ゴールド

雑居ビルの三階にあるダンススタジオ『ゴールド』、その通りを見下ろす側の窓は、床から天井まで大きなガラス張りで、夜になってスタジオ内に明かりが灯ると、レオタード姿でエアロビクスダンスを激しく踊る女性達の様子が歩道から丸見えになる。

このダンススタジオを主宰しているのは、他にもスポーツクラブをいくつか経営している企業グループだが、実際にここを仕切っているのは有村洋子という二十九歳のインストラクターだ。彼女は身長が170センチを越える長身で、抜群のスタイルを誇っている。バスト93、ウエスト58、ヒップ88。脚がすらりと長く、腰は逞しく、胸は迫力満点だ。しかもモデルばりの美人ときているから、彼女目当てで入会を希望するスケベな男性が後を絶たないが、このスタジオは女性専用なので彼らは丁寧に門前払いされる。また女性であっても、二十五歳以上で容姿端麗というのが会員になるための重要な資格となっているため、誰でも申し込めば入会できるというわけではなかった。従って会員は美しい女性ばかりだ。圧倒的に主婦が多いが、なかには大手一流企業勤務の独身キャリアウーマンもいる。年齢層は、エアロビクスというハードなダンスのスタジオだから、それほど高くはない。せいぜい四十代前半までの女性で占められている。

クラスは十人編成で、月曜日から金曜日の午後と夜に二時間ずつ教室が組まれている。午後の部は三時から五時、夜の部は八時から十時だ。そして週に二回、月曜と金曜の夜の部終了後、特別課外クラスが、三人という少人数で行われる。これは希望者を募ってそのなかで厳選なる抽選を行い、選ばれた者だけが参加できる特別なクラスだ。競争率は高い。現在会員は百人程度だが、この課外クラスの噂を人伝に聞いて、それに参加したいがために入会してきた人もいるほどだ。

この課外クラスに出席する会員は、夜の部に出て自動的にそのまま課外クラスへ突入する。だから夜の部が終了すると、課外クラスの選考から惜しくも洩れた会員は、一様にどこか羨ましそうな表情で、見事に抽選を潜りぬけたラッキーな会員を見ながら、名残惜しそうにスタジオを後にしていく。そして幸運にも選ばれた三人の会員は、二時間みっちりダンスの講習を受けた後の汗まみれのレオタードを着用したまま、五分の休憩を挟んで課外クラスに臨む。この休憩の間に、大きなガラス窓にはブラインドが下ろされ、明かりが絞られ、空調が切られる。するとスタジオ内は数分前までの熱気を孕んだまま、さっきまでとはちょっと違った表情を見せ始める。汗ばんだ女性達の体温と甘ったるい体臭がスタジオ内の空気を攪拌し、課外クラスを受ける女性達は、フロアの中心で床に座ったまま、たちまち上昇をはじめた気温のせいでさらに汗をかき、スポーツドリンクなどを飲みつつこの後の課外クラスへの期待に胸を膨らませながら開始の時間を待つのだ。そのときの会員達の顔は、ひとりの例外もなくみな興奮気味で、頬を紅潮させている。

それはあながち、閉めきられたスタジオ内の気温の上昇だけが理由とはいいきれない。

ユーロビートの激しいダンスミュージックが終わった。鏡に向かって二列で踊っていた女性達はそれに合わせて動きを止めた。列の前でダンスをリードしていた有村洋子が振り向く。後ろで束ねた髪の後れ毛が額にかかって汗で張りついている。

「皆さん、今日はここまでです」

掌で汗を拭いながら洋子はしゃがみ、足元に置いてあった一枚のプリントを拾い上げた。そしてタオルを首にかけながら言う。

「今日の課外クラスは、牧野さんと植田さんと杉村さんですね。お三方はこのまま待機していてください。他の方は、どうもお疲れさまでした」

「お疲れさまでしたー」

列が乱れ、課外クラスに出席する三人を除いた女性達はシャワールームへと向かった。残れた三人は顔を見合わせた後、フロアに座り込んだ。洋子がプリントを手に、彼女達に近づいてくる。

「牧野さんと杉村さんは違うけれど、植田さんは課外クラスって今日が初めてですわね。まあだいたいのところは他の会員さんから聞いているでしょうが、緊張とか恥じらいとかは一切捨ててくださいね。そして、リラックスして楽しんでください。それと、おうちの方は大丈夫ですか? この課外クラスは時間の制限がないので、何時に終わるかわからないのですが」

