」
「あっ」
君はモニターを見て愕然となり、言葉を失った。
ウェブページはブログで、一枚の画像がアップされていた。
それは、ボンデージ姿の女王様と全裸で亀甲縛りを施されながら首輪を付けたM男が並んで立ち、M男が女王様にリードと一緒に勃起したペニスを持たれている画像だった。
女王様の顔の半分くらいは画像を撮影している電話で隠され、M男の顔の目の周囲と勃起したペニスを含む股間部分だけモザイクがかけられている。
破廉恥で卑猥な画像だ。
痴呆のように呆然となりながらモニターの画像に釘づけになっている君を彼女はじっと見つめながら、呟く。
「さあて、この全世界に破廉恥な姿を惜しげもなく晒している恥ずかしいM男は誰でしょう?」
君はモニターから視線を外して、恐る恐る彼女を見た。
彼女は君のオドオドした視線を真正面から受け止め、唇の端を歪ませて笑っている。
その画像のM男は、君だった。
しかし君は最後の抵抗を試みた。
「誰って……?」
君はわざとらしく首を傾げた。
そんな君に、彼女は最後通牒を突きつけるように、言った。
「あのなあ」
彼女はトラックパッドを指先で操作して画像を拡大した。
M男の胸元あたりが大きく映る。
「これ見てみ? 左の乳首の上にかなり大きな、琵琶湖みたいな形をした痣があるでしょ? あと、ここの黒子」
カーソルを動かして、左脇腹の黒子を示す。
「これってかなりの特徴だよね、で、髪型とか、顔は目だけはモザイクが入っているけどこの輪郭、でもって、全体的なこの体型のシルエット……知っている人が見れば丸わかりでしょう? チンコは見たことないからモザイクがあろうがなかろうが知らないけど?」
彼女は画像を拡大したまま君を見た。
君は汗が噴き出すのを自覚しながら、どう答えるべきか混乱していた。
この画像は紛れもなく自分だった。
一ヶ月ほど前に地方へ出張した時、SMクラブを利用してこの写真を撮った。
君はこのところずっとその地方都市へ出張するたびに同じSMクラブで同じ女王様を指名してプレイしていた。
それで前回、画像を撮られて、ブログにアップされた。
尤も、「撮られた」とか「アップされた」とかいっても、無断で強制的にされたことではない。
プレイの一環のような感じで、羞恥プレイの一種のように撮影し、もちろん君も許諾した上で撮影し、アップロードされたのだ。
むしろ後からそのブログを見て、君は何度もオナニーをしたくらいだ。
その際、ちゃんと「載せていい?」と確認されたし、女王様はアップする前に、君の前で君の顔やペニスを隠す画像処理を施してみせ、記事と共にアップロードすると、その画像はオリジナルのデータと一緒にクラウドや端末に保存する前に削除し、念のためにゴミ箱を空にするところまで君に見せてくれた。
だから画像は、この世界に加工済みのものが一枚存在するだけだ。
それも地方都市のクラブの、別に有名でもない女王様のブログの過去ログに埋もれながら、だ。
しかしそのたった一葉の画像が、君のことを知る人の目に触れてしまった。
こんなことがあるのだろうか、と君は愕然となった。
画像を撮ってアップした時は、さすがの君も少し不安になったことは事実だが、絶対にバレることなんかないって、と言われたし、君もバレるわけがないだろう、と安心していた。
実際、この一ヶ月、何事もなく過ぎていた。
それが今になってなぜ? しかもなぜこの女の子が知ったのだ? と君は訝しんだ。
たいして親しくもない彼女が、どうして君の体の特徴に気づき、自分だと確信したのだろう?
それが君は不思議でならなかった。
それでも、彼女が指摘した特徴は、確かに君を君と特定できる証拠になる。
黒子はともかくとしても、琵琶湖型の痣は致命的だ。
ただ、そんな裸にならなければわからないような特徴まで君のことを知る者なんて、滅多にいない。
日常的に裸でまぐわう恋人ならピンと来るかもしれないが、そんな相手はいないし、目の前にいる彼女はもちろん恋人ではない。
そもそもどうして彼女が自分の裸について知識があるのか、君にはわからなかった。
痣も黒子も服を着ていたら見えないし、わからないのだ。
そして、ブログのログなんて、あっという間にアーカイヴに埋もれていくのに、どうして今更彼女が見つけたのか、本当に何もわからず、君はただひたすら困惑した。
特に女王様のブログは、プレイの紹介も兼ねているので、日に何本もアップされる。
その中の一つの記事が知り合いの目に触れる確率を考えると、君は空恐ろしくなった。

「なんかめっちゃパニクっている感じだけど?」
君を弄ぶように言って、彼女は笑った。
「これ、お前だよね?」
年下の美人から「お前」と呼ばれて、君の理性は瓦解し、マゾ性が覚醒してしまった。
「は、はい……」
ついに認め、君は陥落する。
「でも、お前、思っているでしょ? どうして裸にならなければわからない痣とか黒子とか知っているんだろう? って」
「ええ、はい」
君は素直に肯定した。
すると、彼女はあっさりと種明かしをした。
「お前、覚えているかどうか怪しいものだけど、忘年会の時にすごく酔って、周りに強制されて、上半身裸でカラオケを歌わされたのよ、なんかノリノリで『二億四千万の瞳』を歌ってたけど、その時のお前の姿って、結構みんな写真に撮っているのよね、わたしも、別にお前なんか興味ないんだけど、なんかその場の雰囲気につられて撮っちゃって、で、なんとなく消去もせずに保存してたの」
そこまで言って彼女は一旦言葉を切り、またラップトップのトラックパッドを操作して画像の大きさを戻し、プログの記事をモニターに映した。
「実はわたし、S気があって、SM系のサイトとかよく見るのよ、で、嗅覚というか勘みたいなもので、男を見たときにMかどうかがなんとなくわかるの、それで、わたしの中でお前は間違いなくMだと思ってて、ある日、暇な夜に、ふと、もしかしたらお前みたいな輩って出張先でプレイしているんじゃないかな? と思って、検索してみたんだよね」
君は黙って聞いていた。
確かに裸になってカラオケを歌った記憶はある。
彼女が続ける。
「ただ、お前の出張先はわかるし、その街にあるクラブもすぐにわかって、所属する女王様のブログなんかも簡単に見つかったんだけど、なかなかお前は出てこなくて、見当外れか、と断念しようとした一昨日の夜、ついに発見しちゃったんだよね。なんかもう見つけた瞬間、やったー、って感じ。やっぱあいつ行ってたな、って。もちろんさっき言った特徴を、手持ちのカラオケの画像を見ながら確認して、確信したけど、それプラス、別に親しくないけど普段からお前は見てるから、髪型とか全体的な雰囲気とか、いろいろ検討した上で、もう間違いないって確定」
君は項垂れた。
よりによって職場の人間に見つかってしまうとは、一生の不覚だった。
画像を撮ったことを、そしてブログへのアップロードを承諾したことを、今更ながら激しく後悔した。
しかしいうまでもなく、自分以外の誰を恨むこともできないことだし、後の祭りだった。
「しかし、まあ、よくやるわよね」
彼女は言い、モニターに映るブログの記事を声に出して読む。
「えっと何なに?『最近、出張のたびに来てくれるこのマゾ豚、どうしてもわたしの足やら腋やらの匂いが忘れられないらしい(笑)ほんと、好きだよね~、足、どんだけしゃぶってた? 腋も、狂ったようにペロペロしながらクンクン匂いを嗅いでたよね~、で、めっちゃ盛って、おぞましい姿を晒しながら、めっちゃ出したね(笑)』だって」
彼女は爆笑した。
余裕のS性をもう隠そうともせず、気付けば、完全に君より優位に立っている。
君は俯いてその声を聞いていた。
やがて彼女は、すっと席を立ち、テーブルを回って君の傍に来ると、頭を叩いた。
「おい、変態のドM、お前地方で何やってんだよ?」
彼女は嘲笑い、君は俯いたまま謝罪する。
「すみません……」
「すみません?」
彼女は君の顔を覗き込み、ビンタを張った。
「すみません、じゃなくて、申し訳ございません、だろ?」
「申し訳ございません」
君は即座に言い直したが、彼女は続けて椅子を蹴った。
「偉そうに椅子なんか座りやがって、床で正座しろ、ほら」
「は、はい!」
君は弾かれたように立ち上がると、そのまま土下座した。
悲しいかな、その行動はマゾとしての条件反射みたいな感じで、そんな君を見て、彼女は爆笑した。
「この記事読むと、お前、面白いイキ方をしてるのね、『盛りのついた犬みたいに脚にしがみついてチ○コを擦り付けながらせっせと腰振って昇天(笑)』って、何?」
ブログの記事を更に読んで彼女が訊く。
君は恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら、小声で説明する。
「えっと、それは言葉の通りで、犬みたいにオナニーするんです……」
「すっごい見てみたいんだけど?」
「すいません……ご勘弁ください」
君は床を見つめて許しを請うた。
彼女を相手にMとしてはやりたいに決まっていたが、いくら何でも、さすがに職場ではできない。
そう思い、もう一度謝罪した。
「申し訳ございません……」
「じゃなくて」
彼女は君の髪を掴んで引っ張り上げ、顔にペッと唾を吐くと、強い口調で言った。
「これは頼んでいるんじゃなくて、命令してんだよ? だから、つべこべ言わず、今すぐここで、その犬のオナニーをやれ」
強烈なビンタを張って彼女は命じた。
「で、でも……」
それでもなお君が生意気にも躊躇していると、「でも?」と彼女は顔を顰めた。
「お前なあ、拒否れる立場だと思ってんのか? あ? どうしてもできないって言うなら、職場中にこの記事をバラすぞ?」
「ど、どうか、それだけはお許しください」
君は必死に言った。
「じゃあ、さっさと裸になって、やれ」
「はい」
君は服を脱いだ。
もう観念するしかなかった。
ただ、相当打ちのめされた気分だったが、マゾとしては絶賛全開中で、パンツを下ろすと、完全に勃起したペニスが飛び出して、彼女は呆れたように嘲笑した。
「お前、口ではああだこうだ言いながら、この状況でバリバリ勃ってんじゃん、マジもんのドMなんだな」
侮蔑の言葉で君を罵倒しながら、彼女は君の前に組んだ脚を投げ出した。
それ見た瞬間、君の中で理性のタガが完全に外れた。

「失礼します!」

君は瞬間的に一匹のマゾ犬と化すと、猛然と彼女の脚に抱きついた。
そしてペニスを柔らかい脹脛辺りに押し付け、太腿を抱え込んで、その肉感に耽溺しながら自ら股間に引き込み、せっせと腰を振る。

「うわっ、マジで犬だな、お前、超笑えるわ」

彼女が君を挑発するように脚を動かし、向こう脛でペニスを擦りながら笑う。
君はその快感に陶酔し、自分を解き放ちながら、どさくさに紛れてスカートの中に顔を押し込み、フンフンと鼻を鳴らしながら脚に抱きつき、ひたすら腰を振る。

