Session #1

「じゃあ、シャワーを浴びてきて。そろそろ始めましょうか」

優しい女王様の声に促されて、君は、それまで座っていたベッドの端から腰を上げた。初めてのSMクラブなので、よく勝手がわからない。ひどく緊張している。君にそう声をかけてプレイの準備に取り掛かった女王様は、風俗雑誌の広告で写真を見て予約した女性だ。君は、その写真を見たとき、なんて美しい人なのだろうと思い、心をときめかせた。

君は服を脱ぎ、バスルームに入った。このバスルームは壁がガラス張りになっていて、外から丸見えだった。君は気恥ずかしさを覚えながらシャワーを出し、湯温を調節する。

君は今夜、仕事を終えると、逸る気持ちを抑えてクラブに電話をした。そのときのことを思い出しながら、君はシャワーを浴びる。電話番号は予め手帳に書き写してあり、目当ての女王様の名前も、その電話番号の横に小さく記してあった。名前は『ユリア』。プロフィールの欄には身長172センチとあり、大きなウェーブのかかった髪がゴージャスな感じで、凄まじいほどの美人だった。

クラブに電話を入れると、応対に出た男の人に、「申し訳ありません。今日は、ユリアちゃんは十二時からしか予約を受けられません」と言われた。君は、あまりの時間の遅さに一瞬どうしようかと迷ったが、それでもいったんその気になってしまった欲望の炎を打ち消すのは難しかったので、「じゃあ、その時間で」と承諾した。「ルームはどうされますか?」と訊かれて、よく意味がわからなかったのだが、とりあえず「お願いします」と言っておいた。後からホームページをチェックすると、そのクラブにはプレイのための専用の部屋があり、プレイ代とは別に料金を支払うと、その部屋が利用できるらしかった。

君はいったん自宅へ戻り、風呂と食事を済ませてから、まだ予約の時間まで余裕があったので、コンピュータでクラブのウェブサイトをチェックしてそのことを知った。クラブのホームページでは、そのユリア女王様は看板的存在なのか、とても大きく扱われていた。もう何十回と見たページだが、全く見飽きることはない。年齢は二十二歳と記載されていたが、それは本当かどうかわからない。しかし、実際に対面してみた感想は、たぶんサバは読んでいないな、というものだった。本当に二十代前半のように見えた。

君はシャワーを出しっぱなしにしたまま、ボディソープを手に取り、簡単に体を洗う。もう既に期待で勃起している性器と尻に石鹸を塗りつけ、あとは胸とか腋とかを擦った。

今夜、君は十時半過ぎに自宅を出た。地下鉄に乗ってクラブのある場所まで向かった。通勤で使っている路線なので、定期が利用できた。

目的の駅で降り、君はクラブへと歩いた。駅からクラブまで五分もかからなかった。ただ、初めて来る場所だったし、三十分も前の十一時半に着いてしまったので、時間を潰すために君はその辺りを散歩した。

そして十一時五十二分に君はクラブへ入った。カウンターの中から黒服の男性が出てきて「いらっしゃいませ」と言った。ひとりだけいた客が、入ってきた君の顔を見た。君は目をそらして、店員に促されるまま椅子に座った。君はとても緊張していたが、手も声も震わせることなく代金の支払いを終えた。

そうして一階のフロントで手続きを済ませると、しばらくしてから奥の控室のドアが開き、女王様が現れた。その瞬間、君は痴呆のように見惚れてしまった。彼女はすらりとした長身で、長い脚をブーツカットのローライズ・ジーンズで包み、胸の隆起を強調するように、体にぴったりと張り付いているようなTシャツを着ていた。手首にはブレスレットが巻かれ、一緒に待合室を出たとき、とてもいい匂いの香水が鼻腔を擽った。君は、もうひとりの客の前を女王様と一緒に通り抜けて、待合室を出た。