「大丈夫ですわ、先生。主人は昨日から仙台へ出張ですし、息子は塾の合宿に行っていて留守ですから」

そう答えてにっこりと微笑んだ植田真奈美は、来年高校受験を控えた十五歳の子供がいる三十六歳の人妻だった。亭主は事務機器の販売メーカーに勤めていて、営業課長という職業柄、出張が多く、暇を持て余していたときに友人に誘われて二ヶ月前、このダンススタジオに入会した。その友人とは、今夜共に残っている杉村直子だった。彼女は真奈美よりも二歳年上の三十八歳で、亭主はJRで新幹線の運転手をしていて、もう社会人として働いている二十七歳の息子と大学生の娘がいる。結婚したとき、彼女は初婚だったが亭主は二度目だったので、このふたりの子供は亭主の連れ子で、血の繋がりはない。しかし家庭はうまくいっていて、不満はないのだが、物足りなさのようなものがあってここに通っている。もうひとりの牧野有里沙は二十六歳で、外資系の証券会社に勤めるキャリアウーマンだった。総合職としてバリバリ仕事をしている。彼女はこの三人の中でひとりだけ独身だが、真奈美や直子とは少々歳が離れているものの仲がよい。もちろん洋子がそういうこともちゃんと念頭においたうえで、この課外のクラスは組んでいるのだった。

「それじゃあ皆さん、ちょっと待っていてくださいね」

洋子はブラインドを全部下ろし、照明を絞って、空調を切った。たちまちムッとした熱気に包まれる。三人の美しい女性達は思い思いの格好で床に座りながら、ボトルに入っているスポーツドリンクを手に持ち、ストローを咥えてごくごくと飲んだ。青いレオタードを着ている真奈美が、髪を束ね直しながら言う。

「暑いわねえ」

ただでさえ激しいダンスの後で汗だくなのに、空調が切ってあるものだから、さらに汗が噴き出してくる。三人のみっちりと体に張り付いたレオタードには、ところどころついに汗を吸収しきれなくなって、染みが浮き上がってきている。胸元や背中や腋の下なんかの色が変わっていく。

「これだけ汗をかくと、さすがに辛いわね。それにこのレッグウォーマー……なんか足も蒸れてるみたい」

ピンクのレオタード姿の有里沙が、白いレッグウォーマーを取りながら言った。真奈美と直子はワンピースのレオタードだが、有里沙だけは臍が見えるビキニタイプのレオタードを着ている。ビキニといっても上はブラジャーのような形ではなく、チビTを胸の下でカットしたような形をしている。下は短めのスパッツだ。切れ込みはなく、太腿の半分をむっちりと包んでいる。

真奈美と直子の体は、有里沙の若々しいそれと比べたら多少熟し気味だが、それはそれで大人の色香のようなものをプンプンと発散している。

「私、今日のためにちゃんと腋毛も剃ってきたのよ、ほら」

ひとりだけタンクトップ型の赤いレオタードを着ている直子が誇らしげに腕を上げた。白く柔らかそうな二の腕にうっすらと汗が滲んでいて、腋の剃り跡が生々しい。

「私は剃ってないわ。ボーボー」

真奈美が茶化して言うと、有里沙は自分のレオタードの袖を引っ張って伸ばし、自分の腋を覗き込んだ。

「私は一昨日剃ったきりだから、ぽつぽつと生えかけてきている……でも、こんなことはここでしか言えないわね」

苦笑しながら言う有里沙に、真奈美が頷く。

「そうね。ただ有里沙さんはまだ独身だし、若いから特にそうかもしれないけど、私はもうオバサンだから結構平気だけどね。まあそれでも腋は時々剃るけど、下なんかここ数年剃ったことないわ」

直子も同意して言う。

「普段は私だってそうよ。今日はたまたま。冬場なんて全然剃らないもん。それに下は真奈美さんと一緒、生え放題よ」

その直子の言い方に、三人は笑った。これが不細工なハバア同士の会話だったら吐き気を催しそうだが、真奈美と直子は充分に色っぽくて、美熟女という形容詞がぴたりとはまる大人の女性だから、こういう軽口もまた見た目とギャップがあって素敵なのだった。

時田靖雄は二十七歳の男性で、この『ゴールド』唯一の男性従業員だ。仕事の内容は経理の管理及び施設の清掃等で、早い話、雑事全般をひとりでこなしている。

スタジオは、壁一面に張られた鏡の向こう側が事務所になっていて、靖雄は普段そこで仕事をしている。そしてその鏡は、一部が回転するように設計されていて、課外クラスのときに限って使用されるのだった。鏡の裏側、つまり事務所側には、十字の磔台が打ち付けてあり、夜の部のクラスが終わると、洋子が事務所に帰ってきて靖雄をそれに拘束するのが常だった。事務所内では、靖雄は衣服の着用を認められておらず、全裸で行動しているから、わざわざ服を脱ぐ必要はない。