カテゴリー:金の鎖、銀の鞭

インスタント・ウイング

年末年始の休暇の時期が終わって旅行代金が通常並みに下がった頃、君は一週間の休みを取ってひとりでハワイへ出かけた。
格安航空券とホテルを組み合わせて手配し、スーツケースひとつで旅立った。
リゾート地へ男ひとりで出かけるなんて侘しさと紙一重だし、二人旅に比べると割高だったが、君には目的があった。
目的とは、ホノルルのSMクラブを利用することだった。
SMクラブなんて日本国内にいくらでもあるが、君は時々ハワイへ行く。
別にハワイにこだわりがあるわけではなく、アメリカならどこでもいいので、本当はもう少し安く済ませられるサイパンやグアムだと助かるのだが、残念ながら君はサイパンやグアムにSMクラブがあるのかどうか知らない。
だからわざわざハワイまで出かけるのだが、そもそも、なぜ君が海外のSMクラブへ行くのかというと、それはプレイでラッシュ系の合法ドラッグが堂々と使用できるからだ。
以前は国内でも使えたし、アダルトショップやドンキでさえ売られていたのに、いつの間にか違法に指定されてしまった。
だから君は困った。
しかし、かといって、あんなオモチャのようなものをアンダーグラウンドで調達しようとは思わなかったし、だったら使用が合法な場所まで自分で赴けばいいのだ、と君は考えた。
芸能人などがロスやアムスへ行ってドラッグをやるようなものだ。
もちろんそれに比べるとラッシュなんて子供のお遊びみたいなものだが、こんなもので逮捕されるなんてバカみたいだし、仕方なかった。

ホノルルのSMクラブには、日本人の女王様もいるので、言語の問題もなく、その点も君にとってハードルが低かった。
つまり日本国内と変わらない気持ちでプレイができるのだ。
無論、望めば外国人の女王様とプレイすることも可能だが、君は語学力に自信がないので、いつも日本人か、日本語ができる日系人の女王様に調教を受ける。
ロスやニューヨークといった大都市だとネット検索で簡単にクラブが見つかるのだが、さすがに遠いし、日本語が通じるかどうかわからないから、というか多分通じないだろうから、君には難しい。
そういう言葉の問題で、もしかしたらアジアの、例えば香港なんかでももしかしたら君の望むプレイが可能かもしれなかったが、中国語なんて英語以上にわからないから、選択肢から外れる。
また、ヨーロッパに目を向ければ、ドイツやチェコなどいくらでもクラブはありそうだったが、ヨーロッパの言語なんて英語や中国語以上にまるでわからないから論外だった。
だから、君にはハワイが精一杯だった。
それにハワイは君にとって、高校の修学旅行で行った初めての海外だから、他の外国に比べると少しだけ敷居が低かった。

ホノルルのSMクラブは、ダウンタウンの古いビルにあるが、合法なのか非合法なのか、君は知らない。
その存在はネットで検索していて偶然知ったのだが大々的に広告が出ていたわけではなかった。
もしかしたらワイキキあたりにも同様のサービスがあるのかもしれないが、ストリートガールや普通のエスコートサービスのようなものしか君は知らない。
だから、本当なら比較的安全なワイキキから出たくはないのだが、ダウンタウンまで行くしかなかった。
最初、君は勇気を振り絞ってまずはメールでコンタクトを取った。
そして、現地入りしてからは電話で予約したのだが、全て日本語が通じた。
海外で風俗へ行くなんて正直、不安と恐怖感が拭いきれなかったが、日本語で意思の疎通を図れたことが君の背中を押した。
それでも、初めて夜のダウンタウンへ出かけた時は、緊張した。
治安が悪いと聞いていたし、実際、日が落ちると昼間に観光で訪れた時とは街の雰囲気が激変していた。
賑やかな通りも暗く寂しく人気がなくなっていて、ジャンキーなど怪しげな人間がうろうろしていた。
そこはリゾート地ハワイではなく、単なるアメリカのダウンタウンだった。
君はタクシーでビルの前まで乗り付けた。
所持品は、プレイ料金と往復の交通費の現金だけで、余計なものは一切持っていかなかった。
ビルは、エレベーターのない古い三階建てで、入り口の扉の付近のどこにも看板らしきものは出ておらず、どう見ても風俗の店があるようには見えなかった。
それでも、指定された住所には間違いなかったし、君はタクシーが去ると、いつまでも寂れた路上にいるのも怖かったので、思い切ってドアのノブに手をかけて引いてみた。
しかし、押しても引いてもドアは開かず、少しパニックになったが、よく見ると、ドアの脇の壁にインターホンがあり、用事がある人は押すように、とプレートが掛けられていた。
そして注意深くあたりを観察すれば、ドア周辺を捉えるようにセキュリティカメラが設置されていた。
インターホンを押すと、すぐに女性の声が聞こえた。
その返事は英語だったが、さすがにその程度なら君でも理解できたので、君は、予約している日本人ですが、とこたえ、名前を伝えた。
すると、少し待つように言われ、永遠に感じるほどの数十秒後、内側からドアが開けられた。
「いらっしゃい」
恐ろしく背の高い、どことなくクリスタナ・ローケンに似た雰囲気のグラマラスな美人の女性が言った。
君より頭二つ分くらい上空からその声は降り注いだ。
「イングリッシュ、ノー? 話セナイ?」
片言の日本語で金髪の女性は言い、君は申し訳なさそうに頷いた。
「ソーリー」
「オーケー」
女性は軽やかに笑いながら言って、中へと誘った。
ビルの内部は、外観から想像されるものとは全く違った。
ブルーの間接照明が無機質な内装を照らしていて、モダンな雰囲気だった。
しばらく廊下を進むと、広い部屋があり、そこがフロントとロビーになっていた。
革張りのゆったりとソファが置かれていて、カウンターに日系人の女性がいた。
彼女も、外国人の血が入っているからか、かなりの大柄だった。
君をここまで連れてきた女性は「あとはよろしく」と英語で女性に言って、カウンターの奥のドアへ消えた。
「さて」
日系人の女性が日本語で言い、君を見つめた。
君はそれだけのことで極度の緊張状態に陥り、硬直した。
「初めて? よね?」
「はい」
「じゃあ、簡単にシステムを説明しておくわね、了解できたら、お金を払って、プレイ」
「はい」
「事前のメールでも伝えていると思うけど、ここは日本の風俗店とは違うから、所謂『サービス』を期待するなら、やめておいたほうがいい」
「はい」
君は若干の恐怖を覚えながらも、了承して頷いた。

君はその初めての日のことを今でもはっきりとよく覚えている。
しかしプレイ後は、疲労困憊で、まるで虚脱状態のようになってしまい、記憶は曖昧だ。
結局、カウンターにいたのが相手の女王様で、彼女に見送られながらビルを出て、別のポリネシア系の女性が運転する店の車でワイキキのホテルまで送ってもらったのだが、車内では全く会話がなかったし、周りが暗いのでどこをどう走っているのかわからなかったし、気づくと窓の外にアラモアナセンターが見えて、そのままワイキキに入り、ホテルのエントランスの少し手前の路上で降ろされた。
君はチップを渡そうとしたが、彼女は微笑んだだけで受け取らず、走り去った。
プレイは、壮絶だった。
待望のラッシュを吸いながらまさに奴隷として扱われ、君はマゾとしてめくるめく時間を過ごした。
プレイの後、女王様と少し雑談をしたのだが、彼女の話によると、クラブの本店はロスにあり、そこは郊外の邸宅が丸ごとSMの館になっていて、伝説的な女王であるマダムが仕切っているということだった。
彼女も普段はロスにいて、たまにハワイにやってくるようだった。
また会えますか? と訊いたら、タイミングが合えば、と言われた──。

一月のハワイは、そんなに暑くない。
というか、夜ともなると、意外に肌寒さを覚えたりする。
君はホテルを出ると、ワイキキで二番目に賑やかな通りにあるアダルトショップでラッシュを買い、近くにある二十四時間営業のパンケーキのチェーン店に入って、オムレツとパンケーキの夕食をとった。
通りに面したテーブルで、ボリュームのある夕食を食べ、コーヒーを飲む。
考えてみると、アダルトショップだって、最初の時は緊張した。
入り口のドアは開いていたが、なんとなく入りづらく、何度も店の前を往復して、やがて勇気を出して入店した。
しかし、いざ入店したら、肩透かしを食ったような感じになった。
というのも、店員のお兄ちゃんは日本人か現地の日系かとにかく日本語が普通に話せたし、ラッシュ類を求める日本人は多いのか、店内を見回している君にすぐに「ラッシュですか?」と訊いてきた。
「はい」
と答えて、君は何種類かある商品の特徴を教えられつつ、選び、買った。
それでも、ラッシュ=ゲイのイメージがあるので、君は訊かれてもいないのに、もちろんマゾとしてSMプレイで使用するとも言わなかったが、「女の子と遊ぶのに使うんだけど、日本では禁止になっちゃって」みたいなことを話した。
店員もそのことは知っていて、「らしいですね、でも、うちはいつでも買えますから」と言った。
今夜は、その時のお兄ちゃんは店におらず、カウンターの中にいたのは外国人のおじさんだったが、片言の日本語が通じて、何の問題もなく君はあっさりとラッシュを手にした。
ちなみに値段は、いつも普通だった。

君は夕食を終えると、トーチの炎が揺れるワイキキの夜の通りをしばらくぶらぶらして腹をこなした。
南の島の涼しげな夜の風に吹かれながら適当に歩き、目についたABCストアで水を買って、飲んだ。
それから、ギャラリア近くのホテルのエントランスで客待ちしていたタクシーに乗り込んで、ダウンタウンへ向かった。
ドライバーは日本語を話せない人だったが、住所を書いたメモを見せると、すぐに了解した。
クラブはすでに予約してある。
女王様の指名はしていないが、日本語でプレイできる人を、というリクエストは通してあった。
タクシーは混み合う大通りを走り抜け、やがてダウンタウンに入ると、君が知っている限りだが遠回りなどはすることなく、目的地である古いビルの前にタクシーをつけた。
君は代金とチップを支払い、タクシーを降りた。
相変わらず夜のこのあたりは、不気味だった。
こういう用事がなかったら、絶対に近づきたくはない地域だ。
君は、水を一口飲んで緊張を和らげてから、ドアのインターホンを押した。
するとすぐに女性の声が聞こえて、数十秒後、ドアが開かれた。
「ハロー」
ビヨンセに似た褐色の肌の大きな美人が現れて、言った。
ハイビスカスがプリントされたスカートの丈の短いキャミソールドレスを着ている。
剥き出しの太腿が逞ましく悩ましい。
君もぎごちなく「ハロー」と返し、予約している名前を告げた。
彼女は微笑みながら頷き、人差し指を動かして「おいで」と中へ誘った。
ロビーに入ると、カウンターは無人で、ビヨンセに似た女性がそのまま君をソファに座らせてから、自分もその隣に腰を下ろした。
柑橘系の香水の甘い香りが君の鼻腔をくすぐる。
「私でいいかしら?」
その言葉は、見た目の印象とは違い、ほぼ完全なイントネーションの日本語で、君はびっくりした。
「えっ?」
思わず君がそう口に出すと、女性は笑った。
「日本人の人はみんな同じように最初は驚くから面白いわ、私、日系三世なの」
「そうなんですか」
「うん、日本語ペラペラよ」
「はい」
「たとえば、そうね」
女性はそう言い、続けた。
「魑魅魍魎が跋扈するこの世の中で変態と変質者は雲泥の差」
まったく一箇所も引っかかることなく滑らかに一息にそう言って、女性は訊ねた。
「……どう?」
「びっくりです」
君は、素直にその日本語能力に驚いた。
そして、こんな魅力的なビヨンセみたいな女王様に日本語でいじめていただけるのか、と考えたら、それだけで昂ぶってしまった。
「是非、お願いします」
「オッケー」
女性は笑い、君は支払いを済ませた。
その際、「これを使っていただきたいのですが」とラッシュの小壜を差し出した。
「ラッシュね、いいわよ。ガンガンいける?」
「はい」
「今、日本では違法らしいもんね、ここに来る日本のマゾ達の大抵が吸いたがるわ」
「そうなんですか」
「うん、多い」
女性は言い、次の瞬間、ふっと親しげな優しい印象を消して、君をじっと見つめた。
そして立ち上がると、君の前に来て顎に手をかけて上を向かせ、「立て」と命じた。
「はい」
君はマゾのスイッチが入るのを自覚しながら腰を浮かせた。

