卒業

私が智美様と運命的な出会いを果たしたのは、三年前の春のことだった。以来、私は智美様の下僕である。現在私は四十二歳だが、出会った当時、私はま だ三十代で、智美様は十五歳であった。もう、だいたい想像がつくであろう、私達は地方都市の郊外にある私立の女子高で、教師と生徒という関係から始まっ た。

忘れもしないあの春の日、校庭には桜の花びらが暖かい風に舞い散っていた。私はその時、現在の高校に赴任してきたばかりで、心持ち緊張しながら廊下 を歩いていた。リノリウムの床には日溜りができていて、窓の外には晴れ渡った四月の空が広がっていた。教室から漏れてくる生徒達の声は賑やかで、私は長い 教員生活の中でも女子高に赴任するのが初めてということもあって、いつになく心がときめいていた。そもそも校内に充満する空気の香りからして前任校である 男子高とは全く違った。十代の女性特有の甘酸っぱい体臭がそこかしこに染み付いているようで、私は思わず鼻腔を広げ、その空気を胸いっぱいに吸い込んだ。

私の担任は一年A組であった。私は廊下ですれ違う生徒達が一様に好奇の視線を投げかけてくることにしきりに照れながら、教室を目指した。一応、朝の 始業式で壇上に上がり、紹介と挨拶は済ませていたが、二年や三年の生徒達からしたら新任の私は物珍しい存在であり、遠慮のない視線が向けられた。これまで に男子高か共学でしか教鞭をとったことがなかったので、女子ばかりに囲まれると、私は年甲斐もなく緊張した。廊下の窓ガラスから差し込む陽射しは暑いくら いで、手のひらは汗ばみ、私は額に浮かぶ汗をハンカチで拭わなければならなかった。

教室に入ると、私の目はひとりの生徒に釘付けとなった。智美様である。前日の入学式の後にも短いホームルームの時間があって、会っている筈なのだ が、そのときは私自身が上がっていたこともあって、殆ど生徒達の顔をまともに見ることができなかった。それが一日置いて、多少なりとも気持ちが落ち着いて 冷静に生徒達を見回せるようになり、私は智美様の存在を認識した。そして、その瞬間、電流が走った。智美様は教壇の真ん前の席に座られ、神々しいオーラを 纏っていらした。元来マゾ性が強く、そのために結婚すらできないでいた私は、智美様のお姿を一目見て跪きたい衝動に駆られた。智美様は当時、中学出たての 十五歳だったが、体は充分発達していて、制服の下の胸の膨らみや短いスカートから伸びる健康的な太腿は既に大人のものであった。はちきれんばかりの肢体は 悩ましく、肌は浅黒くて、顔はギャル系のメイクで決まっており、栗色に染められた髪が春の陽射しを浴びて輝いていた。身長は168センチあまり、体重は定 かではないが体格は逞しく、私は圧倒され、大きな瞳で見つめられると、つい俯いてしまった。そうしながら私はズボンの中の性器を破廉恥に勃起させ、それを 隠しながら出欠を取った。

教壇で、ずり落ちた靴下を引っ張りあげる振りをして屈み、ちらりと智美様の足元を覗くと、真っ白な上履きとルーズソックスが目に入った。日に焼けた足の色と靴下の白との対比が鮮烈だった。私はそのおみ足にご奉仕したいと身悶え、ごくりと唾を飲み込んだ。

いま思えば、あの時既に智美様は私の性癖を見抜いていらっしゃったのだろう。智美様は私の視線を弄ぶように脚を組み替えると、意味深長な笑みを瞳に湛えて私を探るように見つめた。私は平静を装いつつ、わざとらしい咳払いをすると、智美様の視線から逃れて黒板に向かった。

――三年前のあの日のことが、まるで昨日のことのように思い出された。私は職員室を出て講堂へと歩きながら、今日これから行われる卒業式について考えを巡らせた。ついに智美様はご卒業されてしまう。昨夜、最後の調教があった。その折、智美様は私にこう宣言された。

「私は明日で卒業だから、お前とももうお別れね。三年間マジで楽しかったよ。でも、もうこれっきり。お前はお前で新しい女王様を見つけなさい。悪いけどわたし、短大に行ったらもうお前と遊ぶ気はないの」

私の一人暮らしのアパートの一室で、調教を終えた全裸の私は智美様から与えられたパンティを、ちょうど股間の部分が鼻に当たるように頭に被りながら 正座でその言葉を承ったものの、悲しくて涙が止まらなかった。私は精液に塗れたままの手をぎゅっと握り締めながら、床に置かれたステンレスのボウルをただ 見つめていた。その中には、底にまだ僅かに智美様の聖水が残っていて、それは天井の明かりを受けて煌いていた。あまりに唐突だったその宣言に、私がショッ クでしばらく硬直していると、智美様は私の首輪に取り付けてあるリードをぐいっと引っ張った。

「ほら、最後の聖水よ。一滴たりとも残さずに飲み干しなさい」

椅子に腰掛けて悠然と脚を組んでいらっしゃった制服姿の智美様はそう言うと、この世で一番美しい微笑を浮かべた。私は涙で霞む視界に女神の降臨を見 ながら「ありがとうございます!」とその慈悲に感謝して顔を被うパンティをずらし、聖水のボウルに屈み込んだ。そして、舌で掬って全部飲み干した。最後の 聖水の味は、心なしかしつもよりほろ苦く感じた。私は聖水がなくなっても、いつまでも未練がましくボウルを舐め続けた……。

私は人気のない廊下を卒業式の会場である講堂へと進みながら、智美様と過ごした三年という決して短くはない月日に改めて思いを馳せた。

一年の一学期は何事も起こらず、平穏に過ぎ去った。とはいっても、私の胸のうちには絶えず智美様に対する憧れがあって、思いは募る一方だったし、実 際、幾度となく夜のオカズにさせていただいていた。それでも積極的なアプローチなどできる筈もなく、私には教師という自分の立場があったから、その思いは ひたすら隠し続けるよりなかった。しかし、頭の中は常に智美様のことで占められているから、たとえ授業中であっても、ともすると美しい智美様の笑顔に見と れてしまい、その度に自制しなければならなかった。日中をそうして悶々と過ごすため、一人暮らしのアパートへ帰ると、妄想は爆発的に広がった。私は社会科 準備室の窓から隠し撮りした、校庭で体育の授業を受けておられる智美様の写真を眺めては狂ったように自慰をした。私は高倍率の望遠レンズを装着した自慢の 一眼レフカメラで、暇さえあれば体操服姿の智美様の写真を撮った。

汗ばむ智美様のお顔のアップ、ブルマーに包まれた尻、体操服の上からでもはっきりと認識できる巨大な胸、はちきれんばかりの太腿……私は何かに取り 憑かれたかのように写真を撮りまくった。汗をたっぷりと吸い込んだ体操服をどうにかして手に入れたいと思ったが、まさか更衣室へ忍び込むわけにもいかな かったので、想像だけで我慢した。しっとりと汗ばんだ腋の下のことを考えると、悶絶しそうであった。おそらくは処理されているであろうが、もしかしたらぽ つぽつと柔らかな毛が生えかけてきているかもしれなかったし、それならばそれでまた素晴らしき景観であろうと思い、私は、湿った体操服の腋の匂いを嗅ぎ、 できることなら直にその敏感な肌に舌を這わせる場面を夢想した。

そうして写真を撮りまくった結果、四月と五月の二ヶ月で百枚近い写真がたまった。その中でも特に気に入った写真は大きく引き伸ばして専用のファイルに保存した。そして私は夜毎それらをオカズにして自家発電に励んだ。

しかし六月に入り梅雨の季節になると、校庭での体育も中止になることが多くなり、私は地団太を踏んだ。その代わりというか、撮影不可能の代償とし て、私は空いた授業の時間を利用して、智美様の下駄箱を漁ることを思い立った。更衣室へ入るのは無理だが、昇降口なら廊下の延長にあるし、よって、たいし て怪しまれずに立ち寄ることが可能だったのだ。さすがに初めての時は緊張したが、二度三度と回を重ねるうちに度胸が据わり、次第に大胆になっていった。じ めじめとした雨が降りしきる午前中の薄暗い昇降口にそっと侵入する度、俄かに胸が高鳴った。ドキドキしながら1-Aの下駄箱に近づき、勝手知ったる智美様 の棚から履き古されたローファーを取り出すと、バクバクする心臓の鼓動に慄きながらその感触にときめいた。最初のうちは誰かに見られたらと思うと恐ろしく て何気に手に取ったりするだけだったが、慣れてくると、我慢しきれなくなってクンクンと匂いを嗅いだり、黒ずんだ中敷に舌を這わせたりするようになって いった。ただ残念なことに、靴を脱いでからだいぶ時間が経過しているため、期待していたほどの香りは得られなかった。

時には、勃起した性器を露出させてそれを靴の中に入れ、亀頭を中敷に擦りつけたりもした。静まり返った昇降口は、私にとって夢の扉であった。覚めな いで欲しい、といつも願ったが、いつまでもそうしているわけにはいかなかったので、数分でその場から立ち去らねばならなかった。後ろ髪を引かれる思いだっ たが、現行犯で取り押さえられたらどんな言い訳も通用しないから、それは仕方のないことであった。

その行為の後で智美様のお顔を見ると、被虐感でゾクゾクした。自分は担任教師だというのに教え子の靴の匂いを嗅いだのだ……いや、それどころか性器 をも中敷に擦りつけたのだ、そう思うと、どうにかしてその行為を本人に知ってもらいたいという気持ちが湧いたが、もし本当にそんなことを知られたらたちま ち身の破滅だったので、ぐっと堪えた。

また、たまに昼休みなどに廊下を歩いていると、偶然トイレの前で中から出てきた智美様とばったり遭遇することもあって、そんな時は、その個室の中で の智美様の姿態を想像してしまい、私は悶絶しそうになった。果たして大であるか小であるかは不明だったが、いずれにせよ白い陶製の便器にパンティを下ろし て跨がり、艶やかに密生する股間の陰毛を晒して排泄をなさる智美様の映像が脳裏に浮かんで、私はたまらなくその様子を覗きたくなった。そして心のうちでは 智美様専用の人間便器になりたいと切に願ったが、しかし当然それは叶わぬ夢であった。

梅雨という季節は湿度が高く、真夏の暑さとは異質のムシムシとした鬱陶しさがあって、ちょっと動くだけでネバネバとした汗を掻いてしまう。そんな 時、きっと智美様のパンティもムレムレに違いないと想像してしまって、気が狂いそうであった。トイレを終えたばかりの智美様……もしかしたらきちんと拭い きれずにクロッチの部分には黄色や茶色の染みが付着しているかもしれない。ああ、パンティの匂いが嗅ぎたい! 智美様、お願いでございます、そのパンティ の香りを嗅がせてください……そう懇願するいけない妄想に、私は胸を掻き毟る思いであった。しかし智美様の幻影はそんな私を嘲笑い、さらに翻弄した。そう いう時、私は社会科準備室に飛び込み、鍵をかけると、校内ということも忘れてズボンとパンツを下ろし、固くなった性器を引っ張り出して握り猛然と自慰に 耽って煩悩を散らした。

このようにその頃の私はまさに智美様フェチといっても過言ではない状態であった。実際に智美様のお体に触れるなんて滅相もないことだったし、許され る筈がなかったから、私はひたすら智美様のお体に密着する衣服や靴に憧れを抱いた。中でもやはり、もっとも敏感な部分である股間の亀裂を被うパンティに は、単なる憧れ以上の思いがあった。どんな生地で、どんな色で、どんな形状で、どれくらい汚れているのだろう。毎日そんなことばかりを考えていた。パン ティのほかに私の心を揺さぶるのは、靴下と体操服であった。どちらも蒸れやすく、無数の毛穴から分泌された尊い汗を含んでいそうで、私のフェチ心を激しく 刺激した。蒸れるということは匂いが香り立つのも必然であるから、おそらく私は智美様の体臭に執着していたのであろう。ブスの汗の臭いなど百万円積まれて も嗅ぎたくはないが、同じような匂いでも智美様のお体から発せられれば、それはたちまち至極の芳香となる。智美様の体内から分泌されるというだけでその芳 香は、どんな高級なコロンよりも崇高な香りとなるのである。私は智美様のルーズソックスの匂いを嗅がせていただく場面を幾度となく夢想した。もしも許され るのであれば、完全着衣の智美様の前で全裸になって跪き、おらおら臭いだろ? と言われ、ケラケラ笑われながら、蒸れたソックスの足を顔に押しつけていた だきたかった。そして憧れはさらに飛躍し、その結果、辿り着いたのが、ある意味究極的ともいえる智美様の聖水や黄金であった。どちらも冷静に考えたら単な る排泄物だが、私にとっては違う。智美様の体内を通過することが重要なファクターなのである。他のブスならお話にならないが、智美様は特別な存在だから、 あらゆる物質を体内で浄化する機能を備えていらっしゃる。たとえ口に入れた時はこの世の物質であっても、智美様の内臓を通り、股間の聖なるエリアから排出 されるときには天上界の物質へと変質しているから不思議である。いつのまにか不純物は濾過されており、その過程はまるで宇宙の神秘のようで、魅惑的な謎に 満ちている。だから智美様の排泄物は全く汚いものではなく、とても清らかで、慈悲の象徴であるのだ。