四階にあるプレイのための個室へ、君は女王様の後ろについて上がっていった。初対面なので、空気はなんとも気まずかった。しばらく無言のまま階段を昇った。何せ、君は今日がSMクラブ初体験なのだ。胸はドキドキしっぱなしで、口の中がカラカラに渇いている。何度も唾を飲み込んで緊張を解そうとしたが、すぐ目の前でセクシーな女王様のジーンズに包まれた形のよいお尻が揺れているので、その効果は全くなかった。君は階段を昇りながらその尻と、そして太腿を凝視し続けていた。すらりとはしているが、充分肉感的な脚だ。あと何分か後には実際にその脚に触れることができる……そう思うと、たちまち君は勃起してしまった。あの太腿に抱きつき、そしてあの尻で顔を押し潰される……その夢のような空想が、君の脳内を支配した。

君は体に塗ったボティソープを丁寧にシャワーで洗い流した。そして最後に、シャワーの湯を口に含んで嗽をした。

そしてシャワーを終えてガラス張りの浴室を出ると、部屋の照明は絞られていた。君はバスタオルで体を拭った。女王様は既にボンデージに身を包み、椅子に脚を組んで座っている。君は見られているという女王様の強い視線を感じながら、その視線の中で体を抜いた。そして拭き終え、バスタオルを傍らの籠の中に入れると、手で股間を隠してゆっくりと女王様の前へ進んだ。性器はもう激しく天を突いている。

「何、隠してるの。手をどけなさい」

女王様にそう命じられ、君は「はい」とこたえて手をどける。女王様は椅子で脚を組んだまま、唇の端を歪ませて軽蔑するように小さく笑った。

「まだ何もしてないのに、もうそんな風になってるなんて、ほんと変態だね」

「すみません」

君は女王様の前に立ったまま、恥ずかしさのあまり顔を赤らめ、消え入りそうな声でそうこたえた。

「ほら、おまえ、いつまでボーと立ってるの。ご挨拶は?」

いきなり冷徹な目になって女王様が言う。君は弾かれたようにその場に跪くと、額を床に擦りつけた。

「ユリア女王様、御調教を宜しくお願いいたします」

君の後頭部に、女王様のヒールの底が置かれた。そのままぐりぐりと強く押し潰される。君はその重みを感じながら、ちらりと盗み見るように壁の方に視線を向けた。このルームの壁は鏡張りになっているので、そこには、ボンテージに身を包んだ美しい女性の前で全裸になって跪き、その頭をヒールで踏まれている不様な自分の姿がバッチリ映っていた。女王様が君の視線に気づいて嘲るように言う。

「おまえ、そんなに自分の情けない姿が見たいの? ほら、よく見てごらん。変態マゾの憐れな姿を」

そう言って女王様は君の頭を踏みながら、君を鏡の方へ向かせた。君は体を捻らせるようにして鏡を見た。その鏡の中で女王様と目が合った。その瞳には嘲笑がくっきりと浮かんでいて、君は燃え盛るような羞恥心を覚えた。

「ほーら、おまえみたいな変態にはほんとお似合いの格好」

女王様のヒールの底が、君の頬を踏んだ。君の顔は無残に歪む。しかし、鏡に映っている君の下半身は、猛々しく勃起している。

「こんなことされて勃っちゃうなんて、ほんとおまえは変態ね」

「すみません……」

君は小声で謝罪する。

やがて、女王様の足がどけられた。それでもまだ君は顔を上げていいという命令を受けていないので、じっと跪いていた。女王様が立ち上がった。君の視界に、ヒールの細い踵がある。

「立ちなさい」

頭上から女王様の声が降り注いだ。君は顔を上げて立ち上がった。女王様の手には赤いロープの束があった。

「これからおまえを変態らしく縛ってあげるわ。ほら、気をつけをしなさい」

「はい」

君は体の横にぴたりと手を下ろして付けた。女王様がすぐそばに立ち、髪の匂いと香水が強く漂う。美しく端正な顔が、十数センチの距離にあり、君は興奮した。鳶色の澄んだ瞳が君を見つめている。その視線に晒されながら君は極度の緊張状態に陥った。赤く濡れたような唇が間近にあり、興奮のあまり君の膝が震え始める。