その夜も、靖雄はパソコンで経理の計算をしながら夜の部が終了するのを待っていた。当然、一糸纏わぬ全裸だった。靖雄は、ここで働いているといえば聞こえがいいが、実際には飼われているといっていい状態で、飼い主は洋子である。つまり靖雄は洋子の奴隷であった。そして課外クラスとは、ここの会員達にも靖雄で遊んでもらおうという洋子の粋な計らいから生まれた企画だった。

ドアがガチャリと開いて汗まみれの洋子が事務所に入ってきた。黄色いレオタードが色っぽい。スタイルが抜群にいいので、靖雄はたちまち勃起してしまう。はちきれんばかりの肌に汗が浮き、ムチムチの太腿がしっとりと湿っている。洋子は靖雄の隣に来て、彼を立たせた。ふたりが向き合うと、靖雄は身長が163センチと低いので、洋子を見上げる格好となる。ちょうど靖雄の目の前には洋子の深い胸の谷間があって、靖雄はいともたやすく被虐感に痺れた。洋子の全身からは甘い香水と汗の匂いが入り混じって、なんともいえない濃厚なフェロモンが発せられていた。

「今日はおまえで遊ぶのが初めてという人がいるから、いつもとはちょっと趣向を変えましょうか。そうね、まずはおまえに目隠しをして、それからいつものように磔台に縛り付けるわ」

「はい」

靖雄は自分から磔台へ進んだ。もうペニスはギンギンだ。洋子はそのいきり立っているペニスを無造作に掴むと、ぐいっと彼の体を引き寄せて黒い布で目隠しを施した。途端、靖雄の視界は闇に包まれる。あとは洋子にされるがまま、あっという間に磔にされた。腕を水平に上げて手首のところで拘束され、揃えた足首を革ベルトでがっちり固定された。多少は腰を捻ることが出来たが、殆どの動きは封じられてしまった。しかも視界を塞がれているので、平衡感覚が危うい。絶えず鼻腔を擽る洋子の体臭が、靖雄から冷静な理性を失わせていく。洋子は、靖男の耳元に唇を寄せ、まるで催眠術でもかけるように暖かい息を吹きかけながら囁く。

「さあ、みんなにおまえの変態な姿を見てもらいましょうね。今日はどんなことをされるのかしら? 楽しみねえ。みんな変態のおまえで遊びたくてウズウズしてるのよ。今日の相手はね、牧野さんと杉村さんと、そのお友達の植田さんよ。この植田さんは初めてね。彼女、すっごくエッチな体をしていてとても色っぽいわよ。大人の色香というやつね。おまえは大人の女性のオモチャになるのが大好きだったわよねえ」

「は、はい……」

靖雄は興奮で小刻みに震えながら頷く。洋子がさらに続ける。

「でも牧野さんはおまえより年下なのよ。そんな女性の前で変態の姿を晒すなんて相当恥ずかしいわよねえ。あら、いやだ。おまえったら、もうチンポの先から涎を垂らしてるじゃない。いやらしいわねえ」

「すいません」

消え入りそうな声で靖雄は言った。視覚を奪われているので、洋子の言葉は耳から直接頭蓋を響かせ脳まで届く。靖雄の脳内で、淫らな想像ばかりが膨らんでいく。

「じゃあ、このまま待ってなさい。もうすぐこの扉を回してあげるからね」

洋子はそう言い残して靖雄の側を離れた。扉の開く音がして、すぐに閉まった。無言の時間が流れる。靖雄はごくりと唾を飲み込んで、扉が回る時の到来を待った。

「皆さん、お待たせしました」

そう言いながら洋子はスタジオに入った。その手には、スーパー等で使うショッピング用のプラスティック製のバスケットを持っている。洋子は三人の前まで来るとそのバスケットを床に置き、自分も胡座をかいた。

「この中のものは自由に使ってくださいね。鞭は三本あるので、おひとりずつどうぞ」

バスケットの中には三本の鞭の他に、引き綱が付いた首輪や蝋燭やローションや手錠やロープやバイブレーター等が入っている。有里沙はバラ鞭を持った。直子と真奈美は乗馬鞭を取り、ヒュンと空気を切り裂いて見せた。真奈美が目を輝かせて言う。