プレイのための部屋は三階にあり、階段で上がった。
女性が先に立ったので、君の目の前で、短いキャミソールドレスのスカートに包まれた圧倒的なボリュームの尻が魅惑的に躍動した。
部屋に入ると、そこは本格的な調教のための部屋で、壁には様々なタイプの鞭、様々な部位のための枷、様々な形状とサイズのディルド、様々な色や太さの蝋燭など、たくさんの道具が整然と並んでいて、来るたびに君は恐れ慄く。
レンガの壁には磔台があり、部屋のあちこちに三角木馬や檻などが置いてあって、高い天井からは滑車に繋がる鎖が何本も下がっている。
「裸で待っていなさい」
そう言い残して、いったん女王様は別室に消えた。
「はい」
君は部屋の隅へ行って、そそくさと服を脱いだ。
そして全裸になると、女王様が座るための豪奢な椅子の前で正座をした。
十分ほどして、女王様が再び登場した。
黒いボンデージに身を包み、踵の高いブーツを履いている。
その硬質な靴音の響きに、君の緊張は頂点に達した。
フローリングの床に視線を落として身を固くする。
女王様が椅子に座り、脚を組んだ。
君は一瞬だけ顔を上げて女王様を見上げた後、改めてひれ伏す。
「御調教、お願い致します」
女王様は無言のまま君の後頭部にブーツの足を置いた。

君は首輪を装着し、リードを繋いで持たれた。
それから全身に亀甲縛りを施され、その状態で正座をさせられた。
そして女王様は君の目の前の椅子に座って長い脚を組み、ラッシュの小壜を開封し、ティッシュに液体を吸い込ませると、それを華奢なガラス製のグラスに入れ、君の鼻を覆うようにそのグラスをあてがった。
「淫らな豚になりなさい」
女王様は冷徹に言った。
君は口を閉じ、鼻だけでゆっくりとその刺激臭を吸引する。
深く吸い、息を止め、口から吐く。
何度かそれを繰り返すうちに、独特な高揚感が脳を刺激し始めて、君は簡単に興奮状態になっていく。
ペニスが脈打ち、吸引を中断しようとすると、女王様が厳しく律する。
「まだダメ、もっと吸いなさい」
「はい」
君はクラクラとなりつつ、さらに気体を吸引した。
半年以上ぶりのラッシュは耐性がついていないからよく回る。
君は淫乱な豚と化しながら、「ああ女王様ー」と身悶える。
たまらなくペニスに触りたかったが、手も足もロープで拘束されているため、何もできない。
君は膝を揃えたまま腰を浮かし、もどかしげに女王様を見上げる。
女王様はそんな君をせせら笑いながら、ようやくグラスを退けた。
君は美しい女王様の顔を見上げた瞬間、瞬間的な翼を広げて華々しく飛翔した。

「女王様、ビンタしてください、お願いします!」

君は絶叫した。
女王様は笑みを消し、感情のない顔で、壮絶なビンタを張った。
体格が逞しいため、ビンタの威力も強烈だった。
君は呆気なく吹っ飛び、転がった。
女王様は椅子から立ち上がり、床に伏せた君の髪を無造作に掴んで引き起こすと、再び膝で立たせ、さらにビンタを炸裂させた。
今度は髪を掴んだまま往復ビンタを浴びせたので、君は転がることなく、打たれるたびに大きく左右に揺れた。
瞬く間に頬は熱を帯び痺れたが、ペニスはますます熱り勃っていった。
女王様が左手でペニスを握り、右手でビンタを張った。
君は凄まじい快感に弄ばれながら、貪欲に腰を振った。
「勝手に腰振るな、私の手はお前のオナニーの道具じゃない」
女王様は激高すると、君の股間を思いっきり蹴り上げた。
ブーツの硬い甲が君の玉袋の下にバスッとヒットして、君は跳ね上がった。
そのままぶっ倒れ、うつ伏せになった。
息が上がったが、すかさず女王様は更にラッシュを吸わせた。
「ほら、もっと狂え、豚」
「はい」
君は目を閉じ、ラッシュを吸引した。
暗い視界の真ん中に白い光の球が浮かぶ。
もう何か何だかわからなくなった。
気づくと、君は床でうつ伏せになって、まるで芋虫のようにもぞもぞと蠢きながら、フローリングにペニスを押し付けて腰を動かしていた。
「床とセックスしてるの? お前」
女王様が呆れ返ったように笑い、君の頬をブーツの底で踏んだ。
そのまま煙草の吸殻でも踏み消すように、グリグリと爪先を動かす。
「そんなに出したけりゃ、このまま一回出しな、豚」
女王様が命じ、君は朦朧としながらも腰を振りつつ謝意を述べる。

「ありがとうございます!」

君の傾いた視界に、ブーツの爪先が見えた。
女王様が、君のすぐ顔の前の床にぺっぺっと何度も続けて唾を吐いた。
その温かく甘い感触は、君の顔にも降りかかる。

「ありがとうございます!」

磨き上げられたフローリングの床の上で、唾の溜まりが白く光っている。
君は唇を窄めて床の唾を啜り、更に激しく腰を振る。

カテゴリー:金の鎖、銀の鞭

煌めきステイブル

今日はクリスマスだが、女性に飼われている君にはもちろん関係ない。
一応、姿形は人間だが、扱いは家畜に等しい君に、昨夜、サンタクロースが訪れることもなかった。
そもそも、もうプレゼントをもらって喜ぶ子供の年齢ではないし、キリスト教徒でもないし、クリスマス・イヴだろうが、クリスマス当日だろうが、君にとっては単なる冬の一日に過ぎない。

君は、厩舎の自分の房の隅で膝を抱えて座りながら、雨が降り続いている窓を見ている。
そして、考える。
マゾはなぜ、犬や豚呼ばわりされるのか、と。
ペットや家畜なら猫や牛でもよさそうなものなのに、まるでそういう決まり事があるかのように、変態マゾ奴隷を動物として捉える場合は、犬か豚だ。
勿論、マゾ自身に、犬や豚として扱われることに歓びを覚える者が多いのは事実だろう。
猫や牛として扱われたい、と願う者は、あまりいないかもしれない。
そういえば「馬」はある。
SM的に、ポニープレイは、トラディショナルな行為だ。
しかしその場合の「馬」は、犬や豚のように「貶め」る存在というより、道具に近い感覚のようだ。
馬にも調教は施されるが、犬や豚に対するそれとは趣がずいぶん違う。
馬に使う鞭と豚に使う鞭では、その用途が違う。
馬に対しては、あまり罰を与えるという感覚はない。
たとえば競馬の騎手だって、鞭は振るうが、躾や罰として痛めつけることが目的ではなく、それはより早く走らせるためだ。
しかし豚や奴隷に対しての鞭は、明らかに躾と罰のためのものだろう。
馬に装着するハミやハーネスと、犬につける首輪も、意味合いが少々違う。
むろん、馬も家畜の一種であることに違いはないが、なんとなく牛や豚とは扱いが違う。
また、馬をペットのように飼う者もいるだろうが、犬や猫とはやはり違う。

君は、馬ではない。
馬のように四つん這いになり、飼い主の女性を背中に乗せて歩くスタイルの調教もたまには行われるが、君のベースは「豚」だ。
犬のように扱われることは、確かにある。
全裸で首輪が君のベーシックなスタイルだし、リードを接続され、飼い主の女性に引かれて四つん這いで歩くその姿は、まさに犬だ。
しかし君は愛玩動物、つまりペットとはいえない。
所詮、君は家畜だ。
そして醜いから、やはり豚なのだ。
ペットなら、名前を付けて可愛がる。
家畜なら、名前なんか付けないし、可愛がりもしない。
そう考えるとわかりやすい。
君は紛れもなく家畜、豚だ。

君はいつも怯えたような眼をしている。
伏せがちのその眼から、いかにも卑屈な変態マゾらしい、弱々しい視線を投げる。
そんな極度におどおどしているような態度は、飼い主の女性を無性に苛立たせるらしい。
おまえを見ていると、殴りたくなる。
おまえを見ていると、蹴りたくなる。
おまえを見ていると、張り飛ばしたくなる。
飼い主の女性は、君によくそう言う。
ただし、憎しみ故ではない。
嫌いだからでもない。
単に殴りたくなる、単に蹴りたくなる、単に張り飛ばしたくなる、それだけのことらしい。
要するに君はマゾとして、女性のS性をごく自然に引き出せる存在ということだ。

もうすぐ正午だが、雨のせいか、房内は薄暗い。
天井に蛍光灯があるが、まだ点灯はしていない。
雨音だけが聞こえている。
それほど激しく降っている様子はない。
静かに一定の勢いで、しっとりと世界を濡らしている、そんな感じだった。
君は房の隅で、小さな窓を見上げている。
ガラスに降り掛かった雨が、下へと流れている。
平凡な日だ。
空調が効いているため何も身につけていない君でも、快適に過ごせる気温だ。
雨のせいで若干、湿度が高いが、汗ばむほどではない。
豚の厩舎としては、決して悪くはない環境だ。

厩舎の鉄製の扉が開く音がして、君は俄に緊張した。
窓辺を離れて廊下の前で正座をする。
靴音が響いてくる。
しかしその音は、ひとつではない。
何人か連れ立って歩いているようだ。
厩舎の廊下はセメント張りで、誰もが踵の固い靴を履いているのか、やけに大きく音が響いている。
声は聞こえないが、だんだん靴音が近づいてきて、君は正座をしたまま背筋をピンと伸ばした。

廊下に、飼い主の女性が現れた。
その手には、君の餌が入った鍋を持っている。
一緒に、ふたりの女性がいた。
ふたりとも飼い主の女性と変わらないくらい美しく、すらりと背が高い。
そんな女性三人が、厩舎内で正座をしている君を見下ろす。
「おはようございます」
君はひれ伏し、床に額を付けた。
もう朝とはいえないが、飼い主の女性が今日ここを訪れるのは初めてだったので、君はそう述べた。
しかし返事はない。
その代わり、飼い主の女性が連れてきたふたりのうちのひとりが言った。
「ほんとにキモい生き物ね」
君は頭を下げたまま、謝罪する。
「申し訳ございません」
「顔見せろ」
その女性にそう命じられ、君は怖ず怖ずと頭を上げた。
いうまでもなくその眼は泳いでいる。
そんな君の顔に、女性はいきなり唾を吐き捨てた。
生暖かい感触が君の顔全体に降り掛かった。
「ありがとうございます」
膝に軽く握った手を置き、君は言った。
「唾吐かれてお礼言ってるよ、こいつ、しかもチンコ勃ってるし」
もうひとりの女性が鼻で嗤いながら言った。
見ると、その手にはビデオカメラがあって、君を映している。
小さな赤いランプが点灯しているので、作動中だとわかる。