「いかにもマゾっていう目ね。捨てられた犬みたい」

そう笑って言いながら、女王様は君を縛り上げていく。時々長い髪が君の顔に触れる。手つきは慣れたもので、君はたちまち亀甲縛りで拘束された。性器も、玉袋の裏から引っ張り上げられるように縛られて、その部分だけが卑猥に強調された。もちろん、その姿は全部鏡に映っていて、美しい女王様と無様な奴隷の対比が顕著だった。君はその落差にマゾヒストとして興奮している。

腕はがっちりと縛られ、足は膝の上あたりまでと、足首が別に拘束された。女王様が君の目の前に立ち、君の目の奥を覗き込みながら、黒く塗られた指の爪で君の乳首を摘み、弾く。その刺激に、君はたまらず「あーん」と女性のように喘いでしまった。

「女みたいに泣いて。どう? 気持ちいい?」

女王様はさらに強く乳首を抓った。君は歯を食い縛ってその痛みに耐える。女王様はおかしそうに微笑んだまま、片脚を君の足の間に入れて、太腿で性器を圧迫した。君は乳首の痛みとペニスに伝わる女王様の太腿の気持ちいい触感の狭間で、意識が分裂していくのを感じた。ふと気がつくと、君はたまらず自ら腰を振り、勃起したペニスを女王様の太腿に擦り付けていた。

「おまえ、何、腰振ってんだよ。調子に乗るんじゃないわよ」

強い口調でそう言って女王様はビンタを張り、君の髪を掴むと、そのまま床に転がした。手足を拘束されている君は、どうすることもできなかった。なす術もなく床に転がってもがいたが、なかなか体勢を立て直すことができない。そんな君の顔を、女王様がヒールで踏んだ。爪先が口の中に入れられる。そしてさらに鼻や唇を踏みつけていく。君は芋虫のように体を捩るが、それは女王様の嘲笑を誘うだけだった。

「申し訳ございません。お許しください」

しかし女王様の攻撃は止まない。鋭い蹴りが次々に叩き込まれた。その度に君は体を捻って逃れようとするが、驚くほどがっちりと拘束されているので、逃げられはしなかった。降り注ぐ女王様の嘲笑の中で君は蹴られ、床で転がされ続ける。

いつのまにか女王様の手には黒いバラ鞭が握られている。

「ほら変態、そこで四つん這いになりな」

女王様が命じる。君は「はい!」と息を弾ませながらこたえて、そのようにしようとしたが、手足の自由が利かないため、先ほどのご挨拶の時のようにちゃんと跪くことはできなかった。手をつくことができないので、尻を高く掲げ、頬を床に付けて体を支える。酷く不安定だ。それを面白がって女王様は何度も君を蹴って転がす。その度に君は「すみません」と謝罪しながら体勢を戻す。

やがて丸めた背中にバラ鞭が振り下ろされた。パシッパシッと乾いた音がルーム内に響き渡る。君は生まれて初めて経験する鞭の感触に酔い痴れている。そして鞭を打たれている自分を家畜のように感じて、そのことに気持ちを昂らせる。女性の前で全裸を晒し、鞭を打たれて喜んでいるなんて、自分は家畜以下の存在だ……そう感じて、股間の熱がますます高まっていく。

暗く閉ざされた部屋で君は今、一匹のマゾ豚と化している。もはやヒト科の生物ではない。君は変態という名前の別の生物だ。君は鞭を打たれながらペニスをシゴきたくてたまらなかったが、手を動かすことができないために断念せざるをえず、体を引きちぎられるようなもどかしさに身悶えている。視界の隅に女王様のヒールが見える。それは黒く艶やかな光沢を湛えていて、君はその中に隠されている白魚のような素足を想像してさらなる焦燥に七転八倒する。

「おら、立てよ」

いきなり女王様が君の髪を掴んで引っ張り上げる。そして向かい合って立つと、女王様は踵の高いハイヒールを履いているので、自然と君を見下ろす形となる。そのギャップが、また君のマゾ性に火をつける。