「なんか楽しそう。ワクワクしてきたわ」

洋子は微笑みながら頷く。

「真奈美さん、これから出てくる奴隷は、ただ苛めるだけじゃなくて、自由に遊んでいいのよ。チンポもなかなか立派なものをぶら下げているから、充分に楽しんで」

「やだあ、チンポなんて」

真奈美が照れると、すかさず直子が突っ込んだ。

「やだあって言いながらもうチンポって言ってるじゃない」

「そうよ、奴隷のチンポなんて彼氏や旦那のモノとは違うんだから、ただ楽しめばいいの」

洋子はそう言うと、バスケットの中からリモコンを取り出して、鏡の方へ向けた。

「じゃあ皆さん、始めますわよ」

そう言ってリモコンのボタンを押す。

空調が切られているためムッとするほど暑いスタジオ内の、ハロゲンライトの明るく熱い光が照らす三人の女性の奇妙な具合に赤く血走った目が、鏡に向けられた。

静かなモーター音とともに、鏡の一部がゆっくりと回転を始める。

目は見えなくとも、剥き出しの股間に視線が注がれるのを、靖雄は強く感じた。扉の回転が止まると、ハロゲンの強い光が目隠しの布を透かして差した。

「ほら皆さん、こいつは本当に変態でしょ? 見て、このチンポ。すっかり硬くなって、しかもこんなに反り返ってるわ」

洋子の声に続いて、いやあ、という女性達の歓声が靖雄の耳を擽った。どんな人達がどんな格好で自分を見ているのだろう。そう思った瞬間、靖雄の性器はさらに硬くなり、股間は熱さを増した。

「大きなチンポね。太くて硬そう。ねえ、握ってもいい?」

すっかり舞い上がっている真奈美が洋子に聞く。

「いちいち断らなくてもいいのよ。好きなようにして」

洋子が言うと、真奈美は靖雄の性器を握った。ドクドクと脈打つ茎の感触に真奈美は喜び、靖雄は昂ぶった。調子に乗った真奈美は、そのまま軽くシコった。目隠しをされたままの靖雄の腰が卑猥に動く。

「ああ、気持いいです」

靖雄は悶えた。目が見えないだけで、それはいつにない快感だった。

「私、若い子のチンポって大好きなの」

真奈美はそう言うと、左手で靖雄の玉袋をさわさわと撫で、茎を嬲った。

「良かったわねえ、靖雄。おまえのチンポ、真奈美さんに気に入ってもらえたみたいよ」

洋子の声に、靖雄は吐息を洩らしながらこたえる。

「はい。嬉しいです」

いつのまにか直子も靖雄の側に来ていて、乳首をいじり、そして抓っている。靖雄の敏感な乳首はすぐに硬くなった。

「それじゃあ、そろそろ目隠しを外してあげようかしら」

そう言いながら洋子は靖雄の目隠しを取った。磔になっているので身動きが取れない靖雄は、そのままの姿勢で緊張した。目隠しの布が取られると、目の前には四人の女性がいた。洋子がそれぞれを紹介し、その後、靖雄にも自己紹介をするよう促した。

「ほら、皆さんにご挨拶なさい」

「はい」

靖雄は四人の突き刺さるような視線に萎縮してしまっていたが、客観的に自分が今置かれている状況を認識すると、ますますマゾの炎が燃え盛ってしまった。

「ええっと、時田靖雄と申します。二十七歳です。僕は変態のマゾ男です。皆さん、どうか僕を苛めてください。僕のチンポは皆様のオモチャでございます」

「二十七? やだあ、ウチの息子とあんまり変わらないじゃない」

直子が嬉しそうに言う。しかし有里沙は冷ややかに侮蔑の視線を靖雄に投げかけながら、鞭を振った。ピシッと鋭い音がして、靖雄の胸板に赤い筋が走る。

「おまえ、変態だって? 自分でよくそんなことが言えるわね。最低」

靖雄はたちまち緊張し、俯いてしまう。横から、洋子が言う。

「靖雄、一口で変態といっても、どう変態なのかちゃんと説明しないとわからないでしょ」

「すみません」

靖雄は謝罪し、屹立している性器を晒したまま言った。

「ぼ、僕は……に、匂いフェチで、女性の体臭が大好きなんです。蒸れた股間とか腋の下とか足とか……、それと、スカトロフェチでもあって、皆様の排泄物にすごく惹かれます」

乾いた爆笑が湧き起こる。直子がおかしそうに笑いながら聞く。

「ってことは、私達の臭い足やマンコを舐めろって言ったら、いつまででも、こっちがもういいって言うまで舐めていられるわけ?」

「もちろんでございます。マンコや足だけではなく、排泄の後にトイレットペーパー代わりにアナルを舐めてお掃除させていただいたり、どこでも舐めます。舐めさせてください」