「とりあえず、餌ね」
飼い主の女性が、君の飼い葉桶の中に、手に持っていた鍋の中身を捨てた。
「ありがとうございます」
アルミ製の桶の中に、昨日の食事の残飯が放り込まれた。
味噌汁をベースにごはんや煮物などが雑多に放り込まれているから、昨日の残飯でも夕食ではなく昼食だろう。
やはりクリスマスなんて関係なかった。
その桶の中に、三人の女性は次々に唾を吐いた。
「こんなもの食べるなんて、ほんとに豚だわ」
ひとりが言い、飼い主の女性が肯定する。
「だって正真正銘の豚よ、こいつは」
そう言いながら、廊下と房を仕切る木製のバーを上げ、中に入ってきた。
他の二人も彼女の後に続いた。
狭い房内に三人もの女性が入ってくると、噎せ返るような甘い匂いが充満して、君の理性が大きく揺らいだ。
君は自らの暴走を抑えるためにも三人に見下ろされながら視線を床に落とし、生唾をごくりと飲み込んだ。

「立って」
飼い主の女性が命じ、君は「はい」とこたえて立ち上がった。
三人の女性たちは並んで立っていて、その真ん中に飼い主の女性がいた。
君は自分より背が高く美しい三人の女性と間近で対峙しながら、緊張で心臓がひっくり返るような感覚に陥っていた。
それでもマゾの性か、ペニスは猛々しく熱り立っている。
そのペニスを、飼い主の女性が無造作に握った。
そして、命じる。

「このまま自分で腰を振って、みんなの前で出しなさい」
「はい!」

君は両手を体の横に垂らしたまま、激しく腰を振った。
飼い主の女性の手の中で、ペニスが擦れる。
その途轍もなく情けない姿に、ふたりの女性が爆笑する。
ひとりはもちろんそんな君の姿を撮影している。
「これは笑える、うちのクラブのサイトに載せよう」
どうやらその女性はSMクラブの女王様のようだった。
君はだらしなく口を開きながら、鼻息荒く、腰を前後に必死に揺する。

「しかし壮絶にキモいわ」
腕組みをして君を鑑賞していた女性が唇の端を歪めて言う。
「すみません」
「豚なら豚らしくブヒブヒ言ったら?」
「あ、すいません……」
君は腰をヘコヘコ動かしながら言う。
「ブヒブヒブヒブヒ」
「マジ哀れで無様、かなり笑える」
ビデオカメラを構えている女性が爆笑する。
君は、飼い主の女性の柔らかくて温かい手の夢のような感触に酔いしれながら、黙々と腰を振り続けて謝る。
「ブヒブヒ申し訳ございませんブヒブヒ」
飼い主の女性は呆れ返った眼で君を見据え、そのペニスを軽く握っている。

じきに射精の衝動が君の中でせり上がってきた。
「あ、あ、すいません……もう出そうです」
ペニスがひくひくと脈打った。
「豚がなんで一丁前に人間の言葉を喋ってんの?」
女性のひとりが言い、君はすぐに言い直す。
「ブヒブヒブヒブヒ」
「何言ってるか、わかんないわよ」
女性たちがけらけらと笑う。
君はいっそう激しく腰を振る。
飼い主の女性は、君のペニスを握ったまま、体だけを横へ避けた。
君は絶叫する。
「ああああ、出ます、出ます、ああああ、すいません、ブヒブヒ」
女性がペニスから手を離した。
次の瞬間、ペニスの先端から白濁した液がどくどくと噴射された。
その煌めきは、放物線を描いて宙を飛び、セメントの床に落下した。
射精の快感に、君は膝が抜けそうになったが、なんとか持ちこたえる。

「うわあ、汚い」
「豚の射精だ」

女性たちが口々に罵る。
君は精液に塗れた貧相なペニスを股間にぶら下げたまま、荒い息を整えつつ、項垂れている。

飼い主の女性は、感情のない眼で君を見下ろしている。

カテゴリー:金の鎖、銀の鞭

アンジー

ああ、おっぱいが吸いたい。
女の子の柔らかくて大きな胸を両手で大胆に揉みしだき、乳首に吸い付き、狂ったように舐めたい──。

変態M男のくせに君は、時々そんな衝動に駆られる。
しかし残念ながら君はいい歳をして童貞だ。
一応、ヘルスへ行ったことはあり、キスをしたり女体に触れたり舐めたりしたことはあるが、挿入は未経験だ。
ソープへ行けば誰でも経験できるとわかっているが、なぜか君としてはハードルが高く、行ったことがない。
ヘルスだって、小心者の君としては、清水の舞台から飛び降りるくらいの勇気を振り絞って行ったのだ。
尤もヘルスでも、相手によっては本番ができると聞いたことがある。
しかし君が誘われることはなかったし、当然ながら君の方から持ちかけることなどできなかった。
だから、君は未だ童貞なのだ。
恋人なんて、一度も出来たことはない。
女の子に告白したこともされたこともない。
好きとかいいなあとか想う人は、時々いるし、過去にもいた。
とはいえ、その気持ちを伝える勇気は全くなかった。
その代わり、性的な欲望は見事に歪み、やがてフェチやマゾに目覚めた。
そうして君は異性と縁のないまま月日を重ね、いつしか立派な変態になった。
女の子とデートするとかヘルス等へ行くとかより先に君はSMクラブを経験し、女の子とキスをしたりおっぱいに触れたり舐めたりするより先に、女性のおしっこを飲み、まんこやアヌスを舐めることとなった。
つまり君の場合、普通はA(キス)、B(ペッティング)、C(セックス)と段階を踏んで経験していくが、全部をすっ飛ばしてSMへ行ってしまったのだ。

君は悶々とした気持ちのまま残業を終えて職場を出ると、駅へ向かった。
曇天の夜で、空には月も星もない。
君は歩きながら職場の女の子たちのことを考える。
職場には女の子が何人もいて、胸の膨らみや尻のボリュームを常に君に見せつけながら挑発している。
もちろんそれは君の思い違いというか勘違いで、彼女たちは君など眼中にない。
業務に関すること以外で君が彼女たちと会話を交わすことはないし、一緒にランチに行くこと等も絶対にありえない。
忘年会や新年会や職場の飲み会なんかだと、その他大勢とともに同席することはあるが、着席位置は離れるし、私的な遣り取りは生じない。
しかし君は彼女たちをチラチラと盗み見しては、おっぱいを揉みたいとか吸いたいとか、尻に抱きつきたいとか顔を埋めたいとかアヌスに舌を捩じ込んで舐めまくりたいとか、破廉恥な妄想を密かに勝手に抱いている。
ただ同時に、童貞を拗らせたM男としては、そういう自分を彼女たちから蔑まれたい、という欲求もある。
つまり、未だ童貞であることを見透かされつつひとりで昂ぶっている姿を憐れまれ、一生ひとりでシコシコしてろ、と吐き捨てられたくなるのだ。
いずれにしても、今夜は妙にムラムラしていて、君はヘルスにでも行って女体を貪ろうか、と思った。
君は紛れもなくM男だが、今夜はSM的な調教を受けたいという気分ではなかった。
だからヘルスへ行こうと思ったのだが、ふと現実的な気持ちになり、財布の中身を思うと、なんとも心許なくて、残念ながら諦めるしかないようだった。
(家でオナニーするしかないか……)
君は心の内で溜め息を吐き、暗い街路を歩いた。
やがて滑り台やジャングルジムやブランコ等が設置された広めの公園があって、小さなトイレの建物が見えた。
昼間なら子供達が遊んでいるのだろうが、夜の今は誰もいない。
君は尿意を覚えて、トイレへ向かった。

トイレに入ると、男女共用だった。
そのことがわかった瞬間、君の中に不埒なアイディアが浮かんだ。
ここの個室でオナニーしよう、と思ったのだ。
どうせ誰も来ないだろうし、男女共用なのだから堂々と個室に入れる。
何より公園の公衆トイレの割にはそんなに汚くはなかったから、そういう気持ちになれた。
さすがの君でもあまりに汚いトイレではそういう気になれない。
タイルの壁に清掃スケジュールの紙が貼ってあって、日付と時間が記されている欄に判子が捺してあり、どうやら一日に二度、役場かどこかの人間が掃除をしているようだった。
君はひとまず先に男性用でおしっこをすると、続いて個室に入った。
トイレは洋式だった。
君はドアを閉め、念のためにスライド式のロックを横へ滑らせて鍵をかけてから、上着のポケットから電話を取り出した。
そしてイヤホンのコードを接続して耳に装着し、動画ファイルを選んだ。
それはネットからダウンロードした動画で、M気のある童貞が年下の女の子たちにオモチャにされるというストーリーだった。
再生が始まると、いきなり耳元で女の子の罵倒が響いた。
小さな画面の中で、首輪だけをつけた貧相な全裸のM男が女の子達の前で跪き、ひたすら足の臭いを嗅いでいる。
何も考えずに再生ボタンをタップしたので、前回視聴を停止した場所から再開されたのだ。
つまり前回、そこで君は果てたのだった。
それはともかく、君はいちいち先頭まで戻さずそのままボリュームを上げると、ズボンのチャックを下ろして、すでに勃起しているペニスを引っ張り出した。
仮性包茎のそれは、完全に勃起しても、そのままではまだ亀頭の半分ほどを隠している。
君はその皮を剥くと、左手で電話を持ち、右手でペニスを握りながら、ゆっくりと扱き始める。
もう何十回と観て使っている動画だが、未だ飽きない。

画面の中のM男が裸になった一人の女の子の胸にむしゃぶりついた。
女の子はリードを持ったまま狂ったようにバストの膨らみに溺れているM男の態度に笑いまくっている。
M男は乳房を揉み、乳首に吸い付いているが、女の子は全く感じている様子がない。
君は画面の中のM男に自分を重ねてペニスを扱く速度を速めた。

と、その時。
ガチャガチャとドアを開けようとする音が突然聞こえて、君は、いきなり現実に引き戻された。
入ってます、とこたえようとしたが、その前に、ロックがしっかりとかかっていなかったのか、ドアが開いてしまった。
「あああ」
君は慌てて剥き出しのペニスを、扱いていた手でそのまま隠した。
「うわっ」
ドアを開けたのは女の子で、君を見た瞬間、そんな声を上げた。
「ちょ、ちょ、ちょっと……」
君は完全にパニックに陥りながら、左手に電話を持ち、右手で股間を隠しながら、彼女に背中を向けた。
まさかドアが開くとは思ってもいなかった。
誰か来るかもしれないとは思ってはいたが、こんな時間だし、おそらく誰も来ないだろうと油断していた。
だから突然ドアを開けられて、しかも女の子に開けられて、君は激しく混乱した。
女の子は、おそらくまだ十代後半くらいだろう、迷彩柄のパーカにホワイトデニムのミニスカートを履いていて、足元はハイカットの白いレザースニーカーという出で立ちで、栗色の長い髪が公衆トイレのさめざめとした蛍光灯の明かりを受けて艶めいていた。
化粧か香水かとてもいい匂いが君の鼻腔を擽る。
剥き出しの脚の肉感が素晴らしく、パーカを着ていても、その下の胸の大きな隆起がわかる。
「す、すいません」
なぜか咄嗟に君は謝罪し、ペニスをズボンの中にしまおうとした。
電話の画面の中の動画はまだ再生中だったが、イヤホンをしているため音が漏れてはいないこともあり、それを停止することは後回しにした。
とにかく性器をしまわなければ、と思った。
扱く手を止めると途端に亀頭の半ばを包皮が隠してしまう包茎をいつまでも晒しているわけにはいかなかった。