智美様はとかく派手なコギャル様で、だんだん学校生活に慣れていらっしゃると、ますます華美なメイクと際どい制服で決めて登校されるようになった。 髪は殆ど金色に近くなり、スカートの丈は限界ギリギリまで短くなった。それでも、巷に溢れるブスなガングロヤマンバとは明確に一線を画しており、とても素 敵であった。水色のアイシャドウで縁取られた大きな瞳はまるで外国映画に出てくる森の中の湖のように美しく、私は何もかもを脱ぎ捨ててその瞳にダイブした い欲情に駆られた。

ただ、ひとつだけ気にかかるのは、少々学力が不足気味であることであった。私の担当教科は日本史なのだが、中間テストの結果も、本来なら赤点にすべ き点数だった。しかし、そこは私の裁量ひとつだから勿論そんなことはしなかった。多少の誤答には採点ミスのようなふりをして丸を打ち、追試などという事態 には陥らないよう細心の注意を払った。

そして七月になり、期末テストを迎えたのだが、相変わらず智美様のテストの出来は芳しくなく、私はまた当然のように点数の底上げを画策した。しか し、中間から期末の間に智美様の成績は急降下しており、たとえ私が点数を改竄したとしても残念ながら他の教科にまでは手が回らないので、結果、三教科が追 試となってしまった。その時私は智美様に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになり、自身の無力さを痛感した。しかし、まだこの時点での智美様に対する思い はプラトニックの領域を出ないものであったから、私が陰で奔走していることなど智美様は知る由もなかった。すべては私が勝手に独断で行ったことである。だ から今ここでこの告白をするに当たり、定期試験に於ける公正な職務の励行を咎められても、その責任は私ひとりにあり、智美様には何の非もないことを明らか にしておかねばならないであろう。

そんなこんなで、結局智美様には気持ちを打ち明けられないまま、やがて終業式の日がやってきた。私は生徒ひとりひとりに通知表を手渡しながら、夏休 みの期間中ずっと智美様に会えないのかと思うと、失意のどん底に叩き落されたような気分だった。智美様に通知表を渡す時、図らずもつい涙ぐんでしまいそう になったが、智美様は私の心情など知らぬから、がさつに通知表を奪い取るように私の手からもぎ取ると、さっさと席に戻ってしまわれた。甘いコロンの仄かな 香りだけを残して。

生徒達は、感傷的になっていた私とは違い、あっけらかんとしたものだから、ホームルームを終えると嬉々として教室から出て行った。私は全員が帰って いった後、窓辺に立った。生徒達が去った教室は静かで、私は校庭に散らばる、下校していく生徒達の影をぼんやりと見送った。教室は四階にあるから、校門へ と向かう生徒の顔までは判別できなかった。それでも私は、あの群集のどこかに智美様もいらっしゃるのだろう、と思いながら、まるで痴呆のようにいつまでも 窓辺に立ち尽くしていた。

つい数日前に梅雨が明けたばかりの七月の空は眩く青く、白く輝く雲が本格的な夏の到来を告げていた。

長い長い夏休みが始まった。夏休みといっても教師は生徒達のように休みではない。学校でやらなければならないことが結構ある。また生徒達も部活動等で登校してくる。

私の学校は運動部の活動がかなり盛んで、各種大会に出場する機会が多い。その年もバスケットボールとバレーボールのクラブが県大会のベスト4まで勝ち進み、惜しくもソフトボール部は準決勝で涙を飲んだが、バスケットボール部は見事優勝を果たし、全国大会まで駒を進めた。

しかし私の敬愛する智美様は部活動などなさってはいなかったから、学校に来られることはなかった。おそらく遊びまわっていらっしゃるのだろう、と私 は想像しながら、悶々とした日々を送らざるをえなかった。昼間は海などへ行き、夜はカラオケやクラブなどを堪能していらっしゃるに違いなかった。しかも周 囲には常に男がいて、奔放な性生活を送っていらっしゃるのであろう。私にとってその想像は拷問以外の何物でもなかった。智美様がセックスをなさっている場 面を脳裏に浮かべる度、私は狂いそうになった。無論私はマゾだから、智美様とセックスをしたいと思ったわけではない。ただそのお体に舌でご奉仕したいと 願っただけである。私は、クラブ等でオールされた時なんかのじっとりと汗ばんだお体を隅々まで舐めさせていただきたい、とひたすら切望した。

私はたまに生活指導と称して夜の町の周回に出ることがあった。他の教師と一緒に行くわけだが、七月ももう終わりに近づいたある夜、私は生活指導に出 て、盛り場で智美様のお姿を拝見した。それは神々しいお姿であった。太腿も露わなキャミソールドレスに、コルク底の厚底サンダルを素足にお履きになり、腕 や首周りにはたくさんのアクセサリーを付けていらした。日に焼けた肌に、その花柄のキャミソールやアクセサリーはとてもよく似合いであった。

「おい、榊原」

同僚の教師が、偉そうに智美様に声をかけた。私はドキドキしっぱなしで、同僚の隣に立っているのが精一杯であった。智美様はその声につと振り返り、一瞬だけ気まずそうな顔をされたが、すぐにいつも通りの素敵な笑顔に戻られた。

「あっ先生。こんなところで奇遇ですね」

智美様に連れはなかったが、待ち合わせの場所にでも向かう途中であったのか、とりあえず立ち止まりはしたものの、早くその場から離れたい様子がありありと窺えた。

「奇遇じゃないだろう。こんな時間に何をやっているんだ。早く家へ帰りなさい。もう十時だぞ」

同僚教師は自分の腕時計を智美様に示してそう咎めた。智美様は、担任のくせに口をあんぐりと開けて陶然としている私を馬鹿にしたように一瞥すると、 フンと嘲笑い、「今から帰るところです」と同僚教師に言い捨てて歩き出してしまわれた。その後ろ姿を睨みつけながら同僚教師が苦々しく呟いた。

「全くしょうがない奴だな」

本来なら担任教師である自分が注意しなければならない立場であるのに、私はその時まるで魔法にでもかかったかのように智美様のセクシーな後ろ姿に見とれ心を奪われていたから、同僚のその言葉に相槌を打つことさえ忘れていた。

「じゃあ山形先生、今日はこれくらいにして我々もそろそろ帰りましょうか」

同僚教師が言い、はっと夢から覚めたように我に返った私は、「そうですね」とこたえた。

その場で我々は別れ、同僚の姿が人ごみに消えると、私はごく自然に智美様が立ち去った方角へと歩きだした。別にやましい気持ちがあったわけではない。ただ、そのままアパートへ帰る気になれなかっただけだ。私は智美様の幻影を追って夢遊病者のように盛り場を歩いた。

蒸し暑い夜で、私は歩きながら額に噴き出す汗を何度もハンカチで拭った。どこをどう歩いたのかよく覚えていないが、ふと角を曲がった時、前方に智美 様のお姿があった。私はどきりとして足を止めた。そこは盛り場の外れにある公園の脇の電話ボックスの前で、智美様はそのボックスのガラス扉に凭れて所在無 さそうに佇んでおられた。そして、私の姿を認めると、なんと信じられないことに、優しく手招きをされたのだった。私はふらふらと吸い寄せられるように智美 様に近づいていった。

「絶対ついてくると思ったわ」

智美様はそう言うと、涼しい目で私を見据えた。私はまだ僅かに残っていた教師としての威厳を示そうとして何か言おうと口を開きかけたが、緊張のあま りうまく舌が回らず、何も言えなかった。汗が滝のように流れてきて、私は忙しなくハンカチで拭った。よく智美様を観察すると、手には缶ビールが握られてい て、もう飲んでいらっしゃるようであった。頬がほんのりと赤く染まっており、気のせいか目も潤んでトロンとしているようであった。智美様はしどけなく口を 半開きにしたまま舌チロリと覗かせて、思わせぶりに白いルージュが塗られた唇を舐めてから、徐にその場にしゃがむと、下から私を見上げた。

私はそんな智美様の姿を見て、即座に勃起した。なんて素敵なのであろう、と思った。スカートが短いうえに足を開いてしゃがんでいらっしゃるから憧れ のパンティが丸見えであった。私はその魅惑の三角地帯を凝視した。コットンらしき白い地に赤い水玉模様が見えた。もう、私に教師としての立場などまるでな かった。

「やらしいわね、生徒のパンツなんか見て。欲求不満なんじゃないの?」

智美様は遠慮なく侮蔑の視線を私に向けた。私は直立不動の姿勢のまま狼狽を隠して大袈裟に首を振った。

「生徒が、きょ、教師をからかうんじゃない」

半ばしどろもどろになりながら私はそう反論したが、智美様は鼻で笑うだけで、グビグビとビールを喉に流し込んだ。

「悪いけど全然説得力ないって。そんなこと言いながらチンポ勃ってんじゃないの? ハハハ」

私は恥ずかしさで顔に血が昇り、真っ赤になるのを自覚した。本来ならここで怒らなければならないのに、悲しいかなマゾの私は俯き、被虐感に痺れていた。智美様が悪乗りして言った。

「ねえ先生、アレだったら今夜暇だからこれから虐めてあげようか」

一瞬、私は我が耳を疑った。虐める? なぜそのようなことを智美様はおっしゃられるのだ? 私は常にそのようなシチュエーションを夢見ていたが、正 面きって智美様にその思いを伝えたことはない。それなのに、なぜ智美様は私の気持ちを見透かしたようなことをおっしゃられるのだ? 私が訳がわからず戸 惑っていると、智美様は煙草に火をつけながら高らかに笑って言った。

「やっぱりお前マゾか。だいたい目がそんな感じだもん。いつも私に虐めてもらいたいと思ってただろ。オドオドしながら私のことばっかり見てたじゃん。私が気づかなかったとても思ってるの?」

運命とは、どこでどう転ぶかわからないものである。私は智美様のお言葉を承りながら夢うつつであった。

「黙ってるってことは図星か。ハハハ、最低だな、お前」

智美様は私のことを『お前』と呼んでくださった。私はその言葉の甘美なる響きに酔い痴れた。二回り近く年の離れた年下の女性に、しかも自分の教え子である生徒に『お前』呼ばわりされて、私は倒錯した欲望を覚え、天にも昇る心地であった。

辺りに人気はなかった。私は、電話ボックスの明かりに照らされた街路で、路上に足を広げて座り込みビールを呷る生徒の前に立ち、性器を勃起させてい た。私を見る智美様の瞳は、まるで私の深層心理に潜むマゾヒズムを弄ぶように冷酷な光を湛えており、傍から見れば相当滑稽な眺めであったろうが、その時私 は著しく興奮していた。堂々とビールを飲み煙草を吹かす女生徒の前に教師が立たされているのだ。威厳も何もあったものではない。しかし私にとってはその状 況そのものが憧れの情景であった。

「おら変態マゾ教師、黙ってちゃわからないだろ。何とか言えよ。女子高生に虐めてもらいたいんだろ? そうならそうとはっきり言えよ」

智美様はそう言うとビールを飲み干し、私の足元に空き缶を投げつけた。そして立ち上がると、歩み寄り、私の顔に煙を吐きかけた。私の身長は170セ ンチだが、智美様は168センチの身長に加えて10センチを超える厚底のサンダルを履いていらっしゃったから、当然私を見下ろす格好である。派手なメイク が施された智美様のお顔が間近に迫り、私はそのあまりの美しさに息を飲み、ごくりと生唾を飲み込んだ。次々に煙が吐きかけられ、私はその煙の中で屈辱感に 塗れていた。しかしそれは不快なものではなく、私には至上の歓びであった。

