Session #2

君は今、全裸でX字の磔台に拘束されている。開いた両手足の先、手首と足首を、短い鎖で繋がれた革のベルトでがっちりと締められている。君はまるで身動きが取れない。強いスポットライトが、君の全身を照らしている。正面の鏡に、そんな不様な君の姿が映っていて、破廉恥に勃起しているペニスには、赤い紐が巻きつけられている。

その紐の先を持っているのは、チナツ女王様だ。チナツ女王様は身長178センチのグラマラスなミストレスで、太腿の張りとボリュームのあるバストが悩ましく、体のラインを強調するセクシーなボンテージを身に付けているため、そのスタイルの素晴らしさは際立っている。

女王様は、踵の高い黒革のロングブーツを履いている。そのため、実質的な身長は180センチを優に越えており、圧倒的な迫力だ。左手で君のペニスを縛った紐を持ち、右手に長い一本鞭を握っているその姿は、まさに鞭を持った美獣だ。

「ハハハ、おまえ、自分の格好をよく見てみなさいよ。何これ」

ペニスに巻きつけた紐をくいっくいっと引っ張りながら女王様が笑う。

「すみません……」

鏡を正視することができず、君は俯き、消え入りそうな声で言う。すると、視線を外したことに女王様は立腹し、つかつかと君に歩み寄ると、いきなり情け容赦のない強烈なビンタを君の頬に叩き込んだ。

「誰が目をそらせていいって言った? おまえ、随分生意気な変態ね」

女王様はそう言ってまた頬を張る。その目は冷酷そのものだ。人間を見る目ではない。まるで下等な動物を冷ややかに見下ろしているような残忍な目だ。

「申し訳ございません!」

君は緊張し、声を張り上げて謝罪をした。それでも君はマゾだから、股間の勃起が萎えることはない。寧ろ、さらにその硬度が増したようだ。

「フン」

女王様は鼻で嘲笑った。あからさまに君を軽蔑している。君はその視線に身悶える。奴隷にとって、蔑みの視線は甘美なる響きを内包している。

君の目は、女王様の逞しい太腿に釘付けだ。極限まで短いボンデージのミニスカートから、野性に充ちた長く引き締まった脚が、惜しげもなく誇示されている。その魅惑に充ちた曲線は、君にとって、悪魔の誘惑のようだ。手を伸ばせば触れられる距離にあるのに、決して触れることは許されない。君はその太腿に抱きつきたい、締め付けられたい、と強く願っているが、それが叶うはずなどない。女王様の体は奴隷にとって神聖なものだ。だから奴隷の分際で、その汚らしい手を伸ばすなど断じて許されることではない。

女王様は長い髪をかきあげ、君のペニスに巻きつけた紐の端を壁のフックに括りつけた。そして煙草に火をつけて君の前に戻ってきて、煙を君の顔に吹きかけた。美しい顔がすぐ間近に迫り、君はドギマギする。女王様は、冷徹な目で君の瞳を覗き込みながら、勃起している性器の周囲に密生する陰毛に煙草の先を近づけた。火種がチリチリと君の陰毛の先端を焼いていく。

君の膝は震えだしている。少しでも動けば、火種は直接肌に触れてしまう。だから君は震えながらも、必死に体を支えている。女王様は、そんな君の様子をおかしそうに眺めながら、時々煙草を吸っては、赤く濡れたように光っている唇を窄めて、灰色の煙を勢いよく君の顔に吹きかける。煙が目に沁みて、涙が出てきた。しかし女王様は次々に君に煙を吹き付けている。やがて、君はついに耐え切れなくなって、反射的に顔を背けてしまった。するとすかさず女王様の手が伸びてきて、君の顎に掛けられた。女王様はそのまま君の顔を強引に正面へ向かせ、強烈なビンタを打ち放つ。