「何してんだよ」
明らさまに嘲笑を声音に含ませて女の子が言った。
それは怒っているというより呆れているという雰囲気の調子だった。
「すいません」
どうして鍵をかけた個室のドアを突然開けられた自分が謝らなければならないのかと多少は理不尽に思ったが、状況だけ鑑みればどう贔屓目に見ても君に正当性がある構図ではなかったので、君はとりあえずここは謝るしかないと考えた。
そして、しまうものをしまったらそそくさと逃げ出す、それしかないと思った。
しかし緊張のあまりペニスがなかなかズボンの中に収まらなかった。
しかも相当慌てたからか、チャックが生地を噛んでしまい、うまく動かない。
そんな君を見下ろして、女の子はせせら笑った。
大柄な女の子で、靴のせいもあるかもしれなかったが、君より背が高かった。
ちょうど電話のディスプレイが彼女から見えて、女の子は言った。
「何見て変なことやってたの? ちょっと見せてみ」
そう言うと女の子は君の返事を待たずに携帯電話をひったくった。
その拍子にイヤホンが抜けて、電話本体のスピーカーから大きなボリュームで音声が流れでてしまった。
動画の中のM男が女の子の乳に酔いしれながら、消え入りそうな憐れな声で哀願している。
「腋も舐めさせてください」
「しょうがない変態だな、ほら舐めろ」
ケラケラ笑いながら腕を大きく持ち上げた女の子の腋にM男は顔を埋めながら歓喜する。
「ありがとうございますー」
リードを短く持たれながら半眼で舌を伸ばし、フンフンと鼻を鳴らしながら腋に顔を埋めて舐めあげ陶酔し、同時に自慰をしているM男を見て、電話を取り上げた女の子は爆笑した。
「なんだよ、これ」
「すいません」
「超必死に舐めてて笑えるー、しかもシコってるし」
小さな画面の中ではそうして腋を舐めながら扱いているM男の顔に、別の女の子の足が伸びてきて、素足の爪先でM男の唇を弄び始めると、M男は腋や胸への執着を中断し、その足の指を口に含み、舐め始める。
「こいつ、何者だよ」
女の子が呆れたように笑った。
君はひとまずペニスをしまうことを断念し、女の子から電話を奪還しようと手を伸ばした。
「すいません、返してください」
しかしその君の手はすぐに女の子によって払いのけられた。
「いいから、ちょっと待て」
女の子は吐き捨て、その場にしゃがんだ。
その際、無防備に短いスカートの裾がめくり上がり、パンティが丸見えになった。
ピンクの小さな布に、君の視線は釘付けになる。
女の子がすかさず君を見上げて言う。
「パンツ見て、興奮するのか?」
「すいません……」
君はその通りだったので素直に認めて俯いた。
仮性包茎のペニスを晒したまま、タイル張りの床に目を落としつつ、しかしそれでもチラリとまたパンティを盗み見してしまう。
「ねえ、こんな動画見てシコってたってことは、M男?」
「ええ、まあ……」
恥ずかしさで顔が真っ赤になるのを自覚しながら君は否定しなかった。
この手の動画を見ていてM男ではないなんて理屈は通じないだろう。
電話の画面の中の女の子が足を舐め続けているM男に言う。
「さすが童貞を拗らせたM男、やることなすことキモいわ」
そのセリフを聞いて、女の子が笑いながら君に訊く。
「もしかして、童貞?」
「は、はい……」
違うと答えても良かったが、今更そんな見栄に何か意味があるとも思えず、肯定した。
「っていうか、お前、いくつ?」
明らかに自分より遥かに年下の女の子に「お前」呼ばわりされたことにM男として君は興奮しながら、しかし小声で恥ずかしげに答えた。
サバを読んでも仕方ないので正確な年齢を告げると、女の子は手を叩いて爆笑した。
「マジかよ、お前、つうかその歳までいったい何してたんだよ? ひたすらずっとシコシコか?」
女の子は侮蔑の嘲笑を容赦なく君に浴びせ、自分の年齢を伝えた後、続ける。
「あたしなんかまだ十代でもバンバンやりまくってるのに……だいたいお前さあ、あたしが生まれた時、いくつよ?」
君は頭の中で引き算をして爆発的な羞恥心に襲われた。
しかしこんな包茎のペニスを丸出しにした憐れな格好を晒している状態で今更気取って見せても無意味だろうから、計算の結果の年齢を述べた。
「だろ? なのに今のこの状況、どうよ?」
「恥ずかしいです……」
君は項垂れた。
沈黙が落ちると、電話からM男の喘ぎ声が響いてきて、君はいっそう恥ずかしくなった。
そんな君を、女の子は下から無遠慮に見上げる。
その強い視線に射抜かれて、君はつい口走ってしまう。
「お願いします、セックスさせてください! 筆下ろししてください! お願いします!」
君は目を閉じて一気に言い、頭を下げた。
「はあ?」
女の子は立ち上がり、君の顎に手をかけて前を向かせた。
君は恐る恐る目を開けた。
化粧映えのする派手な女の子の綺麗な顔が間近にあって、君はゴクリと生唾を飲み込み、視線を泳がせる。
そんな君に、女の子は大袈裟に溜め息を吐いてみせる。
「そんな情けない、しかも皮被りの小さなチンコで何ができるんだよ、無理だわ」
「そこを何とか、何でもしますから、命令してください、そして色々教えてください、何でもします、お願いします!」
君は必死に食らいついた。
すると女の子は再びしゃがんで君にパンティを見せつけながら、命じた。
「じゃあ、ここで一所懸命シコシコしながらお願いしてごらん? できる?」
「はい! できます!」
君は右手でペニスを持つと、猛然と自慰を開始した。
女の子の視線を感じると、感度が増して、一気に熱り立った。
君はそれをひたすら扱き上げながら、懇願する。
「お願いします、セックスさせてください、おっぱいを吸わせてください、お願いします! お願いします!」
君は場所が場所だけにそれほどの大きな声は出さなかったが、彼女の大きなバストを見つめてその感触を想いながら、それなりに気持ちを込めて言った。
遊び慣れていそうだから、もしも経験させてもらえれば、いろいろなことを教えてもらえそうだった。
君は彼女の体を夢見ながら、口を半開きにして猛進する豚の如くひたすら夢中で扱く。
「いつもそうやってくっせえチンコ必死にシコシコしてんの?」
「は、はい……そうです」
「お前、いい歳ぶっこいてどんだけオナニーが好きなんだよ?」
「すいません……」
君は息を弾ませながら謝るが、無論その間も決して手は止めない。
「おぞましすぎて超受けるんだけど」
バンバンと手を叩いて女の子は大笑いし、君の顔を見上げた。
「あーでも、ごめん、やっぱ無理無理、キモすぎて、無理」
顔の前で大きく手を振って軽やかに笑いながらあっさりと宣言し、続ける。
「お前みたいな変態はオナニーで充分だって、ほらほら、このままシコシコしていっちゃいなよ、見ててやるから、それだけでも嬉しいだろ?」
「はい……」
確かに見られながらする自慰は興奮するし、嬉しかった。
しかも見てくれているのは若くて美しい女の子なのだ。
しかしセックスできないことには落胆した。
それでも、君はもう止まらなかった。
はあはあはあはあ、と息を荒げながらそのまま激しくペニスをしごき続け、やがて射精の衝動を迎えた。
「あ、あ、イ、イキそうです……」
目を閉じ、手を動かしながら声を漏らす。
「あたしに汚いもん掛けるなよ」
そう言い、女の子は腰を浮かすと、横に位置をずらした。
その数秒後、君は華々しく射精した。
大量の精液が亀頭の先端から噴出し、放物線を描いて床に落下した。
「本当に出しやがった」
苦笑混じり女の子が言った。

君が自分の精液で汚れてしまった手をハンカチで拭っているうちに、女の子は立ち上がり、依然として再生が続いている電話を君に差し出した。
「じゃあ行くわ」
君が電話を受け取ると、それだけ言って、トイレから出て行った。
余韻も何もなかった。
女の子は振り返らず、そのままどこかへと立ち去ってしまった。
君は動画の再生を止めてプレイヤーを終了してから電話をポケットに入れ、床に落ちている自分の精液を見つめながら、強烈な虚しさに襲われた。
しかしいつまでもここでこうしているわけにもいかなかったので、君はペニスをズボンの中に収めると、個室を出て、手を洗った。
そしてトイレを出た。

夜の公園は無人だった。
女の子の姿はもうどこにもない。
君は電話を取り出し、イヤホンを接続して耳に差し込んだ。
そしてミュージックプレイヤーを起動し、適当なプレイリストを再生すると、「アンジー」が流れてきた。
君は大きく深呼吸し、空を見上げた。
月のない空は、雲が垂れ込めていて、真っ暗だった。
君は「アンジー」を聴きながら駅への道を歩き出した。

カテゴリー:金の鎖、銀の鞭

幽香

取引先の会社の幹部の奥さんが亡くなり、翌日の葬儀には支店長や本社から社長も来て参列するが、とりあえず今夜の通夜へは君が行くように上司から命じられた。
別にそれは君が重要なポストにあるからではない。
支店長は接待ゴルフだし、社長は物理的に来られないし、そして現在の担当者チームは別の顧客との折衝のため地方へ出張中で、言葉は悪いがたまたま暇で、相手の会社に対してある程度勝手がわかっている君にお鉢が回ってきただけだ。
相手の会社はもう長い付き合いの顧客で、以前、君が担当していたことがあった。
とはいえ、その幹部は知っているが、亡くなった奥さんとは当然ながら面識は全くない。
今回の葬儀の喪主でもある幹部の方は、君が付き合っていた当時は営業統括部長だか何だかそんな役職だった気がするが、現在は常務取締役まで出世しているらしい。
そのため、社葬ではないのだが、会社関係も列席することになっているらしかった。
君は香典を受け取ると、少し早めに退社し、安売りの紳士服店に寄ってブラックタイを買った。
背広はダークスーツだから問題はなかったが、タイがオレンジだったから、さすがにそのままではまずかった。

正直、気乗りがしないなあ、と思いながら、君は通夜の会場である寺の最寄り駅まで列車に揺られた。
まだ夕方のラッシュ前なので、車内は空いていて、ロングシートの真ん中あたりに座ることができた。
当然のことだが、通勤通学の時間帯とは、乗客の層が全然違う。
サラリーマンや制服姿の学生は少なく、大学生くらいの若者やおばさんや初老以上の人たちが目立つ。
外回りの営業マンみたいな人もいるが、少数派だ。
ただ、そのほとんどが携帯電話を取り出して、画面を見つめたり弄ったりしている。
すぐ隣に座るいい歳したおっさんが妙に真剣な顔で一心不乱に画面をスリスリしていたので、君は(一体何にそんなに夢中になっているのだろう)と興味にかられてちらりと覗き見した。
すると、おっさんが熱中していたのは中学生や高校生と変わらないパズルゲームだった。