依然として往来はなかった。智美様は煙草を唇から離して左手の指に挟むと、空いた右手で徐に私の股間を握った。玉袋と一緒に勃起した性器も手のひらで包み込み、力を込めた。

「マジでお前は変態だね。カチンカチンじゃん」

そう言って智美様は蔑んだ笑いを唇の端に浮かべ、羞恥に燃え盛る私の瞳を凝視した。そして私がその視線に耐え切れなくなって地面に目を落とすと、智美様はすかさず私の顎に手を掛けてぐいっと上向かせ、煙草を唇に挟んでから、いきなり私の頬を平手で張った。

「目を逸らすんじゃないよ」

股間を握る手にも力が込められ、智美様は性器を捩じ上げた。私は引っ張り上げられるように爪先立ちになりながら、「す、すみません」と声を震わせな がら謝罪した。その瞬間、私は自らのマゾ性を認めることとなった。教師が生徒にビンタを張られ、性器を捩じ上げられて謝罪しているのだ。これが普遍的な関 係である筈がなかった。

「お前、生徒にチンポ握られてますます固くなってるじゃん。何これ? いったい何考えてるの? 恥ずかしくない?」

智美様は笑いながら私を侮蔑し、唐突に、口の中に溜まっていたお唾を私の顔に浴びせてくださった。その尊い体液は私の顔に付着し、ゆっくりと万有引 力の法則に従って顎のラインに向けて滑り落ちていった。私は思い焦がれていた智美様に股間を握られたうえにお唾まで吐いていただけて光栄の極みにあった。 そして私はついに、その場に跪いてしまった。もう自分を偽ることなどできなかった。教師としての威厳も体面もなかった。私は本能のままに地面に膝をつく と、智美様の厚底サンダルの前に額を擦りつけた。アスファルトのざらざらとした感触が汗ばんだ額に伝わった。

「智美様、私を智美様の奴隷にしてください!」

周囲に人影がないことを幸いに、私は気づくと、まるで躊躇することなく、一学期中ずっと心の奥底に封印していた言葉を吐き出していた。真夏の夜の熱 気が私の理性を狂わせたのかもしれなかった。私は一瞬、そう言ってしまってからちらりと後悔したが、しかしもう打ち消すことはできなかった。私はその時、 社会人としての真っ当な日向の道から瞬く間に畜生道へと転落した。奴隷にしてくれなどと言うべきではなかった。自分は教職というある種の聖職に携わる人間 なのである。それだのに教え子である十五歳の生徒に三十九歳の教師が、奴隷になりたいと口走ってしまった。どう考えても間違っていた。そんなことは妄想す るだけに留めておき、決して実践に移してはならないのである。私は自分が発した一言によって、禁断の扉を開き、そして軽々しくラインを越えてしまった。教 師として絶対に言ってはならない言葉を口にしてしまったのだ。この先自分はどうなってしまうのであろう。それを思い、私は怖くなった。しかし私は智美様の 足元に跪いたままだった。

後頭部に智美様の厚底サンダルが置かれた。私は真夏の夜の路上で智美様の前にひれ伏しながら、大人としての人格と、これまでに培ってきた社会性がガラガラと音をたてて崩れていくその壊音を聞いた。

智美様に導かれて私は近くのラブホテルに入った。そして部屋に入るなり全裸になるよう命じられて、素直にそのご命令に従った。智美様は新しい缶ビー ルを冷蔵庫から取り出すと、ベッドに腰掛けながらプルトップを開け、汗で張り付いたシャツをもどかしげに脱いでいく私をおかしそうに眺めていらっしゃっ た。私はたまらなく恥ずかしくて穴があったら入りたい心境であったが、そんな気持ちとは裏腹にマゾの炎はメラメラと燃え上がっていた。ビールを片手に笑い ながら見つめる十五歳の教え子の前で自分だけ裸になっていくのは屈辱の極みではあったものの、四十年近く生きてきた人生の中でこれほどの昂りを覚えたこと はなかった。ポロシャツを脱ぎ、綿パンを下ろし、トランクス一枚になった。壁の鏡に貧相な体が映っていて、私は脱いだ服をソファに放りながら、自分は生徒 の前でなんて姿を晒しているのだ、と考え、情けなくなった。しかし智美様はそんな私の思いを弄ぶように脚を組み、煙草を吹かしながら、こうおっしゃった。

「さっさとパンツも脱げよ、変態マゾ野郎。どうせもうギンギンなんだろ?」

その通りであった。私の股間はトランクスの上からでもはっきりと認識できるほどに膨らんでいた。とても生徒に見せられるモノではない。それでも智美 様のご命令に逆らうわけにはいかなかったので、私は恥を忍んでトランクスに手をかけると、股間に注がれる智美様の視線をひしひしと感じながら一気に下まで 引き摺り下ろした。

「うわあ、こいつマジで脱ぎやがった。しかも勃ってるー。生徒の前で自分だけ裸になって勃起するなんて、お前は本当にマゾだねえ」

智美様の爆笑が部屋に響き渡った。私はその嘲笑を全身に浴びながら顔を真っ赤にし、硬直していた。両手をぴったりと体の横につけて、背筋をピンと伸 ばして立った。すぐ一メートルほど先に、ベッドに座って煙草を吹かす教え子がいて、その状況は異常ではあったが、私は智美様に生まれたままの姿を鑑賞して いただき、そのうえ天を衝く性器を目の前に差し出させていただいているこの状況に至上の歓びを味わっていた。

これまで、どれだけこのような場面を夢想したことか。私はまるで天国に昇るような心地であった。安っぽいラブホテルの照明が、まるで銀河の流星のよ うに私の周囲を取り巻いていて、智美様に凝視されている性器をさらに反り返らせてしまった。やがて情けなさと言い知れぬ恥辱感で膝が震えだした。ちらりと 鏡を見遣ると、そこには世にもおぞましい格好を晒す自分の姿があって、私は、とんでもないことをしているな、と思ったが、気持ちは萎えるどころかますます 昂った。

智美様は煙草を灰皿に消すと、サンダルを脱いで脚を伸ばし、屹立する私の股間を足の裏で弄った。私はそのあまりの心地よさに思わず腰を引いてモジモ ジと捻ってしまった。智美様の足の裏の感触はまるで天使の唇のように魅惑的で、絶妙な力加減で私の性器を圧した。そして智美様はそうしながら足の親指と人 差し指を開き、その間に茎を挟んで上下にさすった。私は堪らず呻き、よがり声を上げてしまった。

「ああ智美様、気持ちいいです。ありがとうございます」

私は自分の生徒に股間を弄ばれながら、果たしてこんなことが許されるのか、という思いが一瞬脳裏を過ぎったが、快感に抗うことなど不可能で、もうどうにもならなかった。そして智美様はケラケラ笑いながらさらに刺激を強めて私を煽った。

「ほらほらもっとよがれよ。手は後ろで組んで、チンポを突き出して。そうそう、いい子ね。すっごく変態な顔になってきたわよ。かなり笑える、ハハハ。ほら、私の言う事は何でも聞くのよね。何せお前は奴隷なんだから。さあ、もっと悶えなさい」

「は、はい」

命令どおりに反応を示す私を面白がって智美様はさらに快感を与えてくださった。私は夢見心地だった。智美様のおみ足の律動が、瞬く間に私を狂わせて いった。いつしか私は足の裏から受ける気持ちよさに夢中になっていて、やがて腰が砕けるように膝をついてしまったが、それでもなお自ら性器を智美様の足の 裏に強く押し当てて貪欲に快感を貪る有様だった。そんな私の目前に、ラメ入りの白いペディキュアが塗られた智美様の足が迫った。香しい匂いが鼻腔を擽り、 私は唾をごくりと飲み込んで、その匂い立つ爪先をじっと見つめた。智美様はまるで私の心中を見透かすように指を広げ、クネクネとくねらせながら、挑発する ように私の顔の数センチ前まで足を突き出した。

「どうしたの? 変態。もしかしてこの臭い足が舐めたいの?」

「はい! お願いします。その素晴らしいおみ足にご奉仕させてください!」

私は絶叫した。すると次の瞬間、智美様は私の顔に足を押し付けてくださった。

「ありがとうございます!」

私は智美様のおみ足を両手で掲げるように持つと、嬉々としながら、まずはそのなまめかしく光る親指を口に含んだ。そして、しっとりと湿った指の間にも舌を伸ばし、チュパチュパと音を立てながら一本一本丁寧にしゃぶった。

「どう? 相当臭いでしょ」

「いえ、最高の香りでございます」

確かに凄まじい芳香が鼻腔を突き抜けていたが、私のその返答に偽りはなかった。私にとってその香りは、どんな高級な香水よりも尊く崇高な香りであっ た。それはずっと憧れ続けていた、暖かくて、甘くて、魅惑のフルーツの香りだった。可憐な智美様のお姿からは想像もつかないような強烈な芳香。そのギャッ プに私は激しく興奮し、まるでその匂いを全部舐め取り、吸い取るように、足の裏全体にまで丹念に舌を這わせた。結果、たちまち智美様のおみ足を唾塗れにし てしまった。

「あらあらすごく溜まってたみたいね。まるで盛りのついた犬みたいに夢中になっちゃつて。ひどい格好よ。ほら、鏡を見てごらん」

そう言いながら智美様は私の頬を踏み、鏡の方を見させた。私は智美様のおみ足を咥えたまま鏡に映る自分と対峙した。

そこには常軌を逸した自分の姿が映っていた。全裸で破廉恥に性器を勃起させたままキャミソール姿の女子高生の足を、まるで壊れやすく尊い宝物を慎重 に扱うように掲げ持って、ペロペロと執拗にその足の指をしゃぶっている四十近い中年男が鏡の中にいた。私はそんな自分の倒錯した姿にますます盛ってしま い、ついに最大に恥ずかしい台詞を口走ってしまった。

「智美様、お願いいたします。オナニーさせてください! どうか僕の恥ずかしいおなにーを見てください!」

私のこの言葉を聞いて、智美様は大爆笑された。

「お前、頭大丈夫? 教師が生徒にオナニーを見てくださいなんて、そんなんでいいと思ってるの? 正真正銘の変態よ、お前」

呆れたように智美様はおっしゃり、肩を竦められた。それでも、ありがたいことに許可していただけた。

「仕方ないわね、それじゃあ、私にお前の恥ずかしいオナニーが見てもらいたかったら、こう言いなさい。『僕は変態マゾ教師です、どうか僕の変態オナニーを見てください』って」

私はその通りに言った。すると智美様はあからさまに私を軽蔑し、ペッと勢いよく私の顔に唾を吐いて、命じた。

「思いっきり変態っぽくやりなさい」

「はい! ありがとうございます!」

私は智美様の慈悲に深く感謝し、猛然と自慰を開始した。膝で立って性器を前へ突き出し、半眼になって唇をペロペロと舐めながら茎をシゴいた。

「ハアハア、あー智美様。み、み、見てください。ハアハア。ぼ、ぼ、僕の恥ずかしいオナニーを!」

智美様は足をバタバタさせて面白がり、そして私は瞬く間に射精してしまった。白い穢れが性器の先端から噴出し、放物線を描いて床に落下した。その大量の精液が飛び散る様子を見て、智美様がおっしゃった。

「わあ出たー。汚ーい」

射精と同時に、私は急速に平静を取り戻した。そして、怖くなってきた。いくら気持ちのタガが外れていたとはいえ、これはあまりに破廉恥極まりない行 為だった。鏡には、全裸で膝立ちしている自分が映っていて、股間の性器が徐々に萎れていくのが見えた。性器は精液に塗れている。自分の手もベトベトしてい て、智美様の足元、床のカーペットに白い染みが付着していた。その染みを見ていたら、自分の犯した罪の深さに唖然となってしまった。一糸纏わぬ姿で跪く前 には脚を組んで冷笑を浮かべている女子高生がいて、その構図を鏡で確認した時、私は自ら畜生道の扉を開いてしまった事実に直面した。もう戻れなかった。私 と智美様は立場が完全に逆転してしまった。私はもう教師ではなく、智美様は生徒ではなかった。私は智美様のペットか奴隷に過ぎない下僕であり、智美様はそ んな私の支配主であった。夏休みの間はまだいいが、あと一ヶ月もすれば二学期が始まり、私は嫌でも学校で智美様と顔を合わせなければならない。その時、ど のように接すればいいのか。それを思うと憂鬱であった。間違ってもこれまでのように普通に接することは無理だった。こんな破廉恥な姿を生徒の前で晒してし まったのだ。どんな言い訳を並べたところで全く説得力がないであろう。