靖雄の恥知らずな答えに、有里沙が呆れたように言う。

「おまえ、頭大丈夫? 排泄物が好きだなんて言ってるけど、具体的には何をどうしたい訳?」

「ええっと、皆様の……オ、オシッコとかウンチとかを全身に浴びてオナニーがしたいです」

「最低ー」

女性達は声を揃えて靖雄を非難した。しかしそんな侮辱すら靖雄には快感だった。女性達は立ち上がると、面白がって順番に腋の匂いを嗅がせた。靖雄は恍惚の表情を浮かべながら、彼女達の芳香を胸一杯に吸い込んだ。それが一通り済んでから、洋子は靖雄の拘束を解いた。手首と足首の革ベルトが外されると、靖雄はその場で床に土下座をし、取り囲むように立つ女性達の足元にひれ伏した。

「おまえ、本当に臭い匂いが好きみたいね。じゃあ、私のいい匂いを嗅がせてあげるわ」

有里沙はシューズを脱ぎ、床に座ると、足を伸ばして爪先を靖雄の鼻に押し当てた。温かい爪先から饐えたような香りと体温が立ち上り、靖雄は悶絶する。

「す、素晴らしい香りです」

半眼で陶酔しながらそうこたえ、靖雄はクンクンと鼻を鳴らす。たまらず靖雄は無意識のうちに四つん這いになっていて、有里沙のソックスの爪先に鼻を強く押し付けながら、もうすっかり夢見心地だった。

「ほら、口だけで上手にこのソックスを脱がせてみてごらん。それができたら指を舐めてもいいわよ」

有里沙が笑いながら命じる。靖雄は歯を立ててしまわないよう細心の注意を払いながらソックスの先端を噛み、慎重に引き抜いていく。コットンの生地を直に噛んだことで、汗と脂の湿り気がじんわりと滲みでてくるようだった。靖雄はそのエキスを吸った。そしてどうにかソックスを脱がすと、一段と強く香り立つ芳香とともに、目の前に白い爪先が出現した。靖雄はその造形美に心を奪われながら唾をゴクリと飲み込んで、じっとその白い指先を凝視する。

「舐めたい?」

誘うように有里沙は爪先を靖雄の顔の前に差し出し、指を思わせぶりに動かした。靖雄は「はいっ」と大声で答えた。すると有里沙は「こんな臭い足を舐めたいなんて本当に変態ね」と心底から呆れ返りながらも、舐めることを許可した。

「ほら、舐めなさい」

「ありがとうございます」

靖雄は有里沙の踵をそっと持つと、足の指を一本ずつ丁寧に口に含み、口の中で舌を動かし指の間まで伸ばしてその質感を堪能した。しっとりとヌメる指の間はまるで上質な蜂蜜のように濃厚な味覚だった。あらかた指をしゃぶり終えると、足の裏全体まで舌を滑らせていく。そして何度も執拗に舐め上げる。その様子を見て笑っていた真奈美は、靖雄の背後に回り、股の間から手を差し入れると、玉袋をむんずと掴んだ。そうしながらも同時に茎にも掌を這わせ、指の腹で亀頭の先を小刻みに刺激する。

「ああ、気持ちいいですぅ」

口を半開きにして靖雄は悶えた。直子が、そんな靖雄の背中に馬乗りになった。洋子が横から靖雄の首に首輪を装着し、引き綱を直子に手渡した。

「直子さん、そのままちょっと散歩でもしてみたら?」

「楽しそう。ほら、歩きなさい」

直子は靖雄の尻を掌でペシペシと叩いた。重量感溢れる直子の尻の感触を背中に覚えながら靖雄は四つん這いのままゆっくりと前進を開始する。掌と膝で、自分と直子のふたり分の体重を支えながら一歩ずつ前進はしていくが、腕の関節はガクガクと震えている。鏡にその様子が映っていて、勃起した性器が股間でぎこちなく揺れている。

結局、二メートルばかり進んだだけで靖雄は力尽き、ぐしゃっとひしゃげた。直子の体の重みが背中にのしかかって靖雄は一瞬息苦しさを覚えた。

「何? もうダウン? ひ弱なお馬さんねえ」

直子は、唇を尖らせて不服そうにそう言って呆れながら背中から下りると、うつ伏せで倒れている靖雄の顔の前に股を開いて座った。そして股間の布を少しずらして黒々と茂る陰毛を見せつけながら言う。

「ほら、ここを舐めたいんでしょ? ムレムレだから臭いわよ。それでも舐める?」

「はい!」

つい今しがたまで伸びていたくせに、現金にもすぐに目をキラキラと輝かせて靖雄は飛び起きると、直子の股間に突進した。顔を埋め、懸命に舌を伸ばす。

「ああ気持ちいいわ。こんな風にココを舐めてもらうなんて久しぶりだわ。旦那なんか全然舐めてくれないから」

直子は靖雄の髪を鷲掴みにして強く股間に引き寄せ宛がいながら離さない。靖雄は夢中になって舐め続ける。知らぬ間にまた腰が浮き、尻が持ち上がっている。その股間で屹立している性器に、有里沙が細い革の紐を巻きつけて、ぐいっと引っ張った。尻の後ろから引っ張ったので、反り返っていた性器は不自然に捻り上げられる格好となった。洋子が、そんな靖雄の腕を背中に回させて、手錠をかける。