「おまえ、そんなにチンポを擦りつけたいのか?」

女王様が君の髪を掴んだまま、太腿で君のペニスを圧迫して上下に擦る。もちろんその時、女王様は君の目を覗き込んでいる。君は怯えと欲望が交錯した複雑な目で女王様を見つめる。そして太腿がペニスを擦り上げるその目くるめくような感触に、君の腰は自然に浮き上がり、卑猥に動き出す。

「ああ、女王様」

君はもう恥も外聞もなく己の本能の命じるまま腰を振って勃起したペニスを女王様の太腿に擦り付けている。

「ハハハ、おまえ、まるっきり犬ね」

女王様はそう言って高らかに笑うと、君の手の拘束だけを解いて、椅子に座った。

「そこにお座りしなさい」

顎をしゃくって君に命じる。君は自由になった手を床について、お座りの姿勢をとる。そこへ、女王様の長い脚が無造作に投げ出された。君はごくりと唾を飲み込んでそれを凝視する。太腿の肉感は圧倒的で、君の視線はすべすべとした白い肌に張り付いている。そしてその視線はやがて、太腿の付け根、小さな黒い布で被われた股間へと移動していく。

「どうしたの、おまえ。何がしたいの?」

挑発するように女王様が脚を君の前に投げ出して言う。君の我慢はもう限界に達している。だから君は勇気を振り絞っておずおずと懇願する。

「女王様、おみ足に触らせていただいてもよろしいですか?」

「うーん、どうしようかしら?」

素早く足を引っ込めて、女王様は焦らすように首を捻ってみせる。

「お願いいたします、女王様!」

君は腰を浮かしてさらに哀願する。その手は、自分の意思とは関係なく、もう女王様の白く官能的な脹脛へと伸びかけている。

「しょうがない変態ね。ほら触りなさい」

再び女王様の脚が君の目の前に降臨する。君は「ありがとうございます!」と叫んでその脹脛を両手でそっと包み込んだ。白くつるりとした肌は、まるで夢のようだ。君は頬ずりしたくなる。それでもぐっと我慢していると、女王様は何気なく君のペニスを踏んだ。そしてヒールの底で上下に擦る。君の腰はもはや完全に浮き上がっている。

「じょ、じょ、女王様ー」

君は悶絶しながら叫ぶ。

「女王様、どうか、どうか女王様のおみ足でオナニーをさせてください!」

君は必死になりながら懇願した。女王様は呆れたように笑いながら、それを許可した。

「じゃあ犬みたいにオナってごらん」

「はい! ありがとうございます!」

君はそう言い終わると同時に、女王様の太腿に抱きついた。君はまだロープによって膝を縛られているままだったが、強引に女王様の脚に覆い被さり、脛の辺りに性器を押し付けて激しく腰を振った。まさに今の君は盛りのついた犬だった。

「おまえ、最高」

女王様がケラケラ笑いながら君の腰の動きに合わせて足を動かす。君はどさくさに紛れて顔を女王様の股間に押し込んだ。そして腰を振りつつ鼻を、股間を覆う布と太腿の境界に押し付けて、クンクンとその部分の匂いを嗅いだ。ほとんど無臭だったが、君はそんなことをしている自分の変態さに激しく興奮していた。

「おまえ、鼻を鳴らして匂いを嗅ぎながら必死に腰を振っちゃって、ほんと犬だよ、犬、ハハハ」

「は、はい……ぼ、ぼくは犬です!」

夢のような太腿の感触に酔い痴れながら女王様の嘲笑を全身に浴びて、君は幸福の境地を漂流しながらそうこたえる。壁の鏡に、脚に抱きついて腰を振っている自分の姿が映っていて、君はそれをちらりと一瞥しながら、我ながら常軌を逸した信じられない格好だ、と思った。しかし、今の自分なら、何でもやれるような気がしていた。もう羞恥心も何もない。ただ本能の赴くままに君は行動している。この暗い密室で、君は自由だ。