そんなことを考えながら私がティッシュの箱に手を伸ばしかけると、すかさず智美様のおみ足が蹴りだされて、私は頬を踏まれ、無様な顔を晒しながら押し止められてしまった。

「何を生意気にティッシュなんか使おうとしているの。手についた精液は自分の舌で舐め取りなさい。さあ、見ててやるから自分の出した精液を自分で舐めてごらん」

無論私に拒絶することなど出来る筈がなかったから、私は汚れた手のひらを広げると、顔の前へ持ってきて、恐る恐る舌を伸ばした。そして、ペロリと白 く濁った液を舐めた。自分の精液を舐めるなんて生まれて初めての経験だった。なんともいえない苦味が舌先を痺れされ、生臭さが口中に拡がった。ふと目を上 げると、智美様がマリア様のような微笑で私を見下ろしていらっしゃった。

「ほら、綺麗に舐めなさい」

「はい」

私は、ついさっき智美様のおみ足にご奉仕させていただいた時のように舌を這わせて自分のベトつく手のひらを舐めていった。智美様は、本当は性器も自 分で舐めさせたかったらしいが、どんなに腰を曲げても体の固いわたしには無理だったので、性器については、しっかりと手で拭き取ったうえでティッシュの使 用を許可してくださった。私は智美様の前で性器を拭い、ついでに床の染みも拭き取った。そして顔を上げると、智美様は私の髪を掴んで引き寄せ、組んだ脚を 解き、自らも体を前に乗り出された。

「ご褒美をあげるから大きく口を開けなさい」

そうおっしゃると、智美様は口の中に溜まった唾を思わせぶりに唇の合間に覗かせた。

「ありがとうございます!」

私は口をいっぱいに開いて、智美様の唇の下へ顔を傾けて差し出した。一瞬の後、智美様の唇が僅かに開いて、その隙間から大量のお唾が垂らされた。私 はそれを受けた。暖かい体液が、尊い智美様の体液が、静かに私の中へ注ぎ込まれた。私はその瞬間、たとえようのない幸福感に包まれた。いま私は神に等しき 存在である智美様から直に天界の液体を与えられたのだ――そう思い、私は心の中で合掌をした。

このようにして私の隷属生活は華々しく幕を開けたわけだが、夏休みの間だけでも私は智美様から三日に一度は呼び出され、その度に玩具となって仕え た。場所は決まってラブホテルの一室で、時刻は深夜が多かった。その頃はまだ智美様が私のアパートへいらっしゃることはなく、私は智美様からの呼び出し電 話を受けると、何時であろうと心を躍らせていそいそと出かけたものである。

八月に入り、私達の関係も回を重ねてくると、智美様は私を呼び出す時、様々なリクエストを命じられるようになった。最初のうちは、ノーパンでズボン だけを履いて来いとか、尻の穴にアナルバイブを差したまま来いとかだったが、次第にエスカレートしていって夏休みが終わる頃には、シャツの裾で隠してもい いからズボンのチャックを下ろして性器を露出して来いなどというご命令まで下されるようになり、しかし私はそれに逆らうことなく、きちんと言われたとおり の格好で待ち合わせの場所へ行った。

ある時など、私が密かに会員になっているSM専門のツーショットダイヤルに智美様の御前で電話をさせられ、私は受話器の向こう側にいらっしゃる見知 らぬ女王様から受ける電話でのご調教を智美様に鑑賞されるというプレイも経験した。そういう時、智美様はいつものようにベッドに腰掛けてビールをお飲みに なられながら、携帯電話を持って全裸でいろいろな格好を晒す私を見て楽しまれた。私は電話の向こうの女王様に「四つん這いになって犬の格好をしろ」とか 「窓辺に立ってカーテンを開け、外を向いてオナれ」というご命令を受けながら、勿論その通りの格好を智美様の前で披露して、信じられないような快感を味 わった。

智美様は当初、私のことを『アツオ』と呼び捨てで呼んでくださっていたが、途中から『マゾオ』になって、結局その呼び名で固定された。私は一貫して『智美様』と尊敬の念を込めてお呼びしている。

そして、七月の終わりかに初めて苛めていただいたあの記念すべき夜から一ヶ月が瞬く間に過ぎ、明日はもう二学期の始業式という深夜のことだった。突 然私は智美様の訪問を受けた。時刻は午前零時に近かった思う。その時私は早く風呂を済ませ、自分のアパートの六畳間でSMのビデオを観ていた。私は月に一 度の割合でビデオや本を仕入れる。といっても教師という職業柄、自分が住んでいる町でそういうビデオや本を買うことは躊躇われるから、わざわざ隣町である 別の県の県庁所在地の町まで行って買ってくる。それはだいたい給料日の後なのだが、その折には、本やビデオの他にもテレホンプレイ用のツーショットカード も購入するし、たまにはSMクラブやファッションヘルスなど風俗店にも足を運ぶ。

その夜も、よく行くファッションヘルスでプレイをしてきたばかりであった。その店はコギャル専門をキャッチコピーにしているヘルスで、制服イメージ プレイが楽しめるので気に入っているのだった。智美様に調教していただいている身で何と不埒な! と批判を浴びそうであるが、これには理由がある。という のも、無論智美様に苛めていただけるのはとても嬉しいことであり、光栄なのではあるが、私が触ったり舐めたり出来るのは足だけと決められているので、私の 欲求不満はいつも暴発寸前であるのだ。ほんの少し手を伸ばせば届く位置に十五歳の健康的な太腿や豊かなバストがあるというのに絶対にそれらには触れられな い、という苦痛を想像してみていただきたい。それはまるで蛇の生殺しといっていい状況であり、かなり辛いものなのだ。実際、私は夏休みの間だけでも智美様 の前で二十回以上は射精させていただいたが、一度としてそのはちきれんばかりに発達したお体に触れることは許されなかった。私に許されるのはせいぜい足の 踵から爪先のみであり、脹脛にすら触らせていただけないのであった。勿論まだその頃は聖水や黄金といったプレイとも無縁だったし、調教内容は基本的にオナ ニー鑑賞とお唾の拝受、そして足の踵から下へのご奉仕に限られていて、智美様と別れた後、自室に戻ってまた自慰をすることも頻繁であった。そうでもしない と、とてもではないが眠れやしないのである。そういうわけで、私はなけなしの金を握り締めてヘルスへ行き、なるべく智美様に似たタイプのコギャルっぽい娘 を指名して、心ゆくまでその体を触り、舐めて、どうにか自分を鎮めるのであった。女の子に頼み込んでアナルや腋の下も舐めさせてもらい、クンニにはたっぷ りと時間をかけ、殆どの場合に於いてフィニッシュは69で迎える。私は顔を被うように迫る女の子の尻を抱きながら、亀裂に吸い付いて狂ったように舐め、女 の子の口の中へ射精する。そして体を解き、唇の端に引っかかった女の子の陰毛を取って初めてようやく気持ちが落ち着くのだった。プレイがそのようにして終 わると、だいたいの女の子が「だいぶ溜まっていたみたいね。すっきりした?」とにっこり微笑みながら訊いてきて、その度に私は「はい」と照れたような笑顔 を浮かべるのである。

ピンポーンと唐突にチャイムが鳴った時、私はパジャマの上だけを着て、ズボンは脱いで下半身を露出させながら性器を握り締めてビデオを観ていた。私 はチャイムが聞こえた瞬間、びっくりして手を引っ込め、反射的にビデオの再生をリモコンで止めて、テレビのチャンネルを通常のそれに切り替えてから、こん な時間に人が訪ねてくるなんてありえないことなのに誰なのだろう? と訝しみながら急いでズボンを履き、玄関へ向かった。

散らかった台所を抜け、薄っぺらいドアに近づいてスコープを覗くと、その向こうには智美様が立っていらっしゃった。私はドアスコープ越しにその姿を 確認して、びっくりしてしまった。まさか智美様がこんなところへ来て下さるとは夢にも思っていなかったから、困惑してしまった。俄かに私は緊張し、小さく 震える手でそっとロックを解除して、ドアを押し開けた。

「と、智美様。よ、ようこそおいでくださいました。汚いところですが、どうぞ」

私は緊張のあまりどもりながら、智美様を中へ招きいれた。ホワイトデニムのホットパンツにピンクのタンクトップをお召しになった智美様は狭い玄関で五センチはソールのある白いスニーカーをお脱ぎになられると、ルーズソックスだけになって板の間に上がられた。

「ねえマゾオ、何してたの?」

智美様は奥の六畳間へと進み、さっきまで私が座っていた場所に胡坐をかくと、まだ立ったままの私を下から見上げた。剥き出しの太腿が悩ましかった。 私は間口に立ち尽くしたまま、本当のことを言うべきか否か逡巡した。そして、私が口ごもっていると、智美様はテーブルの上に放り出されたままのビデオの パッケージを目ざとく発見され、それを手にとってまじまじとパッケージを検分した後、ははーん、と冷ややかな眼差しを私に向けた。ビデオのパッケージをそ のままにしておいたのは私の不覚であった。しかも、よく注意してテーブルの上を見渡せば、そのパッケージの脇には、行ってきたばかりのヘルスの割引優待券 もあって、すぐに智美様もその券の存在に気づいて手に持った。

「嫌ね、お前。奴隷のくせにこんな店へ行ってきたの? 何これ? 裏にメッセージがあるわ。『今夜はどうもありがとう。いろんなところをいっぱい舐 めてくれて、とても気持ちよかったよ。また来てね。アユ。公休日、水、木』ふーん、アユちゃんのいろんなところをペロペロ舐めたんだ? しかも、そうやっ て抜いてきたばかりだというのに、またビデオを観てセンズリしてたんだ」

「も、申し訳ございません」

私は弾かれたようにその場に土下座をし、深々と頭を下げて額を絨毯に擦りつけた。そして、私は恐る恐る、先日、ご調教で使用していただくためにアダルトショップで購入しておいた鞭と自分専用のマイ首輪を智美様に差し出して懇願した。

「智美様、本当に申し訳ございません。どうかこの鞭で私にお仕置きをお与えください。お願いいたします」

再び強く額を絨毯に押し付け、私は哀願した。智美様は鞭と首輪を受け取ると、テーブルの上に座りなおして、鞭を一閃した。パジャマ越しではあったが、ピシッと鋭い音がして、背中に痛みが走った。

「ありがとうございます!」

私は歯を食い縛りながら礼を述べた。すると智美様は私の後頭部を踏みつけながらおっしゃった。

「さっさと裸になりな。マゾオ、今夜はたっぷりとこれでお仕置きしてやるわ」

「ありがとうございます!」

私は素早くパジャマを脱ぎ捨てると、全裸になってもう一度跪いた。既に性器は限度いっぱいまで反り返っている。智美様は私の髪を鷲掴みにして顔を引 き起こすと、いきなりその頬に往復ビンタを浴びせ、首輪を装着してリードを持ち「おら変態、手を後ろで組んで立ちな」と私に立つよう命じた。

「はい」

私は立ち上がった。すると、テーブルに座っている智美様のちょうど目の前に勃起した性器を突き出す格好になった。智美様は、私の性器に被っている皮を摘み、その弛んだそれを前方へ引っ張ると、近くあった輪ゴムでその余り皮を縛った。

「包茎野郎が偉そうにヘルスなんて行きやがって。百年早いんだよ」

そう言って鞭を振り下ろした。それは私の胸板を打ち、たちまち赤いミミズ腫れが浮き上がった。何度も繰り返し鞭が打ち据えられた。私は咄嗟にその激痛から逃れようとしたのだが、首輪のリードをがっちりと掴まれているので殆ど動くことが出来ず、それは不可能であった。