「誰が顔を背けていいって言ったの」

顎に掛けた手に力を込めて、女王様が眉間に皺を寄せて怒りを露わにしながら詰問する。そのとき、化粧映えのする派手な顔立ちの女王様の目や唇は、君の目前、数センチのところにある。君はその美しさに息を飲んだ。先端の尖った舌がチロチロと真っ赤な唇の隙間で蠢いて、君はその動きに心を奪われる。女王様の目には相手を屈服させるに充分な力があり、今の君は蛇に睨まれた蛙のようなものだった。そしてもちろん女王様の言うことに対して君に何か反論をする資格などないし、その度胸もない。だから君は強く目を瞑り、「申し訳ございません!」と精一杯の誠意を込めて叫んだ。

君の頬はジンジンと痛んでいる。鏡で見ると、もう真っ赤に腫れていた。180センチを越えるパワフルなボディから容赦なく掌が叩き込まれるのだから、それは尋常な衝撃ではない。もしも手足を磔台に拘束されていなかったら、間違いなく吹っ飛んでいるだろう。

まだこのプレイルームに入って十分も経っていないというのに、君はもう息も絶え絶えだった。今夜、君はいつになくハードなプレイをしたくて、とくに調教が厳しいという評判のこのチナツ女王様を電話で予約指名した。実際に会ったのは今日が初めてだったが、そのお姿はクラブの待合室で他の客と一緒に出て行くところを見たことがあったし、雑誌やホームページでも顔出しをしているから、雰囲気はわかっていた。だから君は今夜、満を持して予約したのだ。

一応、このルームに入ったときにブレイの要望を訊かれたが、君は憧れの女王様に会えたことと、彼女のパワフルな肢体にすっかり舞い上がっていて、「針を使うようなプレイだけは出来ませんが、あとはお任せします」と言ってしまった。そのためカウンセリングはほんの一、二分で終了してしまい、早々にシャワーを命じられた。

シャワールームから出てきてご挨拶を済ませると、女王様は、早くも勃起している君のペニスに紐を巻きつけ、それを引っ張って君を磔台まで連行した。そのとき君は、自分が虫にでもなったような錯覚に捕らわれた。実際、大柄な女王様にペニスを紐で引っ張られながら歩いていると、とても自分が人間だと胸を張ることなどできなかった。尤も、そもそもマゾ奴隷に人間としての尊厳などあるわけがないのだが、紐で勃起しているペニスを無造作に引っ張られ、曳かれるように歩かされると、それはアウシュビッツに送り込まれていくユダヤ人よりも惨めな姿で、四方の壁が鏡のため、その憐れな姿は嫌でも君の目に入り、君はプレイ開始から三分と経たないうちに、自分が人間という理性を持った生物であることを完全に放棄させられた。逞しい女王様に全裸でペニスを紐で引っ張られながら歩く君の姿は変態そのものであり、まさに虫ケラ同然だった。

女王様の存在感がとにかく圧倒的なので、ただ同じ空間の空気を吸い、並んで立つだけで、君は完膚なきまでに屈服させられた。服従することだけが、この世界で唯一の正解のような気すらした。絶対的な支配者である女王様に服従を誓うことは、奴隷にとって悦び以外の何物でもないから、その感覚は君にとって最大の幸福だった。

女王様は、いったん君のそばを離れ、煙草を消した。そしてゆっくり戻ってくると、何の前触れもなく、足を開き気味で拘束されている君の股間へ、強烈な蹴りを叩き込んだ。ブーツの甲が睾丸を直撃し、君の体は跳ね上がった。たまらず君は悶絶する。

「ハハハハハ」

女王様は笑っている。君は蹲りたいくらいだが、手足をがっちりと縛られているのでどうすることもできない。君の顔は苦痛に歪んでいる。その顔へ、女王様のブーツが今度は斜め下から繰り出された。尖った爪先が頬骨の下にヒットし、君の頭は大きく揺れる。