女王様の太腿は素敵で、柔らかく、そして暖かい。君はたまらず「舐めさせてください!」とお願いした。すると女王様は「いいよ、ワンちゃん。お舐め」と言った。

君は天にも昇る気持ちで女王様の白い肌を舐めた。それはつるりとしていて、最高だった。君は太腿に吸い付き、そして腰を振り続ける。時々股間にも顔を押し込んで、たっぷりと香りを味わっている。この布の向こうに女王様の聖なる亀裂があるのだ! そう思うと、理性などもう完全に吹き飛んでしまった。君はショーツに強く鼻を押し付けて女王様の亀裂を夢想し、素晴らしいおみ足を自分の股間に引き込んで必死に腰を振りながら、夢見心地だった。

「ああ女王様、女王様」

君は半眼で陶酔したように呟き続けながら太腿の感触を享受している。その姿は、とても人間が人前で晒す格好ではなかったが、君にとっては、まさに夢と現実が融合したかけがえのない瞬間だった。

君は人間という仮面を脱ぎ捨て、一匹の犬となっている。その犬に、女王様が言う。

「ねえ、なんかおまえと遊んでいたら足が蒸れてきちゃったみたい。ねえワンちゃん、わたしの足も舐めて綺麗にしてくれる?」

妖艶な笑みを浮かべる女王様に、君は何度も大きく頷く。

「はい、勿論です!」

「じゃあこのヒールを脱がせて、そして舐めて」

女王様は足を君の前に投げ出す。君は両手で掲げるように女王様の足を持つと、そっとヒールを脱がせた。その瞬間、白く透き通ったような華奢な指先が出現した。その出現と同時に、甘く暖かな芳香が立ち昇る。それはこの世界で最も尊い香りであり、革と汗が絶妙なハーモニーを奏でていて、君はその奇跡の旋律に心を震わせた。革のヒールの中で熟成されたその香りは、君の煩悩を完全にショートさせるほど甘美で刺激的だった。官能に彩られた魅惑のアロマが大胆に優しく君を抱擁する。

次の瞬間、君は狂ったように女王様のおみ足をしゃぶっていた。両手で踵を支え、指の付け根のふっくらとした部分に鼻を押し付けて芳香を充分に堪能し、そして指の間へ執拗に舌を伸ばす。足の親指を口いっぱいに頬張り、中で舌を縦横無尽に転がしながら、鼻腔を擽る高貴な香りを思いっきり胸に吸い込む。

いつのまにか、女王様のもう片方の足が君のペニスを踏みつけていて、一定のリズムで律動を与えている。君は性器を踏まれ、同時に足をしゃぶりながら、踊るようにその快感を全身で受け止めている。鏡に映るその姿は、おぞましくさえあったが、君にとっては天国の光景だった。ユリア女王様のように美しい女性の足元で跪き、性器を踏まれ、さらにはその素晴らしい足の指にご奉仕をさせていただけるなんて、変態の君にとっては光栄の極みといえた。

君は自我というものを完全に放棄して、ただひたすら女王様のおみ足を舐めている。女王様は煙草に火をつけ、変態に足を与えている。マゾヒスト男性にとって、女王様の足は、とても神聖なものだ。その造形は既に神の領域にあり、奴隷にとっては信仰の対象でもある。

君は今、女神の下僕となった。爪先、指の間、土踏まず、踵、そして足の裏全体、と隅々まで舌を這わせながら、神と同化することを願ってひたすら舐め続ける。

「そんなにわたしの足って、美味しい?」

女王様が煙草を吹かしながらそう訊く。君は胸を張ってこたえる。

「はい! とても美味しいです!」

「臭くないの?」

「いえ、全然そんなことはないです。素晴らしいです」

君はさらに強く鼻を女王様の爪先に押し付け、胸いっぱいにその香気を吸い込む。女王様の足はもう君の唾でベトベトになっている。それでも君はなおも執拗に舐め続ける。長い間、ひとりで悶々と膨らませ続けていた暗い妄想が、ようやく現実となったのだ。いったいどれだけ美しい女性のおみ足にご奉仕することを夢見ながら自慰をしてきただろう。女性の足は、君にとって、憧れだった。その夢の具現の瞬間に、君は今、立ち会っているのだ。