「お前、犬みたいに首輪を巻かれて、しかも鞭を打たれてるっていうのに、何このチンポ。ますますギンギンになってるじゃん」

「す、す、すみません」

私は目を閉じてそう答えながら、全く遠慮のない智美様の大きな声に恐れ慄いていた。つい近所のことを考えてしまったのである。これだけの声量があっ ては、こんな安普請のアパートだから隣に筒抜けであろう。それを思った時、さすがの私にも多少の理性が働いて、気がつくと咄嗟に懇願していた。

「智美様、お仕置きはたいへんありがたいのですが、どうかもう少しだけ声を小さくしていただけませんでしょうか。私も一応ここでは教師をしていることが知られておりますので、どうかお願いいたします。どうか、どうかご慈悲を」

すると智美様は思いのほかあっさりと、それもそうね、と頷き、声のボリュームを下げてくださった。

「一応お前にも世間体ってものがあるだろうからねえ。で、これくらいならいい?」

「結構でございます。本当にありがとうございます」

この時ほど智美様の優しさを感じたことはなかった。私はますます智美様の虜となってしまった。しかし、声は確かに小さくなったものの、鞭の勢いはま るで弱まることがなく、さらに強められた。いつしか私の上半身は真っ赤に染まり、じきに打つ場所がなくなってくると、智美様は自分の揃えた太腿の上へ俯き で私に乗るよう命じ、私が床に手をついて、尻を出して智美様の足の上に被さると、智美様は太腿の間に私の性器を挟み、もう鞭は捨てて平手でバシバシと私の 尻を張り始めた。私は悪戯をした子供が母親にお仕置きされるように尻を打たれ続けた。それは鞭以上に甘美なる折檻であった。考えてみていただきたい。もし もこれがごく普通のS女性から受ける調教であれば、ソフトSMがプレイが可能なイメージクラブでの継母と子供という設定にもなりえそうだが、この場合、四 十近い独身教師の尻を打っているのは教え子である十五歳の女子高生なのであり、まさに倒錯の極致であった。私はそのギャップに年甲斐もなく昂った。

気がつくと、私は智美様の両足に挟まれた性器に伝わる柔らかい太腿の感触が気持ちよすぎて、いつのまにか無意識のうちに、智美様の太腿に性器を擦りつけるようにして腰を振っていた。柔らかい太腿の肉感が夢のようであった。

「あー、智美様―」

私は我を忘れて腰を振り、そのうちに先端で縛った輪ゴムは外れ、あっという間に射精してしまった。その時、智美様の太腿の内側を私の白濁液が汚して しまい、それに対して智美様は激昂した。そして狂ったように私を罵り、さらに鞭の雨を降らせた後、私に四つん這いになるよう命じ、続けざまに馬調教へと移 行した。智美様は、私が四つん這いになると、その背中にどかっと腰を落として跨り、競走馬の騎手のように尻に鞭を打ち据えながら、短く持ったリードを使っ て私をそのまま歩かせた。私はひたすら部屋の中を周回した。エアコンが効いているのに汗が噴き出して来て、私は膝をガクガクと震わせながら、それでもなお 必死に歩き続けた。何より、背中に乗る智美様の尻の重みと感触がたまらなかった。ホットパンツ越しに温もりが伝わってくる。私は汗だくになって進んだ。し かし、十分近く周回したのち、ついに力尽きて、ひしゃげるようにそのまま床に這い蹲ってしまった。智美様の全体重が容赦なく背中にのしかかってきて、息が 詰まりそうになった。智美様は不服そうに何度も背中の上で跳ねた。

「だらしない馬ねえ。もうダウン?」

「も、申し訳ございません」

息も絶え絶えに私はそう答え、謝罪した。智美様は最後にパッシーンと尻を平手で打って、私の背中から下り、デニムのホットパンツを剥ぎ取るようにし て脱ぐと、テーブルに大きく足を開いて腰を下ろした。白地に薄いブルーのストライプ柄のパンティが目に飛び込んできて、私はお座りの姿勢を取ると、吸い寄 せられるようにその布を見つめた。

「暑―い。なんかパンツもムレムレ。ねえマゾオ、ここの匂いが嗅ぎたい?」

智美様は誘うような目で私を見て、挑発した。

「はい。嗅ぎたいです。嗅がせてください」

私は悲壮感すら漂わせながら熱望し、股間の布を見つめたままさらに寄った。

「じゃあここへ顔を突っ込みな。でも私はヘルス嬢じゃないからお前なんかに直には舐めさせてやらないわよ」

「はい。匂いだけで充分でございます」

私はお座りのまま突進し、ついに智美様の股間に顔を埋めた。暖かく、饐えたような香気が私を包み込んだ。ああ、これが焦がれ続けていた智美様のパン ティの香りなのだ! 私は深呼吸の要領でその香気を胸いっぱいに吸い込んだ。即座に性器が反応する。私は無我夢中でシゴいた。そして、またしても呆気なく イッた。

翌日から二学期が始まったわけだが、私の体には無数の鞭の跡がミミズ腫れとなって残っていたためシャツを着ることにさえ痛みを伴った。加えて、傷は腕にも残っていたから半袖シャツを着るわけにもいかず、私は暑いのを我慢して長袖シャツに腕を通した。

二学期の初日はまだギラギラとした陽射しが降り注ぐ真夏のような日で、私は汗を流しながら登校した。なるべく平静を装って校門を潜ったが、内心では ドキドキしていた。果たして智美様のお顔をまともに見ることが出来るだろうか……それを考えると気が気でなかった。智美様は前夜、帰り際に、私を全裸のま ま玄関口まで送らせて、こうおっしゃった。

「明日から学校だけど、このことは誰にも言うつもりはないから安心しなさい。その代わり、わかっているわね。マゾのくせに偉そうに教師面して私に説 教しようものなら、後からたっぷりとお仕置きだからね。覚悟しておきなさい。まあ、わざとそういうことをして体育倉庫で調教というのもなかなか楽しいかも しれないけど……とにかく、明日からは退屈しない学校生活が送れそうだわ、ハハハ」

私は職員室に入り、朝礼の後、講堂へ行って始業式に出た。講堂にはもう既に生徒達が集まっていて、私は職員用の席に着きながら、目だけで自分のクラ スの生徒達を見遣った。先頭から順番に見ていくと、真ん中辺りに、まるで後光が射しているかのように一際輝いている智美様のお姿があった。智美様は素敵な 太腿を露出させながら脚を組み、ご友人方と談笑しておられた。私は魔法にでもかかったかのようにそんな智美様の笑顔を拝顔した。あの魅惑的な唇から自分は お唾をいただいたのだ! そしてあの短いスカートに隠されているパンティの香りも嗅がせていただいた! 私はそんなことを考え、前夜の調教を思い出しなが ら、ごくりと生唾を飲み込んだ。このシャツを脱げば全身に、智美様に刻み付けていただいた鞭の跡が走っている。痛みはまだジンジンと沁みているが、智美様 のお姿を拝見した瞬間、たちまち快感へと変化するから不思議であった。

始業式の間中、校長や生徒会長の話など全く耳に入らず、私は智美様のお姿ばかり見ていた。智美様は相変わらずキャッキャッと騒いでおられ、私と同じように始業式自体を無視していらっしゃった。もっとも私とは理由が違うのだが、態度としては同じであった。

そして式が終わり、教室でホームルームとなったのだが、私は教壇に上がり、出欠を取りながら、智美様をお呼びするときに他の生徒と同じように苗字で 呼ばなければならぬことに対してジレンマに陥った。私としてはやはり『智美様』とお呼びしたかった。しかし智美様以外は全員『井上』とか『加藤』とか呼び 捨てで出欠を取っていくのだから智美様の場合も『榊原』と呼ばなければならなかった。私はいったん自分を落ち着かせるために咳払いをして、それから名前を 呼んでいった。秋田、朝倉、井口……と始まり、工藤、近藤、酒井、と進んだ。そしてついに智美様の番になった。私は意を決して出欠簿に視線を落としたまま 何気なく「榊原」と呼んだ。しかし、すぐには返事がなかった。一瞬、間が開いた。私は背中に冷たい汗が流れるのを感じ、まるで心臓を鷲掴みにされたように 緊張しながら、恐る恐る目を上げた。するとようやく「はあーい」という気のない返事が返ってきて、見ると、智美様はニヤニヤと笑っていらっしゃった。私は またわざとらしく咳をして、次の「清水」という生徒の名前を呼んだ。その返事を聞きながら、こんなことがこれから毎日続くのか……と思い、心が重くなっ た。毎朝、智美様のことを呼び捨てで呼ばなければならないなんて、奴隷の分際でなんと生意気なことか! 私はそう思い、自分の教師という立場を苦々しく感 じた。

それでもどうにか何事もなくホームルームは終了し、下校となった。私は生徒達より先に教室を出て、職員室へ向かった。もしかしたら背後から智美様が 追ってきて何か咎められるかと思ったが、そんなことはなく、呆気ないくらいあっさりと職員室に着いてしまった。そしてそれから自分の机で少し仕事をし、帰 宅したのだが、その時分にはもう校内にも校門の外にも生徒達の姿はなく、もちろん智美様のお姿もなかった。私はなんとなく肩透かしにあったような気分で学 校を後にした。途中で弁当を買い、ひょっとすると智美様から電話がかかってくるかもしれない、と考えて、アパートに帰ってからは一歩も部屋から出なかった が、結局その日は何の連絡もないまま一日終わってしまった。

いつ電話のベルが鳴るかと待ち続ける長い夜が虚しく明けて、翌日、私は寝不足のまま登校した。真夏と変わらぬ陽射しは眩しく、白い壁には葉影の文様 が色濃く揺れていた。校門をとぼとぼと潜る私を、何も知らない生徒達が追い越していき、おはようございまーす、と挨拶の声を掛けてくれた。私は気の抜けた 返事でこたえながら、もしもこの生徒達が智美様の前での私の痴態を知ったら……と考え、果たしてどんな反応を示すだろう……なんてことを想像しつつ、職員 用の玄関へ歩いた。

職員室へ入り、同僚と軽く談笑してから、授業の準備をして教室へ向かった。私は明るい廊下を歩きながら、いったい智美様とどういうおつもりなのであろう、と考えていた。

1‐Aの教室に足を踏み入れると、もう全員が席に着いていた。もちろん智美様も自分の席にいて、隣の生徒と何やら盛り上がっていらっしゃった。私は 教壇に上がり、朝の挨拶を述べた後、出欠を取っていった。当然のことだが、智美様を呼ぶ時、私は勇気を振り絞って呼び捨てで「榊原」と呼んだ。果たして、 智美様は「はーい」と面倒くさそうではあったが普通に答えてくださった。私はほっと胸を撫で下ろしながら、やがて出欠を取り終えた。

それから短い連絡事項を伝え、私は教室を出た。一時限目は三年生の授業が入っていたのだ。結局、ホームルームの間、私は一度として智美様のお顔をま ともに見ることが出来なかった。智美様は「誰にも言わない」とおっしゃっていたが、気まぐれな女子高生の言うことだから、あまり当てには出来ぬ。もしもそ のつもりであれば、私の性癖を面白おかしくクラスメイト達に披露しても、智美様には何らデメリットはない。それどころか、全員に知らせることで、私をクラ ス全体で弄ぶことが可能となり、それはとかく退屈になりがちな高校生活に於いて絶好の暇つぶしと成りえる。おそらく皆が嬉々として参加してくるであろう。 女子高という異性のいない特殊な空間で、生徒達は明け透けな性を発散しているから、マゾの私を全員で弄ぶとなれば、誰も遠慮はしないに違いなかった。また 困ったことに、一年A組は結構な美形揃いで、智美様以外にもなかなかSっぽい生徒が何人かおり、正直な話、彼女達に取り囲まれて恥ずかしい姿を晒す場面を 夢想して自慰に耽ったことも、一度や二度ではない。そもそも私にはそういう願望が強いから、まかり間違ってそのような状況になれば、マゾである私には大変 魅力的であった。しかしそこまでいってしまうと、いささかまずい。そんなことになれば、私はおそらく学校を辞めねばならぬであろう。いくらなんでも、それ は困る。生活もあるし、一応は常識的な社会人でありたいからである。となると、必然的に私の運命の行方は智美様の気持ち次第ということになるのであった。