「どう? 気持ちいい?」

女王様は君ににじり寄り、紐が巻いてある君の勃起したペニスをむんずと掴んで訊く。

「は、はい……」

君は小声でこたえ、頷いた。すると女王様はペニスを二、三度軽くシゴいた後、手を離し、次に玉袋を力いっぱい握って捻り上げた。

「そう、よかったねえ。じゃあ、これは? どう?」

唇の端を歪ませて女王様がさらに訊く。その目には残虐な笑みが浮かんでいる。君は半泣きになりながら爪先で立ち、大袈裟に何度も頷く。

「はい。気持ちいいです」

「ほら、鏡を見てごらん。すっごい変態な格好。おまえ、女王様に金玉を握られているのよ。最低だよね」

そう言って女王様はもっと強く玉袋を強く捻り上げる。君は堪らず叫んだ。

「い、痛いです、女王様。どうか、どうかお許しください」

「痛い? お許しください? おまえ、何言ってるの? おまえは変態マゾでしょ?」

君の目を女王様が覗き込む。君は怯えきった目で女王様を見つめ返しながらこたえる。

「はい……」

「だったら、もっと我慢しなくちゃ」

女王様はそう言って笑うと、玉袋から手を離した。君は安堵の吐息を漏らす。しかし、その平穏は長く続かない。女王様は股間から手を離して少し君との間に距離をとると、再び蹴りを君の股間へ叩き込んだ。

「うぎゃあああああ」

君は絶叫して跳ねた。その仕草がおかしいのか、女王様は大喜びしながら「ほら、もっと跳べよ」と笑って、さらにブーツの甲を君の股間に叩き込んでくる。バスッ、バスッという重い音がルーム内に響く。君は蹴りを受ける度にピョンピョンと跳ねた。

「申し訳ございません。お許しください、お許しください」

君は飛び跳ね、悶絶しながら懇願する。手足を拘束されているので、その飛び跳ねている格好はかなり滑稽だ。

「全くうるさい変態だね」

女王様は強烈なビンタを君の頬に浴びせて蹴りを中断した。君の息はもうすっかり上がっている。君はハアハアと息を弾ませながら股間の痛みに耐えている。

「変態が何休んでいるんだよ」

「申し訳ございません」

「ほんとおまえって生意気」

女王様は吐き捨てるようにそう言うと、鞭を手に取った。長い一本鞭だ。君は恐怖に滲んだ目でその鞭を眺めている。

「今日はおまえの腐った根性を徹底的に叩きなおしてやるわ」

そう言い終わるや否や、女王様は大きく鞭を振った。長い鞭がしなって、君の胸元を打つ。痺れに似た鋭い痛みが君を襲う。君は瞬間的に体を捻って鞭を避けたが、拘束されているため逃れることなどできなかった。

「ぎゃああああ」

君は鞭を打ち込まれた瞬間、その痛みに絶叫した。しかしそんなことで許してもらえるはずなどない。鞭は続けざまに五発ほど連続して叩き込まれた。×の字に鞭が踊り、君の体に赤い傷跡が刻まれていく。

「おまえ、変な風に体を捩ると、鞭が顔に当たっちゃうよ」

女王様はそう言って優しい心遣いを見せるが、もちろん手は休めない。ヒュンという空気を裂く音の後、肌を打つピシッピシッという鋭い音が、静かなルーム内に満ちている。その音の狭間に、君の泣き喚く声と女王様の笑い声が響き渡る。

強いスポットライトに照らされている君の体が、たちまち赤く染まり、傷だらけになっていく。君の全身に汗が噴き出してきた。鞭が打ち込まれる度に、汗がキラキラと光りながら飛び散っている。

やがて女王様による鞭の襲撃が止んだ。君はもうぐったりとしている。体の重心が下に落ちてしまっているので、手首を止めている両手に巻かれた革ベルトが、君の体を吊るしているように見える。

「よく耐えたわね。じゃあご褒美をあげるわ」

女王様が君の前に来た。そして、君の顎に手をかけ、ぐいっと上を向かせる。

「ほら、大きく口を開けなさい」

「はい!」

現金なもので、君はそう言われて、目をランランと輝かせながら大口を開いた。女王様が焦らすように、唇の間に白く泡立った唾をチラチラと見せる。君はその唾を凝視する。赤い唇と白い唾のコントラストが美しい。

女王様の尊い口の中で聖なる体液が熟成されていく。君はその様子を痴呆のように眺めている。やがて白濁する液体が、女王様の赤い唇の間から溢れた。ゆっくりと糸を引いて落下する。君は、それを享受した。暖かくて甘い大量の唾が君の口の中に注ぎ込まれて、歓喜が君を貫く。その甘露のような聖なる液体は、君を蕩けさせる。