「やだあ、すごい格好」

真奈美が歓声を上げ、直子の隣に座った。そして同じように足を広げ、股間の布をずらして靖雄に命じる。

「ほら、こっちも舐めなさい」

「はい!」

靖雄は後ろ手に手錠を掛けられているため、腕で体を支えることができず、額を支点にしてえっちらおっちらと向きを変えると、真奈美の股間に顔を落とした。その真奈美の股間から漂う匂いは壮絶だった。汗と体臭と様様な生っぽさが入り混じった、動物的な女性の匂いが靖雄の鼻腔を突き抜けた。それでも靖雄は果敢に舌を伸ばし、亀裂を探った。すると、その部分からはとめどなく蜜が溢れていて、靖雄は口の周りをその蜜でベトベトにしながら必死に吸い付いた。舌を尖らせて蜜を掬い、襞の洞窟に分け入っていく。そして間断なく溢れ続けている甘い蜜を、ピチャピチャと淫靡な音をたてながら盛大に啜り続ける。靖雄は時折、白く熟れた豊潤な太腿にも舌を這わせた。汗で光る太腿の狂おしいまでに吸い付くようなその肉感が、ますます靖雄を翻弄する。

「ああ、なんか変な感じ」

真奈美はそう言いながら、靖雄の頭をぐっと股間に引き込む。

「ねえ、なんかオシッコが出そう。してもいい?」

「お願いします!」

靖雄がそう言い終わらないうちに真奈美は放尿した。ジョボジョボと黄金色の液体が亀裂の一点から放物線を描いて迸る。靖雄は、その舌を痺れさす聖なる水を、大きな口を開けて受けた。しかし、すべてを飲み込むことはできず、それはすぐに口から溢れて、顔中が濡れた。

「ほら、私もかけてあげるわ」

いつのまにか靖雄を跨ぐように有里沙が立っていて、レオタードの下だけを手早く脱ぎ捨てると、聖水を勢いよく注いだ。たちまち靖雄の顔や髪はぐしょ濡れとなる。

「ああ勿体無い。床にたくさん零れちゃったじゃない。ちゃんと飲みなさいよ」

直子は、有里沙から譲り受けた性器を縛った紐を手に持ったまま立ち上がって、靖雄の頭を踏んだ。靖雄はなす術もなく床に顔を押し付けられた格好となり、そのまま這いつくばったまま、床を濡らす聖水を舌で掬って飲んだ。背中で手錠をかけられただけで、靖雄の体は殆ど自由が利かない。床に押し付けられた胸から顔全体にかけて、もうぐっしょりと聖水に塗れている。その靖雄のすぐ鼻先に、直子も放尿した。落下する聖水は床にしぶいて、金色の雫を盛大に靖雄に浴びせた。

無様な格好で這いつくばっている靖雄の周囲には、神々しいまでに匂い立つような香気が満ち満ちていた。それは夏の通り雨が去った後の、アスファルトが急速に冷まされて辺りに白く仄かな水蒸気を漂わせるような、そんな濃密さがあった。そして靖雄は、まるで日照り続きで困り果てた昔の人が必死に雨乞いをし、その結果ついに降りだした雨に歓喜するように、その金色の雫の中に神を見ていた。三人の聖水は、まさに神の思し召し、大いなる慈悲の象徴だった。

スタジオ内の気温は上昇を続けていて、まるでサウナの中にいるみたいに暑い。誰もが汗だくだ。そしてその熱気が、皆の理性を狂わしていて、靖雄は当然のことながら、責めている女性達もすっかり夢中だった。普段は亭主相手に押し殺している性を大胆に解放させながら、嬉々として靖雄を弄んでいる。

「あっつーい。ねえみんな、着ているものを全部脱いで裸になりましょうよ」

そう直子が提案し、即座に真奈美と有里沙は同意した。三人は、その場でレオタードを脱ぎ捨てた。汗をたっぷりと吸い込んだレオタードは、ぴったりと体に張り付いていてなかなか脱げなかったが、やがて三人はどうにか裸になった。全身が汗で光っている。脱衣によって解き放たれた三人の体温で、室内の気温がさらに上がった。それと同時に、まるで歩調をあわせるかのように、噎せ返るような女性の体臭が匂い立つ。洋子だけは、少し離れた場所に椅子を出し、そこに座りながら、四人が繰り広げる嬌態を冷静に眺めている。