じきに昼になり、一向に智美様からは何の音沙汰もないまま、昼休みに少し調べ物をしたかった私は、職員室で取っている弁当を持って社会科準備室に 入った。窓の外には、無人の校庭が広がっていた。私は机で弁当を開け、資料のコピーに目を通しながら箸をつけた。そして半分ほど食べた頃、控えめなノック が聞こえた。

「どうぞ」

私は箸を持ったまま答え、ドアが開く気配に資料から目を上げた。するとそこには、智美様が立っていらした。

「あっ、智美様」

箸を置き、私は言った。智美様は後ろ手ですぐにドアを閉めると、施錠をし、つかつかと私の傍まで歩いてきて、すぐ脇で足を止めた。私は俄かに緊張し、智美様を見上げた。

「あ、あの……」

「マゾオ、お前、何を偉そうに服なんか着てるの。さっさと裸になりなさい」

いきなり智美様はそうお命じになられ、私は弾かれたように椅子から立ち上がると、いそいそと服を脱いだ。当然性器は勃起していた。神聖なる学校内で 裸になるとは言語道断、きわめて背徳的な行為であったが、私にそのご命令を拒否することなど許されるはずがなかった。もちろんさすがの私も少々躊躇はし た。しかし結局私はその場で全裸となった。そして、智美様の足元でいつものように正座をした。入れ替わるようにして、それまで私が座っていた椅子に智美様 が腰を下ろされ、上履きを履いた足の先で私の顎を持ち上げたかと思うと、次の瞬間、いきなり強烈なビンタが頬に炸裂した。

「よくもまあ毎日毎日私のことを呼び捨てで呼んでくれるわね。全く変態マゾ教師のくせに、いつからそんなに偉くなったのよ」

「申し訳ございません」

私はすかさず頭を下げて床に額を擦りつけた。それは私の偽らざる言葉であった。智美様のことを「榊原」などと呼び捨てにすることには、本当に心苦し さを覚えていたのだ。智美様は私の股間の勃起に冷笑を浮かべながら、上履きをお脱ぎになられると、そのままルーズソックスの足で私の性器を踏んだ。続い て、微妙な強弱をつけて擦り始めた。

「あっ、あーん」

たまらず私は破廉恥な喘ぎ声を漏らしてしまった。勃起はさらに固くなった。智美様はそんな私の反応をバカにしたように嘲り、机の上にあった私の食べかけの弁当を持つと、その白いご飯の上に、とろりと大量の唾を垂らした。そして、それを床に置いて私に顎をしゃくった。

「ほら、犬みたいに口だけで食べてみなさいよ。手は使っちゃダメよ。もちろん出来るわよね」

「はい! ありがとうございます」

私は床に手をつき、弁当に屈み込むと、ご飯を頬張った。美味しかった。白濁してご飯粒の間に沁み込んでいくお唾の暖かさが絶妙であった。智美様はそ の高貴なる体液を、おかずであるスパゲティや魚フライにも垂らしてくださった。私は全部美味しくいただいた。味気ない弁当が、智美様のお唾だけで、どんな 高級レストランの料理にも負けないくらいの素晴らしい味に変化するから不思議であった。

やがて、智美様はまだ唾の掛かっていない卵焼きを摘み上げると、口に入れてクチャクチャと咀嚼し、そのグチャグチャになった卵焼きを、私を傍に呼ん で口を大きく開かせてから、直接私の口の中に吐き出してくださった。私は身に余る光栄に拝して気持ちを打ち振るわせながらそれをいただいた。智美様の唾に 塗れた卵焼きは、まさに夢のような味覚であった。私は学校の中にいることも忘れ、その幸福の到来にただ酔いしれた。

弁当はまだ箱の隅にご飯が残っていたが、智美様は私が卵焼きを飲み込むのを見届けると、おもむろに足を開いてスカートをたくし上げ、手招きをした。薄いピンクのパンティが丸見えになる。

「今日はさあ、四時限目に体育があって、すっごく汗をかいちゃった。だから、ほら、パンツもムレムレ。どう? 匂いを嗅ぎたくない? かなり臭いよ」

「嗅ぎたいです!」

間髪入れずに私は答えた。すると智美様はその答えに満足したのか、突然片足ずつ上げてするりとパンティをお脱ぎになられると、それを私の頭に被せてくださった。しかも、ちゃんとクロッチが鼻に当たるようにしてである。私はそのまま思いっきり深呼吸した。

「本当にお前は臭いパンツが好きなんだねえ」

湿った感触が顔全体を被い、鼻から唇にかけてを被う布からは生臭いぬめりが感じられた。それはまさに女子高生の生の匂いであった。先日は外側からし か味わえなかったが、ついに内側から直にその感触及び香気を堪能することが出来た。その股間の部分の布は、いろいろな分泌物が混ざり合って、独特の臭気を 漂わせていた。頭の芯が痺れ、私は無意識のうちに性器を握り締めていた。そうしていると、智美様は、信じられないようなことをおっしゃった。

「お前、変態らしいすごい格好よ。おもしろーい。そうだ、せっかくだから写真を撮ってあげるわ。ほら、さあシコりなさい」

私は布に染み付いた芳香を胸いっぱいに吸い込みながら、激しく手を動かした。舌を出して、匂いの部分を舐めた。視界に、デジタルカメラを構えて笑っ ていらっしゃる智美様の姿があった。こんな姿を写真に撮られたりしたら後々厄介なことになるかもしれない。ちらりとそんなことを思ったが、目の前の誘惑に は勝てなかった。智美様の香気とこの異常な状況に私の理性は完全にショートしていた。つまり私は己のマゾヒズムの前に見事敗北を喫したのである。

「イ、イきそうです!」

パンティの下でくぐもった声を出すと、智美様は椅子から下りて私の前にしゃがみ、暴発寸前の私の性器にカメラを近づけた。智美様の股間を艶やかに彩 る、無造作に茂る陰毛のきらめきが、私の射精への欲情を煽動した。智美様は足を開いてしゃがんでいらっしゃるので、陰毛の茂みの奥にちらりとピンクの宇宙 のような亀裂も覗くことが出来、たちまち私の意識はレッドゾーンへと突入した。

「ああ智美様ー」

私は絶叫し、精液を迸らせた。その穢れは空中高く飛び、弁当のご飯の上に落下した。もちろんそれを後で食べるように命じられたのは言うまでもないだ ろう。智美様は私の射精の瞬間をばっちりと写真に収め、とても上機嫌であった。私は、もしかしたらこのパンティはいただけるのではないか、と淡い期待を抱 いたが、さすがに世の中はそんなに甘くはなかった。智美様は私の顔からパンティを抜き取ると、それを適当に丸めてポケットに入れ、予め用意していた新しい パンティをお履きになった。そして、再び椅子に座ると、私に服を着るよう命じ、急いで私が衣服を身につけると、改めて床に正座をさせ、精液のかかったご飯 を「普通に箸を使って食べろ」とお命じになられた。私はご命令どおり、精液が表面で光るご飯を箸で挟んで持ち上げた。そして目を瞑り、口に放り込んだ。

その後、智美様はまるで何事もなかったかのように社会科準備室から出ていかれた。私は夏の陽射しが差し込む社会科準備室にぽつんとひとり残され、床に正座をしたまま、しばらくの間、放心していた。

やがて私は立ち上がり、窓辺に立った。眼下の校庭にはボール遊び等に興じる生徒達の短い影が散らばり、十代の少女達は屈託のない笑い声を響かせながら、瑞々しい肉体を弾ませていた。それは、暗い妄想に身悶える私自身とは正反対の、明るく、健康的な風景であった。

学校という場所はまことにもって不思議な空間であった。本来なら私は教師であるから、生徒に対しては絶対的な立場である筈なのに、智美様の存在がす べての風景を一変させてしまった。教壇に立てば生徒全員の目が私に向けられるが、彼女達の目に映る私は虚像に過ぎない。そして、そのことをひとりだけちゃ んと知っている者がある。それが智美様だ。よって私は常に智美様の前では精神的に全裸であるといってもよいのであった。

ホームルームの時も授業の時も、私はなるべく教師としての威厳みたいなものを損なわないように心がけているのではあるが、そんなもの、智美様には通 用しないのである。何せ智美様は私の破廉恥な本当の姿を知っていらっしゃるから、いくら私が虚勢を張って教師らしく振舞ったとしても、説得力など全くない のであった。

そして私は、日に日に深みに嵌っていった。智美様の苛めは深夜の調教だけに止まらず、始業式の翌日の出来事をきっかけに、学校内でも当然のように行われるようになっていった。

ワイヤレスの小型のピンクローターを陰茎に添えてその上からコンドームを被せて装着させられたり、アナルバイブを尻の穴に差したまま教壇に上がらさ れ、授業中にそのスイッチを入れられたり、自分の恥ずかしい姿を撮った写真を教科書のページに貼り付けられ、その教科書で授業をさせられたり、と辱めはエ スカレートの一途を辿った。澄ました顔で授業を進める私のアナルに実はバイブが挿入されていて、しかも手に持っている教科書には全裸で性器を勃起させて赤 いロープで縛られている恥ずかしい自分の写真が貼ってあるなどと、誰が想像するであろう。しかし、それは紛れもない現実であった。私は実際にそのようにし て授業を行った。もしもこんなことが生徒達に知れたら……と思うと、ますます興奮した。そんなことになれば、まず間違いなく全員から変態の烙印を押され、 あからさまに軽蔑される筈であった。それでも、そのスリルにはたまらないものがあった。但し、このことは絶対に漏洩してはならない秘密であった。もしも知 れ渡ったりすれば、その時点で私の人生は終わりだった。だから、何が何でも踏み止まっていなければならなかった。私の学校での毎日は、こんな感じの、どち らへ転んでもおかしくはない、まるで危うい綱渡りのようなものであった。

季節は夏から秋へと緩やかに移行していき、体育祭や文化祭で学校全体が盛り上がる頃には、そのような異常な日々が全く普通に感じられるほど私の感覚は麻痺し始めていた。完全に精神が崩壊していったといっても過言ではなかろう。

体育祭の後では当然のように汗をかいて蒸れた智美様のおみ足をひたすら舐めたし、文化祭で竹取物語の出し物をした時には、主役のかぐや姫を演じられ た智美様に終演後、控え室まで呼びつけられ、廊下にはまだ他の生徒がウロウロしているというのに、裸に剥かれてオナニーを命じられたりした。

その頃にはもう、深夜にラブホテルへ行くようなことはなくなり、調教は専ら私のアパートの自室で行われるようになっていた。土日を除く平日に限って 週に二、三度、智美様が私のアパートへやってきて、夜の九時頃から十二時頃まで散々私を玩具にして弄んでくださった。私が智美様のお聖水を初めていただい たのも、もう秋も深まった、そんな平日の夜のことであった。

あれは確か、学校が休みであった記憶があるから、勤労感謝の日の午後十一時過ぎのことであったと思う。休日は智美様もお忙しいらしく、私などは絶対 にかまっていただけなかったから、その日も私はひとり自室で悶々と過ごしていた。恋人もいないし、これといった趣味もない私の休日は、全くもって味気な く、だらだらとテレビやビデオを観たりしているうちに終わってしまう。あの日も、そういうありふれた休日のうちの一日であった。

あの日、テレビの洋画が終わり、そろそろ寝るかと思っていると、チャイムが鳴り、ドアを開けると、かなり酔っていらっしゃるご様子の智美様が立って いて、倒れ込むように入っていらっしゃった。私は驚いたが、それでも丁寧にご挨拶を申し上げ、床に正座をして迎えさせていただいた。しかし、智美様は随分 と荒れていらして、そんな私を冷徹に一瞥すると、私の存在など完全に無視して乱暴に靴を脱ぎ、廊下に上がり、ずんずんと奥へ進んで居間のテーブルにどっか りと腰を下ろされた。そして煙草に火をつけ、私に命じた。