あまりに激しく動いたので、膝の上と足首で縛ってあったロープがあらかた解けてしまっている。そのため、君はかなり体の自由を取り戻した。

やがて、女王様が唐突に「はい、もう終わり」と言って、足を引いてしまった。君は不意に餌を取り上げられて路頭に迷った。もうロープはほとんど解けているので、君は踊りかからんばかりに前のめりなりながら膝で立ち、お座りをしている。まるで飢えた犬だ。

「おまえ、ちょっと調子に乗りすぎ。お仕置きが必要だわ」

女王様はそう言うと、足首のロープをきつく結び直し、それを持って君を仰向けに転がした。そしてニヤニヤ笑いながら君の足首を拘束しているロープの端をベッドの脚に括りつけると、君の顔を上から覗き込み、太くて赤い蝋燭を示した。

「これからおまえの体を可愛くしてあげましょう」

そう言い、短くなっていた煙草を灰皿に消すと、女王様はライターで蝋燭に火をつけた。君は吸い寄せられるようにそのユラユラと揺れる炎を見ている。

女王様は、太い蝋燭を君の胸の上辺りで傾け、溶け出した赤い蝋を君の体に垂らした。その点のような熱源が肌に触れた瞬間、君の体はピクンと跳ねる。蝋は、肌に付着すると固まり、君の体をだんだん赤く彩っていく。女王様は楽しそうに笑いながら、君の乳首やペニスにローションをたっぷりと注ぎ、その上へ蝋を垂らしていく。熱い蝋の感触は、針の痛みに似ている。君は天井の鏡に映る自分の赤い体に見惚れながら、その快感に身を捩った。これまでSM雑誌のグラビアやビデオなどを見て「蝋燭なんか気持ちいいわけないだろ」と君は思っていたのだが、実際に全身を赤い蝋で塗り固められていくと、たとえようのない心地よさを覚えた。確かに熱いし、チクリと痛いのだが、それは肌に触れる瞬間たちまち快感へと置き換えられる。加えて、亀甲縛りで拘束されたうえに蝋を垂らされているその自分の破廉恥な姿態に、どうしようもなく気持ちが昂ってくる。

「ほーら、気持ちいいの? 変態マゾくん。シゴきたかったら、その汚いチンポをシゴいてもいいのよ」

女王様が蝋を垂らし続けながら言う。君は「ありがとうございます」とこたえて、熱いペニスを握り締め、上下に激しく擦り上げる。

君の上半身は、もう真っ赤だ。まるでカサブタのように赤い蝋が肌を覆っている。君はその様子を天井の鏡で確認しながら、仰向けに転がされた蛙のような格好で自慰を続ける。

「恥ずかしい格好だねー」

女王様が笑いながら言う。そして蝋燭の火を吹き消して傍らに置くと、ふっと冷酷な表情になり、不意にビンタを浴びせる。

「ほら変態、もっとシゴけ」

「はい!」

君は小学校の一年生のようにはっきりとした返事をして、シゴき続ける。そんな君の体を、女王様が跨いだ。君は息を飲んで、官能的なラインを描く脚と、その先の股間を覆っているショーツを凝視する。

と、そのショーツが降下をはじめ、だんだん迫ってきた。そして、君の顔面は、女王様の豊満な尻に押し潰される。息ができない。苦しい。しかし気持ちいい。尻のたっぷりとした柔らかい感触が夢のようだ。君はまるで死と生の狭間を漂うように、女王様の尻の重みを受け止めている。

肉の双丘にすっぽりと押さえ込まれて、君は呼吸困難に陥った。息ができない苦しさに、君はバタバタと暴れる。ふっと意識が遠のきかけた。そのとき、絶妙なタイミングで女王様は腰を上げた。君は大きく息を吸い込んだ。