「ほら変態くん。仰向けになりなさい」

真奈美が靖雄に命じる。そして靖雄が素直に従って寝そべると、その顔の上にいきなり豊満な尻を落とした。たっぷりとした肉が靖雄の口を塞ぐ。真奈美は尻を落としたまま腰を前後に揺すって言う。

「ねえ、早く舐めて」

「ふぁ、ふぁい」

靖雄は懸命に舌を出して亀裂を辿った。陰毛の先端が顔面を撫で、腰が前後に動く度に、柔らかい敏感な部分の蕩けるような熱い肉が、鼻や口を圧した。靖雄はそのどさくさに紛れて舌先で陰毛をかきわけ、そのさらに奥にある花の蕾のような菊穴にも舌を伸ばして、やや強引に捻じ込んだ。

「あーん、そんなところを舐めたりして……でも、恥ずかしいけど気持ちいいわ」

真奈美が悶えながら喘ぎ声を洩らす。直子はさっきから靖雄の広げた足の間で四つん這いになって、一向に萎える気配のない性器を掌で包み込んで擦ったり、強く握ったりしている。

「ほんと、間近で見れば見るほど立派ね。硬くて、太くて、長くて。金玉までカチカチよ。食べちゃいたいわ」

直子はそう言うと、性器を縛っている革紐を解き、玉袋を撫でながら、舌先を尖らせてその靖雄の性器を下からツーと舐めた。そして口の中に溜めていた唾をとろりと亀頭の先端に垂らし、それから、尖らせた舌先を尿道に差し込み、全体を口一杯に頬張った。

「ああ直子さんだけズルい。私も欲しいわ」

有里沙が靖雄の胸の上に座り、股間に屈み込んだ。そして両手で陰毛を掴み、その部分の皮膚を引っ張りながら、茎の根元を舌で辿る。

「やらしいチンポ。ヒクヒクしてるわ。もう我慢できない、犯しちゃおう」

そう言うと、性器から口を離した直子に少し下がってもらい、有里沙はいきり立っている靖雄のペニスに跨って腰を深く落とした。熱く熟れきった爛れ肉に包み込まれて、靖雄の体が跳ねる。しかしまだ真奈美の菊穴への執拗な奉仕は続けている。真奈美の股間はもうドロドロに溶けていて、いつもはキュッと引き締まっているその菊穴も、既に弛緩している。真奈美は快感に耐えられなくなって、吐息を洩らしながら腰を浮かせた。しかし靖雄は離さず、すかさず頭を持ち上げてなおも吸い付く。そんな靖雄を覗き込むように真奈美が見て、言う。

「ねえ変態くん。アレが出そうなの。このまましてもいい?」

靖雄を覗き込んでそう訊く真奈美の額から汗がポタポタと滴り落ちる。靖雄は、自分の下腹部に跨って性器を咥え込み、しきりに腰を振っている有里沙の艶やかに汗で光る白い背中を見つめながら、何度も首を縦に振って頷く。

「お願いします!」

真奈美は靖雄の顔の上に尻を浮かべて固定したまま前屈みになって両手を床につき、力んだ。すると可憐な菊穴が収縮し、やがて黄金の煌きを放つ物体の先端が蕾の中から顔を覗かせた。それは見る間に捻り出され、高貴なる姿を露にしていく。そして、不意に落下した。至福の感触が崇高な芳香とともに靖雄の顔を覆った。その瞬間、真奈美は靖雄にとって、この世界の造物主と化した。

降臨の儀式が終わり、靖雄が顔を持ち上げて舌で菊穴の清掃にあたっていると、直子が側に来て言った。

「あーら、なんかスゴいことになってるわね。面白そう。私もやる!」

有里沙が、挿入を楽しんだまま上体を捻って、上半身で行われている出来事を見守っている。真奈美は場所を直子に譲り、続いて靖雄の顔に跨った直子と向き合うように、靖雄の胸板に腰を下ろした。有里沙がいったん挿入を中断し、真奈美の肩を叩く。

「真奈美さん、こっちも楽しんで。なかなかいい感じよ」

振り向いて真奈美が答える。

「ありがとう。じゃあ、私も若い子のチンポを堪能しようかしら」

そう言ってむ真奈美は再び腰を上げ、移動した。代わりに有里沙がその胸の上に座り、真奈美は靖雄の天を衝いているペニスを手で支えながらゆっくりと腰を落とし、それを深く導き入れた。

「ああ、旦那以外とのセックスなんていつ以来かしら。気持ちいいわ」

腰をグラインドさせながら真奈美が吐息混じりに言う。

靖雄は、新たに提示された直子の菊穴に向かった。陰毛の密集は、真奈美より直子のほうが深かった。菊穴周辺まで割れ目に沿ってびっしりと生えている。靖雄は舌でそのジャングルに分け入り、やがて黄金の蕾に到達した。そして真奈美にしたのと同じように丁寧に舐め上げていく。