「マゾオ、水!」

「はい、ただいま」

私は急いでミネラルウォーターをグラスに注ぎ、智美様に手渡して跪いた。

「お前、何を生意気に私の前で服なんか着てるの。早く脱げよ、バカ。お前は変態なんだろ? 変態なら変態らしく裸になってチンポを勃起させてろよ」

「申し訳ございません」

私は慌てて裸になった。季節も、秋というか既に初冬であったので、その時の智美様はジーンズの上着に赤いカラージーンズといういでたちであり、よっ て肌の露出は殆どなく、従って生足が拝めるわけでも、パンティが見られるわけでもないというのに、それでも簡単に私は勃起してしまったから、真にマゾとい う性癖はおかしなものであった。

智美様は一息にグラスの水を飲み干すと、咥え煙草のまま足を伸ばして私の股間を刺激した。むろん私は即座に反応し、腰を浮かせた。

「ああ、智美様、気持ちいいです」

いつもならそこからプレイが始まるのに、その夜はいささか雰囲気が違った。智美様はすぐに足での刺激を中断すると、煙を私に吐きかけながら、冷ややかな目で私を見据えた。

「全く、お前、バカじゃねえの? 生徒にチンポ踏まれて何が『気持ちいいです』だよ。いい加減にしろよ。そんなだから四十近くになっても独身だし、女にモテないんだよ。ちょっとは反省したら?」

「は、はい……すみません……」

私はいつもと違う空気を敏感に察知して、小さくなりながら言った。智美様の口調はいつもの女王様調ではなく、本心からの蔑みに充ちていて、冷静にそ んな風に言われると、私は全く立場がなかった。だからそれ以上何も言うことが出来ず、私はただ黙って項垂れていた。すると、そのうちに不意に智美様が訊い た。

「マゾオ、お前、本当に心から私に仕えたいと思っているわけ?」

「はい。勿論でございます」

私は即答した。智美様は、畳みかけるように質問を重ねた。

「演技とかお遊びとかじゃなくて、全身全霊を賭けて私に隷属するって誓える?」

「はい!」

「じゃあ、今ここで宣言して。お前は私のモノになるのよ。お前を生かすも殺すも私の自由。それくらいの覚悟は出来ているんでしょうね」

「はい! 私は、智美様にお仕えすることだけが歓びなのです。どうか私を所有してください。もっとバカにしてください。もっと軽蔑してください。もっと変態扱いしてください! 智美様―、私は生徒に弄ばれて興奮する変態マゾ教師なんです!」

私は声を大にして言った。もう智美様のいない世界なんて、私には考えられなかったから、それは全くの本心であった。この身をすべて智美様に捧げた い、と心から私は思っていたし、その気持ちにはほんの一片の偽りもなかった。智美様は、そんな私の返事を聞くと、突然表情を緩めてケラケラと笑いだし、上 着のポケットから小型のMDレコーダーを取り出して録音を止めた。

「ハハハ、言った、言った。これで本当にお前が正真正銘の変態だという証拠が出来たわ。これがある限り、お前はもう絶対に私には逆らえないわね。も し私に逆らったりしたら、どうなるかしらね。大量にダビングされて職員室に届くかな? それとも生徒達の家の一軒一軒の郵便受けに投げ込まれるかな? も しかしたら、ネットで写真と一緒に全世界に向けて流出しちゃうかもねえ」

「と、智美様……絶対に逆らうことなどいたしません。で、ですから」

必死になって私が言うと、智美様はさらに大笑いしながら答えた。

「お前さえちゃんとしてたらそんなことはしないから安心しなさい」

そう言い、智美様は煙草を灰皿に揉み消すと、ゆっくりと立ち上がった。私は茫然となりながらそのお姿を見上げた。その時の智美様はいつになく威厳があって、女王様然としており、私はその高貴さを纏った美しさに、ただただ見惚れた。

「さあて」

智美様はそうおっしゃり、いきなりカラージーンズのホダンを外すと、あっという間にそれをお脱ぎになられ、ベッドに放り捨てて私を見た。

「それじゃあ、お前の宣誓に敬意を表して、契りの酒じゃなくて、契りの聖水をあげるわ。そこに仰向けになりなさい」

「本当ですか?」

私は智美様のお言葉が信じられず、目を輝かせながら聞き直してしまった。しかし、そのお言葉は幻聴ではなかった。智美様は「本当よ、だから早くしな さい」と改めて強い口調でお命じになられた。その瞬間、私の内部で歓喜の感情がせりあがり、爆発した。私は急いで仰向けに寝転がった。智美様は、そんな私 の顔を跨いでパンティを下ろすと、中腰になられた。艶やかな光沢を湛えて密生する茂みの奥に、神聖な亀裂と桜色の可憐な蕾が見えた。初めてマジマジと拝見 させていただく智美様の聖なるエリアであった。

「お前、生徒のオシッコが飲めるのよ。嬉しいでしょう?」

「はい! 光栄です。智美様、この変態にお聖水をお与えください!」

「いくわよ」

さらに腰を落として智美様は私の顔を覗き込み、私は「お願いします!」と絶叫した。

やがて、金色の雫が勢いよく天から降り注いだ。私は目を閉じ、その暖かい感触を顔全体で受けた。そして勿論大きく口を開き、直に受け止めた。智美様 の聖水の勢いは、まるでバケツの水をぶちまけたかのように激しく私の顔に降りかかり、私はたちまちびしょ濡れになってしまった。さらに、飲み込みきれない 聖水が口から溢れて、私は金色の泉に溺れた。

「お前、ちゃんと飲まなきゃ勿体無いでしょ」

「すいません」

わたしがそう答えると同時に、唐突に放水が終了し、ようやく目を開くことが出来た。が、次の瞬間には、智美様の股間が間近に迫っていて、問答無用の うちに私の顔面は智美様のたっぷりとした豊満なお尻の肉で被われてしまった。湿ったままの股間から智美様の体温がダイレクトに伝わってきて素敵だったが、 しかし、鼻と口という呼吸器がお尻の豊かな肉によって塞がれてしまったため、私はたちまち呼吸困難に陥った。苦しくて、私はもがいた。そんな私の耳に、智 美様のお言葉が届いた。

「お前は私専用の人間ウォシュレットよ。ほら、舌を使って私のアソコを綺麗にしなさい」

「フンガフンガ」

失礼します、と言ったつもりであったが、口を塞がれているため言葉にはならなかった。それでも私は一所懸命舌を伸ばし、濡れた股間を舐めた。陰毛の 先端に付着した聖水の雫も丹念に吸い、溶けたように熱くて、芳しい香りを放つ亀裂周辺は、とくに丁寧に清めさせていただいた。やがて、再び智美様のお声が 響いてきた。

「ほら変態、見ててやるからそのままオナりな。シコりたいんだろ?」

「ファイ!」

私はそのお言葉をありがたく拝受して、舌の動きを止めないまま、屹立している茎を強く握り締めると、猛然とシゴき始めた。智美様が私の顔の上で挑発するように尻を前後に振り、それに合わせて私も体全体を揺らしながら、だんだん手のスピードを速めていった。

そして、射精した。その放出した瞬間、体中から力が抜けた。智美様の甘い体液と重みと体温を顔全体に感じながら私は、生徒の尻の下で自慰をして果て た自分というものを冷静に顧みて、もう戻れない、と思った。どこまで落ちていくか知れない、その恐怖も同時に感じていたが、しかし後悔の念は微塵もなかっ た。このうえない至福感に包まれていて、私は何の矛盾もなく幸福であった。背中で冷たくなっていく、聖水をたっぷりと吸い込んだ絨毯の感触さえ、私には愛 しかった。あらゆる雑念は去り、顔を被う智美様のお尻の量感とその夢のような柔らかさだけが、ただ私を支配していた。私はその放心状態の中で、いつまでも こうしていたい、と祈るような気持ちで切に願い、しばらくの間、まるで神に試されているかのような極限の幸福感をひたすら貪った。

智美様がアパートへ来てくださるようになってから、私の部屋はすっかり雰囲気が変わってしまった。それまでは、いつ同僚が訪ねてきてもいいように、 H系のビデオや本の類は押入れの奥に隠したりビデオラックの裏側に並べたりと涙ぐましい努力をしていたのだが、智美様のご命令によりそれらはすべて見える 場所に置いておくことが義務づけられた。だから、部屋の真ん中に座って周囲を見回すと、眩暈がしそうな光景が目に飛び込んでくるようになった。床にはビデ オテープが堆く積まれ、つい先頃まで厳めしい教育関係の書籍が詰まっていた本棚には、ずらりとSM雑誌の背表紙が並んだ。壁には、少しずつ買い足していっ たSMのための小道具が飾られた。首輪、手錠、手枷、足枷、ロープ、鞭などである。そういったグッズが、ホームセンターで買ってきて日曜大工で作った棚に 並べられた。しかも、その棚の隣に掲げられたコルクボードには、自分の恥ずかしい写真がベタベタと貼られていて、もしもこんな部屋を智美様の誰かに見られ たら、私の全人格が否定されてしまうことは明白であった。従って、私は智美様以外の人間を部屋に入れることがなくなった。もっとも、もともと友人は少ない し、無論女性が来ることなど皆無なのは改めて言うまでもない。せいぜい、たまに同僚の教師が訪れるくらいである。だから、その訪問さえ拒否すれば、たいし て問題はないのであった。

初めて聖水をいただいた夜、床がびしょ濡れになってしまい、往生した私は、その教訓から、以後はきちんと予めビニールのシートを敷いて聖水をかけていただくようにした。以来、私の部屋にはビニールシートが必需品となった。そのシートは風呂場の隅にある。

私は智美様が帰られた後、ひとりでビニールシートを風呂場で流すのであるが、その時の私は屈辱感に震えながらも、しかし心の内には歓びが満ち溢れて いる。そんな幸福が二学期の間ずっと続いたが、冬休みに入る頃には、智美様から「部屋の中でおしっこをするのはいいけど、いちいちシートを敷くのは面倒 だ」という意見が述べられて、結局、聖水拝受の儀式は風呂場で行われることとなった。

思えば、黄金を初めていただいたのも、その年の冬休みの正月明けのことであった。三が日が終わり、あと数日で三学期が始まるという、よく晴れた日の 夕方、ふらりと智美様が来てくださって、いつものように破廉恥な調教を受けた後、風呂場でついに私は夢を叶えたのである。その日、智美様は私を責めながら ずっと「お腹の具合がいまいちなのよね」とおっしゃり続けていて、聖水を与えている最中に、急に催してきたらしく、股の下でおしっこに塗れている私の顔を 上から覗き込んで、訊いた。

「ねえ、お前の顔にウンチしてもいい?」

その時の私の歓喜といったら、まさに天に昇る心地、いや、それ以上に、宇宙の果てまで光速で飛んでいくような感じであった。

「是非お願いいたします! ずっと憧れていたのです!」

私は一瞬自慰の手を止めて上体を起こし、涎を垂らさんばかりに、ピンクの蕾を凝視しながら切望した。

「お前もとうとう落ちるところまで落ちたわね。ウンチが欲しいなんてもう人間じゃないわよ。いいわ、そこに寝なさい」

呆れたように智美様はそうおっしゃり、それでも心持ちさらに腰を落とすと、力み、その可憐な蕾から柔らかい黄金の先端を覗かせた。私は仰向けに横た わりながら、固唾を呑んでその様子に見入った。黄金は見る間に全容を現し、やがて自らの重みに耐えられなくなってしなやかに落下し、私の顔面を被った。か なりの軟便で、それは溶かした金に似ており、そして、まるで慈悲を象徴するかのように暖かかった。あの香気は、何にも例えようがない。強烈は強烈で、充分 想像を絶する刺激性の強さを伴っていたが、自分のものとはまるで異質の素敵な芳香であった。あの時私は、同じ排泄物であるのに自分のものとはどうしてこう も違うのだろう、と思ったものである。香り、硬度、造形、そのどれひとつを取ってみても、さすがに天界の物質だけあって高貴さを纏っていた。排泄という行 為も、智美様が行えばたちまち神々しくなる。私はそのまま狂ったように自慰をし、爆発した。そしてその余韻に浸りながら、顔を被う柔らかく暖かな感触に、 しばし時を忘れて酔い痴れた。幸福であった。私はこのうえなく満たされていた。とうとう智美様の黄金をいただけた! その歓びだけが私を包み込んでいた。 本来であればトイレで下水へ流してしまわれるものを、智美様はそんな勿体無いことはなさらず、この愚かなる下僕の私に恵んでくださったのである。究極の慈 愛の象徴、それが黄金であった。私は素直な心で、もうこれ以上望むものなど何もない、と思った。