君は「罪と罰」の下巻の文庫本を読みながら、向かいの席に座る女性を盗み見した。
人妻っぽい雰囲気の三十代くらいの女性で、綺麗な人だった。
普段の君なら、あまりそういう人に興味は惹かれない。
電車の中などであれば、太腿をむき出しにした制服姿の女子学生にまず目がいく。
しかし今日の場合、その層の乗客は見当たらなかった。
だから大人の女性を観察して楽しむことにした。
君はさりげなく女性の左手を確認した。
すると薬指にリングが光っていた。
ということは、既婚者だ。
既婚者ということは、子供があるのかないのかはわからないが、セックスをしていることは確かで、こんな風に電車の中で澄まして座っていても、自宅のベッドでは色々なことを経験しているはずだ。
それを想像すると、君は密やかに勃起してしまった。
素敵な服を身に纏っていても、ベッドでは裸になり、快感を貪っているのだ。
ペニスを咥えたり、いろいろな部分を舐めたり舐められたり、結合してあられもない声を漏らしながら激しく腰を振る。
男は旦那だけか、それとも浮気していて他にも相手がいるのかわからないが、とにかく男を咥えこんでいる。
淫乱な女だ、君はそう思う。
スケベな牝だ、お金を支払わずに女性と触れ合ったことのない変態M男の分際で君はそう思う。
そして、平和で長閑な夕刻の電車の中でふしだらな妄想の翼を広げる。
どんなパンティを履いているのだろう。
陰毛は薄いだろうか、濃いだろうか、きちんと剃って整えているのだろうか。
こんな時期でも腋の毛の手入れはしているのだろうか。
そもそもムダ毛は剃っているのか、永脱しているのか。
セックスの頻度はどれくらいだろう。
フェラチオは好きだろうか。
クンニはどうだろう。
69なんかは日常茶飯事だろうか。
尻の穴でセックスをしたことはあるのだろうか。
オナニーはするのだろうか。
バイブとかローターとか持っているのだろうか。
街中などでタイプの男を見ればチンポを想像したりするのだろうか。
そしてしゃぶりたいとか挿れたいとか考えるのだろうか。
黒いストッキングに包まれた爪先は、どんな香りを漂わせているのだろう。
足の匂いフェチの君は、女性の足元に跪いてヒールを脱がし、両手で足を掲げ持って爪先に鼻を押し付け足の匂いを嗅ぎたい、と激しく身悶える。
携帯電話を弄っている妙齢の女性を盗み見しながら、君は小説なんて実際にはほとんど読んでおらず、たまにページは繰ったが、ストーリーなんて全く頭には入ってきていなかった。

そうして小一時間ほど列車に揺られ、生涯で初めて降りる駅で下車すると、現金で買った切符で改札を抜けて駅前広場に出た。
秋の日はそろそろ暮れ始めていて、風が冷たかった。
地方都市のこじんまりとした駅前は、ささやかな繁華街になっていて、ネオンや電飾看板に光が灯り始めていた。
腹が空いていたので、夕食を食べておこうかと考えたが、遅刻は厳禁だし、ひとまず用事を済ませてからの方が落ち着いてご飯を食べることができるだろう、と思い、このまま寺へ向かうことにした。
駅から寺まではタクシーで行くように言われていた。
駅前広場に立って見回すと、バス乗り場には人の列ができていたが、タクシー乗り場は閑散としていた。
君は客待ちしているタクシーに乗り込み、寺の名前を告げた。
するといちいち住所は言わなくても、運転手はすぐに了解し、タクシーは走り出した。
腕時計を見ると、午後六時少し前だった。
通夜は七時からだと聞いていた。
「どれくらいかかりますか?」
君は運転手に聞いた。
「そうですね、今の時間だと、バイパスがちょっと混むかもしれませんが、それでも十五分もあれば着きます」
運転手が答えた。
君は、ちょっと早すぎるな、と思いながら、「どうも」と礼を述べ、訊いた。
「寺の近くで、時間を潰せるような喫茶店とかファミレスとかって、あります?」
「いやあ、何もないですね、というのもそのお寺は山の方で、店らしいものなんて周りには一軒もありません、お客さん、お通夜か何かですか?」
君の服装からそう思ったのだろう、運転士はルームミラー越しに君を見た。
「ええ、会社関係の方が亡くなりまして」
「そうですか、ところでお戻りはどうされるんですか?」
「特に決めてないですが」
「よかったら」
運転手はちょうど信号待ちで止まると、体をひねって名刺を差し出した。
「帰りの足がなかったら呼んでください」
「わかりました」
君は名刺を受け取ると、それを上着の内ポケットにしまった。

「着きました」
タクシーが止まったのは、なかなか立派な山門の前で、大きな寺院だった。
葬儀の案内を示す看板が出ていて、山門脇の広い参詣者用の駐車場には多くの車が止まっていた。
君は料金を支払ってタクシーを降りると、山門をくぐった。
まだ時間には早かったが、家名を記した提灯が灯り、白と黒の鯨幕が張られ多くの花輪が飾られた境内には、すでに多くの弔問客がいた。
テントが出ていて、受付も設置されている。
会社の従業員らしき人たちが手伝いに来ていて、動き回っている。
もう担当を外れて何年も経つので、知った顔は見当たらなかった。
君は受付に立ち寄り、香典を包んだ袱紗を持ちながら、順番を待った。
そして自分の番になると、簡潔にお悔やみを述べ、袱紗を開いて香典袋を取り出し、手渡した。
それから記帳し、受付を離れた。
通夜の会場は本堂だったが、開始まではまだ時間があった。
こういう場に不慣れな君は、とりあえず電話で上司に到着したことを連絡し、境内を見回した。
大きな寺だったが、時間を潰せそうな場所はなかった。
不謹慎だが、これが火葬場だと、飲み物の自動販売機などが置かれた休憩スペースがあるのだが、寺にはない。
本堂の隣の建物内に親族や参列者のための控え室があって、人の出入りがあったが、知り合いの全くいない君には入りづらかった。
しかし本堂を覗くと、喪主である嘗ての統括部長、現在の常務の姿が見えたので、君は挨拶に向かった。
相手はもちろん君のことを覚えてくれていて、礼を述べた。
そして近くにいた若い女性を呼び止めると、君を控え室へ案内してお茶を出すよう頼んだ。
その女性に、君は見覚えがあった。
今はどうか知らないが、君が出入りしていた当時は会社の受付にいた女性で、君はM男としてその冷たい雰囲気に惹かれていた。
親しいわけではなかったが、言葉を交わしたことはあるし、名前も知っている。
君は会社に出入りしていた頃を思い出し、懐かしさのようなものを感じながら、美人が喪服を着るとこれほどまで壮絶に艶っぽくなるのか、とつい彼女に一瞬だけ見惚れてしまった。
「わかりました」
女性は喪主に愛想の良い返事をして、君を誘った。
「こちらへどうぞ」
君は、ストッキングを履いているだけのむき出しの彼女の爪先にドキドキしながら、言った。
「お久しぶりです、覚えていますか?」
君が名乗って訊くと、彼女は微笑みを浮かべて頷いた。
「ええ、もちろん」
彼女が先に立って廊下を進むんだ。
やがて「控え室」と手書きされた紙が貼られた部屋があったが、彼女は素知らぬ顔でその前を通り過ぎ、配膳室の傍を通り抜けると、人気のない建物の奥まった部屋まで歩いた。
そして襖を開けて君を中に入れ、襖を閉めた。
そこは大きな座敷机が置かれているだけの六畳ほどの和室で、誰もいなかった。
「ここは?」
戸惑いながら君が聞くと、女性は座敷机に座り、足を組んだ。
机の上に灰皿が載っていて、女性は煙草に火をつけると、煙をふうと吐き出した。
「休憩室、というか喫煙室」
そう言って、女性は足を組み替えた。
「ああ、疲れる」
彼女は気怠げに首を回し、君はどうしたらいいのかわからないまま立っていた。
しかし君の目線はほとんど無意識のうちに彼女の爪先に落ちてしまう。
「そんなに足が好きなの? 相変わらず」
女性がせせら笑いながら爪先を動かし、君は激しく混乱した。
「え? どういうことですか?」
「とりあえず座れば?」
女性が畳の床を顎をしゃくって見せて、君は「は、はい」と頷くと、腰を下ろした。
そして、ごく自然に胡座をかくと、女性は「はあ?」と煙草を咥えたまま眉間に皺を寄せた。
「正座でしょ、普通」
「あ、すいません」
君は即座に反応して、正座に座り直した。
「ったく、マゾ丸出しだね、未だに」
彼女は煙草を吹かして君を冷めた目で見下ろした。
しかしそんな風に言われても、君は意味がわからなかった。
君が変態M男であることは紛れもない事実だったが、彼女にそのことを告げたことはない。
匂わせたことすらない。
会社を担当していた時も、ついそういう目で見てしまうことはあったかもしれないが、隠していたし、それ以上に事態が発展したことは一度としてなかった。
「ていうかさ、丸分かりなんだって」
彼女はそう言うと、君のタイを引っ張ってグイッと引き寄せ、唇の端に煙草を挟んだまま、パシンッとビンタを張った。
それはあまり強くはなかったが、君をマゾとして覚醒させるには充分だった。
「本当は思いっきり叩いてやりたいけど、さすがに今夜、頬を真っ赤に腫らしてたらマズいからね」
彼女はそう言い、君の顔の前に爪先を突きつけた。
奥ゆかしい仄かな香りが君の鼻腔を擽る。
「足フェチのド変態」
短く吐き捨て、君の鼻に足の裏の指の付け根をぐっと押し付けた。
温かくて優しい幽香が柔らかい肉の感触と共に君を翻弄し、君の理性は呆気なく崩壊した。
「ああ、素晴らしいですー」
君は両手で彼女の足を持つと、足の指の付け根に強く鼻を押し付け、暴走する掃除機のように吸引した。
爪先は一日中ストッキングに包まれていても、ずっと靴を履いていたわけではないから、それほど強烈には蒸れておらず、ほんのりと馨るだけだった。
しかし化繊の生地はしっとりと湿り気を帯びていて、君を狂わせるに十分だった。
「もうずっとお行儀よく過ごしてたから、Sの血が騒いじゃってどうしようもないのよ、だからお前みたいなのが、ほんとうに都合がいいの」
タイを引っ張り、彼女は灰皿を煙草でつつくようにして火を消した。
「朝からもうストレス溜まりっぱなし、っていうか、お前ドMでしょ? いじめられて嬉しいタイプの変態でしょ?」
彼女はそう言うと、君が何か言う前に、更に付け加えた。
「言い訳なんかしなくていいし、嘘もつかなくていい、ドMかどうかなんて目を見ればすぐわかるし、お前がうちに来てた時から知ってた、今だって会った途端まず爪先見てたし、どうせ前から足の臭いがどうのこうのだの、いやらしい変態の妄想してたんでしょ?」
完全に図星だったので、君は何も言い返せなかった。
本来、こんな場所なのだから毅然と否定して、社会人としてちゃんとするべきなのだが、実際の君は破廉恥にも猛々しく限界までペニスを勃起させながら美しい女性の足の匂いに陶然としていた。
女性が足を下ろして君から爪先を引き離すと、いきなり体を前のめりになり、むんずと君の股間を掴んだ。
「ほら、こんなにカチカチ、M以外ありえないし」
射るような鋭い視線で見つめられ、君は畳に目を伏せた。
「すみません……」
小声で言うと、顎を手のひらで持ち上げられ、またビンタを張られた。
「目を見て謝りなさい」
「はい、申し訳ございません」
オドオドした目を向けて謝る君を、女性は鼻を鳴らして嘲笑った。