やがて直子も排泄した。真奈美の黄金はしっかりとした硬度を保っていたが、直子のそれは限りなく柔らかく、まるで泥のように靖雄の顔を塞いだ。靖雄は口の中には入ったものを咀嚼した後、掌で顔を拭って視界を確保した。排泄を終えた直子は有里沙にどいてもらい、靖雄の肩口で蕾周辺の汚れを拭った。靖雄の肩がべっとりと黄金に塗れる。

その頃には、真奈美がもう挿入に飽きていて、有里沙が居場所を無くしたのを機に性器を引き抜くと、しどけなく開いたままの靖雄の足の間に退いて床に座った。立ち上がっていた有里沙が、ぽつりと言う。

「なんかふたりの爽快な顔を見ていたら私もしたくなっちゃった」

有里沙はそう言うと、天を衝いている靖雄の性器の真上で中腰になり、尻に力を込めた。蕾が膨らみ、ニュルニュルと細い黄金が現れる。そしてそれは性器の先端に達すると、まるでソフトクリームがコーンに盛られていくみたいに屹立を象っていった。有里沙のそれは長くしなやかで、みるみるうちに性器全体を包み込んだ。

「ふー」

有里沙は大きく息を吐いて排便を終えた。直子が靖雄の髪を掴んで上体を起こさせ、背中で拘束していた手錠を外した。有里沙はその自由になった靖雄の腕を取ると、掌を開かせ、それをトイレットペーパー代わりにして股の間に引き入れ、穴周辺の汚れを拭き取らせた。

辺りには壮絶な猛臭が立ち込めている。三人の女性はその匂いから逃れるように、靖雄から少し離れて床に足を開いて座った。どの股間もヌラヌラと卑猥な光を放っている。靖雄は彼女達の排泄物に塗れたままきちんと正座をした。有里沙が言う。

「ほら、おまえが望んでいたとおりになったわよ。私達のウンチ塗れ……さあ、オナニーしなさい。おまえの恥ずかしい姿を見てあげるわ」

そう言って有里沙が顎をしゃくる。直子と真奈美も笑いながら頷いている。靖雄は感極まって絶叫する。

「ありがとうございます! では、オナニーさせていただきます!」

腰を浮かし、陶然となりながら靖雄は猛然と自慰を開始した。思い思いの格好で寛いでいる女性達の口から失笑が洩れる。靖雄の手が黄金に塗れた性器を擦り上げる度に、煌く破片が空中に舞った。

そして。

「うっ、うー」

呻き声とともに靖雄の先端から白い穢れが飛び散り、キラキラと黄金色の光を翻した。

スタジオ内の照明は落とされ、ブラインドが全開にされた窓の外から、月光が青く射し込んでいる。先ほどまでの熱狂は既に去り、靖雄もシャワーを終えて、清々しい気持ちで再びスタジオ内に足を踏み入れた。もちろん全裸のままだ。

月光の中に、優雅に脚を組んで椅子に座っている洋子の姿がある。真奈美や直子や有里沙は五分ほど前に帰っていった。靖雄は洋子に一礼してからきちんとスタジオのドアを閉め、しずしずと彼女の足元へ進み、跪いた。

洋子はまだレオタードを着たままで、跪いている靖雄の視界には、しなやかに脚を組んでいる洋子の爪先が月光を浴びて白々と揺れている。素足から仄かに漂う温かい芳香が靖雄の鼻腔を擽る。

「今日はいつになく変態だったわね」

「すみません……」

靖雄は俯いて答えた。あんなに興奮して放出したばかりだというのに、靖雄の性器は早くも再び勃ち上がっている。洋子は足の指を開いて、その親指と人差し指でその靖雄のペニスを挟んだ。

「本当にふしだらで節操のないチンポね」

そういって性器を足で捩じる。靖雄は思わず腰を浮かせてその快感に酔いしれた。続いてもう片方の足が靖雄の目の前に差し出される。

「舐めたい? それとも、あれだけ散々みんなの足を舐めたから、もう要らない?」

誘うように妖艶に微笑んで洋子が首を傾げながら訊く。靖雄は大袈裟に頭を横に振る。

「いえ、洋子様のおみ足は特別でございます。ぜひお与えいただきとうございます」

「そう。じゃあ、はい」

洋子がぐいっと足を伸ばす。

「ありがとうございます!」

靖雄は歓喜に打ち震えながらまたしても瞬時に沸騰し、我を忘れてその足にむしゃぶりついた。

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