私はあの時、黄金色の夢の中に菩薩を見たような気がした。

私と智美様の三年間を飛行機の航行に例えるなら、一年目は滑走路を疾走して黄金拝受を境に機体が浮き上がり、一気にぐんぐんと上昇して高度を上げて いき、二年目から三年目にかけては、安定飛行に入った、という感じであった。それほど、あの黄金拝受には重要な意味があった。あれがあって初めて私は本当 の意味で智美様に心から帰依できたといっても過言ではない。

そして季節は春夏秋冬とめまぐるしく巡り、私の倒錯した、しかし充実した隷属生活は、智美様のご卒業というグランド・フィナーレに向かって、ただた だ邁進していった。私の学校では、進級にあたってクラス替えは行われず、担任も変わらないまま上級へスライドしていくので、三年の間、私はずっと智美様の 担任であった。私は三年になった頃から、ただ漠然とではあったが、智美様がご卒業された後のことをいろいろと考えるようになっていた。果たして私は捨てら れるのであろうか。それとも引き続いて苛めていただけるのであろうか……。しかし、智美様は明確なお返事を避けていらっしゃって、私がそれとなく探りを入 れても、いつもうまくはぐらかされてしまい、結果的に私は全く不明のまま、三年生の夏休みが終わったあたりからは、迫り来る運命のカウントダウンの音に怯 えて暮らした。私と智美様の隷属関係という名の飛行機は、着陸態勢に入っていた。問題は、どこへ着陸するのか……そして、それは再びどこかへ向けてテイ ク・オフするのだろうか、の二点であった。それでも、私にはどうすることもできず、ただ運命の行方に身を委ねながら、教師の仮面を被りつつ、ひたすら歪ん だ快楽の淵に沈んでいた。

私は智美様の体内から分泌される様々な体液を享受し、股間の聖なるエリアから日々排出される天界の物質を我が物とした。そして時には玩具に、また時 にはストレス解消用の道具となって、智美様に仕え続けた。私は智美様から与えられる物であれば、何でもありがたくいただいたし、その度に心の内で合掌をし て、感謝の気持ちを忘れなかった。中でも、智美様がよく恵んでくださった、一度口に入れてグチャグチャに咀嚼した食物ほど、私にとって尊い食べ物はなかっ た。昼休みの社会科準備室で、夜更けのアパートで、私はそれを堪能した。私は智美様の前で生まれたままの姿を晒し、来る日も来る日も忠実な奴隷や犬となっ て、自分自身を破壊していった。

しかし、性行為という一線だけは決して越えなかった。そもそも一匹のマゾと智美様の間に、そのような交渉などありえるはずがなかった。ふたりの間に は、人間と犬、もしくは神と人間、というくらいの決定的な存在の格差があって、そのような間柄で性交渉など成立するわけがないのであった。人間が犬とセッ クスするだろうか。また、神がこの世界に下りてきて、市井の人々と肌を触れ合わせて人間とまぐわうことなどあろうか。考えるまでもなく、それはありえな い。全くナンセンスである。だから、私と智美様の間に、そのような感情の起伏が生まれる可能性はゼロ、皆無であった。

もっとも、だからこそ、高校生活という少女が大人へと変貌を遂げる奇跡のような三年の間、私と智美様の主従関係は一度も途切れることなく続いたのだ と思う。私にとってはただ智美様に跪いてお仕えすることのみが悦びであり、それ以上を望むことは身の程知らずだとわかっていたから、責めていただけるだけ で幸福であった。そして智美様の場合は、たまたま目の前に常に絶対服従を誓う変態がいたから、退屈しのぎにちょうど良いという感じで私を苛めてくださった のであろう。それだけのことである。その証拠に、智美様にはいつも恋人がいらっしゃったし、彼氏の話というものもよく聞かされた。しかし不思議なことに、 あからさまなセックスの話をされても、私はその智美様の相手に対して全く嫉妬という感情は湧かなかった。ちらりと、羨ましいとは思ったが、実際にそういう チャンスが訪れたとしても、私にはとてもではないがおこがましくて、智美様を組み敷くことなど出来ないと自分でよくわかっていたから、結局、嫉妬心自体が 無意味なのであった。

そして、やがて無情にも年が明け、智美様は短大の入試に成功し、卒業式の前日、私は残酷な現実と直面した。智美様は、私を捨てるとおっしゃった。私 はたまらなく悲しかったが、それは受け入れなければならない現実であった。これまで苛めていただけただけでも、ありがたいと思わねばならぬ。そうでなけれ ば罰が当たるであろう。私は無理やり自分をそう納得させた。その時、手のひらには、智美様の聖水がたっぷりと沁み込んだ純白のパンティがあった。智美様が 記念にと言って、パンティを履いたまま私の顔に放尿し、その濡れたパンティをくださったのである。私は手の中で少しずつ冷たくなっていくそれをぎゅっと握 り締めながら、最後に、智美様の前で正座をし、深々と頭を下げた。そして、三年間にわたる長期間のご調教に心から感謝したのである。

私との関係は、智美様の青春の1ページに刻まれたであろうか。私の心から智美様のお姿が消えることは未来永劫ありえないであろうが、果たして智美様 はどうであろう。この三年間、私は智美様にすべてを捧げ、一片の後悔もない。そして今日、智美様はご卒業されていく。もう智美様からご調教を受けることは ないであろう。智美様は、ただ単に高校の課程を修了するだけでなく、少女という人生の中で最もかけがえのない、光り輝く期間からご卒業されていくのであ る。そんな特別の旅立ちの日に、いつまでも女々しいことなど言ってはいられない。私は悲しみの涙をちぎり捨てて、智美様のご卒業を素直な心で祝福しなけれ ばならない。きっとそれが、奴隷としての私の、最後の使命なのであろう。

私は壇上に上がり、生徒ひとりひとりの名前を呼んで、卒業証書を手渡していった。じきに、智美様の順番が回ってきた。脳裏に、智美様との調教の日々が走馬灯のように甦ってきて、私は溢れそうになる涙を堪えながら、智美様の名前を読み上げた。

「榊原智美」

「はい」

智美様が階段を上がってきて私の前に立つ。そして、リハーサルでやった通りの仕草で、両手を揃えて前に差し出す。私は「おめでとう」と言って卒業証書を手渡した。すると、智美様は誰にも聞こえないくらい小さな声で、こうおっしゃった。

「変態教師のくせに偉そうに」

その刹那、私は感激のあまり、目を見開いて智美様を見つめ返してしまった。一瞬、私達だけに通じる濃密な空間が生まれた。しかし、智美様はすぐに踵 を返すと、さっさと壇上から下りていってしまわれた。私はなす術もなく智美様の後ろ姿を見送りながら、それでもどうにか気を取り直し、次の生徒の名前を呼 んだ。

それは、すべてが完全に終わりを告げた瞬間であった。

私は再び平穏な生活に戻った。春休みの間、もしかしたら一度くらいは智美様から呼び出しの電話がかかってくるかもしれない、と未練がましいことを考 えて、淡い期待を抱きながら、アパートから殆ど出ずに過ごしたが、どれだけ待っても電話のベルは鳴らず、もちろん部屋のドアも開かれなかった。そして虚し く春休みが終わり、私はまた一年の担任をやることとなった。奇しくも智美様と出会ったのと同じ1‐Aであった。

新しい生徒の中に、榊原という苗字の生徒がいることに気づいた時は、ちょっとしたショックであった。彼女の名前は榊原優子。もしかして妹かと思い、 住所を確認してみたのだが、違っていた。しかし、智美様に負けず劣らず素敵な生徒で、派手なギャル系であった。体躯も逞しくて素晴らしい。私は初めての ホームルームの時、じろじろと無遠慮に彼女を見つめてしまった。智美様に捨てられて、私は新しくお仕えする女王様を切実に求めていた。だから私は心の内で 密かに「優子様」と呼んでみた。すると、そうお呼びすることがとてもお似合いな感じで、私の心は俄かにときめいた。そして、優子様に苛めていただきたい、 と思い、その瞬間、案の定、勃起してしまった。智美様に苛めていただいたように、優子様にも同じようなことをしていただきたかった。自身の恥ずかしい姿を 見ていただきたかった。バカにしていただきたかった。どんなパンティを履いていらっしゃるのであろう。ルーズソックスに包まれたおみ足からは、果たしてど のような芳香が立ち上ってくるのであろう……。そんな妄想が爆発的に膨らんだ。しかし、智美様の場合は特別の中の特別であり、一度うまくいったからといっ て、そうそう柳の下にドジョウはいない。それくらい、いくら私が愚かでもわかる。だから私は、これからの三年間、優子様を夜のおかずにして、せいぜい自家 発電に励もう、と思った。

廊下を歩いていくと、後ろから肩を叩く人があった。振り向くと、そこには優子様が立っていらした。窓から差し込む麗らかな春の陽光の中、優子様は凛然と微笑んでいらっしゃる。私は担任教師らしく、寛容な笑顔を作り、尋ねた。

「どうしたんだい、榊原」

廊下には、私達ふたりしかいなかった。私は、平然とそう答えながらも、実は、大柄でコケティッシュな優子様にじっと見つめられて、内心では心臓が破裂しそうなくらいドキドキしていた。

「ちょっと見てもらいたいものがあるんだけど」

大きな瞳をキラキラさせながら優子様がおっしゃる。

「何だい?」

私は訊いた。すると優子様は無言のまま、ポケットから数枚の写真を取り出して、私に示した。私は、屈みこむようにしてそれを眺めた。そして、そこに 映っている情景を認めた瞬間、卒倒しそうになってしまった。なんとその写真は、智美様が私の数々の破廉恥な姿態を撮影したコレクションの中の数葉だったの である。

「ど、どうしてこれを……。き、君はもしかして……」

私はしどろもどろになりながら、優子様に言った。

「そうよ、私は妹」

「し、しかし、住所が……」

「ああ、私のうち、この春休みに引越ししたのよ」

「ひっ、引越し?」

「そうよ。まあそんなことはちょっとこっちに置いておいて……。それより、どうこれ?これね、お姉ちゃんがくれたの。お前の話はお姉ちゃんから全部 聞いているわ。すっごい変態なんだってね。いいわ、これから三年間は私がお姉ちゃんの後を継いでたっぷり苛めてあげる。ね、マ・ゾ・オ。嬉しいでしょ?  嬉しかったら素直に嬉しいと言いなさい」

いきなり冷徹な目になって優子様は私の胸倉を掴んだ。優子様はわたしより背が高いので、自然と見下ろされる格好になる。私は爪先立ちになりながら、答えた。

「は、はい。嬉しいです」

いつ誰が通りかかるか知れなかったから、私は気が気でなかった。たちまち汗が噴き出してくる。しかし性器は既にギンギンであり、私は完全に優子様の虜となってしまっていた。と、優子様は突然、空いている方の手で、ズボンの上から私の性器を鷲掴みにした。

「うわっ、マジで変態。もうチンポ、ビンビンになってるじゃん。ハハ、これは面白いわ。私、お姉ちゃんよりSっ気が強いから、覚悟してなさいよ。あっ、でもお前の場合は期待してなさいよ、か。キャハハハハハ」

優子様はそうおっしゃると、胸倉と性器から手を離し、私の顔に、ペッ、と口の中に溜まっていた大量のお唾を吐き捨てた。そしてくるりと背を向け、ま るで春の風のように軽やかに去っていってしまわれた。私は顔を伝う暖かなお唾の感触をありがたく受け止めながら、痴呆のようにその後ろ姿に見惚れた。廊下 の先へ、優子様の背中が遠ざかっていく。その距離に比例するように、私の中で期待が大きく膨らんでいく。

やがて視界から優子様のお姿が消え、私は、今日から自分は優子様に仕えていくのだ、と思った。智美様からのご調教で学んだことを、今度は優子様に注ぎ、楽しんでいただこう。それがきっと私に定められた運命なのだ。

私は放心から返ると、明るい廊下を職員室へ向かって歩きだした。途中で、まだ顔にお唾が付着していることに気づいて、慌てて上着の袖で拭った。そして改めてゆっくりと歩きだしながら、私は早くも優子様から受けるであろう様々なご調教を想像して、心を浮き立たせた。

春――。それは新しい季節の始まりであった。

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