「とりあえず、舐めて」
女性は机から尻を浮かすと、無造作にスカートをたくし上げ、おもむろにパンストとパンティを引き下ろすと、片方だけ足から抜いて、腰を前に突き出しながら股を開いた。
そして君のタイを引っ張って寄せた後、頭を両手でガッツリと掴み直し、自らの股間に君を顔を引き込んだ。
君は選択の余地のないまま、股間の茂みに突っ伏した。
据えたような甘く温かい匂いが君を包み込み、君は舌を伸ばすと、茂みを掻き分けて亀裂に辿り着き、舌先を差し込んだ。
舐めあげ、啜り、吸い付く。
女性の尻に両手を回して体のバランスを保ちながら、フンフンと鼻を鳴らして猛然と舐める。

女性は君の頭を両手で抱え込みながら下唇を噛み締めて、時折、ピクンピクンと腰をひくつかせている。
君はスカートの中から女性に訊く。
「このままオナニーしてもよろしいでしょうか」
「勝手にしなさい」
女性は両足でカマキリのように君の体を挟み込みながら言った。
君は「ありがとうございます!」と股間に顔を埋めたまま礼を述べ、もどかしげにズボンのベルトを外すと、パンツと一緒に下ろした。
そして左手で女性の尻をかき抱いたまま、すでに完全にいきり勃っているペニスを右手で握り、しごき始めた。

女性も君も息を殺して快感を貪っている。
彼女は右足を君の左の肩にあげて載せ、自ら股間を突き出しながらぐいぐいと君の顔に押し付けている。
君は溶け出した花の熱い芯に舌先をねじ込み、擦り上げるように出し入れしたり、小刻みに律動させたり、大胆に舐め上げる。
甘い蜜が滴り出て、君はそれをわざと音を立てて淫らに啜る。
そして、唇を窄めるようにして小さな突起を含み、強く吸い上げ、舌で転がす。
熱を帯びた亀裂から溢れ出る蜜が君の口元をベトベトに濡らし、君は亀裂以外にも、陰毛が茂る股間エリア全体、さらには太腿の内側にも唇や舌を這わした。
呼吸が止まるような静寂と緊張感の中、男女の微かな吐息だけが漏れている。
誰かが、襖一枚で隔てられているだけの廊下を通りかかった。
一瞬、君の動きがフリーズし、無造作に髪を掴んでいる女性の手にも力が込められて、時が止まる。
その間に、君は一本だけ唇の端に引っかかっていた抜けた陰毛をそっと手で取った。
そして、じきにスリッパの足音が遠ざかると、再び君は舌と手を動かす。
凄まじい背徳感が君を突き上げる。
君は左手で女性の豊かな尻を揉みしだき、右手で自らのペニスを擦り、そして舌を縦横無尽にせわしなく動かして彼女の股間を執拗に舐めまくりながら、迫り上がってきた射精の衝動に、股間から顔を上げ、大きく息を吸い込んで小声で申告する。

「あああ、も、もう、イ、イキそうです……」
「まだ、ダメ」
女性が背中を大きく反らし、一層強く君の顔を自らの股間に引き込む。
君は再び敢然と舌先を亀裂に埋め込んでいく。

やがて、遠くから僧侶の読経が聞こえてきた。

カテゴリー:金の鎖、銀の鞭

もうひとつの夜

2016/09/05 4件のコメント

もう何年も通っている馴染みのクラブで、ここ何回か続けて指名している女王様とのプレイを終えた君は、シャワーを済まし、腰にバスタオルを巻いただけの状態で、プレイルームのベッドに腰掛けた。
相手の女王様はまだボンデージ姿だったが、道具を片付け終わってすでにプレイモードは解除し、一人の女性となって、「何、飲む?」と君に訊いた。
調教中とは違い、親しげな普通の女性の口調だ。
君は「オレンジジュースをください」と言った。
もうプレイは終わっているのだし、確実に年下である女性もお友達感覚の口調なのだから別に丁寧語を使う必要はないのだが、M男としての性なのか何となく崩しきることができなかった。
もうプレイは終わったとはいえ、人として相当恥ずかしい、羞恥心を捨て去ったあられもない姿をさらし、つい数分前にはおしっこまで飲んだ相手に対して、そんなに簡単には気持ちの切り替えができないのだった。
君がこのクラブを利用するようになってかなり経つが、基本的にはあまり一人の女王様に固執はせず、いろいろな人とプレイしている。
というのも、トータルの年数はそこそこ長くても、二、三ヶ月に一度とか、時には半年くらい間が空くこともあるので、そんなに常連という感覚はない。
しかし今夜の相手の女王様は妙に相性の良い感じがして、ウェブサイトや情報誌で顔出しをしている人気嬢ではないのだが、君にしては珍しくこの半年ほどの間に三回ほど続けて指名していた。

「この後、どうするの?」
女王様がオレンジジュースを満たした紙コップを手渡しながら君の隣に座って訊いた。
脚を組み、君を見つめる。
「うちに帰って寝ます」
君は苦笑しながらこたえた。
「明日は休み?」
「ええ」
「でも、予定はないの?」
金曜日の午後十時、君にこの後の予定など本当に何もなかった。
ちょっと小腹が空いたので、せいぜい帰り道にコンビニに寄ろうかと思っているくらいだった。
だから変な見栄も張らず頷いた。
「何もないです」
「そっか」
女王様はそう呟き、煙草に火をつけて言った。
「実はね、もしよかったらだけれど、ちょっとお願いがあるの?」
「何ですか?」
お店の女王様からそんなことを言われた経験など一度もなかったので、君は少し戸惑いながら訊いた。
「あのね、このところ私をずっと指名してくれてるじゃない?」
「ええ」
君は改めてそんな風に言われると若干の気恥ずかしさを覚えながら、しかし事実なので頷いた。
「それで、まあこういうところでの付き合いだから、お互いに素性は知らないし、そういう意味では信頼も何もないし、商売なんだけど、まあまあプレイの相性としてはいい感じじゃない?」
「そう思います」
君は素直に肯定した。
そう感じているからこそ、君にしては珍しく続けて指名しているのだ。
「私もね、そりゃあ商売ではあるんだけれど、お客さんとのプレイは楽しいのよ」
「ありがとうございます」
セールストークだろうとは思ったが、君は礼を述べた。
「いや、ほんとよ」
女王様は君の気配を察して苦笑しながら言い、続けた。
「それで、本当にもしよかったらだけれど、この後、予定がなかったら、ちょっとお願いしたいことがあるの」
「何でしょうか」
全く想像がつかず、君は訊いた。
「変に警戒されたくないんだけど、実は私の友達で、もちろん女の子なんだけど、女王様に興味のある子がいて、でも今は全くの素人で、この後もプロになる気はないらしいんだけど、一度本物のM男と遊んでみたいっていうのよ」
女王様はそこでいったん言葉を切り、君を見つめた。
「で、よかったら、この後、私とその子と一緒に遊んでくれないかなあ、と思って」
正直、君はどう答えるべきか迷った。
確かにそれは魅力的な申し出だった。
しかし、怖さもあった。
プレイルームでは肌を合わせていても、相手はプロの風俗嬢だし、最悪、美人局みたいな目に合わないとも限らない。
何せ基本的に「M男」というのは、それだけで社会的には弱みになってしまうのだし、彼女も言っていた通り、お互いに相手のことなど何も知らないのだから、何か問題が起きても対処が難しそうだ。
自分がクラブに伝えている名前も偽名だし、彼女だって当然源氏名だ。
住んでいる場所も年齢さえも互いに知らない。
そういう状況でクラブという一応は安全な箱の外で会うことに、どうしても気後れを感じてしまうのだった。
そんな君の逡巡を敏感に感じ取った女王様は、安心させるように言った。
「一応言っておくけど、変な意味でお客さんを嵌めるつもりとかは絶対にないから。私に面倒臭いバックなんかいないし、これは単純な遊びの提案。遊びだから、お金ももらわないし、もし遊んでくれるならホテルを使うことになるけど、ホテル代は私の友達が出すことになってる。ただ、彼女としても、相手が誰でもいいっていうわけにはいかなくて、ちゃんとした勤めもあるし、いい加減なよく知らない人ではまずいの、それで、いろいろなM男とプレイしているプロの私に『誰かいい人いない?』って訊いてきたわけ」
確かに、相手のことを知らないという点では、女王様も同じだった。
そういう意味では、よく知らない君とクラブの外で会うことには、彼女にとってもリスクがあるはずだった。
しかも、お金はいらないという。
「だってさ、もし外でお客さんと会ってお金もらってプレイしたら、それは直引きになって、バレたらここをクビになるから、ある意味、お金は取れないのよ」
笑いながら女王様が言った。
「だから、完全なプライベートの遊び。ただ、出会い方がナンパとかじゃなくて特殊というだけ」
君は話を聞いているうちに、だんだんその気になってきた。
「もし僕が承諾したら、この後すぐですか?」
「オッケーしてくれる?」
「ええ」
「ただ、彼女はあくまでもプロじゃないし、いわゆるプロによる『プレイ』じゃないから、その点は大目に見てね。でも、私より美人だから」
「はい」
君は未体験の提案に心をときめかせながら頷いた。
「それじゃあ、一時間半くらい後で改めて会ってもらっていい? この後、私もう一本仕事が入っているし、彼女を呼び出さないといけないから」
「いいですよ、どこか近くで時間を潰してます」
「誘っておいてごめんね」
「構いませんよ、僕もすごく楽しみですから」
君はオレンジジュースを飲み干して言った。
全く想像していなかった展開になったが、もちろんこれは悪くない予想外の出来事だった。
「その友達って、友達の中で私が唯一SM嬢をやっていることを知っている親友なんだよね」
「そうなんですか」
「うん、じゃあ、電話番号、教えてもらっていい? 私も教えるから。で、仕事が終わったら連絡する」
「はい」