「おいしい?」

悠然と微笑んで女王様が訊く。

「はい!」

君はゴクリと喉を鳴らして唾を飲み込み、こたえる。たった一度の唾拝受によって、鞭や睾丸の痛みが掻き消されていく。いや、実際にそれらが消えることはないのだが、そのような幸福の感覚に君は包まれている。

「ご褒美をもらったから、もっと頑張れるわよね?」

女王様が君の手首を固定している革ベルトを外しながら訊く。君は「はい」とこたえる。むろん、この次にどのような調教を施されるのか、君にはわかっていない。しかし、女王様のおっしゃる「頑張れるわよね?」という問いかけは、「頑張りなさいよ」という優しい命令の言葉なので、実のところ君はもうかなりグロッキーだったが、君に拒否することなどできやしない。長時間、手を上げ続けていたので腕がだるいし、睾丸に蹴りを受けたときの痛みはようやく和らぎつつあったが、胸板に刻まれた鞭の跡はミミズ腫れを起こして沁みるように痛んでいる。

やがて、女王様は君を磔台から解放した。ついでに、ペニスに巻きつけてあった紐も解いた。君は、しばらくぶりに体の自由を取り戻した。だるさを感じている二の腕を揉み、額に浮かんだ汗を手の甲で拭った。

「何を休憩しているの。さっさとこっちへいらっしゃい」

女王様が、部屋の中央へと君を呼びつけた。君は急いでその場所へ行った。すると、そこに立っている女王様の手には、長い麻縄が握られている。女王様は遥か高みから君を見下ろしながら、ビンタを一発浴びせ、「両手は後ろ!」と命じた。

「はい」

君はその命令に素直に従い、両手を後ろに回した。女王様は慣れた手つきで麻縄を手繰り、すぐにその君の手を縛り上げた。続いて、そのまま君の体も麻縄で拘束していく。女王様の手が後ろへ回される度に、その逞しく豊満なバストが君の体に触れて、敏感な君は単純に反応してしまう。その夢のような弾力に、君のペニスは簡単に反り返っていく。それを認めた女王様が、君のその恥知らずなペニスを膝で蹴った。

「元気なチンポだこと」

蔑むように言う。君は俯いて「すみません……」と謝罪する。

あっという間に、君の上半身は麻縄によって縛り上げられた。かなり強く縛られたので、肉がまるでボンレスハムのように、こんもりと縄と縄の間ではみ出している。そのとき、女王様が、天井から垂れ下がっている鎖を繰った。上空の滑車が回り、ジャラジャラと重い音を響かせて鎖が下りてくる。その鎖の先には頑丈そうな大きいフックが付いている。

「これからおまえを吊るして遊ぶの。楽しそうでしょ?」

女王様が言う。君は不安に慄きながら、それでもこくりと小さく頷いた。しかし、その反応が面白くなかったのか、女王様は急に表情を厳しくすると、続けざまに三発の往復ビンタを君に与えた。

「何か不満でもあるわけ?」

「いいえ、滅相もございません」

君は必死になって何度も首を横へ振る。

「そう。よかった。じゃあ、ちょっとしゃがみなさい」

女王様は優しい笑顔に戻って君に命じた。君は言われたとおり、しゃがんだ。すると女王様は、君の上半身を縛った麻縄の続きで、君の下半身の固定にとりかかった。膝を折らせて、君の太腿と足首辺りに麻縄を巻いて縛り上げた。そしてそれを両足に施した後、バランスを取りながら手首と腕と太腿と足首から麻縄を鎖に伸ばして、君を鎖に吊るした。

「できあがり!」

嬉しそうに言って女王様は、鎖を手繰った。徐々に、背中を丸めて拘束されている君の体が浮上していく。女王様は、君の体が床から一メートルほど浮いたところで、鎖を手繰るのを止めた。君は前へつんのめるような不安定な姿勢で、空中に静止した。恐る恐る女王様の顔を見上げると、女王様は妖艶な笑みを浮かべている。