「ああ、なんかオシッコしたくなってきちゃった。おまえ、わたしの便器になる?」

女王様が体を折って君の顔を覗き込みながら挑発するように訊く。君は息を弾ませながらこたえる。

「はい、女王様の便器になりたいです。どうか、お聖水をお与えください!」

君は絶叫したが、もちろんペニスをシゴく手の動きは緩めていない。寧ろ、そう答えながら、その速度は激しさを増している。

「ふーん、オシッコなんか飲むんだ? ほんとにおまえは変態だね」

女王様はそう言ってショーツを脱いだ。艶やかな陰毛に被われた股間が君の視界に飛び込んでくる。その茂みの奥に、ピンクの亀裂が覗いている。君は無意識のうちに上半身を起こしている。

「ほら人間便器、大きく口を開けなさい」

「はい!」

君は女王様の股間の直下で大きく口を開いた。

「ああ、もう漏れそう、いくわよ。ちゃんと飲むのよ」

「はい!」

と、次の瞬間、黄金色の飛沫が女王様の股間から迸り出た。君は口を大きく開けてその水流の下に差し出し、生まれて初めて女性の聖水を飲んだ。それは、濃厚でほろ苦かったが暖かく芳醇で、君は我を忘れてゴクゴクと喉を鳴らしながら飲み続けた。聖水の勢いは、とどまることをしらない。飲み込むより早く注ぎ込まれるので、それはすぐに君の口から溢れてしまった。君の口から零れた黄金色の煌めきは、赤い蝋で覆われた胸板を流れていく。

君はもう全身が聖水塗れだ。体に付着している蝋が、聖水に濡れて艶やかに光っている。肌を流れる聖水は、すぐに熱を失い、冷たくなって君の体を濡らしていく。

女王様は、腰を前後に振って、聖水を君の全身に注いでいる。君は恍惚となりながら、聖水塗れの手で、聖水塗れのペニスをシゴき続けている。

やがて、女王様の聖水が枯渇した。君の体はたちまち冷えていく。そして、ほぼ同時に、射精の衝動が突き上げてきた。女王様は君を覗き込んでケラケラと笑っている。君は、叫んだ。

「女王様、もうイきそうです。イかせてください!」

君は体をピクピクと震わせながら射精の許可を求めた。女王様は、ティッシュで股間を拭い、それを君の口に押し込んだ。

「しょうがない変態ね、ほら、イってもいいわよ。イきなさい」

「フンガフンガフンガ」

君は口にティッシュを頬張ったまま「ありがとうございます」と言い、ラストスパートに向かった。猛然とペニスをシゴき上げていく。女王様の侮蔑に充ちた視線が、君を捕らえている。君はその視線の呪縛の中で、やがて下半身に熱源がせりあがってくるのを感じた。

「ああ」

君は叫び、次の瞬間、精液を派手に放出した。今日のために三日間オナニーを我慢していたので、その精液はねっとり濃く、驚くほど大量だった。そのヌメっとした感触が掌に伝わり、ペニスをベトベトにする。君は最後の一滴まで搾り出すように執拗に擦り上げる。

そして全部を放出し終えると、軽い脱力感に君は被われた。次第に冷静さを取り戻しながら、君はハアハアと息を弾ませ、ペニスから手を離すと、自分の精液に塗れているその掌を太腿で擦った。

女王様が足首の拘束を解いている。君は大きく息を吐きながら、その様子をぼんやりと見ている。体が冷え始めている。胸から腹にかけて覆っている蝋が、聖水に濡れてゴワゴワとしている。やがて、ロープを解き終わった女王様がそばに来て、君の口からティッシュを抜き取った。そして一発だけパシンと頬にビンタを打ち、言った。

「ご挨拶」

「はい」

まだ体には亀甲縛りが施されたままだが、君は体を起こし、腕を組んで仁王立ちしている女王様の前で跪くと、額を床に付けた。

「ユリア女王様、ご調教をありがとうございました」

もちろん返事はない。冷酷な視線が注がれているだけだ。亀甲縛りはもうかなり緩んでしまっている。しかし君は今、とても満ち足りている。

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