クラブを出て、深夜まで営業している近くのカフェに君は入った。
カウンターでアイスコーヒーとサンドイッチを買い、奥まったテーブル席についた。
店の中は空いていて、本を読んでいたりコンピュータを使っているいかにも長居しそうな客が多くいて、居心地は悪くなかった。
これなら女王様がもう一本仕事を終えるまでここで粘ることができそうだった。
もし混んでいたら、なかなか長くはいられない。
誰か連れでもいればマシだが、一人で混んでいるカフェに長居することは難しい。
席を探している新しい客から発せられる無言のプレッシャーが強力すぎるのだ。
その点、これだけ空いていれば、問題は何もない。
カフェなんて、ただでさえショバ代込みの高い料金を支払って商品を買っているのだから、基本的に長居しなければ損だ。
そんなことはともかく、落ち着いた状況の中でコーヒーを飲んでいると、君はふと、今頃女王様はどんな客とどんなプレイをしているのだろう、と考えてしまい、複雑な気持ちになった。
それは微妙な嫉妬のような、単なる覗き趣味のような、変な感情で、あまり深く考えて想像なんかしだしたら精神的におかしくなりそうだったので、考えるのは止めよう、と思念を断ち切った。
そして改めて、まずありえないというか、考えるだけ無駄なことだったが、風俗の仕事をしている女性とは付き合えないな、と思った。
いくら仕事とはいえ、会えない時間に客としていることを想像すると、とてもではないが耐えられそうになかった。
君は、女王様への思いを断ち切り、コーヒーを飲み、サンドイッチを食べたが、時間が経つにつれて気持ちが妙に昂ぶってきて、緊張もそれに同調して高まってきて、自分を落ち着かせるためにトイレへ行って冷たい水で顔を洗った。
そして席に戻ると、文庫本を読んだ。
暇つぶしとしていつでも読めるように普段から持ち歩いている宮沢賢治の詩集だった。

一時間を少し過ぎた頃、電話が鳴り、ディスプレイに女王様の源氏名が表示された。
出ると、女王様の声が聞こえた。
「今、店を出たんだけど、どこにいます?」
君はカフェの名前を告げた。
「じゃあ、二分でいきます」
電話が切られ、君は、いよいよだ、と思いながら残っていたアイスコーヒーを飲み干した。
そして二分後、私服姿の女王様がカフェに入ってきた。
派手な花柄のキャミソールドレスに、薄手のカーディガンを羽織っている。
その服装は、クラブでボンデージに着替える前に会った時と同じだった。
手に、小型のキャリーケースを引いている。
「お待たせしちゃって」
女王様は君のテーブルまで来ると、親しげな笑顔を見せた。
「何か飲みます?」
君は訊いた。
すでに自分のアイスコーヒーが空だったから、一緒にもう一杯飲んでもいいと思ったのだ。
「ありがと、でも、もうすぐ近くまで友達は来ていて、待っているから、行かない?」
「いいですよ」
君はカバンを持って立ち上がった。
もうひとつの夜の始まりだった。

店を出て、君は女王様と肩を並べて街路を歩いていった。
尤も、肩を並べてといっても、彼女の肩は君の肩より十センチほど高い位置にあって、厳密には「並んで」はいなかった。
君はこのシチュエーションに、M男として昂りを覚えていた。
派手で背の高い女性と歩く、貧相で地味な自分、この構図が、君のマゾ性を激しく刺激した。
しかも相手は小型のキャリーケースを引いている。
見る人が見ればその筋の女性と客、とバレそうだった。
「もしかして緊張してる?」
女王様が、つい無言になってしまっていた君に、茶化すように訊いた。
「ええ、少し」
君は素直に頷いた。
「大丈夫よ、さっきはあんなに大胆だったじゃない」
女王様は調教中の君のことを言って雰囲気を和ませた。
そんなことを話しながら大通りに出ると、一台の乗用車がハザードランプを点滅させながら路肩に寄って停まっていた。
小型の、ごく普通の赤いハッチバックだった。
その車に向かって女王様が手を振った。
すると車のヘッドライトがそれにパッシングでこたえた。

助手席に女王様が乗り込み、君は後部座席のドアを開けて車内に入った。
車の中は、香水か何か、とてもいい匂いがしていた。
女王様が運転席にいる友達に「お待たせ」と言い、その女性は「待ったわよー」と冗談めかしてこたえた後、後ろを振り返って君を見た。
「こんばんは、初めまして」
女王様が言っていた通り、かなりの美人だった。
こんなことでもなければ、一生君が知り合いになれることなどないタイプの女性だった。
「どうも、こんばんは、こちらこそ初めまして」
君は頭を下げた。
「この人が、そうなんだ」
女性は前へ向き直り、女王様に言った。
「そうよ」
女王様はこたえ、君の名前を伝えた。
それはクラブに登録している偽名だったが、違和感は何もなく彼女に伝えられた。
「よろしく」
もう一度女性が振り向いて言った。
「よろしくお願いします」
君は頭をさげた。
車に乗り込んで一分も経たないうちに、主従関係は成立してしまっていた。

ホテルの部屋に入ると、すぐに君は全裸になるように命じられた。
そして女王様と友達の女性が大きなベッドに並んで座り、君はその足元で跪いた。
二人とも服を脱ぎ、ブラジャーとパンティという下着姿になった。
もちろん、たったそれだけのことで君の性器は完全に屹立していて、女性はそれを見て高らかに笑った。
「これがマゾっていう生物なんだ」
「そうよ」
女王様が肯定し、君に言った。
「だよね」
「はい、よろしくお願いいたします」
君は両手を前につき、深々と頭をさげた。
カーペットに額を擦り付けると、その後頭部を女王様が素足で踏んだ。
「私も踏みたい」
友達の女性が言い、女王様は足を下ろすと、君に訊いた。
「もちろんいいわよね?」
降り注ぐその声に、君はこたえた。
「はい、よろしくお願いいたします」
続いて別の足が頭に置かれた。
柔らかい足の裏の感触が後頭部に伝わった。

それから、調教の見本市のような時間が始まった。
女王様はキャリーケースから道具類を取り出すと、まずはロープで手際よく君を縛り、それから鞭の使い方を実践して見せた。
女性はしばらくレクチャーを受けた後、鞭を受け取り、君を打った。
とはいえいきなり一本鞭はさすがに無謀なので、比較的衝撃の少ないバラ鞭が使われた。
「楽しいー、楽しすぎるー」
女性はそう言いながら、嬉々と鞭を振った。
更に、君の首に首輪を巻いてリードを繋いで室内を散歩したり、足を舐めさせたり、ビンタをしたり、顔に唾を吐いたり、散々君を玩具にして遊んだ。
蝋燭も楽しそうに君の体に垂らして嬌声を上げた。
女王様がローションをペニスに注いでそこへ蝋を垂らしてみせると、女性は素で驚いて訊いた。
「熱くないの?」
「試してみれば?」
女王様が言い、君の勃起したペニスにローションを塗ると、蝋燭を友達に渡し、女性は君のペニスに蝋燭の蝋を落としながら、君の目をじっと覗き込む。
「熱い?」
「熱いですが……耐えられます」
君は見つめられて緊張しながら、小声でこたえた。
もちろんそれは熱いのだが、ローションが保護膜の役目を果たしているため、針でチクリと刺された程度の痛みでしかないし、垂らした後に女王様がすぐにローション塗れのペニスを手で扱くので、痛みは簡単に散って、見た目ほどのダメージは特になく、存外、耐えられるのだった。
それに元々プレイで用いられる赤くて太い蝋燭は、それほど高温にはならない。

やがて「これが一番やってみたかったの」と女性が言って、女王様からペニスバンドを受け取ると、パンティの上から装着した。
女王様が君の体のロープを解き、首輪もリードだけ外した。
女性は、女王様がそうしている間、右手で茎をシコシコと擦って遊んで見せ、じきに君の体が自由になると、擬似ペニスにコンドームを被せ、改めてきちんと跪いた君の前にそれを突きつけた。
「しゃぶれ」
「はい」
君は擬似ペニスをフェラチオした。
丁寧に舌を這わせ、咥え、しゃぶる。
そんな君を上空から見下ろしながら女性は「超上手そう」と笑った。
そして腰をグイグイと突き出しながら訊いた。
「これ、入れて欲しいの?」
女王様が君のすぐ傍にしゃがんで君をビンタしながら促す。
「ほら、いやらしいケツマンコにこれが欲しいのって訊いてるでしょ? 答えなさい」
「フガフガフガフガ」
口にディルドを押し込まれているため、返事は言葉にならなかった。
女性は、「何言ってるかわからないじゃない」と言って、いったんディルドを引き抜いた。
君は大きく息を吸い、必死に言う。
「欲しいです、この変態M男のケツマンコを犯してください、お願いします」
女王様が君の顎を掴み、パシッと強くビンタを張って命じる。
「ちゃんと、『犯してください、女王様』とお願いしなさい」
「申し訳ございません」
君は条件反射的にひれ伏した後、女性を見上げ、捨て犬のような切ないマゾの目を向けて懇願した。
「女王様、この変態のケツマンコを犯してください、お願いいたします!」
「仕方ないわねえ」
女性は唇の端に嘲笑を滲ませながらそう言うと、君を床で仰向けに寝かせた。
女王様が、お尻の下に入れると具合がいいはず、と言って、バスタオルを丸めて君の腰の下に入れた。
君の尻がグイッと持ち上がり、君はカエルのように足を広げた。
「うわっ、丸見え」
女性が笑い、ディルドにたっぷりとローションを垂らした。
「は、恥ずかしいです……」
君は羞恥心の爆発で真っ赤になった顔を両手で覆った。
すると女王様が、「今更何を言っているの」と呆れながら、ビニールの手袋をつけた手で君の尻の穴にも入念にローションを塗りこむ。
「ほら、手をどけて、変態の顔をよく見てもらいなさい」
「はい」
君は恐る恐る手をどけた。
女性と目が合い、君は尻の穴をほじくる女王様の指の動きに吐息を漏らしながら、強烈な恥ずかしさに突き上げられた。
やがて女王様は充分に君の尻の穴を弛緩させると、友達に言った。
「いいわよ、もうぶち込んでも」
「じゃあ」
女性は右手で擬似ペニスを支え、狙いをアヌスに定めると、ゆっくりと埋め込んでいった。
体の内部に侵入してきた異物感に、思わず君は「あんっ」と女のような声を漏らした。
やがて、女性はゆっくりとピストンを始めた。
それに合わせて君も腰を弾ませる。
ペニスが限界まで屹立し、腹にペタペタと当たった。
女性はもどかしげにブラジャーを取ると、それを放り捨て、君の体に覆いかぶさった。
君の眼の前に素晴らしいバストが突きつけられ、絶叫する。
「女王様、おっぱいを吸わせていただいてもよろしいでしょうか、お願いします、吸わせてください!」
「いいわよ、でも手で揉むのはダメ、吸うだけ」
長い髪をかきあげながら君を見下ろして女性が言った。
「はい! ありがとうございます!」
女性はいっそう体を倒してきて、腰をくいっくいっと動かしながら君を抱いた。
君は両手を彼女の背中に回して抱きつきながら、目の前の上空で弾んでいた乳首に吸い付いた。
アヌスを貫く律動に君は喘ぎを漏らしながら、女性の乳首を吸い、強く抱きつく。
そうして正常位で犯されていると、ペニスに女王様の手が伸びてきて、たっぷりとローションが注ぎ込まれている使い捨てのオナホールが充てがわれた。
ぬるりと君のペニスがオナホールに包み込まれ、君は「あーん」と悶えた。
女王様はそのままオナホールを手で支えて固定した。
すると、ペニスバンドを打ち付ける女性の腰の動きに合わせて、オナホールの中の人工の襞が君のペニスを擦りあげた。
半開きになった君の口の端から涎が垂れる。

「ああああああ」

君は脳裏を真っ白に染め上げる快感に絶叫しながら自ら腰を突き上げ、汗ばみ始めた柔らかい女体にしがみついた。

カテゴリー:金の鎖、銀の鞭