「気分はどう? 楽しい」

女王様はそう言って、君の体を押した。君はなす術もなく空中で揺れる。縛られて吊られている部分の縄が肌に食い込んで痛んだ。君は歯を食い縛ってその痛みに耐えながらこたえる。

「楽しいです……」

「そう、それは良かったわ。じゃあ、もっと気持ちよくさせてあげる」

女王様は少し距離をとり、君の体に鞭を振るった。パシッパシッという乾いた音が連続して響き、君は呻き声を漏らす。

「ほら、もっと女みたいに泣きなさい」

女王様の鞭が激しくなった。君は鞭を打たれる度に「あーん」と泣いた。鞭を打たれるときに、無意識のうちに逃げてしまうので、君の体は振り子のように揺れている。足首の麻縄がかなりずれて、膝の下辺りで擦れている。君は鞭の痛みと同時に、その拘束の苦痛にも耐えなければならなかった。

合計で何発の鞭が振り下ろされただろう。君の体は、もう傷だらけだ。背中は、とくにひどい。真っ赤に腫れあがっているうえ、ミミズ腫れがくっきりと浮かんでいる。さらに、縄で擦れた肌には血が滲んでいる。

「じゃあ、ブランコになってもらおうかなあ」

女王様が鞭を捨てて、勢いをつけて君の体に飛び乗った。何キロあるのかわからないが、相当にパワフルな女王様の体重が負荷となって君の体にのしかかったため、麻縄が体に食い込み、君は絶叫する。しかし女王様は容赦しない。君の体を跨いで乗り、鎖に掴まりながらさらに大きく揺らす。勢いをつけて飛び乗ったので、その反動で、君の体は本当にブランコになったように揺れている。

「面白ーい。ねえ、おまえも楽しいでしょ?」

女王様が前後に体を揺すりながら君を覗き込んで訊く。ほんのりと汗ばんだ豊満な尻の感触と重みが背中に伝わっていて、それはこのうえなく素晴らしい質感だったが、君にそれを喜んでいる余裕はない。ただ、体に食い込む麻縄の痛みに耐えながら「はい、楽しいです」と虫が鳴くような声でこたえるのが精一杯だった。

いつしか、君は、足の先の感覚が麻痺してきているように感じた。もっとも肉体的な苦痛が大きいので、その違和感は微々たるものだったが、さすがに女王様はプロなので、その変調に気づくと、頃合を見計らって君の体から降りた。そして、もう息も絶え絶えに衰弱しきっている君を床に下ろすと、きつく縛り上げてあった麻縄を解いた。

拘束から解放されると、君は四つん這いになってハアハアと荒い息を吐きながら呼吸を整えた。体には、鞭の傷跡だけではなく、縄の跡がくっきりと残っている。そんな君を、女王様が小突くように蹴飛ばした。完全に油断していた君は、だらしなくそのまま横へ転がる。

冷たいフローリングの床の感触が、傷だらけの体に心地よかった。仰向けに倒れた君の視界は天井で占められており、その天井も鏡張りなので、君の瞳には自分の無残な体が映っている。体全体が赤く、無数のミミズ腫れが走っている。さすがの君でも、いつのまにか勃起が萎えている。それを女王様が目ざとく見つけ、ブーツの爪先で踏んだ。

「おまえ、変態のくせにナメてんのか、こら。なんだよ、この貧相なチンポは」

そして、そのまま体重をかけてグリグリと踏みにじる。

「申し訳ございません」

君は謝る。しかし、そこは変態の君だ。女王様によって踏みにじられている間に、その刺激で再び性器は息を吹き返した。ブーツの底の下で、瞬く間に硬度を増していく。

「うわあ、もう大きくなってきた。さすが変態」

女王様が、ブーツの底で起きた性器の変化に気づいて嘲るように言い、ふっとその足を浮かすと、次の瞬間、だらしなく開いている君の足の間へ蹴りを叩き込んだ。玉袋をブーツの甲が直撃して、君は仰向けに寝転がったまま、電気ショックを受けた蛙のように飛び跳ねる。その様子を見て、女王様がケラケラと笑う。笑いながら、それを二度、三度と繰り返す。君は蹴られる度に体を跳ねさせ、やがて弾かれたように起き上がると、そのまま女王様の足元で土下座をして額を床に擦りつけた。

「どうか、どうか女王様、お許しください」

君は小さく体を丸めて必死に許しを乞うた。しかしそんな勝手なお願いが通じるわけもなく、女王様は君の後頭部を踏みつけて答えとし、じんわりと体重をかけていく。

「お許しくださいだって? そんなセリフ、百年早いんだよ。この変態が!」

そう言うと、女王様はブーツの爪先を君の額の下にねじ込み、そのまま足を振り上げた。君は問答無用で後方へ転がる。それでも、ここで女王様の怒りを増幅させてはまずいので、すぐに態勢を立て直すと、すかさず女王様の足元に戻り、再び平伏する。

「申し訳ございません。申し訳ございません」

君は尻を浮かせて、額を床へめり込ませんばかりに押し付けながら謝罪の言葉を繰り返す。女王様が君の背後に回り、高く浮かせている尻を平手で思いっきり打った。

「おまえ、謝りながらこんな風にケツを浮かせてるなんて、まだお仕置きが欲しいの?」

君は怯えたように震えながら、額を床につけたまま首を左右に振る。

「い、いいえ……」

「いいえ? 本当は欲しいんでしょ? ケツにビンタが。正直に言いなさい」

また尻に平手が打ち下ろされる。君は体を弾ませてそれに耐えながら言う。

「は、はい……。本当は欲しいです……」

蚊の鳴くような声だ。実際のところ、本当に尻にビンタを欲しいと思っているのか、君自身よくわかっていなかったのだが、女王様にそう言われると、本当は尻を打ってもらいたいと望んでいるのではないか、という気が自分でもしてきて、いつの間にか無意識のうちに君は一層尻を高く掲げていた。

「やっぱりね。おまえは正真正銘の変態マゾだもんね。お猿さんみたいに真っ赤な尻になりたいんだよね」

「はい。そうです」

君はくぐもった声でそうこたえた。それを合図にして、凄まじいスピードとパワーで次々とビンタが尻に炸裂した。君は踊るように体を弾ませながらそのビンタを受け続ける。

「ほら、打たれるときは女みたいに泣きなさいって、さっき言ったでしょ? もう忘れたの?」

「申し訳ございません!」

君は叫ぶようにこたえて、その後からは、尻に掌が叩き込まれる度に「あーん」と体を捻らせて泣いた。

「いいお声ねえ。おまえ、最高よ」

君の敏感な反応に女王様は喜び、尻を打つ手にさらなる激しさを加えた。尻が火を噴いているように熱く、痛い。それは、先ほどまでの鞭の痛みを掻き消すくらいに強烈で、全身の神経が尻の表面に集められてしまっているかのようだった。君は、ちらりと壁の鏡を盗み見た。すると、尻を掲げて女王様の折檻を受けている憐れな自分の姿が目に飛び込んできた。しかも、女王様は、いつのまにか煙草に火をつけていて、咥え煙草で君の尻を打っている。その手の動きは打ち慣れているからか、全く無駄がなく、スナップがきいている。

君はその倒錯した光景に、底知れぬ昂りを覚えた。咥え煙草の女王様に尻を差し出してビンタを受けている傷だらけのマゾ奴隷……。それはこの世の終末を予感させるような、すべての価値観を木っ端微塵に破壊するに充分な転倒した光景だった。人間としての威厳も尊厳もそこには何もない。君はもはや理性と知性を併せ持つ人間という生物ではなく、ただのマゾ奴隷だ。いや、豚や牛と同じ家畜、もしくは本能のままに生きる獣だ。もしかしたら、家畜や動物以下の存在かもしれない。君はきつく瞼を閉じ、下唇を噛み続けながら、ただひたすらビンタの嵐が去るのを待ち続けた。

それでも哀しいことに、君のペニスは限度いっぱいまで硬く、熱く、まるで狂った野獣のようにいきり立っている。

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